キャリア教育・就労支援等の充実事業

1.趣旨
障害のある生徒が、生涯にわたって自立し、社会参加していくためには、企業などへの就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要である。
しかしながら、特別支援学校高等部卒業者のうち就職者の割合は約25%(H24)にとどまっている。また、高等学校においては、キャリア教育・職業教育について、とりわけ発達障害のある生徒一人一人の障害に応じた指導や支援という観点で現状をとらえれば、十分に行われているとは言い難い現状にある。
このため、高等学校段階における障害のある生徒へのキャリア教育・職業教育を推進し、労働や福祉等の関係機関と連携しながら就労支援を充実する実践的な研究を、特別支援学校高等部(専攻科を含む。以下同じ。)及び高等学校(中等教育学校後期課程を含む。以下同じ。)のモデル校において実施し、その研究成果を全国に発信することにより、障害のある生徒の自立と社会参加を加速度的に推進する。

2.事業の内容
(1)委託を受けた団体においては、次の事項に取り組むこととする。
○1 モデル地域の指定
委託を受けた団体は、モデル地域を原則1か所設定する。ただし、委託を受けた団体が対象校に対する指導助言等を十分に行い得る場合には、複数のモデル地域を設定することができる。
モデル地域は、次の(a)、(b)、(c)のいずれかを主たる研究事項とする。
(a)特別支援学校高等部と高等学校の連携
(b)特別支援学校高等部
(c)高等学校


○2 モデル校の決定
委託を受けた団体は、モデル地域内の高等学校、特別支援学校高等部の中からモデル校を決定する。


○3 進捗状況の把握及び指導助言
委託を受けた団体は、実践研究の進捗状況を把握するとともに、モデル校又はその設置者に対し、必要な指導助言を行うものとする。


(2)モデル地域及びモデル校においては、次の事項に取り組むこととする。
○1 モデル地域における取組
モデル校となる特別支援学校高等部及び高等学校の教員、教育委員会等のモデル校の設置者のほか、労働・福祉等の関係機関からなる就職支援ネットワーク会議を設置し、モデル校への就職支援体制を構築する。モデル地域の研究事項が(a)「特別支援学校高等部と高等学校の連携」の場合には、特別支援学校高等部が核となって、高等学校も含めた関係機関による就職支援体制を構築する。
就職支援ネットワーク会議においては、モデル校への助言・評価、教員研修プログラムや技能検定の開発などを実施し、障害のある生徒の就職支援のためのネットワークを構築する。


(就職支援ネットワーク会議構成員の例)
ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、発達障害者支援センター、特例子会社、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、都道府県労働局、ジョブコーチ、障害者職業能力開発校、都道府県・市町村雇用又は福祉担当部局等の担当者
(取組例)
1)教職員、保護者の研修等
 障害者を雇用する企業現場等での実情を踏まえた指導の充実が図れるよう、教員の研修プログラムを開発し、企業での教員の体験研修等を実施する。

・障害者雇用制度等に関する講義(保護者も対象)
・障害者を雇用する企業等での体験研修
・(高校教員向け)特別支援学校でのキャリア教育・職業教育に関する授業視察
・キャリア教育・職業教育に関する講義・演習等


2)技能検定
生徒が目的意識をもって学習意欲を高めたり、就職の際に学習の成果を証明したりする上で有効である。このため、企業等と連携して、障害のある生徒のための技能検定を開発し実施する。


○2 モデル校における取組
(ア)就職支援コーディネーターの配置
就職支援コーディネーターを配置し、モデル校となる特別支援学校高等部及び高等学校において、ハローワーク等と連携して、障害のある生徒の就労先・就業体験先の開拓、就業体験時の巡回指導、卒業後のアフターフォロー等を行う。

(イ)特別支援学校高等部における取組
 特別支援学校高等部においては、企業等と連携して現場実習等の就業体験の機会の拡大、校内実習の改善や企業関係者を講師とした授業の実施などのキャリア教育・職業教育の改善充実を図るとともに、小・中学部と連携した系統的なキャリア教育を推進する。
 
(取組例)
1)現場実習等の就業体験の機会の拡大等
・学校での授業を事業所での長期の実習で行う「デュアルシステム」の実施
・地域の小・中学校等での、パソコン入力、印刷等の学校事務の補助や校内の清掃や花壇の手入れなどの実習
・高齢者施設(特別養護老人ホーム等)と連携した就業体験実習
・あん摩・マッサージ・指圧関係の就業体験(訪問介護の一環としての訪問マッサージ体験・実習、ヘルスキーパー(企業内理療士)体験・実習等)
・小学部での近隣の商店での校外学習、中学部での地域の施設での就労準備体験、高等部での現場実習を組み合わせた系統的な体験活動の実施
・事前事後指導の一環として、自己評価と他者評価を記入する就業体験の記録シートの作成
・実習先の機関等と連携した就業体験の評価規準の作成


2)キャリア教育・職業教育の改善充実
・ICTなど新しい職業に関する専門教科の開発
・キャリア教育を柱とした「作業学習のモデルプラン」の開発
・ソーシャルスキルトレーニングの実施
・企業や関係機関による授業評価・改善
・専門高校・高等専門学校の施設設備を活用した職業教育における交流・共同学習
・校内での喫茶店、コンビニ、事業所の立ち上げ、近隣のスーパー・商店街等でのアンテナショップの立ち上げ等による、より実践的な校内実習
・特別支援学校の中に民間の事業所を立ち上げ、学校での事務の一部を恒常的に代行する。校内の事業所により、特別支援学校の卒業生の雇用を確保し、実習生を受け入れたり、企業就労への移行支援を行う。


3)その他
・学校の授業での成果を日常生活でも生かすため、家庭や寄宿舎等と連携したキャリア教育の実施。

(ウ)高等学校における取組
 高等学校においては、特別支援学校からの支援を受けつつ、キャリア教育等の充実を図る。
 (取組例)
1)計画的、組織的な進路指導
・個別の教育支援計画の作成・活用
・適性検査等の実施による実態把握の実施
・中学校からの引き継ぎの充実


2)教育カリキュラムのより柔軟な運用及び指導方法の工夫
・ソーシャルスキルトレーニングの実施
・社会人としての生活に関する生徒向け講演会の実施
・自らの得意、不得意等の特性などを理解し、集団の中で状況に応じた行動を促す指導
・生徒が、活動しやすいように自ら環境を整えたり、必要に応じて周囲の人に支援を求めたりすることを促す指導
・企業や関係機関との連携による実践的教育・実習等の実施
・障害のある生徒が理解しやすいよう配慮した授業改善
・障害の状態に応じて各教科・科目の内容を補充するための指導


3)保護者への理解啓発
・障害者手帳の取得による障害者雇用枠を利用した就労など法制度面の対応についての理解を深めるとともにそれぞれに応じた適切な支援を行うにあたり必要な知識・情報を修得

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)