参考5 民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針(PFI基本方針)


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平成12年3月13日総理府告示第11号

 21世紀を迎えるに当たり、本格的な少子・高齢社会が到来する中で国民が真に豊かさを実感できる社会を実現するためには、効率的かつ効果的に社会資本を整備し、質の高い公共サービスを提供することが、国、地方公共団体及び特殊法人その他の公共法人の公共施設等の管理者等に課せられた重要な政策課題であるが、この実現のために、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用し、財政資金の効率的な使用を図りつつ、官民の適切な役割及び責任の分担の下に、公共施設等の整備等(公共施設等の建設、維持管理若しくは運営又はこれらに関する企画をいい、国民に対するサービスの提供を含む。以下同じ。)に関する事業の実施を民間事業者に行わせることが適切なものについてはできる限り民間事業者にゆだねることが求められている。

 民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業(以下「PFI事業」という。)は、公共性のある事業(公共性原則)を、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して(民間経営資源活用原則)、民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果的に実施するものであり(効率性原則)、特定事業の選定及び民間事業者の選定においては公平性が担保され(公平性原則)、特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されねばならない(透明性原則)。さらに、PFI事業の実施に当たっては、各段階での評価決定についての客観性が求められ(客観主義)、公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意について、明文により、当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすることが必須であり(契約主義)、事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されなければならない(独立主義)。公共施設等の管理者等は、公共サービスの提供を目的に事業を行おうとする場合、当該事業を民間事業者に行わせることが財政の効率化、公共サービスの水準の向上等に資すると考えられる事業については、できる限りその実施をPFI事業として民間事業者にゆだねることが望まれる。

 このPFI事業の着実な実施は、次のような成果をもたらすものと期待される。
 第一は、国民に対して低廉かつ良質な公共サービスが提供されることである。この目的を達成することは、もとより公的部門の重要な課題である。しかし、近年国及び地方公共団体の財政は極めて厳しい状況にあり、着実に財政構造改革を進めていく必要があるところ、民間事業者の経営上のノウハウの蓄積及び技術的能力の向上を背景に、公共施設等の整備等にその経験と能力の活用を図ることが求められている。このような状況の下で、PFI事業による公共サービスの提供が実現すると、それぞれのリスクの適切な分担により、事業全体のリスク管理が効率的に行われること、加えて、建設(設計を含む。)、維持管理及び運営の全部又は一部が一体的に扱われること等により、事業期間全体を通じての事業コストの削減、ひいては全事業期間における財政負担の縮減が期待できる。また同時に、質の高い社会資本の整備及び公共サービスの提供を可能にするものである。このPFI事業を円滑に実施することにより、他の公共施設等の整備等に関する事業においても、民間の創意工夫等が活用されることを通じて、その効果が広範に波及することが期待される。

 第二は、公共サービスの提供における行政の関わり方が改革されることである。PFI事業は、民間事業者にゆだねることが適切なものについて、民間事業者の自主性、創意工夫を尊重しつつ、公共施設等の整備等に関する事業をできる限り民間事業者にゆだねて実施するものである。このことによって、財政資金の効率的利用が図られ、また、官民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップが形成されていくものと期待される。

 第三は、民間の事業機会を創出することを通じて経済の活性化に資することである。PFI事業は、従来主として国、地方公共団体等の公的部門が行ってきた公共施設等の整備等の事業を民間事業者にゆだねることから、民間に対して新たな事業機会をもたらす効果があることに加えて、他の収益事業と組み合わせて実施することによっても、新たな事業機会を生み出すことになる。また、PFI事業のための資金調達方法として、プロジェクト・ファイナンス等新たな手法を取り入れることにより、金融環境が整備されるとともに、新しいファイナンス・マーケットの創設につながることが予想される。これらの結果、新規産業を創出し、経済構造改革を推進する効果が期待される。

 以上のような認識の下に、民間事業者の自主性と創意工夫を尊重したPFI事業の促進を図ることは、喫緊の政策課題といえる。国及び地方公共団体においては、公共施設等の管理者等が特定事業の実施を円滑に進められるように、以下に示すところにより、所要の財政上及び金融上の支援、関連する既存法令との整合性の明確化、規制の緩和等の措置を講ずる必要がある。

 本基本方針は、公共施設等の管理者等が、共通の方針に基づいてPFI事業を実施することを通じて、効率的かつ効果的な社会資本の整備が促進されることを期し、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号。以下「法」という。)第4条第1項の規定に基づき、特定事業の実施に関する基本的な方針として定めるものである。なお、本基本方針は、国等(法第2条第3項第1号及び第3号に掲げる者をいう。以下同じ。)が公共施設等の管理者等として行うPFI事業について主として定めるものであり、同時に、地方公共団体においても、法の趣旨にのっとり、本基本方針の定めるところを参考として、PFI事業の円滑な実施の促進に努めるものとする。


 民間事業者の発案による特定事業の選定その他特定事業の選定に関する基本的な事項

1  特定事業に係る一般的事項
 国等は、公共施設等の整備等に関する事業を行う場合、民間の持つ資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されることが可能な事業であって、民間事業者に行わせることが適切なものについては、できる限りその実施を民間事業者にゆだねるものとする。

2  実施方針の策定及び公表
(1)  国等は、PFI事業の円滑な実施を促進していくためには、具体的な特定事業を早期に実現し、その実施過程の中で諸制度の整備、改善を図っていくことが必要であるとの観点に立ち、公共施設等の整備等に関する事業のうち、事業の分野、形態、規模等にかんがみ、PFI事業としての適合性が高く、かつ、国民のニーズに照らし、早期に着手すべきものと判断される事業から、法第5条に定める実施方針を策定する等の手続に着手することとする。また、民間事業者からの発案のあった事業については、下記4に従い、積極的にこれを取り上げて、必要な措置を講ずるものとする。
(2)  国等は、実施方針の策定及び公表を、公平性及び透明性の確保の観点から、当該事業に関する情報が早くかつ広く周知されるよう、なるべく早い段階で行うこととする。
(3)  国等は、実施方針において、法第5条第2項各号に掲げる事項を定めるものとする。実施方針の策定に当たっては、民間事業者にとって特定事業への参入のための検討が容易になるよう、当該特定事業の事業内容、民間事業者の選定方法等についてなるべく具体的に記載するものとする。この際、実施方針は、公表当初において相当程度の具体的内容を備えた上で、当該特定事業の事業内容の検討の進行に従い、順次詳細化して補完することとしても差し支えない。

3  特定事業の選定及び公表
 国等は、実施方針の策定後、当該事業の実施可能性等を勘案した上で、これを特定事業として実施することが適切であると判断したときは、法第6条に基づく特定事業として選定することとする。法第6条に基づく特定事業の選定及び法第8条に基づく客観的な評価の結果の公表については、次の点に留意して行うものとする。なお、下記(2)及び(3)の算定及び評価については、漸次その客観性及び透明性の向上を図るよう努めていく必要がある。
(1)  特定事業の選定に当たっては、PFI事業として実施することにより、公共施設等の建設、維持管理及び運営が効率的かつ効果的に実施できることを基準とすること。これを具体的に評価するに当たっては、民間事業者にゆだねることにより、公共サービスが同一の水準にある場合において事業期間全体を通じた公的財政負担の縮減を期待することができること又は公的財政負担が同一の水準にある場合においても公共サービスの水準の向上を期待することができること等を選定の基準とすること。
(2)  公的財政負担の見込額の算定に当たっては、財政上の支援に係る支出、民間事業者からの税収その他の収入等が現実に見込まれる場合においてこれらを調整する等適切な調整を行って、将来の費用(費用の変動に係るリスクをできる限り合理的な方法で勘案したものとする。)と見込まれる公的財政負担の総額を算出の上、これを現在価値に換算することにより評価すること。
(3)  公共サービスの水準の評価は、できる限り定量的に行うことが望ましいが、公共サービスの水準のうち定量化が困難なものを評価する場合においては、客観性を確保した上で定性的な評価を行うこと。
(4)  特定事業の選定を行ったときは、その判断の結果を、評価の内容(公共サービスの水準について定性的な評価を行った場合は、その評価の方法と結果を含む。以下同じ。)と併せ、民間事業者の選定その他公共施設等の整備等への影響に配慮しつつ、速やかに公表すること。なお、実施方針の策定及び公表後に、事業の実施可能性等についての客観的な評価の結果等に基づき特定事業の選定を行わないこととしたときも同様とすること。
(5)  上記(4)の公表のほか、選定又は不選定に係る評価の結果に関する詳細な資料については、民間事業者の選定その他公共施設等の整備等の実施への影響に配慮しつつ、適切な時期に適宜公表すること。

4  民間事業者の発案に対する措置
 国等は、PFI事業の促進にとって有益な民間事業者からの活発な発案を促すため、民間事業者からの発案に関し、次の点に留意して対応するものとする。
(1)  公共施設等の管理者等は、民間事業者の発案に係る受付、評価、通知、公表等を行う体制を整える等、適切な対応をとるために必要な措置を積極的に講ずること。
(2)  民間事業者からの発案に対してこれを実施に移すことが適当であると認めたときは、実施方針の策定等について、公共施設等の管理者等が発案したPFI事業の場合と同じ手続を行うこととすること。
(3)  民間事業者の発案による事業案について相当の期間内に実施方針の策定までに至らなかった場合には、その判断の結果及び理由を発案者に速やかに通知すること。さらに、これらの事業案の概要、公共施設等の管理者等の判断の結果及び理由の概要につき、当該事業者の権利その他正当な利益及び公共施設等の整備等の実施に対する影響に留意の上、適切な時期に適宜公表すること。

 民間事業者の募集及び選定に関する基本的な事項

1  国(法第2条第3項第1号に掲げる者をいう。以下同じ。)は、法第7条第1項に基づく民間事業者の選定及び法第8条に基づく客観的な評価の結果の公表については次の点に留意して行うものとする。
(1)  民間事業者の募集及び選定に関しては、「公平性原則」にのっとり競争性を担保しつつ、「透明性原則」に基づき手続の透明性を確保した上で実施するよう留意すること。加えて、できる限り民間事業者の創意工夫が発揮されるように留意するとともに、所要の提案準備期間の確保にも配慮すること。
(2)  会計法令の適用を受ける契約に基づいて行われる事業を実施する民間事業者の選定に際しては、会計法令に基づき、一般競争入札によることを原則とすること。
(3)  競争入札に際し、会計法令の規定に従い価格及びその他の条件により選定を行うこととする場合には、客観的な評価基準を設定すること。公共サービスの水準等について、やむを得ず定性的な評価基準を用いる場合でも、評価結果の数量化により客観性を確保すること。
(4)  会計法令の規定の適用を受けない場合においても、競争性を担保すること。また、この場合又は随意契約による場合においても、上記(3)の趣旨にのっとった客観的な評価を行うことを条件とすること。
(5)  募集に当たっては、民間事業者の創意工夫が極力発揮されるように、会計法令に定めるところの範囲内において、提供されるべき公共サービスの水準を必要な限度で示すことを基本とし、構造物、建築物等の具体的な仕様の特定については必要最小限にとどめること。
(6)  民間事業者には質問の機会を与えるとともに、質問に係る情報提供に当たっては、競争条件を損なわないよう、公正に行うこと。
(7)  民間事業者の選定を行ったときは、その結果を評価の結果、評価基準及び選定の方法に応じた選定過程の透明性を確保するために必要な資料(公表することにより、民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものを除く。)と併せて速やかに公表すること。
(8)  民間事業者の募集及び選定に係る過程を経た結果、民間事業者を選定せず、特定事業の選定を取り消すこととした場合においては、上記一3(4)及び(5)に準じ、公表すること。

2  特殊法人その他の公共法人(法第2条第3項第3号に掲げる者をいう。)は、民間事業者の選定等について、上記1(1)から(8)までの規定に準じて、公正かつ適正に実施するものとする。

3  国は、上記1(3)及び(4)に記載された客観的な評価基準、定性的な客観性の確保等に関しては、PFI事業に係る評価手法と評価手続の特性を考慮して、漸次、その手法及び手続と規範の在り方を実務的に定め、透明性の向上を図るよう努めなければならない。

 民間事業者の責任の明確化等事業の適正かつ確実な実施の確保に関する基本的な事項
 国等は、選定事業の適正かつ確実な実施の確保を図るため、国等及び民間事業者の責任の明確化等について次の点に留意して措置するものとする。

1  公共施設等の管理者等は、実施方針において、選定事業における公共施設等の管理者等の関与、リスク及びその分担をできる限り具体的に明らかにすること。

2  事業計画又は協定等(以下「協定等」という。)において、以下の諸点に留意して規定し、協定等は公開すること(ただし、公開することにより、民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある事項については、あらかじめ協定等で合意の上、これを除く。)。
(1)  協定等は、選定事業に係る責任とリスクの分担その他協定等の当事者の権利義務を取り決めるものであり、できる限りあいまいさを避け、具体的かつ明確に取り決めること。
(2)  公共施設等の管理者等は、協定等において、選定事業者により提供されるサービスの内容と質、サービス水準の測定と評価方法、料金及び算定方法等、協定等の当事者双方の負う債務の詳細並びにその履行方法に加えて、当事者が協定等の規定に違反した場合に、選定事業の修復に必要な適切かつ合理的な措置、債務不履行の治癒及び当事者の救済措置等を規定すること。
(3)  公共施設等の管理者等は、民間事業者に対する関与を必要最小限のものにすることに配慮しつつ、適正な公共サービスの提供を担保するため、以下の事項等を考慮し、協定等でこれらについて合意しておくこと。
(イ)  公共施設等の管理者等が、選定事業者により提供される公共サービスの水準を監視することができること。
(ロ)  公共施設等の管理者等が、選定事業者から、定期的に協定等の義務履行に係る事業の実施状況報告の提出を求めることができること。
(ハ)  公共施設等の管理者等が、選定事業者から、公認会計士等による監査を経た財務の状況についての報告書(選定事業の実施に影響する可能性のある範囲内に限る。)の提出を定期的に求めることができること。
(ニ)  選定事業の実施に重大な悪影響を与えるおそれがある事態が発生したときには、公共施設等の管理者等は選定事業者に対し報告を求めることができるとともに、第三者である専門家による調査の実施とその調査報告書の提出を求めることができること。
(ホ)  公共サービスの適正かつ確実な提供を確保するために、必要かつ合理的な措置と、公共施設等の管理者等の救済のための手段を規定すること。
(ヘ)  公共施設等の管理者等による選定事業に対する、上記(イ)から(ホ)までに基づく協定等の規定の範囲を超えた関与は、安全性の確保、環境の保全に対する検査・モニタリング等、選定事業の適正かつ確実な実施の確保に必要とされる合理的な範囲に限定すること。
(4)  選定事業のリスク分担について、想定されるリスクをできる限り明確化した上で、リスクを最もよく管理することができる者が当該リスクを分担するとの考え方に基づいて取り決めること。また、経済的に合理的な手段で軽減又は除去できるリスクについては、適切な措置を講ずるものとし、協定等において、その範囲及び内容を、できる限り具体的かつ明確に規定すること。
(5)  選定事業の終了時期を明確にするとともに、事業終了時における土地等の明渡し等、当該事業に係る資産の取扱いについては、経済的合理性を勘案の上、できる限り具体的かつ明確に規定すること。
(6)  事業継続が困難となる事由を、できる限り具体的に列挙し、当該事由が発生した場合又は発生するおそれが強いと認められる場合における協定等の当事者のとるべき措置を、その責めに帰すべき事由の有無に応じて、具体的かつ明確に規定すること。事業修復の可能性があり、事業を継続することが合理的である場合における事業修復に必要な措置を、その責めに帰すべき事由の有無に応じて、具体的かつ明確に規定すること。事業破綻時における公共サービスの提供の確保については、上記(5)に規定する当該事業に係る資産の取扱いを含め、当該事業の態様に応じて、的確な措置を講ずることを規定すること。
(7)  協定等の解除条件となる事由に関し、その要件及び当該事由が発生したときに協定等の当事者のとるべき措置について、上記(5)及び(6)に留意の上、具体的かつ明確に規定すること。
(8)  上記(4)から(7)までに規定する協定等の当事者の対応が、選定事業における資金調達の金額、期間、コストその他の条件に大きな影響を与えることに留意し、適切かつ明確な内容とすることに留意すること。また、当該選定事業が破綻した場合、公共施設等の管理者等と融資金融機関等との間で、事業及び資産の処理に関し直接交渉することが適切であると判断されるときは、融資金融機関等の債権保全等その権利の保護に配慮しつつ、あらかじめ、当該選定事業の態様に応じて適切な取決めを行うこと。
(9)  選定事業者の責任により組成される金融の仕組みによって、選定事業者の破綻に伴い、金融機関等第三者が選定事業の継承を要求し得る場合には、公共性、公平性の観点に基づき、継続的な公共サービスの提供を確保するために合理的である限りにおいて、あらかじめ、協定等において適切な取決めを行うこと。
(10)  協定等若しくはその規定の解釈について疑義が生じた場合又は協定等に規定のない事項に関し係争が生じた場合に、これらを解消するための手続その他の措置については、当該選定事業の態様に応じ、あらかじめ、具体的かつ明確に規定すること。

3  選定事業者が、国又は地方公共団体の出資又は拠出に係る法人(当該法人の出資又は拠出に係る法人を含む。)である場合、公共施設等の管理者等は、具体的かつ明確な責任分担の内容を、選定事業者その他の利害関係者に対し明らかにし、透明性を保持するよう特段の配慮をすること。

4  選定事業者が、当該選定事業以外の他の事業等に従事する場合に、かかる他の事業等に伴うリスクにより当該選定事業に係る公共サービスの提供に影響を及ぼすおそれがあるときは、この影響を避けるため又は最小限にするため、協定等に必要な規定を設ける等、適切な措置を講ずること。また、選定事業者が、選定事業を実施するために新たに設立された法人である場合に、選定事業の実施に係る懸念を解消するため適当なときは、公共施設等の管理者等と選定事業者の出資者との間で、選定事業の適正かつ確実な実施を担保するために必要な措置を、経済合理性を勘案の上、別途合意しておくこと。

 法制上及び税制上の措置並びに財政上及び金融上の支援に関する基本的な事項

1  政府は、特定事業の実施に係る法制上及び税制上の措置並びに財政上及び金融上の支援に関して、PFI事業の円滑な推進を図るため、次の基本的な考え方に立ち、適切な措置を講じていくものとする。
(1)  財政上の支援については、本来公共施設等の管理者等が受けることのできる支援の範囲内で、民間の選定事業者が受けられるように配慮すること。
(2)  税制上の措置については、現行の制度に基づくものを基本としつつ、PFI事業の推進のために必要な措置を検討すること。
(3)  政府系金融機関等による金融上の支援における選定事業の位置付けを整備し、選定事業者に対する政府系金融機関等の融資が、円滑に実施されるように配慮すること。
(4)  法第17条の規定の趣旨に十分配慮して、業法及び公物管理法等について、PFI事業推進のために必要な規制の撤廃又は緩和を速やかに推進すること。なお、選定事業者の法的地位の明確化が必要であるとの観点に立ち、同事業の円滑な推進に支障が生じないよう、法令の解釈、適用等を含め、法制上の位置付けを整備すること。また、民間事業者の選定に関する手続については、法附則第3条の規定を踏まえ、整備を図ること。
(5)  国有財産を無償又は時価より低い対価で選定事業の用に供することについては、法第12条第1項の規定の趣旨を踏まえ、早急にその具体的な取扱いを定めること。
(6)  直接金融、間接金融を問わず、民間資金を多様な手段によって効率的、効果的に活用できることが、PFI事業の円滑な実施に資することにかんがみ、選定事業に係る協定等の締結に当たり、選定事業者による多様な手段を通じた民間資金の円滑な調達が可能となるように配慮し、このために必要な環境の整備を図ること。
(7)  選定事業における金融の仕組みがプロジェクト・ファイナンスである等、当該選定事業より生ずる収入と、当該選定事業に係る有形資産又は無形資産の担保化に専ら依拠する場合において、協定等の当事者がかかる手法の態様を考慮し合理的かつ適切な協定等を取り決めることができるように、担保に関する制度等に関し、必要な環境の整備を図ること。
(8)  PFI事業のために取得される不動産に担保が設定されている場合、法第20条第1項に基づき、当該不動産の担保権者、担保提供者又は所有権者に生ずる損失は、繰延資産として整理した上で、10年以内の償却が認められることに留意し、担保不動産の活用について周知を図ること。

2  国等は、民間事業者の特定事業への参入のための検討が容易となるよう、実施方針の中で、次の点について具体的な内容をできる限り明らかにするものとする。
(1)  選定事業の実施に当たって必要な許認可等及び選定事業者が行い得る公共施設等の維持管理又は運営の範囲
(2)  適用可能な選定事業者への補助金、制度融資等
(3)  適用可能な税制上の優遇措置
(4)  選定事業の用に供する国有財産を無償又は時価より低い対価で選定事業者に使用させることに関する事項

 民間資金等活用事業推進委員会に関する基本的な事項
 民間資金等活用事業推進委員会(以下「推進委員会」という。)は、法第21条の規定に基づき、政府と協力して、PFI事業の実施を促進するために、以下の役割等を担う。

1  民間資金等の活用による国の公共施設等の整備等(以下五において「国の公共施設等の整備等」という。)については、推進委員会がその実施状況や民間事業者等からの意見について所要の調査審議を行い、PFI事業の実施の促進のために必要があると認める場合、内閣総理大臣又は関係行政機関の長に意見を述べ、国の公共施設等の整備等の促進及び総合調整を図る。

2  推進委員会は、政府とともに、内外のPFIに関する情報、選定事業の実施状況、PFI事業に関連する法制度、税制等に関する情報等、PFI事業の円滑な推進に寄与する情報を収集し、国民のPFI事業に対する理解やPFI事業に関わる関係者の便宜のためにこれらの情報を広く一般に供する。

3  推進委員会は、上記1のとおり内閣総理大臣等に対し意見を述べるほか、国がPFI事業を実施するに当たり、その円滑な推進のために要請したときには、国の公共施設等の整備等の総合調整を図る観点から当該機関に対し適切な助言を行う。

4  国の公共施設等の整備等に関する民間事業者等からの意見、提言又は苦情については、推進委員会が受け付け、PFI事業の実施の促進のために必要があると認める場合、国の公共施設等の整備等の促進及び総合調整を図るため、内閣総理大臣又は関係行政機関の長に意見を述べる。

5  推進委員会は、推進委員会の活動について国民の理解を深めるよう広報に努めるとともに、広く国民のPFI事業についての理解を深め、PFI事業の円滑な実施を図るため、政府の行う広報に協力する。

6  推進委員会は、上記各項目に係る調査審議に資するため、収集されたPFI事業に関する情報について分析し、PFI事業の実施促進に必要な調査を行うことその他以上の活動に伴い必要なPFI事業の実施を促進する上で必要な業務を遂行する。

 地方公共団体における特定事業の実施に関する基本的な事項
 地方公共団体においては、前項までの事項を参考として、次の事項に留意の上、特定事業の円滑な実施に努めるものとする。

1 支援
(1)  必要があると認めるときは、選定事業の用に供する間、公有財産を無償又は時価より低い対価で選定事業者に使用させることができること。
(2)  選定事業の実施を支援するために必要な資金の確保又はそのあっせんに努めること。
(3)  実施方針に照らして、選定事業者に対し、必要な財政上及び金融上の支援を行うこと。
 なお、選定事業者に対する支援は、整備される施設の特性、事業の実施場所等に応じた柔軟かつ弾力的なものであること。

2 規制緩和
 民間事業者の技術の活用及び創意工夫の十分な発揮を妨げるような地方公共団体独自の規制については、その撤廃又は緩和を速やかに推進すること。

3 PFI事業の推進
(1)  特定事業の選定、民間事業者の評価、選定に当たっては、公平性、透明性の確保を図ること。
(2)  特定事業の実施に際し必要となる諸手続については、円滑に事務処理を行い、その促進を図ること。
(3)  民間事業者の発案に係る受付、評価、通知、公表等を行う体制を整える等、適切な対応を図ること。
(4)  PFI事業に関する情報の収集を行うとともに、特定事業の実施に関して、住民に対する知識の普及、情報の提供等を行い、住民の理解、同意及び協力を得るための啓発活動を推進すること。
(5)  民間事業者に対する技術的な援助について必要な配慮を加えるとともに、特許等の技術の利用の調整その他民間事業者の有する技術の活用について、特段の配慮を行うこと。
(6)  協定等に基づき債務負担行為を行う場合は、長期的な財政負担の在り方に十分配慮しながら、財政の健全性と柔軟性を保持し、中長期的な観点からの財政負担の縮減を図ること。
(7)  民間事業者の選定に当たっては、競争性を担保しつつ、総合評価方式、性能発注方式の活用など、PFI事業の態様に適した方法を採用するよう努めること。

 その他特定事業の実施に関する基本的な事項

1  政府は、推進委員会の協力の下、内外のPFIに関する情報、選定事業の実施状況、PFI事業に関連する法制度、税制等に関する情報等、PFI事業の円滑な推進に寄与する情報を収集し、国民のPFI事業に対する理解やPFI事業に関わる関係者の便宜のため、これを広く一般に供する。

2  政府は、広く国民のPFI事業の理解を深め、PFI事業の円滑な実施を図るため広報を行う。

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-- 登録:平成21年以前 --