教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ(幼稚園関係箇所抜粋)

参考

(1)幼稚園

1)改善の基本方針

  •  幼稚園教育(注1)については、その課題(注2)を踏まえ、近年の子どもの育ちの変化や社会の変化に対応し、発達や学びの連続性及び幼稚園での生活と家庭などでの生活の連続性を確保し、計画的に環境を構成することを通じて、幼児の健やかな成長を促す。

    • (注1) 幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う上で重要なものであり、幼稚園教育は、計画的に環境を構成し、遊びを中心とした生活を通して体験を重ね、一人一人に応じた総合的な指導を行うものである。また、幼稚園教育については、幼稚園教育要領でその内容等が規定されており、幼稚園修了までに幼児に育つことが期待される心情、意欲、態度などを「ねらい」として示し、その「ねらい」を達成するために幼児が経験し、教師が指導する事項を「内容」として示している。この「ねらい」と「内容」は、幼児の発達の側面から「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域にまとめ、15の「ねらい」と50の「内容」で示している。
       幼稚園と保育所の関係については、これまでも幼稚園教育要領と保育所保育指針の作成に当たり教育内容の整合性を図ってきており、また、平成18年度には認定こども園制度が創設された。今後も、引き続き、幼稚園と保育所との連携を進めていく必要がある。
    • (注2) 幼稚園教育については、
      •  近年子どもの育ちが変化しており、基本的な生活習慣の欠如、食生活の乱れ、自制心や規範意識の希薄化、運動能力の低下、コミュニケーション能力の不足、小学校生活にうまく適応できないなどの課題が指摘されている。
      •  また、社会状況の変化による家庭や地域の教育力の低下の中、保護者の子育てに対する不安を解消し、親がその喜びを感じることができるよう、幼稚園の機能を生かした子どものよりよい育ちを実現する子育ての支援が求められている。また、いわゆる預かり保育を実施する幼稚園が増加しており、幼稚園の教育活動としての適切な実施が求められている。
  •  子育ての支援と預かり保育については、その活動の内容や意義を明確化する。また、預かり保育については、幼稚園における教育活動として適切な活動となるようにする。

2)改善の具体的事項

(発達や学びの連続性を踏まえた幼稚園教育の充実)

a)幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続
  •  幼稚園教育は、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的として、幼児期の特性を踏まえ、環境を通して行うものである。この幼稚園教育の基本に基づいて展開される幼稚園生活により、義務教育及びその後の教育の基礎が培われることを明確にする。
  •  小学校での学習や生活への適応の課題を含め、小学校教育との円滑な接続を図り、幼稚園における教育の成果が小学校につながっていくことが大切であることから、教師が意見交換などを通じて幼児と児童の実態や指導の在り方について相互理解を深めたり、幼児と児童が交流するなど、小学校との連携や交流を図る。
  •  集団生活の中で自発性や主体性等を育てるとともに、人間関係の深まりに沿って、幼児同士が共通の目的を生み出し、協力し、工夫して実現していくという協同する経験を重ねる。
  •  集団生活を通して、幼児が人とかかわりを深め、規範意識の芽生えを培うことが大切である。このため、幼児と教師の信頼関係を基盤に、自分の思いを主張し合い、受け入れられたり、受け入れられなかったりする体験を重ねながら、友達と共に生活するためには、きまりが必要であることに気付くようにする。
b)体験と言葉の重視など子どもや社会の変化に対応した幼稚園教育の充実
  •  教師や他の幼児と共に様々な出来事に出会ったり、活動したりして、多様な体験を重ねる中で、幼児の調和のとれた発達を援助していくようにする。その際、幼児の心が動かされる体験が次の活動を生み出すことを考慮し、ひとつひとつの体験の関連性を図るようにする。
  •  幼児が、心動かされる体験をして、その感動や思い、考えを言葉に表し、そのことが教師や友達などに伝わる喜びを味わうとともに、相手の話を聞き、その内容を理解し、言葉による伝え合いができるようにする。
  •  幼児が友達と共に遊ぶ中で、好奇心や探究心を育て、思考力の芽生えを培うことが大切であることを考慮し、幼児一人一人の興味や関心を生かしつつ、友達と共に試したり、工夫したりして、周囲の環境に対する新たな視点に気付いたり、新しい考えが生まれたりするようにする。
  •  いろいろな遊びの中で十分に体を動かし、その楽しさを感じることや友達と楽しく食事をするなどの食に関する活動を通して、幼児の心身の健やかな成長を増進する。
  •  幼稚園での生活の中で、音楽、身体による表現、造形等に親しむことを通じて、豊かな感性と自分なりの表現を培うことが大切であることから、表現する過程など、表現に関する指導を充実する。
  •  日々の活動の中で、教師や友達に自分の言動を認められたりしながら、自分のよさに気付くことで、一人一人の幼児が自信をもって行動できるようにする。

(幼稚園での生活と家庭などでの生活の連続性を踏まえた幼稚園教育の充実)

  •  幼稚園での生活の中で、幼児が自己を十分に発揮し発達に必要な体験を得ていくためには、心のよりどころとしての家族とのつながりが大切であることから、自分が家族から愛されていることを感じられるようにするとともに、その愛情を感じることによって、家族を大切にしようとする気持ちが育つようにする。
  •  教師は家庭と連携しながら、個々の幼児の発達の実情等に配慮して、基本的な生活習慣が身に付けられるようにする。
  •  保護者との信頼関係を深め、保護者と共に幼児の成長の喜びを共有し、幼児が充実した幼稚園生活を送るためには、保護者の理解と協力が大切であることから、家庭との連携に当たっては、保護者と幼児との活動の機会を設けるなどして、幼児教育に関する理解がより深まるようにする。

(子育ての支援と預かり保育の充実)

  •  平成19年6月の学校教育法の一部改正により、子育ての支援及び地域の実態や保護者の要請等により希望者に対し行う教育活動である預かり保育が位置付けられたことを踏まえ、幼稚園教育要領における位置付けを見直す。
  •  保護者の子育てについての理解を深め、家庭や地域の教育力の向上を図る観点から、子育ての支援については、相談に応じたり、情報を提供したり、保護者との登園を受け入れたり、保護者同士の交流の機会を提供するなど、保護者や地域の人々に機能や施設を開放するとともに、園内体制の整備に配慮しつつ、関係機関との連携を図り、地域の幼児教育のセンターとしての役割を果たすよう努めることなどについて、教育課程その他の保育内容に関連する事項として位置付けるものとする。
  •  預かり保育については、幼児の心身の負担に配慮することが必要である。その上で、次の点に留意するようにする。
    •  教育課程に基づく活動を考慮し、幼児期にふさわしい無理のないものとし、教育課程に係る活動の担当者と預かり保育担当者が緊密な連携を図ること
    •  家庭や地域での幼児の生活を考慮し、預かり保育の計画を作成するとともに、地域資源を活用した体験ができるようにすること
    •  家庭との緊密な連携を図り、保護者が幼稚園と共に幼児を育てるという意識が高まるよう、情報交換に努めること
    •  地域の実態や保護者の事情とともに幼児の生活のリズムを踏まえつつ、実施日数や時間等の弾力的な運用に配慮すること
    •  適切な指導体制を整備した上で、幼稚園の教師の責任と指導の下に行うこと
     なお、地域の実態等に応じて、長期休業中などの休業日においても活動が行われる場合もあることに留意する。

(その他)

  •  学校教育法における幼稚園の目標規定の改正を踏まえ、幼稚園教育要領における幼稚園教育の目標の規定の必要性を見直す。

-- 登録:平成21年以前 --