特別支援教育について

東京都 東京大学教育学部附属中等教育学校(国立)

都道府県名 東京都
学校名 東京大学教育学部附属中等教育学校
学校所在地 東京都中野区南台1‐15‐1
研究期間 平成21~22年度

1.概要

1 研究課題

 「中等教育学校における特別支援教育の推進と課題」
 後期課程(高校生)の発達段階における指導の在り方、単位認定について、教職員の意識の変容について、組織の支援体制等

2 研究の概要

 平成16年制定の発達障害者支援法の規定や特別支援教育における理念から後期中等教育においても研究を推進され、現場において実践されていくことが求められている。しかしながら小学校や中学校に比べ、後期中等教育の学校現場では遅々として進んでいないのが現状である。この原因は何であるのかを突き止め、それを改善していくには何が必要になるのかを検討することを本研究課題とする。
 他高校のモデル事業との相違は、学力的にある程度以上の学校であること、大学進学率が高く、単位認定が厳しい学校であること、中等教育学校という特性から、他での中学校との連携を考えるまでもなく、生徒を6年間の中で観察できている実績があることである。研究校の特徴として、公立学校ではないため、教育委員会の直接のサポートを得られない。国立附属学校や私立学校は主としてこうした状況であるから、こうした場合関係機関とはどのような機関が適当で、どのような支援を得られるかについても研究が必要である。

3 研究成果の概要

 モデル事業を受けている国内のほかの学校の視察を経て、学校独自の取り組みと全体に活かされるべきことと、今後の課題が見えてきた。本校は中等教育学校という特性から、生徒を6年間で見ることが出来るという利点がある。しかし、中学校入学段階では他の高校が抱える問題とおなじく下から情報が上がってこないということでは同等であった。むしろ中学校でその特性を見ることが出来て、それを活かして高校まで卒業をさせたいとしても難しいケースをどのように指導するかという問題が改めて浮き彫りとなった。中学卒業段階で自主的に外部へ出て行く生徒もいる。エンカレッジスクールや発達障害にも対応できる都立学校が増えてきているのでそうした専門的な学校に任せるべきだという教員の意見や、入学させたからには責任を持って育てたいとする教員が今まで以上にはっきりとしてきた。
 特別支援教育は教員の生徒に対する見方の視野を広げ、教員としていかに子どもと向き合っていくかの課題が見えてきた。こうした教員の意識の問題を中心にこの1年間は取り組んできたが、生徒や保護者へ次年度向き合うときにどのような教員の意識の変容があるかも丁寧に観察していきたい。

2.詳細報告

1 研究の内容

(1)発達障害のある生徒に対する指導方針
ア 生徒の実態(把握方法も含めて)

 生徒の実態は発達障害と認められる生徒は少ない。小学校時代に発達障害の有無を病院や相談施設で保護者や生徒が知ったとしても、入学試験(適性試験であり学力選抜をしない)の段階では書類として小学校から情報があがってこない。したがって、中学1年次にはこうしたことを考慮せずクラス編成をするしかないのである。また、学年進行にしたがって生徒間のコミュニケーション能力は高まっていくので、それほど大きなトラブルになりえない。むしろトラブルよりは学業成績に響いて進級の際に問題となることが多くなっている。
 またこうしたことを把握するためには教職員による観察が主体である。
 (担任や学年担任団(担任及び副担任)、教科担当教員、養護教諭、スクールカウンセラー等)
 生徒間の問題(けんか、いじめ、からかい等の対人関係のトラブル)が発生したときにはその生徒の持つ特性についても十分慎重に検討するようにしている。

イ 指導方針

 低学年であればあるほどお互いにコミュニケーション能力が低いため丁寧な指導を行っている。発達障害のあるまたは、疑われる生徒に対しても社会的な意味で正しい悪いの指導はきちんとつけるがフォローをつけるようにしている。具体的には学年主任であり、スクールカウンセラー等である。
 学業成績は後期課程である高校生になるとこの問題が顕著になる。友人関係はある程度あっても、学習の場面で質問をしたり、友人からノートを借りたりすることが大変困難であるため、中学時代よりも進度が速く、内容も深く、学習教科も増えてくる高校では障害の程度はあれ、一般の生徒も困難になってくる。
 現時点では発達障害の有無による単位認定で差をつけていない。特別支援教育は特殊教育からの転換の大きな問題として特別視しないことが大切であった。現在いくつかのモデル学校では進級に際し、単位認定で考慮する学校もあると聞いているが本校では検討中である。

ウ 成果と課題

 個別に対応することで成果は上がっているという実感は教員集団の中に芽生えつつあるが、中等教育における学年担任団の指導の中に割って入るほど特別支援教育委員会が認知されていないのが現状である。特に様々な場面で独自の裁量を持つ高等学校における学年団の存在は小学校や中学校の学年構成のものとは異質な側面を持っているのは現場の教員には周知のことである。こうした風土に活かされるような特別支援教育のあり方を検討しなければ多くの高等学校に浸透して行くのは難しいと考える。

(2)発達障害のある生徒に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫
ア 授業の際の配慮事項等

 授業の際に、言葉による生徒への指示が少なくなってきている。聞き取れない生徒や、何度も聞き返しをしないときがすまない生徒への対応の一つになっている。具体的には、板書、プリントを配布、心配な生徒を含めた機関巡視などである。

イ テストにおける配慮事項等

 識字困難な生徒が高校生におり、この生徒への試験への配慮としては、文字を拡大することでかなり改善されることが相談施設等で明らかになり、別室で大きな机(通常の4倍程度)を用意し、大きく拡大した試験問題を使って解く配慮を行った。生徒や保護者からもこうした配慮はとても前向きに受け止められた。

ウ 評価における配慮事項等

 定期試験における評価に対する配慮は行っていないのが現状である。まだ徹底的に教員集団の中での話し合いがすんでいるわけではないが試験はその時点の能力を測定するもので同一の条件にすることが求められるのに対し、むしろレポート提出のような評価の前に指導が入れられるようなものに関してはきめ細かい指導を入れるなどの配慮をする教員が増えてきている。

エ 成果と課題

 いままできめ細かい指導に触れてこなかった生徒もこうした指導のお陰で自分の力を少しずつ発揮できる生徒も出てきているのだが、こうした生徒は単なる発達障害だけではなく、家庭の経済要因や家庭内の不和等さまざまな要因を抱えているケースが多い。このため短期間で目に見える成果は出にくいのが現状ではなかろうか。
 特別支援教育の主旨に乗ってこうしたさまざまな要因を抱えるケースに対しても粘り強く対応していくことが必要である。
 また、個別対応だけでなく、教員間の共通認識を向上させていくことも必要な課題と考えている。

(3)発達障害のある生徒に対する就労支援
ア 支援の方策と内容

 本校ではほとんどすべての生徒が進学を希望する。そのため高校卒業と同時に就職を考える生徒はごく僅かである。昨今の経済不況で家庭の状況から進学を諦めるものもいる。近年の状況を振り返ると、公務員試験を受けて合格するものもいれば独自に就職活動をして販売等の職に合格するものもいた。こうした例はあるものの学校組織としては、就労についての指導経験を有する教員は不足している。こうした不十分な体制の中、就職活動をしたり、独自のルートで内定を得ている生徒は発達障害が疑われなかった。むしろ、大学受験を繰り返し、浪人している生徒の中にはおそらく発達障害が疑われる生徒もいたのかもしれない。
 数年前から始まっている大学全入時代はこうした発達障害を持つ生徒にもキャリアアップのサポートになっているといえよう。

イ 成果と課題

 本校で前述の通り就労による成果はあげていない。

(4)一般の生徒に対する理解推進等の指導の在り方
ア 指導の工夫と取組

 第1には、当初の計画では1年目には教職員、2年目には生徒保護者への理解推進を測る計画であった。それは教職員の中に共通の理解が得られないと生徒へ理解推進を図る際にバラつきが出る不安が考えられた。1年目は教職員の理解推進に力を注いだが十分な成果を得られていない。
 第2には、従来からある本校独自の生徒間の友人関係の結び方は、少人数制の6年間一貫が影響しているのか測定したわけではないが、極端な関係をとらない生徒が多い。友人関係が壊れないように、親しくてもある程度は友人の心の内に踏み込まずという生徒が最近はよく見られる。
徹底的に納得がいくまで話し合い、喧嘩して仲を結ぶという方法は時代の問題なのかは分からないが、ほとんど見られない。こうした生徒間の土壌は、多少変わっているなと感じている生徒でもあまり追及せず、関係がこじれるほどからかいもせず、発達障害のある生徒もある程度距離間を持って友人と過ごすことを可能にしている。したがって、学年が進行し、上級学年になるほどそうした特徴は認知され、お互いに対処の仕方のコミュニケーションツールが増えている状況なので問題が生じる割合が減っていくのである。
 第3には、障害をもつ人による講演を行ったことである。東京大学でハツの全盲全聾の教授による講演では、多くの学年で希望者が殺到し、障害について真剣に向かい合う生徒が見られた。東京大学との連携は年々推進されてきており、人的資源を活かしたこうした取り組みは次年度以降も是非企画したいと考えている。

イ 成果と課題

 2年目はこうした土壌を活かしつつ、生徒への理解推進のための取り組みを行っていきたいと思う。また、こうした土壌は他の学校にも存在するかもしれない、あるいはこの土壌を、雰囲気を作り出すことによりこうした特別支援教育を推進するための重要なポイントになるのかもしれない。もう少し予算がつけば、是非大きな調査をしてみたいと考えている。少なくとも中高一貫校である国立や私立学校のいくつかを調査してみたい。

(5)教職員や保護者の研修等
ア 研修会開催の回数・時期・研修内容等

全体研修会は大きく5回開催した。

7月ケース研究(外部講師)
10月校内研究会の枠で外部講師を招き、特別支援教育の実態について
1月校内研究会の枠で校外視察を経て同僚教員からの意識の変容をプレゼンテーション
2月公開研究会の枠で各教科について学習に困難な生徒への対応を話し合ってもらう。
(6科目で外部講師あり)
3月校内研究会の枠で1年間の取り組みの状態と現在の意識調査

イ 成果と課題

 7月のケース研究では識字困難な生徒への支援という内容で識字困難な状況を学問的に開設及び現場の教員が出来る支援についての講義があり、教員の中から質問も積極的に出された。

 10月の特別支援教育の概要では1年目ということで特別支援教育委員会からの情報では取り組みレベルがアップしていなかった教員もその重要性に目を開かれる内容であった。外部講師が持つ現場の教員への影響力を感じた。

 1月の校内研究会では特別支援教育委員会の以外の同僚からの発表は多くの同僚に影響があることを改めて感じた。そのため視察では核になる教員のほかに今まであまり関心の無かった教員をいかに視察へ連れて行くかがポイントであると感じた。特に私立学校や国立学校では教員の意識の変容は公立学校に比べて難しいのでこの方法は有効であった。

 2月の公開研究会では主として授業後の分科会(教科ごとの協議会)で個別に学習に対して困難な生徒についての質問をしたが現在の教科教育の大学教官も特別支援教育を別物として考えているケースが多く、このことが通常の学校で受け入れられていかない一つの原因であると感じた。

 3月の校内研究会では現在の教員の意識を確認した。依然としてさまざまなものだが1年前よりも前進している実感はある。

教員の意識として

1.高校における特別支援教育のあり方

  • 生徒個人に応じた学習や生活に関する指導をどれだけきめ細かく行うかということに尽きると思います。
  • 東大との連携はできないか?
  • 保護者との連携を密にする。大きくなるに従い、遠くなる気がする。
  • 発達障害を持った生徒だけを対象とするのではなく、学校生活全般にわたり、適応できていない生徒を含めて支援すること。(例、学力低下、進路、生活指導面を含めて)
  • 学習障害というはっきりした判断が下せない生徒に対しても(ちょっとでもつまずいている生徒には)学習支援をする。
  • 精神的に不安定な子に対する支え。
  • 成績不振の生徒への対応(保証、卒業の保証)
  • 肢体不自由(高卒)、盲聾(高卒)、知的(中卒)で扱いが異なる点が、進級判定をどう扱うかのヒントになるかもしれません。
  • 「評定1にしない指導」に興味を持ちました。すごく大変だけど提出しさえすれば、いい課題を出したり、補習したりして、評定2以上にしたほうがいいと思います。10代の貴重な1年をみんなより多く高校に留めて棒に振らせる・・・とまでは言えないけれど、費やさせるのは、もともとハンディキャップがある生徒をさらに不利にすると思います。
  • 社会にでるために必要な事柄や不足している事柄を本人、保護者に理解させ、支援することが必要ではないか。
  • 情報交換をして、個々人の特性を共通認識としていくことが大切。
  • 発達障害に関しては(当該)生徒、保護者、教員の共通理解。
  • 現実として高校までは教育を受ける者がほぼ全員の中での教育の質の保障。
  • 単位認定の問題、「配慮」の問題についての合意形成づくり。(中高一貫なので、個別の問題把握がしやすいため)
  • 学力・単位修得の支援?出口(進路)の支援?

2 教員個人が抱える課題

  • 教員:個人または学年や教科などのグループごとに課題あるいはテーマを設定し、実践を積み重ねる。年度末に検証・到達度を確認する。
  • 視察・報告会のあり方として、観察校のシステム、デメリットなど観点を絞って形式化すると、何を得たのかが見やすい。モデル校を参考に、本校の問題を明確化(個別の問題ではなく、システム的問題)し、それに対する解決策(案)を出せるといいのではないか。
  • 東大との連携
  • 教員の専門的知識がない。
  • (特別支援の必要な)生徒の見方を教員で共有する。
  • 対象生徒をすべての教員が把握し、問題を共有すること。
  • 特別支援教育の保護者への周知を徹底する。
  • いろいろなケースの勉強会はぜひやってほしい。特に専門家の話を聞きたい。特に東大との連携を図れないか?例えば中邑先生の勉強会はとても為になった。
  • どういう生徒が特別支援対象なのか。(見極め)事例の共有。(退学することになった時点でA君が聞き書きに対して不得手であるとわかった。特別支援対象であることが理解できた。)
  • 報告会の開催に向けては、授業内でのささやかな工夫を事例としてピックアップしておく。
  • 特別支援のモデル校ということを言いすぎると、障害のある子が多く受験してきたり、逆に優秀な受験生から敬遠させるのではないかと心配です。
  • 保護者への特別支援教育の周知。
  • 担任や学年から保護者へ伝える方法。後々問題にならない説明方法を知りたい。
  • 単位の認定
  • 成績関係や不登校気味(可能性が高い?)の生徒への対応。
  • 担任を持っている先生だと難しいと思いますので、石橋先生のおっしゃる通り、担任の先生とはずして、コーディネーターは選んだほうがよいように思います。
  • もう少し生徒のための会議(支援委員会の関係者)を回数多くやる。○○君関係者会議を1月に1回やる。そうしていくうちに理解されていく。

3 特別支援に関わる意見

  • 生徒:個人調査票であがってきた生徒への個別指導を充実させる。授業検討会や学年会で報告し、記録に残す。→報告書にまとめる。
  • 特別支援の生徒の情報と生活指導、成績会議をリンクさせたほうがよい。成績は成績、生活面は生活面、特別支援は特別支援と分離している気がする。
  • 障害の有無はそれほど重要ではない。支援が必要かそうでないか、支援が必要な生徒には複数の教員や外部機関とのチームでの取り組みが必要ではないか。
  • 東大の専門家との連携を進めて、教員側の理解を深める。
  • 高校生に対する「特別支援」のイメージを一本化する必要があるのではないか。
  • 本校においては前期生のころから注意して指導することにより、支援の対象とならないよう成長を促せているのではないかと思います。勉強不足でよくわかっておりませんので、まともな意見を言えず申し訳ありません。
  • 公開研究会と同時に研究発表会をやる。
  • 6年間過ごす中で、支援が必要になった生徒が生じたら支援するべきだが、「特別支援教育」を前面に押し出す理由は他の実践教育に支障が出ると思われるからである。
  • クラス内で支援を要する生徒が出た時は大変心強かった。
  • でもやはり加配がないので厳しいので、現状のまま対象児と保護者に充実した教育を保証(確約)するのはかなり難しいと思います。
(6)その他の支援に関する工夫

 他校の視察で刺激を受けた学生等を賃金で雇って困難な生徒への支援について取り組みたい。

2 研究の方法

(1)研究委員会の設置
ア、構成
No. 所属・職名 備考
1 東京大学教育学部附属中等教育学校(以下附属)副校長 学校心理士
2 附属 副校長
3 附属 教諭 特別支援教育コーディネーター (学年主任) 学校心理士
4 附属 教諭 (学年主任)
5 附属 教諭 (学年主任)
6 附属 教諭 (学年主任)
7 附属 教諭 (学年主任)
8 附属 教諭 (学年主任)
9 附属 養護教諭 特別支援教育サブコーディネーター
10 附属 養護教諭
11 附属 スクールカウンセラー A 臨床心理士
12 附属 スクールカウンセラー B 臨床心理士
13 東京大学大学院教授 附属前校長 ( アドバイサー ) 小児科医
14 東京学芸大学教育心理学講座教授 元附属高校校長 学校心理士

その他来校されて指導いただいた先生

  • 東京大学大学院教育学研究科教育心理学コース
  • 東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース
  • 東京大学大学院教育学研究科身体教育学コース
  • 東京学芸大学教育学部英語科教授
イ 委員会開催回数・検討内容
開催月 開催目的 検討内容
2009年3月1日 モデル事業指定 校内委員会設置 既存の校内委員会から、研究開発委員会への拡充を図ることを確認
2009年4月2日 新年度初めの意見交換 新年度スタートに伴い、各学年主任を通じて特別支援が必要とする生徒がいないか観察することを確認
2009年5月3日 保護者会後の意見交換 新年度保護者会のち、要望が数件出された。
2009年6月4日 定期試験対策 研修会通知 定期試験の際、別室で受験希望の生徒への対応を確認 夏休みの教員向け研修を紹介し、参加を募った。
2009年7月5日 夏休み前の意見交換 秋以降の校内研究会に委員会として教員向けに提案していくことを確認。
2009年9月6日 夏休み後の意見交換 夏の教員研修会参加後の参加者による報告。 個別調査票のフォーマットを確認。
2009年10月7日 校内研究会準備 外部講師の招聘を検討すること。 内容は特別支援教育の概要についてと決まった。
2009年11月8日 校内研究会準備 直前 外部講師に東京学芸大学教授松村茂治先生に決まった。必要な発表準備や司会役割を決めた。
2009年12月9日 後期中間試験前の意見交換 前回の研究会の記録を研究部へ提出することと、夏前から観察している ( 気になっている ) 生徒の報告。
2010年1月10日 校内研究会に出張報告を申請 最後の校内研究会で希望する分掌の割り当てがあり、出張の報告をすることを確認。
2010年2月11日 校内研究会後 教員が出張することで特別支援教育についての意識が大きく変化する可能性がみられた。
2010年3月12日 校内研究会前 1年間の取り組みの確認とこの取り組みに関して教員がどのように考えているのかを確認。

定例会は以上であるが、実際には多くの回数の担当者同士のミニ協議会が多く開かれている。また、このミニ協議会はとても実効的なものであった。次年度以降も必要であるが、キーパーソンによる個別対応という感は否めない。
 組織としての対応は次年度以降の課題である。

ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策

特別支援教育コーディネーターの指名は管理職(副校長)からの指名である。
今年度はサブコーディネーターの指名も行われ、校内2名の体制であった。
コーディネーターは学年主任・学級担任を兼務し、特別支援教育委員会委員長を務め、学年の中で生徒の関わる事件が起きた時など、十分な余力を持って務めることが出来なかった(20年度)。したがって、21年度ではサブコーディネーターを指名して頂き、コーディネートに幅広く対応しようとした。

エ 成果と課題

 同じ学校内に複数のコーディネーターが存在するとき、コーディネーター同士による意見の調整が大切であることが分かった。ただ、校内研究会や研修会、校外視察のときなど複数のコーディネーターの体制は機能的であると思われる。それが心理を研究するもの、養護教諭という2つの組み合わせの特徴か、他の要因があったのかを次年度は検討したい。

(2)専門家チームの活用
ア 構成
NO 所属・職名 備考
1 東京大学大学院教育学研究科教授 小児科医 前校長
2 東京学芸大学教育学部教授 元附属高校校長
3 東京大学大学院教育学研究科教授 臨床心理学
4 東京大学大学院教育学研究科教授 身体教育学 医師
イ 専門家チームの活用状況

 専門家チームは学校に関係がある専門家や特別支援教育コーディネーターに個人的なつながりのある人にお願いした。皆忙しい人ばかりであったので個別に質問するなどはあったがチームとして動いていただくことはなかった。その忙しさはその方の本業のほかに、他の場面での特別支援教育と重なる場面が多く、名が通った専門家の方の忙しさは現場でははかり知れないほどの大変さと言われた。専門家チームを他の学校が企画する際に、こうした専門家の育成も全国的に急務と思われる。

ウ 成果と課題

 いろいろな学校に視察に行った際にも、専門家チームは「若いフットワークの軽い人」が適するとのことだった。本年度の反省をふまえて次年度は今年度の専門家に加え、フットワークの軽い専門家を依頼したい。大学の現場では講師や助教の方が良いという学校もあった。次年度本校ではケース検討会も考えているので是非検討したい。

(3)関係機関との連携
ア 他の高等学校や特別支援学校との連携

 視察で訪れた学校を含め多くの学校で連携をとりたいという気持ちがあることが分かった。
このモデル校の取り組みは今後の多くの学校のモデルとしてだけではなく、このモデル校が核となって地域の高校と手を結ぶべきと感じた。
 今後の課題として考えていきたい。

イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携

 現在中野区との協力関係を築いている途上である。この2年間のモデル事業の間だけではなく長い視野で考えていきたい。また、ハローワークは進路指導でも関係しているので生徒や保護者への理解促進にも協力していただくつもりである。

ウ 地域の教育施設や人材等の活用

 地域の教育施設は中野区との協力関係の中で検討中である。
人材は附属学校の教育に協力していただける保護者の中から協力講師として考えていきたい。

エ 成果と課題

 現在は予算がついているので出来ることでも、公立学校と違い、予算がなくなると出来なくなるものがあるかもしれない。とりわけ人材協力は賃金の問題や謝金の問題があり難しい課題である。
 特別支援教育コーディネーターが特に権限を持たされない中で時短も無いまま勤務超過と個人的なつながりの中で四苦八苦しているのが多くの学校で見られる。本校でもコーディネーターが時短も無いまま学級担任、学年主任もしている現状では、学級内もしくは学年の中で生徒が絡む事件が起これば他学年や全校を見渡しての特別支援をコーディネートすることが出来なくなってしまう。
 特別支援教育をコーディネートする教員について権限を持たされなければ難しいと感じる。

(4)関連事業等との連携

今年度は特に無し。

3.今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等

特別支援学校の大変さと専門性がいつでも通常学級を有する高等学校で必要なわけではない。こうしたモデル校を経験した学校がその得意なアドバイス分野を公表し特別支援学校に代わるアドバイサーを勤めるべきではないだろうか。
 前述したように特別支援教育コーディネーターの資格化は検討していただきたい。常に研修は必要だがその経験は他の学校では貴重なアドバイサーになりうる。

4.その他特記事項(エピソードを含む)

 海外視察が次年度認められなかった。今回国内を視察して多くの学校の良い取り組みが見られたがその学校独自のものが多く当たり前だがその学校が困っていることにいかに対応するかという必然性だけで精一杯である。
 日本の高校が目指すべき特別支援教育がどういうものなのか、国立附属こそ意見を言わねばならないと考えていた。実際、特別支援以外では北欧などの海外視察が認められている国立附属の中等教育学校がある。是非再考をお願いしたい。
 予算の減額である。
これは特別支援教育課を責める気持ちはまったく無いが、1年目は300万円で2年目が100万円と決まっているならばもう少し計画を考えることが出来た。2年間なのでこちらは300万円のつもりで計画をしていたので残念至極である。

5.モデル校の概要

1 学級数と生徒数(平成21年5月現在)

前期
課程
学科 第1学年 第2学年 第3学年 合計
学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数
全日制 普通科 3 120 3 120 3 120 9 360
0 0 0 0 0 0 0 0
3 120 3 120 3 120 9 360
後期   第4学年 第5学年 第6学年    
全日制 普通科 3 120 3 120 3 120 9 360
0 0 0 0 0 0 0 0
3 120 3 120 3 120 9 360
          18 720

2 教職員数 (平成21年5月現在)

校長 教頭 教諭 養護教諭 非常勤講師 実習助手 ALT 事務職員 司書 その他
1 2 38 2 15 2 1 5 0 3 69

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成22年07月 --