特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 学校教育活動支援事業 滋賀県彦根市

概要

 彦根市内にある3大学の学生等をボランティアとして、特別な教育的支援の要する児童生徒への支援や特殊学級の活動への支援を中心に、学校教育活動に対して広く支援を行う事業を平成17年度から実施している。平成18年度からは、ボランティアの対象を学生以外の市民にも広く呼びかけ、大学生ボランティアは9校に46名を、退職教員等を中心とした一般市民ボランティアは6校に21名を配置し、学校教育支援を行っている。

キーワード

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1.「放課後学習チューター」からの発想について

 平成15年度から2年間の指定を受け、彦根市立西中学校と滋賀大学で放課後学習チューターの配置にかかる調査研究事業を実施した。平成16年1月には15年度分の予算を使ってしまったが、残りの2・3月については無報酬で学生が活動した。この中で、総合的な学習の時間をはじめ、授業時間での支援や特殊学級での支援を希望する学生が現れてきた。支援を受ける生徒にとってメリットが大きいことはもちろん、チューターとして学校に入り、生徒に対して個別の支援をすることが、教職に就くことを目標とする学生の教員としての資質を向上させ、更に教職への動機付けを一層高いものにすることがうかがわれた。また、チューターとして活動した学生が、採用された学校で活躍しているということから、学生のニーズが、今、教育現場で求めているニーズに合うのではないかと考えた。

2.平成17年度の取組について

 彦根市立西中学校は滋賀大学経済学部との平成15・16年度の2か年の取組を継承させるとともに、他校については、市内の他の2大学から学生ボランティアを募り、支援を必要とする学校へ配置した。
 アスペルガー症候群と診断された児童が在籍するクラスに集中的に入ることになったチューターの1人は、発達障害に対して自ら学習を進め、担任とともにTTの形で授業に参加するようになった。必要に応じて市教育委員会担当が連絡を取り、児童への支援の在り方についてアドバイスを行った。
 また、通級指導教室及び通級指導教室に通う児童のクラスにおいても支援を行い、担任と通級指導教員との橋渡しとしての役割を務め、対象児童への関わりを深めることができた事例もある。

3.平成18年度の取組について

 平成17年度は学生ボランティアに限っての募集であったが、平成18年度からは、広く市民もボランティアとして活動できるように制度を改めた。学生ボランティアを「チューター」、一般市民ボランティアを「スクールサポーター」という名称で取り組んでいる。
 その中で、自閉症児の子育てにある程度余裕の出た母親が、その経験を小学校の特殊学級に在籍する低学年の自閉症児へ支援を行う事例が出てきた。自閉症児への関わりについての十分な経験を生かしながら、担任と協力して様々な支援を行い、更に保護者の先輩として在籍児の保護者への相談等も行うという思わぬ成果が現れている。
 また、授業中教室を飛び出す児童などに対して、落ち着くまで話を聞いたり、そばに寄り添ったりするなどのクールダウンを図り、また児童の安全を確保するなどの取組も行っている。
 本年度の特徴として、教育実習を行った学生がそのままチューターとして学校の支援を行うというケースが出てきた。教育実習の経験から学校も信頼して支援を任せられる上に、学生も普段の児童生徒へ関わる経験をもつことで両者にとっていい成果をもたらしている。

4.運用面について

 4月に3大学にチューター登録の募集を行い、平成17年度はチューター活動に登録するしないに関わらず、この時点で発達障害の研修を行った。
 スクールサポーターは、学校が地域に呼びかけ、募集を行う。どちらもある程度人数が確定すれば、ボランティア保険に加入する。
 5月の連休までに登録を済ませ、ニーズのある学校へ配置し、学校長が面接を行った上で正式な活動に入る。学校長が了解しなければ支援活動はできない。活動については、学校と登録者が話し合って時間や内容を決める。活動内容を記録簿に記入し、支援の内容については担当教員と相談し、また担当教員に指導を求めることがある。大学によっては、年度末に市教育委員会を交えて反省会を行う。
 チューターには支援回数に基づき交通費程度の額を図書券でお礼として渡している。

5.成果と課題について

 以下は、寄せられた感想である。

  • 自分の研究に役立っている。選択性緘黙の女の子をフォローしているが、だんだん心を開いてくれるようになった。この機会を与えられ感謝している。(チューター)
  • 自閉症児への担任の先生の関わりについて学ぶことが多い。自分はまだまだそばにいることしかできないが、担任の先生の技を身に付けたい。(チューター)
  • 先生より若いので相談にのってもらいやすい。(別室登校の中学生)
  • 給食も子どもと一緒にとってもらい、指導してもらっている。大変ありがたい。(教員)
     この事業が開始され、2年目も終盤にさしかかった。市としてボランティア保険に入る程度のことしかできていない。しかしながら、参加者は献身的に支援をしてくれ、学校現場では多くの恩恵に授かっている。ある学生にお礼を言うと、「お礼を言うのはこちらのほうです。学校現場での指導を経験する機会が与えられ、やりたいことをやらせていただきました。」との言葉があり、ボランティアの真髄を見た気がした。
     献身的な活動に対して現場からのニーズは高まるばかりで、支援してもらえる人を探すことやその人たちへの研修も今後取り組んでいかなければならない。広報活動の充実や支援活動に対するアイデアを広めることなど、次年度はより充実した取組となるようにしていきたい。

-- 登録:平成21年以前 --