複合化公立学校施設PFI事業のための手引書 第3章 複合化公立学校施設PFI事業の進め方1(4)5)


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5) 民間事業者の募集

1 入札説明書の作成・公表
 入札説明書、落札者決定基準等は、実施方針の公表後、質問回答、意見の受付、特定事業の選定・公表を経て、PFI事業の最終条件提示となります。入札公告(募集要項公表)の際に公表される資料は次のものから構成されます。
  入札説明書(募集要項)
  要求水準書
  落札者決定基準(審査基準)
  契約書(案)
 PFIを導入する場合には、民間事業者の創意工夫を最大限発揮できるよう、民間事業者による提案の範囲は広く設定することが重要となります。しかし、一方で提案の範囲が明確でない場合、提案可能な範囲の認識が応募事業者間で異なるなど問題が生じることが想定されます。したがって、提案が可能な範囲として、施設の種類や事業内容・範囲等を募集要項等において明らかにするとともに、質問回答を通じて事業者と意思疎通を図ることにより、公共と民間の理解に齟齬がないようにする必要があります。
 
ア) 入札説明書(募集要項)の内容
 入札説明書(募集要項)は、事業の目的や趣旨、事業者の選定方法・スケジュール、応募要件、提案の審査方法、提示条件等の内容について、事業の特性に応じて記載すべき事項を検討する必要があります。
 サービス対価の支払方法の骨格については、事業形態(サービス購入型、独立採算型、ジョイントベンチャー型)の検討を通じて、導入可能性調査段階で整理を行いますが、詳細の条件については、入札公告までに検討を行います。
 また、質の高いサービス水準を維持するためには、例えば施設利用者が一定数を超えた場合、利用者当たりのサービス対価の単価を上乗せするなど、民間事業者に事業実施のインセンティブとなる支払方法の設定も考えられます。

イ) 要求水準書
 要求水準書の作成段階に当たっては、仕様発注10ではなく、できる限り性能発注を採り入れることとし、民間事業者が創意工夫を発揮できるよう留意することが重要です。一方で、発注する性能の具体的要件については、できる限り明確化することが重要です。

ウ) 落札者決定基準(審査基準)
 落札者決定基準は、民間事業者の提案を評価するための客観的な基準として作成するものです。具体的には事業への参加資格や要求するサービス水準、事業費、事業の安定性などの評価項目や各項目の配点を示します。
 総合評価一般競争入札方式の場合は、落札者決定基準の作成に当たっては、学識経験者等の意見を聴取することが求められています11。また、公募型プロポーザル方式の場合にもこれに準ずることが望ましいと考えられます。

エ) 契約書(案)
 契約書の内容は、PFI事業における事業期間を通じた公共と民間事業者の債権債務関係を明確にしたものであり、民間事業者が提案を行うかを判断するための基礎的な資料となるものです。

2 入札公告に関する質問の受付・回答
 実施方針の公表時と同様に、民間事業者の検討時間を確保したうえで、質問を受け付け、回答を公表します。
 この質問に対する回答は公募条件の明確化となるため、民間事業者との認識に齟齬が生じないよう、明確な回答が求められます。また、民間事業者の提案検討に要する期間を勘案して、回答から提案書の受け付けまでに十分な時間を確保することが必要となります。

10   発注者が施工方法、資材などを詳細に規定した設計書及び仕様書等を事業者に示す発注方法
11   地方自治法施行令第167条の10の2

複合化公立学校施設PFI事業の留意事項
施設計画における配慮について
 複合化施設の場合、児童生徒の安全確保、利用者の利便性向上、併設施設による学校教育への支障の回避などのために、出入口や動線の分離、施設の配置など施設計画における配慮が重要です。したがって、要求水準書において、設計に対する基本的な考え方を明確にするとともに、具体的な条件を提示することが必要となります。

コンソーシアムの組成について
 併設施設の運営の取り扱いにより、PFI事業の主なパターンは次のものが考えられます。
  公共が運営する
  PFI事業者が運営する
  公共が選定したPFI事業者以外の者が運営する(PFI事業範囲外)
   コンソーシアムの組成は事業の内容によって異なるため、構成員となる団体の出資の有無や他のコンソーシアムの構成員となることが可能かなどについて詳細な設定が必要となります。

管理区分・責任体制の明確化
 複合化施設の場合、施設全体の管理区分や責任体制が複雑化します。責任体制を明確化するとともに、具体的な管理区分を明確に規定することも必要となります。その際はエリアでの区分、時間帯での区分、サービス内容での区分など、施設や事業の特性に合わせて設定します。

第三者による運営について
 併設施設の運営をPFI事業者が行う場合は、その運営方法に基づいて設計・建設、維持管理の計画を提案することになりますが、例えばPFI事業の対象を併設施設の建設のみとし、その管理運営を第三者に委託する場合には、リスク分担について明確にしておくことが必要であると考えられます。

共用部分の取り扱いについて
 複合化施設の場合、共用部分の管理責任の所在や水道光熱費の支払区分を明確に定めておく必要があります。特にPFI事業者以外の事業者が併設施設の運営に関わるような場合には、より重要となります。契約書(案)や募集要項、その後の質問に対する回答を通じた意思疎通を十分に行い、公共と民間事業者で齟齬がないように努めることが必要となります。
 また、共用部分については、将来の修繕の取り扱いについても、事前に明らかにしておくことが重要です。

落札者決定基準について
 複合化施設の場合、複合化の目的を踏まえた落札者決定基準の策定が必要となります。一般的には、学校施設における教育環境の整備、維持を重視した基準になると考えられます。

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-- 登録:平成21年以前 --