【小学校・勤労生産に関わる体験活動】 地域の米作り名人と米作り体験活動‐米でつながるわたしたち‐ 奈良県香芝市立真美ヶ丘西小学校
学校の概要
- 学校規模
- 学級数:13学級(内障害児学級1学級)
- 児童数:344人
- 教職員数:26人
- 活動の対象学年:5年・53人
- 体験活動の観点などからみた学校環境
- 人口約6.3万人の香芝市で真美ヶ丘ニュータウンの中に位置している。地域の特徴は大阪のベットタウンとして開発された新しい住宅地域で圧倒的に大阪方面に通勤されている家庭が多く、唯一旧来の17戸の五カ所という集落以外はすべて住宅地である。
- 新興住宅地ということで、ここを子どもたちのふるさとにしようと、地域自治活動はもとより、地域老人クラブの活動も盛んで、高齢者の皆さん、保護者・地域住民の皆さんは学校教育への協力を大変熱心にしていただいている。
- 本校は開校16年目の比較的新しい学校である。特色ある学校づくりから地域にこだわり地域の学校として地域の人たちとの交流を大切にしてきた。運動会・新年集会・卒業集会などには地域老人会はじめ地域の方々に参加いただいている。
- 連絡先
- 〒639‐0223
奈良県香芝市真美ヶ丘五丁目4‐20
- 電話:0745‐77‐5888
- FAX:0745‐79‐2160
|
体験活動の概要
- 活動のねらい
- 米作りの体験活動をとおして、自分たちの住んでいる地域の米作りを知ることで、自分と米の関わりを考え、自分たちの住んでいる地域のすばらしさを学ばせる。
- 日本の農業(私たちの食生活と食料生産)の現状や問題点に気づく。
- 体験活動の中で出会った人たちの努力や工夫を知り、その生き方に学ぶ。
- 活動内容と教育課程上の位置付け
- 総合的な学習の時間 50単位時間
特別活動 5単位時間
社会科 10単位時間 家庭科 5単位時間
- 主なる活動場所
学校借用田(五カ所農家より) バケツ稲置き場・教室・パソコン教室
- 活動内容
米作り体験は籾蒔きから、収穫祭(おにぎりパーティー)まで。教育課程上、籾蒔き・田植え・稲刈り等は「総合的な学習の時間」で実施。日常活動としてバケツで育てた稲の世話は特別活動で実施。社会科では日本の農業(私たちの食生活と食料生産)、またインターネットを利用して米の歴史・食文化・日本の米作りの抱える問題なども学習した。収穫祭には収穫した米で家庭科の時間に米を炊き、みそ汁づくりをして、家族の一員として家庭生活の実践ということに発展させた。
|
1.活動に関する学校の全体計画
活動のねらい
勤労生産体験活動の米作り体験活動をとおして
- 自分たちの住んでいる地域の米作りの様子を知り、自分と米の関わりを考える。
- 米作りで出会った人たちの努力や工夫を知り、その生き方に学ぶ。
- 社会科と関連づけ、日本の農業(私たちの食生活と食料生産)の現状や問題点に気づく。
- 家庭科と関連づけ、収穫の喜びを共に味わい、米を調理し食することで、自然に感謝する心を育てると共に家族の一員として家庭生活に関心を持つ。
- 稲を育てる事をとおして、自ら考え、行動し、主体的に取り組む態度を育てる。
2.全体の指導計画
- ア 活動の名称
「米でつながるわたしたち」
- イ 実施学年
第5学年
- ウ 活動内容
- 勤労生産に関わる体験活動
籾蒔き・田植え・稲刈り・脱穀籾すり・精米昔の道具の体験バケツで育てる稲の世話
- 社会科との関連・・・日本の農業の学習、インターネトで米の歴史・食文化・日本の農業の問題点等を調べ学習
- 家庭科との関連・・・収穫祭で家庭科の『作って食べよう(ご飯とみそ汁)』の単元と関連させ、収穫した新米で炊く。
田植え体験
収穫した米でおにぎりパーティー
- エ 教育課程上の位置付け
- (ア)米作りでお世話になる○○さんとその田(○○さんにお借りした田のことで、以後学校田と記載する。)での米作りの活動と○○さんに来校していただいてバケツ稲の育成の指導(籾蒔きから刈り取り・精米)は総合的な学習の時間として50時間
- (イ)日常の稲の観察・世話は特別活動5時間と業前と放課後にした。
ただし、夏休みの長期休業中は子どもたちだけの少人数登下校になるので、防犯上の面から、教職員で分担して世話をした。
- (ウ)収穫祭とおにぎりパーティーは家庭科5時間とその日の総合的な学習の時間を充てた。保護者にも協力いただいた。
- (エ)米作りと並行して日本の農業について社会科で10時間学習し、発表会もした。
3.活動の実際
全活動計画(1~8の体験活動)
1 |
「米」って何だろう(総合) |
2 |
米について調べてみよう(社会科)
- 「外国の米作り」
- 「米作りをしている人」
- 「農薬」
- 「米作りの歴史」
- 「米からできるもの」
- 「米の料理」
- 「米の品種改良」
- 「米の栄養」
- 「米の成長」
- 「わら」
- 「祭り」
|
3 |
米作りをしてみよう。・・・■米作の達人に米作りを教えてもらおう。
(バケツで学校でも稲を作ってみよう)籾蒔きから
■田植えをしてみよう。(総合・特活) |
|
4 |
調べたこと・体験したことを中間発表してみよう。(社会・特活)
!!!疑問・・・なぜ川の近くで米作りが盛んなのか↓↓↓
外国の米作りはどうしているのか。
↓↓↓■稲刈りをしよう。(総合) ↓↓↓
■脱穀をしてみよう。(総合) |
5 |
米作りについて様々な経験や工夫について達人に聞いてみよう。(総合) |
6 |
収穫した米で家庭科の時間に料理を作ろう。(家庭科) |
7 |
外国の米作りについて調べてみよう。(韓国の米作りについて)(総合) |
8 |
米作りについて調べてきたこと、経験したことをまとめて、発表しよう。(総合) |
活動の実際
- 1.の活動「米」って何だろう
米の抱える問題、食文化、歴史など、子どもたちに興味関心と問題意識を持たせるために、NHKの教育番組『おこめ』を視聴する。また、子どもたちの米についてもっと知りたいこと、作っていること、作っている人、食べていること、昔の米作りなどについて、それぞれが短冊に記入し、紹介し合う。さらに、体験を通して学んでいくことを大切にするということで、バケツを使って稲を育てる「バケツ稲」に取り組んでいくことにした。
- 2.の活動米について調べよう(グループ学習)
子どもたちから出された意見を整理し、11のグループに分かれて調べ学習を行った。
- 3.の活動米作りをしてみよう(■米作りの達人に米作りを教えてもらおう)
バケツ稲を育てていくにあたって、初めての取組であるため、米作りの達人である○○さんに「米作り」について話をしてもらうことにした。米作りの苦労やコツを教えてもらい、そして、種籾を植えるための土作りや種籾の植え方を指導してもらいながら子どもたちとともに行った。さらに、苗ができるまでの世話の方法や田植えの時期についても教えてもらった。
- ■ 田植えをしてみよう(米作りの達人に田植えの方法を教えてもらおう)
田植えについては、○○さんの田でも体験させていただくことになり、自分たちのバケツ稲で田植えをする時の練習も兼ねて、実際にどろの中に足を入れて田植えを体験した。そして、バケツ稲の田植えでも○○さんに指導してもらいながら実施した。
- 4の活動調べたことや体験したことを中間発表しよう
中間発表としてまとめたことを発表し合い、各グループがどのようにまとめているのか、互いに参考にできるように実施した。
- ■ 稲刈りの方法を達人に教えてもらおう
全員のバケツ稲もしっかりと成長し実をつけ、稲刈りの時期になった。○○さんに指導してもらいながら、稲刈りを行った。稲を刈った後、脱穀などの方法についても教えていただいた。さらに、○○さんの田でも稲刈りの体験をさせてもらった。実際の農作業の苦労も体感できた。
- ■ 脱穀などの作業をしよう
刈り取った稲をかけねにかけ、しばらく乾燥させた後、脱穀の作業を行うことになった。割り箸で挟み込んで脱穀し、すり鉢に脱穀した米を入れゴムボールですりつけることで籾すりを行った。籾すりが予想以上に大変で苦労しながら取り組んでいた。精米は、一升瓶に入れて棒で根気よく突くことでできることも教えていただいた。しかし、籾すりが3時間かけて1/4もできなかったため、結局、機械を使って精米までしていただくことになった。
- 5.の活動米作りの達人に米作りについての様々な工夫など話を聞こう
今までお世話になった○○さんに来ていただいて、校区の航空写真を見せていただきながら、校区の造成の様子や、造成前の田んぼの様子、水を確保するための溜池での苦労や工夫などについて話していただいた。また、子どもたちが調べ学習で、疑問に思ったことなどを直接○○さんに質問する時間も設定し、質問などに答えていただいた。
- 6.の活動収穫した米を使って料理を作ろう
バケツ稲でできた米と○○さんの田でできた米をいただき、○○さんを招いておにぎり作りを行った。保護者の協力も得て大根のみそ汁やカツオとシーチキンを具にしたおにぎりを作りみんなでおいしくいただいた。
- 7.の活動外国の米作りについて、特に韓国の米作りについて調べた。
- 8.の活動米作りについて調べてきたこと、経験したことをまとめて、発表した
4.体験活動の実施体制
(1)学校支援委員会の体制
豊かな体験活動の充実と地域の連携を図るために、学校長中心に今までお世話になってきた地域の老人会やボランティア団体に協力を得て、学校支援委員会が運営できた。校長を中心とする12名で構成された。
(2)配慮事項等
安全確保と学校理解も含めて校外活動や家庭科実習は保護者に協力を得た。
5.体験活動の評価の工夫と指導の改善
豊かな体験活動は教育課程上の主に「総合的な学習の時間」・特別活動・社会科・国語科(パソコンで表現する)・家庭科において展開したので、それぞれの教科の評価基準に照らして評価する。総合的な学習の時間での活動が多いので、本校では自ら課題を見つけ、取り組む力はどうか、自ら情報を集め、創る力はどうか、表現する力、振り返る力はどうかということを重点に評価した。方法としてはノート、作文、ワークシート等の制作物からの評価。命輝き集会等表現活動へ向けての取り組み方、発表や話し合いの様子からの評価、日常的な活動状況の教師の観察による評価
6.体験活動の成果と課題
本年度は「米でつながるわたしたち」をテーマに、米作りの活動を中心にして総合の学習を進めてきた。今回は、バケツ稲にも挑戦した。その結果、種籾、土作りから稲刈りまでの米作りの一連の流れを子どもたちは身近に観察し体験することができた。また、水田での田植え、稲刈り体験により実際に水田に足を入れ苗を植えることで、農作業の大変さにも気づいたようだ。米作り全般にわたってお世話になった○○さんの言葉や作業の手際の良さなどが子どもたちの心に残ったようだ。課題としては、地域の米作りの様子や地域のすばらしさについて、フィールドワークなどをして、深めることが出来なかったことである。