複合化公立学校施設PFI事業のための手引書 参考1 用語解説(五十音順)


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エクイティIRR (Equity Internal Rate of Return
 資本金と元利金返済後の当期損益の現在価値の合計とが等しくなるような割引率。資本金に対する投資利回りをみるもので、出資者が当該事業に出資を行う際の判断基準の一つとなる。

オフバランス
 事業運営に活用している資産・負債でありながらも、貸借対照表に計上されないこと。これにより自己資本比率の向上や資金調達総額の圧縮を図ることができる。

キャッシュフロー
 事業活動による資金の流出入。具体的には、事業収入及びそれらの配分である運営経費の支払、借入金の返済、株主への配当、税金などの支出を行う一連の資金の出入を指す。
 通常の企業の事業活動での資金繰りの考え方と同様であるが、PFI事業においては、プロジェクト・ファイナンスが導入される場合が多く、金融機関に対する主な返済原資となるキャッシュフローの管理がきわめて重要な課題となる。

行政財産
 公有財産と公共用財産の2種類に分けられ、前者は地方公共団体自身がその事務又は事務を執行するため直接使用することを目的とした財産であり、庁舎、議場棟、消防施設等がこれに該当する。一方、後者は住民の一般的共同使用に供することを本来の所有の目的とする財産であり、学校、図書館、公民館、市営住宅、公園等がこれに該当する。

現在価値 (PV:Present Value
 複数年にわたる事業の経済的価値を測るために、各年のキャッシュフローに時間の概念を取り入れた考え方。現在を比較の基準とし、将来受け取るキャッシュが現時点ではどのくらいの価値があるのかを示したもの。
 例えば、今日手に入る100万円は3年後に手に入る100万円よりも価値が高いと考えられる。なぜなら、今日手に入った100万円は、例えば3%複利の金融商品(預金、債券等)で運用すれば、3年後には約109万円になるからである(次表参照)。


(単位:万円)
  今日 1年後 2年後 3年後
今日手に入る100万円 100.00 103.00 106.09 109.27
3年後手に入る100万円 0.00 0.00 0.00 100.00

 現在価値(PV)は次の計算式で表される。
  現在価値PVは t年度のキャッシュフロー割る 1たす割引率のt乗
  VFMの計算等においては、PFIの事業期間が複数年にわたることを考慮し、現在価値を求めて検討することが必要である。

公募型プロポーザル方式
 公募により、事業契約を希望する者から事業の内容、価格等について提案書の提出を求め、予め示された評価基準に従って優先順位を決めた後、予定価格の範囲内で、最優先順位のものと契約を締結するものである。契約方式としては随意契約に分類されることから、関連する法令の随意契約の要件を満たしていることが必要となる。

コーポレートファイナンス
企業の信用力(親会社の保証や資産等)を担保に資金を調達すること。ある事業に対して行った借り入れの返済を、その事業の収入だけで行うプロジェクトファイナンスに対し、企業が実施する全ての事業の収入で返済を行う。

債務負担行為
 歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の総額の範囲内におけるものを除くほか、地方公共団体が債務を負担する行為につき、その行為の内容として定めておくもの(地方自治法第214条)で、複数年にわたる債務の履行に関して設定されることが多い。PFI事業においては、PFI事業者にとってキャッシュフローの源泉となる公共からの支払を長期継続的に予算措置する行為。PFI法では国の債務負担行為は30年以内と定められているが、地方自治体については明確な定めがない。

サービス対価
 PFI事業者の提供するサービス(建設、維持管理、運営)に対し、公共団体が毎年、契約で定められた方式に従って支払う料金のこと。事業の安定性や継続性、サービス水準の維持向上のため、モニタリングと連動した減額等のペナルティや単価増額等のインセンティブをサービス対価の支払方法として組み込む場合も多く見られる。

ステップインライト (Step-in Right
 介入権。債務不履行の発生など非常の場合に、公共や金融機関が事業に介入できる権利。
公共は住民に対し、サービスを提供する責任があるため、民間事業者から提供されるサービスの水準が低下した場合や、債務不履行により住民の健康や安全に悪影響が及ぶような場合は、公共はそれを改善すべく事業に介入し、必要な措置(代替事業者の選定、公共直営化等)を講ずる必要がある。
 一方、金融機関による介入権は、元利金の返済は民間事業者がPFI事業から生み出すキャッシュに限定されていることから、可能な限り事業の継続を図るように措置するもので、金融機関が指定する第三者に事業を引き継がせ、安定的な事業継続を図るようなスキームにすることなどがよく見られる。

性能発注
 発注者が施工方法、資材などを詳細に規定した設計書及び仕様書等を事業者に示す方法(仕様発注)ではなく、事業者の創意工夫を十分に生かすために、基本的な施設の性能や最終的なサービスの内容・水準を示すことにとどめる発注方法である。性能発注では民間事業者が、提示された性能要件やサービス水準を満たす範囲内で、使用する資材、投入人員数等を自由に提案できるため、事業者の得意分野の技術を活用したり、コスト削減のための新たな技術の開発等が期待される。

総合評価一般競争入札
 予定価格の制限の範囲内の価格で申し込みをした者のうち、価格その他の条件が公共にとって最も有利な申し込みをした者を落札者とする入札方式。PFI方式においては、価格のみならず、維持管理又は運営の水準、PFI事業者とのリスク分担のあり方、技術的能力、企画に関する能力等を総合的に勘案する必要があることに鑑み、総合評価一般競争入札を採用することが原則とされている。

ダイレクトアグリーメント (Direct Agreement
 直接協定。公共とPFI事業者に資金を供給している金融機関との間で直接結ばれる協定。事業遂行に支障が生じた場合に、資金を供給している金融機関がプロジェクトの修復を目的に事業に介入するための必要事項を規定する。また、公共にとっても金融機関の資金供給停止や担保権実行に際し、事前に調整を行えるよう取り決めておくことで、公共サービスの突然の停止を防ぐことができる。

特定事業
 PFI事業として実施する方針であることを公共施設の管理者等が決定した事業のこと。
実施方針公表後、PFI事業として実施することにより、公共施設等の建設、維持管理及び運営が効率的かつ効果的に実施されると検証された場合に、当該事業を特定事業として選定することができる。
 特定事業として選定する際の評価は、支払に対して最も価値の高いサービスを供給するというVFM(Value for Money)の考え方に基づき行われることとなる。

普通財産
 行政財産以外の一切の公有財産を指し、直接行政目的に使用されるものではなく、普通地方公共団体が一般私人と同じ立場で保有し、その管理処分から生じた収益をもって普通地方公共団体の財源にあてることを主たる目的とする財産。

プロジェクトIRR (Internal Rate of Return
 内部収益率。プロジェクトの投資利回りをみたもので、設備投資額と償却前利払前当期損益の現在価値の合計とが等しくなる率(簡単に言えば事業期間中の費用と収入が等しくなる率)を算出したもの。投資採算を測る上での指標の一つであり、プロジェクトIRRが設定した割引率(一般には金利などの資本コスト)よりも高ければ、民間事業者にとって、事業への参加インセンティブを持ち得る事業であると評価できる。

プロジェクトファイナンス
 あるプロジェクトとの資金調達において、返済原資をその事業から生み出されるキャッシュフローのみに依存して資金を調達すること。また、コーポレートファイナンスが企業の信用力(親会社の保証や担保提供等)を担保に資金を調達しているのに対し、担保は当該事業に関連する資産(契約上の権利を含む)に限定している。

ライフサイクルコスト (Life Cycle Cost
 プロジェクトの初めから終了まで、つまり、計画、施設の設計、建設に始まり維持管理、運営、事業終了までの全期間に渡り必要なコストのこと。略してLCC。
 施設の設計から維持管理、運営までを一括して民間事業者に発注することによりライフサイクルコストの低減が可能になることは、PFIを実施する利点の一つである。

リスク
ある事柄に関し不確実にしか予見できない場合において、その事柄が原因となり、追加費用が発生する、損失を被る、期待した収益をあげられないといった好ましからぬ事態が生じる可能性のこと。PFI事業においては、これらの事業遂行に関するリスクを公共と民間の双方で適切に分担するという考え方に基づき遂行される。VFMの評価においては可能な限り定量化し、コストとして評価することが求められる。

割引率
 t年後の将来において、受け取ったり、支払ったりするものの金銭価値は物価や金利の変動の影響を受け、現在の金銭価値より一般に低いとされ、割引率はその比率を示したもの。

BOO (Build-Operate-Own
 PFI事業者が自ら資金調達を行って施設を建設(Build)し、契約期間にわたり維持管理・運営(Operate)を行った後、その施設の所有権の移転は行わず、民間事業者が保有(Own)し続けるか、または事業終了後に撤去する方式。

BOT (Build-Operate-Transfer
 PFI事業者が自ら資金調達を行い、施設を建設(Build)し、契約期間にわたり、維持管理・運営(Operate)を行い、事業期間終了後、公共にその施設を移転(Transfer)する方式。

BTO (Build- Transfer - Operate
 PFI事業者が自ら資金調達を行い、施設を建設(Build)した後、その施設の所有権を公共に移転(Transfer)した上で、契約期間にわたりPFI事業者がその施設の維持管理・運営(Operate)を行う方式。

DSCR (Debt Service Coverage Ratio
 各年度毎の元利金返済前キャッシュフローが、当該年度の元利金支払所要額の何倍かを示す比率。この数値が1を下回ることは、事業から生み出される毎期のキャッシュフローが借入金を返済するのに十分な水準ではないことを意味する。

  DSCRは当該年元利金返済前キャッシュフロー割る当該年元利金支払い所要額

PSC (Public Sector Comparator
 公共が従来から行っている手法で事業を実施した場合における事業期間全体を通じた公共の財政負担。VFM評価においてはPFI方式で行った場合の公共の財政負担と比較し、PFI方式で実施するか否かを判断する。

SPC (Special Purpose Company
 特別目的会社。ある特定の事業を実施する目的で設立された事業会社。PFI事業では、プロジェクトファイナンスにより資金調達を行うケースが多く、この場合、特定のプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを親会社の信用と切り離すことがポイントとなり、その独立性を保つために、PFI事業のみを目的とする特別目的会社が事象者によって設立されることが多い。

LLCR (Loan Life Coverage Ratio
 借入期間にわたる元利金返済前キャッシュフローの現在価値が借入元本の何倍に相当するかを示す指標。事業会社の返済能力を分析する指標として、DSCRとともに用いられる。

  LLCRは元利金返済前キャッシュフローの現在価値割る借入元本

VE (Value Engineering
 提示された設計図書に対して、施設、設備の価値向上を目的に機能面、コスト面の観点から行われる技術提案。例えば施設の機能、性能を維持したまま、コストを低減する施工方法の提案などが行われている。
PFI事業においては、設計から民間事業者側において行うことが多いため、既に設計まで公共で行っている事業において採用されている。

VFM (Value for Money
 PFIにおける最も重要な概念の一つで、税金(Money)の使用価値(Value)を最も高めようとする考え方。PFI手法で実施した方が、従来型手法で実施した場合よりも「公共の支払に対して価値の高いサービスを供給」する場合、PFI事業の方に「VFMがある」といい、これが国のPFI基本方針における特定事業の選定基準となっている。この場合の支払は、公共(国、地方自治体)が事業期間(ライフサイクル)にわたって支出する財政支出額(公共が負担するリスクの調整分を含む)を適正な割引率で現在価値に換算したものが用いられる。

WACC (Weighted Average Cost of Capital
 加重平均資本コスト。源泉別資本コスト(負債に対する利払い、株式に対する収益率)を資本構成で加重平均したもので、企業全体の資本コストの定義とされている。


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