質の高い幼児教育の実践の根幹となる幼稚園教諭等については、人材の需要の高止まりに供給が追い付いていない現状があり、その背景にある各課題に対応するため、幼児教育における人材の確保に必要な取組みを、採用から定着・キャリアアップに至るまで総合的かつ効果的に実施し、好事例の展開を行うことが引き続き求められている。
このような状況や過年度に実施した調査研究の成果等を踏まえ、新規性の高い取組モデル又は採用・定着・再就職・キャリアアップの複数のフェーズに係る取組モデルを中心に、先進事例を創出するとともに、近年の雇用情勢や各地域の研修等のキャリアアップのための取組状況を踏まえた幼児教育における人材確保に資する調査研究を行い、その成果を普及する。
受託者は、1、2いずれかのテーマについて、調査研究を行う。
地方公共団体、養成校、幼児教育関係団体並びに各幼稚園及び認定こども園等を対象に下記の(1)又は(2)の調査研究を行う。
幼稚園教諭等の養成校等に通う学生及び再就職者の動向等の分析に関する調査研究の企画提案者は、近年の雇用情勢や地域の特性等を踏まえ、養成校等に通う学生の就職活動等の動向等や、再就職者の動向等について調査・分析を行い、結果として明らかとなった特徴をまとめて報告書を作成する。
キャリアアップのための研修等の実施体制の在り方に係る調査研究の企画提案者は、幼児教育におけるキャリアアップのための研修等に係る実証研究として、自治体及び幼児教育における研修関係団体等自ら、又はこれらを対象に、以下の研究課題に取り組み、体系的かつ効果的・効率的な研修等のための実施体制の在り方について報告書を取りまとめる。
下記A~Rの取組例を踏まえ、相互に連携して、地域における幼児教育の人材確保・キャリアアップのための総合的な取組及び地方公共団体、養成校、幼稚園関係団体及び認定こども園団並びに各幼稚園及び認定こども園などの関係主体が継続的に連携していくための体制構築の取組について、これらの取組の成果の検証も含めて調査研究を行う。
A 学生の志向を踏まえた採用活動の実施
養成校等の学生等の求職者の志向を踏まえ、各園の教育方針や労働条件、雰囲気等を効果的かつ効率的に伝え、求職者とのマッチングを図るとともに、対面によらない採用活動も含めた取組みを行い、採用における好事例を創出する。
B 多様な人材に対するアプローチ
これまで各園への就職実績が少ない層に対する情報発信を行うとともに、養成校等と連携した採用活動を実施し、多様な人材の各園での活躍を促進する。
C 就職支援アドバイザーの配置・無料職業紹介所の開設等による就職支援体制の構築
各園の労働条件や雰囲気等に加えて、求職者それぞれのニーズをきめかに把握する就職支援アドバイザーを配置し、求人・求職者のマッチングを行い、幼稚園教諭等の就職を促進する。
D 幼稚園等における幼稚園教諭等志望者の受入れ体制の構築
幼稚園等に就職する場合に課題となる園の雰囲気等のマッチングについて、幼稚園等の志望者に対してインターンシップ・教育補助・見学会等による多様な受入れを促進する取組を行い、幼稚園教諭等の就職を促進する。
E UIJターン政策との連携
自治体が実施するUIJターン政策と連携し、子ども・子育て関係業種や教育関係業種をはじめ、他業種と一体になって、域外の養成校の学生等を採用するため方策を行う。
F 幼児教育に携わる人材の魅力発信のためのPR・広報の実施
幅広い年代層に対して、幼児教育に携わる魅力を分かりやすく伝えるため、多様な媒体を活用したPR・広報活動を実施し、幼児教育に携わる人材のすそ野を広げる。
G 他県養成校と園の連携強化
UIJターンによる幼稚園等への就職を促進する観点から、当該地域出身者が多い域外の養成校(4年制大学・短大を含む)に在籍している学生(もしくは進学予定の高校生)に対して、継続的にPR・広報活動を実施する。
H 職務分掌及び園務の分析を通した業務改善
教職員の1日の業務について、定量的・定性的な業務分析を行い、業務フロー等の見直しや職員配置の見直しを含めた業務改善を行う。改善前・改善後の教職員の心理的負荷等も分析し、教職員の園への定着を促進する。
I ICT支援員等の活用による園務ICT化を通じた業務改善
ICT支援員等の活用(団体への配置・園への派遣等)や、自ら開発した園務支援アプリ、民間事業者の開発した園務支援システム等(以下、「システム」とする)の導入・活用を通じて、園務を効率化し、職員の就労環境を改善し、幼稚園教諭等の業務負担軽減・就労環境の改善を図る。
J 多様な人材の活用、時短勤務・複数担任制の導入等による、業務負担軽減体制の構築
多様な人材(預かり保育の専任者、業務支援員等)等を活用した業務分担体制の構築により、幼児教育に携わる人材の業務負担の軽減を図り、離職防止・定着促進を図る。
K 社会保険労務士等の活用による労務環境・就業規則等の改善
社会保険労務士等の活用(団体への配置・園への派遣等)により、就業時間・休暇・福利厚生等に係る就業規則の整備、キャリアパスの整備等により、これらの労働環境及び労働条件の改善を図る。
L 幼稚園教諭等自身に対する子育て支援
幼稚園教諭等自身の子どもに対する保育の提供や、先輩職員等のロールモデルの展開等により、安心して子育てと仕事を両立できる環境の整備を図る。
M 人材情報の集約及び情報発信による再就職促進
域内の各主体が連携し、域内における幼稚園教諭免許保有者等の情報を集約するとともに、効果的・効率的な情報発信を行い、再就職を促進する。
N 再就職支援研修の実施及び受講促進体制の構築
幼稚園等に再就職するにあたっての幼児教育現場における不安を軽減するため、再就職希望者のニーズに応じた再就職支援研修を実施(開催にあたっては、事前に幅広く周知を行う)し、幼稚園教諭等の再就職を促進する。
O 潜在幼稚園教諭等の掘り起こし及び円滑な就労支援
幼稚園教諭免許状を有しているが幼稚園に就労していない潜在幼稚園教諭等を効果的に掘り起こすとともに、就労支援につなげることにより、幼稚園教諭等の再就職を促進する。
P 幼稚園等に対する研修受講の機会の拡大・確保及び研修受講の促進
保育ニーズの拡大に伴う預かり保育の実施日の増加などにより、教職員の研鑽の機会の確保が難しい幼稚園等に対して、研修受講の機会を確保するための施策を講じるとともに、研修の受講促進を図る。
Q キャリアステージに応じた役割の見える化
各園における職階別・職種別の役割について整理し、各職員の職責に応じた役割の見える化を行うとともに、職員のモチベーションの向上に資するよう活用する。
R 上記のほか、幼稚園等の人材確保に向けた離職防止・定着促進、新規採用促進、再就職促進の観点から特に効果が見込まれる先導的取組(特に、幼児教育における人材確保・キャリアアップに向け、地方公共団体が設置する幼児教育センターと連携して実施するもの及び施設類型を問わずに取り組むもの)。
初等中等教育局幼児教育課