複合化公立学校施設PFI事業のための手引書 第3章 複合化公立学校施設PFI事業の進め方2


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2. ケーススタディ
 -社会教育施設(図書館)、老人福祉施設(老人デイサービスセンター)との複合化の事例-

 ここでは、複合化施設における、併設施設として社会教育施設(図書館)及び老人福祉施設(老人デイサービスセンター)について、PFIを導入する際の手続や留意事項について整理します。

(1) 先行事例の概要

1) 社会教育施設(図書館)の事例

【調布市立調和小学校整備並びに維持管理及び運営事業】
進捗状況 平成14年8月供用開始
施設の内容 小学校、市立図書館分館
施設の規模
小学校
延床面積 約11,000平方メートル(校舎・体育館棟)
児童数等 12クラス 398人(平成15年5月1日現在)
市立図書館調布分館
延床面積 約385平方メートル(上記の内数)
蔵書数 30,000冊
事業の範囲 施設の建設(VE提案)、維持管理、運営(温水プール一般開放部分、市立図書館は公共の直営)
運営業務の特徴等
温水プールの施設運営業務はPFI事業者が実施。
具体的な業務は一般開放対応業務(スケジュール管理・料金徴収代行、利用者サービス、プログラムの企画・実施等)、プール監視業務、衛生管理業務
学校施設の維持管理業務等と同様に、当該業務についてもサービス購入型であり、市からのサービス対価は物価変動による改定を除き一定で、需要リスクは民間事業者が負わない形となっている。一方で、利用者数が一定を超えた場合、増額とする仕組みとし、民間事業者のサービス向上のインセンティブを講じている。
出典: 入札説明書、業務要求水準書、「調布市立調和小学校整備並びに維持管理及び運営事業(PFI)の概要」(調布市平成14年11月8日版)、調布市立調和小学校ホームページ

2) 老人福祉施設(老人デイサービスセンター)の事例
【市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業、市川市ケアハウス整備等PFI事業】
進捗状況 建設段階
施設の内容 中学校、保育所、公会堂、新型ケアハウス、デイサービスセンター
施設の規模
中学校校舎A棟(普通教室8、特殊学級2、資料室2、家庭科室3、美術室1、ランチルーム、学習情報センターなど)
デイサービスセンター
利用人員25名
ケアハウス
居室50
延床面積 約14,941平方メートル(新築部分全施設計)
(既存施設含む総延床面積 約23,706平方メートル
事業の範囲 施設の設計・建設、維持管理・運営(施設を公共から賃貸借)
運営業務の特徴等
ケアハウス等の運営業務はPFI事業者が実施。保育所はPFI事業者が選定した社会福祉法人と市が賃貸借契約を締結。
ケアハウス等事業は、市とPFI事業者が普通財産賃貸借契約を締結し、事業者は市に賃料を支払い、維持管理費用等を負担する独立採算型事業。
 中学校との複合化施設であるが、同市はそれぞれのPFI事業者と契約を締結している(コンソーシアムとしては一体として提案することが条件となっている)。
出典: 募集要項、要求水準書、「市川市立第七中学校校舎建設等事業-『市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業』及び『市川市ケアハウス整備等PFI事業』の契約調印を終えて」(市川市企画部企画政策課PFI推進担当室 平成15年10月27日第3版)

【京都御池中学校・複合施設整備事業】
進捗状況 事業者選定段階
施設の内容 中学校、乳幼児保育所、老人デイサービスセンター、在宅介護支援センター、オフィススペース(将来、教室に転用可能)、拠点備蓄倉庫、賑わい施設及びこれに付帯する関連施設
施設の規模
中学校延床面積 約10,000平方メートル
老人デイサービスセンター、在宅介護支援センター
延床面積 約600平方メートル   定員 約35名
延床面積約20,000平方メートル(施設全体合計)
事業の範囲 施設の設計・建設、維持管理、運営(賑わい施設・付帯施設のみ)
運営業務の特徴等
賑わい施設は民間事業者が施設内容等を提案して、運営を実施。保育所や老人デイサービスセンターの運営業務は市が各々社会福祉法人を選定して委託する予定であり、PFI事業の対象外。
賑わい施設(収益施設等)運営事業は行政財産の使用許可により実施。市の規則に基づいた使用料を支払い、維持管理費用等は民間事業者が負担する独立採算型事業。
出典: 入札説明書、要求水準書

(2) 複合化公立学校施設PFI事業における留意事項
 複合化公立学校施設にPFIを導入する場合の留意事項を、検討の中心になると考えられる検討の時期(手続)に応じて示しています。検討の時期はあくまでも目安ですが、可能な限り早めに検討を行い、事業の内容や条件を公表することが望ましいと考えられます。
検討の時期 留意事項
基本構想・基本計画の策定
施設整備の基本的な考え方の整理
図書館を活用した調べ学習や高齢者との異世代交流の推進など、複合化施設を整備する目的や期待する教育上の効果などを明確化することが必要です。
PFI導入の検討
併設施設の運営について
併設施設の運営については、地域におけるサービス需要の把握や民間事業者が提供可能なサービス内容等を勘案して、民間事業者に委託することによりサービス水準の向上や効率的なサービスの提供が可能となるかどうかとの観点から検討します。
図書館や老人福祉施設では、従来より地域住民やボランティアがサービスの一部を担ってきている例もあり、そのような場合には、これらの関係者との役割や責任の分担について、明らかにしていくことが望ましいと考えられます。
また、図書館における共通検索システムのように他の施設と共通のシステムの構築や管理が必要となる場合、そのような業務をPFI事業の対象とするかどうかについては慎重に検討することが必要と考えられます。
PFIの契約期間内に更新時期を迎える耐用年数が短い施設や設備(福祉機器等)については、更新をどのように行うかによりリスク分担が異なるため、予め具体的な対応(更新業務の主体、時期等)を検討しておいた方が望ましいと考えられます。
実施方針の策定及び公表
民間事業者の検討期間の確保
複合化施設の場合、民間事業者においてコンソーシアムの組成や提案の検討などに、時間を要することから、実施方針に加え、要求水準書(案)や契約書(案)などの資料を早めに公表していくことが望ましいと考えられます。
特定事業の評価・選定、公表
併設施設に係る補助制度の確認
公立学校施設の建築に要する経費についてはPFIを導入する場合であっても従来型手法と同様に国庫補助の対象とされていますが、併設施設に係る補助金交付の取り扱いについて、関係行政機関に確認することとなります。
民間事業者の募集
詳細な支払方法の検討
併設施設の利用者数に応じて公共が支払うサービス対価を増減させるなど、民間事業者が創意工夫を発揮してサービス水準の向上に努めることができるよう、インセンティブとなる工夫を行うことも有効と考えられます。
コンソーシアムの組成について
コンソーシアムの構成団体は事業の内容により異なるため、その構成員の条件や出資の有無、他のコンソーシアムの構成員となることが可能かなど詳細な条件の設定が必要となります。図書館の運営など専門的なノウハウを要する業務をPFI事業者に委託する場合や社会福祉施設のうち特別養護老人ホームなど施設の設置主体が法定されている場合にはこの点も考慮してコンソーシアムの条件を検討することが必要と考えられます。
施設計画における配慮
複合化することによる施設面での必要な配慮については、入札公告に際し公表する要求水準書にその条件を明示する必要があります。
各施設の円滑な利用の妨げにならないよう、例えば、各利用者の動線、騒音の防止、共有スペースの利用方法について配慮することが必要となります。特に老人デイサービスセンターなど施設の利用に当たり、車が使用される場合は、児童、生徒の安全確保について十分留意することが必要であると考えられます。
各施設の連携を図る観点からは、各利用者の安全な移動経路について配慮する必要があり、特に高齢者が利用者として見込まれる場合には、適切なバリアフリー対策にも配慮する必要があると考えられます。
学校施設を地域に開放することを予定する場合には、地域住民の利用の便宜を考慮して開放部分の配置を検討する必要があると考えられます。
民間事業者の評価・選定、公表

事業契約の締結
学校関係者・地域住民に対する情報提供

学校関係者に対して、PFI事業者やその事業内容について情報提供を行い、理解を得られるよう努めることが必要であると考えられます。

事業の実施・監視等


モニタリングにおける配慮

複合化施設の場合、整備することとなる施設の規模が大きくなるため、計画どおりに建設が進んでいるかどうか確認することが必要であると考えられます。

各施設におけるサービス水準の状況について把握するとともに、学校施設を併設施設のそれぞれが円滑に利用されているかどうか確認することが必要です。
 

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