多様な取り組みによる全面芝生グラウンド／杉並区立和泉小学校（東京都）

◆学校概要◆

• 所在地
  東京都杉並区和泉2丁目17番21号
• 児童数
  342人
• 学級数
  12クラス
• 校地保有面積
  8,835平方メートル

◆事業概要◆

• 施設内容
  グラウンド（芝生）（2,575平方メートル）
• 工期
  平成13年10月～平成14年3月
• 事業費
  33,000千円

■特徴

　体育に関する研究奨励校の指定を杉並区から受けました。区教育委員会の「校庭の緑地化」の取り組みに対し学校が希望し、区公園緑地課と教育委員会の協力を得て整備を行いました。
　芝生導入に際しては、全教職員による十分な話し合いや目的の共有化を行い、全面芝生化を実施しました。初期の段階から地域住民との連携も行い、工事から維持・管理まで、地域と一体になった継続的かつ主体的な取り組みを行っています。
　子どもたちの関わりも深く、工事中や日常的な維持・管理も教育の場と捉えた様々な取り組みを行っています。これらは、地域住民や子どもたちの芝生に対する愛着を一層高めています。

校庭全景

■施設概要

　子どもたちが、心も体もたくましく育っていくことを目的に整備を行いました。
　芝生整備により、砂塵の減少、緑の増大、ヒートアイランド現象の緩和、地域との関わりの増大のほか、子どもたちの気持ちなどにも変化が見られるようになりました。学習などに対する意欲や積極性が出てきたほか、情緒の安定、校庭で遊ぶ機会の増加、怪我の減少、全員出席日数の増加、環境への関心の向上などの効果として現れています。また、芝生を地域的な財産として捉えられるようにもなりました。さらに、全面芝生化は子どもたちの開放感や芝生との触れあいという点でも、非常に効果的であったと教職員が受け止めています。
　芝生化は新たな学習活動の誕生にも寄与し、様々な利用がなされています。

■整備内容

　芝種は、寒地型の芝草3種（ペレニアルライグラス、トールフェスク、ケンタッキーブルーグラス）を混合しており、現在では環境にあったペレニアルライグラスが多く占めています。
　基盤には透水シートを敷き、洗い砂（80パーセント）と黒土（20パーセント）を用いています。

■管理内容

　平成14年度の主な維持・管理内容は、刈込（年間36回）、灌水（年間173回）、施肥（年間9回）、エアレーション（年間3回）、目土（年間3回）、播種（年間5回）、シート養生（随時）となっています。農薬はほとんど使用していません。近年の年間維持管理費は200～250万円程度となっています。
　設備や維持・管理機器は、芝刈機（乗用式1台、自走式2台、手押し式20台）、移動式スプリンクラーなどを常備しています。
　グリーンキーパーの協力を得て、週1回程度の診断を受けています。グリーンキーパーが維持・管理の方針や作業内容を決定し、それを踏まえ維持・管理作業を実施しています。
　保護者・地域主導の維持・管理・運営組織「和泉グリーンプロジェクト」が中心となり、学校・家庭・地域住民の連携を重視した維持・管理及び運営が行われています。
　組織は公募で、300名程度の会員です。週1～2回程度の維持・管理活動は自由参加が基本で、毎回15～20名程度の参加があります。他にも、イベントの企画や広報・情報発信（広報紙・冊子づくり）なども行っています。
　維持・管理内容の情報を保護者などに全て公開しています。教職員は休日はノータッチ（参加は自由）を原則とし、地域の主体性を守ることを重視しています。
　オーバーシーディングなどにともない校庭を利用できない芝生養生期間中（1～3週間）は、遊具エリア、体育館、屋上を利用しています。
　サッカーゴールなどは適宜移動しますが、利用制限は特にしていません。
　学校側の担当者（教頭）は各関係者のパイプ役に徹し、実作業は担当教職員や地域グループの代表などに委ねることで、一人の負担が重くならないような工夫もしています。

■活用内容

　主に体育の授業で利用しています。これにより運動のバリエーションが豊富になったほか、動きのダイナミック化も図れています。
　芝生の維持・管理や育成の体験（芝刈り、播種・育苗・補植など）も学習の一環として実施しています。
　地域参加型のイベントも実施し、これまでに芝生の上の映画会、和太鼓の演奏会、キャンプファイアーなどを行いました。

■課題

　当初から関わっていた人の情熱や実務的な作業を、後継者の教職員や新しい保護者にどのように伝えていくか、芝生の誕生を目の当たりにした子どもたちと既にそこにある存在として芝生を捉えている子どもたちの意識のギャップ、予算の確保、芝生化したことによる効果の数値化などが課題としてあります。

芝生の上で遊ぶ子どもたち

芝刈機