都道府県名 北海道
学校名 北海道札幌北高等学校定時制課程
学校所在地 北海道札幌市北区北25条西11丁目
研究期間 平成21~22年度
発達障害のある生徒へのソーシャルスキル指導の在り方に関する実践研究
本校(定時制)では、医師から診断は受けていないものの、LD・ADHD等の発達障害と考えられる生徒や、自閉症があり施設に通所している生徒など、特別な教育的支援を必要としている生徒の入学が増加している。また、このような生徒の多くが、在学中及び卒業後、就職を希望する実態がある。こうした状況を踏まえ、発達障害について理解を深め、教職員の実践的な指導力の向上を通して、障害のある生徒の社会性の育成を図ることが喫緊の課題となっている。
また、近年、定時制においては、特別な教育的支援を必要としている生徒など、多様な生徒に対応した教育活動の充実が求められていることから、本事業の研究成果の啓発・普及を通して、高等学校における特別支援教育の推進を図っていきたい。
本年度は、発達障害について教職員の理解を図るとともに、校内体制を整備し、発達障害のある生徒及び発達障害の状態を示す生徒への指導の在り方について研究、実践した。このことにより、すべての教職員の発達障害のある生徒への指導及び支援に係る意識が向上し、指導及び支援の充実が図られるとともに、発達障害のある生徒を含むすべての生徒への指導が充実し、例年に比べ早い時期から学校に落ち着きが見られるようになった。
本校には、発達障害の診断を受けている生徒、施設から通っている生徒が10名ほど在籍している。また、診断は受けていないが、発達障害の状態を示す生徒も在籍している。そのため、在校生徒全員を対象とした実態の把握を、担任及び教科担任が北海道教育委員会が例示しているチェックリストを用いて行なった。併せて、専門家に、授業中の様子を観察してもらい、生徒の実態ついての助言を得た。
担任、教科担任及び専門家の実態把握によって抽出された生徒を対象として、障害の特性などについて情報を整理し、さらに職員会議で報告することで教職員間で情報の共有化を図った。さらに、専門家から発達障害の特性と指導する上での留意点についても助言を受け、教職員の共通理解のもと次のような指導方針により指導及び支援に当たることとした。
〈成果〉
〈課題〉
例)「数学1.授業プリント№1(はじめに)」の内容から
<成績のつけ方>
前期評価(5~1) 「1」はダメです
中間試験 100点
期末試験 100点
平常点 100点
授業プリント・夏季休業課題・出席
基礎学力コンクール など
合計 点
100点取れば「1」はつきません(目安)
授業を一生懸命受けていて(授業の用意ができている・プリントをきちんと提出している等)、休業中の課題を提出していれば、追試を受けることができます。
〈成果〉
〈課題〉
今年度は福祉制度を活用した就労支援は実施していないが、発達障害のある生徒を含め、すべての生徒に対して自分の将来について見通しをもつことができるように次のような指導を行ってきた。
〈成果〉
〈課題〉
全校集会やHRにおいて、生徒がお互いを理解し、支え合いながら同じ教室で生活していくことの大切さについて理解を深める機会を設定するよう工夫しており、その際、障害のある生徒の行動の特性を説明するとともに、苦手なことを要求しない、やさしく声を掛けるようにするなど、接し方について指導をした。
〈成果〉
〈課題〉
(ア)外部講師による校内研修会の実施(3回)
第1回 平成21年7月8日(水曜日)「発達障害を理解する」
講師:石狩教育局義務教育指導班指導主事(特別支援教育スーパーバイザー)北海道新篠津高等養護学校教諭
内容:生徒の実態把握の方法及びユニバーサルデザインについて
第2回平成21年12月7日(月曜日)「発達障害と非行」
講師:北海道教育大学教職大学院教授
内容:発達障害についての説明及び事例について
第3回平成22年2月9日(火曜日)「発達障害の理解と支援」
講師:北海道教育大学札幌校教授
内容:発達障害についての説明及び特別支援教育について
(イ)授業研究や校内特別支援委員会等への専門家による助言
助言者:北海道大学大学院教授
内容:助言者に授業後の学習会(8回実施)や学年団の会議(3回実施)に参加してもらい、授業者が苦労していることなどについて、意見や感想を述べ、それらについて発達障害支援の観点から指導の在り方について助言を受けた。さらに、校内特別支援委員会への参加やコーディネーターとの打ち合わせにより、委員会の活動計画や生徒の指導法についても助言を得た。
(ウ)他校への視察
(エ)各種研究会、報告会への参加
(オ)成果の普及等
本校での取組を次の研究会等で報告するともに、参加者から助言を得た。
〈成果〉
〈課題〉
発達障害や発達障害の状態を示す生徒に対しては、様々な場面で生徒を観察し、必要に応じて声を掛けることが大切であることから、授業中だけではなく、給食室や廊下等、さまざまな場面で積極的に声を掛けるようにした。
NO | 所属・職名 | 備考 |
---|---|---|
1 | 北海道札幌北高等学校定時制課程 教頭 | |
2 | 北海道札幌北高等学校定時制課程 教務部長 | 委員長 |
3 | 北海道札幌北高等学校定時制課程 養護教諭 | 副委員長、コーディネーター |
4 | 北海道札幌北高等学校定時制課程 教諭 | 各分掌から4名 |
5 | 北海道札幌北高等学校定時制課程 教諭 | 該当クラス担任 |
6 | 北海道大学大学院 教授 | 助言者 |
本委員会は、平成18年度に設置され、特別支援教育に関する校内研修会等を実施してきた。本モデル事業の推進に当たり平成21年度にその人員を拡充し、教務部2名(部長含む)、生徒指導部2名、進路指導部1名のほか、該当生徒が所属するクラスの担任、北海道大学大学院教授が構成員となっている。さらに、該当生徒が所属する学年の主任も適宜加わっている。
月に1回程度のペースで開催し、計9回開催した。期日及び議題は次のとおりである。
第1回5月26日(火曜日)
議題:事業説明会報告、今年度の活動
第2回6月22日(月曜日)
議題:石狩教育局・本庁との打合せ報告、学校訪問報告、生徒の実態把握、学習会、校内研修会
第3回9月14日(火曜日)
議題:見学旅行引率支援、学習会報告
第4回9月25日(月曜日)
議題:見学旅行引率支援、学習会、研究会報告、今後の活動の確認、教務規定
第5回11月11日(水曜日)
議題:見学旅行引率支援報告、学習会、校内研修会、学校訪問
第6回12月3日(火曜日)
議題:学習会、校内研修会、研究会参加、予算
第7回2月3日(水曜日)
議題:学習会、校内研修会、学校訪問報告、研究会報告、学生支援員、来年度の活動
第8回2月19日(金曜日)
議題:学習会、アンケートの実施、学生支援員の導入、来年度の活動予定
第9回3月16日(火曜日)
議題:生徒の実態把握、生徒の来年度の活動予定
(ア)特別支援教育コーディネーターの指名
平成18年度より、養護教諭が指名されている。校務分掌への位置付けはされていない。
(イ)個別の教育支援計画の作成
今年度は、該当生徒について、教科担任会議や職員会議で情報を共有し、基本的な内容を確認した。
〈成果〉
〈課題〉
所属・職名 | 備考 | |
---|---|---|
1 | 札幌はな発達クリニック・児童精神科医 | |
2 | 石狩保健福祉事務所保健福祉部子育て支援・相談担当主査 | |
3 | 石狩保健福祉事務所児童相談部・判定援助係長 | |
4 | 北海道教育大学札幌校・准教授 | |
5 | 北海道拓北養護学校・教頭 | |
6 | 北海道新篠津高等養護学校・教諭 | 委員長 |
7 | 江別市立江別第二中学校・教諭 | |
8 | 千歳市北進中学校・教諭 | |
9 | 恵庭市立恵み野小学校・教諭 | 副委員長 |
10 | 北広島市西の里中学校陽香分校・教諭 | |
11 | 石狩市立紅南小学校・教諭 | |
12 | 当別町立当別中学校・教諭 | |
13 | 北海道教育庁石狩教育局・指導主事 |
イ 専門家チームの活用状況
研究を始めるに当たり、専門家チームの委員である石狩教育局の特別支援教育スーパーバイザーに助言を受けるとともに、校内研修会の講師を依頼した。
ウ 成果と課題
〈成果〉
〈課題〉
ア 他の高等学校や特別支援学校との連携
本事業の平成19、20年度モデル校の北海道名寄農業高等学校と、平成20、21年度モデル校の北海道士別東高等学校から、実践研究の取組についての説明と助言を得るとともに、継続的に資料の提供を受けている。
北海道札幌高等養護学校には、特別支援学校における授業の様子、使用教科書、実習などについて説明を受けた。
イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携
今年度は連携していない。
ウ 地域の教育施設や人材等の活用
自閉症のある生徒が見学旅行に参加するに当たり、当該生徒が利用しているケアホームの職員の方に同行してもらった。
エ 成果と課題
〈成果〉
〈課題〉
(4)関連事業等との連携
特になし。
知的な遅れのある生徒も含めて発達障害のある生徒が高等学校に進学しようとする場合、高等養護学校の定員などさまざまな事情で普通高校で勉強したいという本人・保護者の希望から定時制高校を選ぶ事例はますます増えてくると予想される。定時制高校には、発達障害のある生徒はもとより、精神疾患のある者、不登校経験者、他の高等学校を退学した者など様々な生徒が在籍している。コミュニケーションをとることが苦手だったり、問題行動を繰り返す者もいる。そのため、定時制高校では、生徒一人一人のニーズに合った支援が必要であるが、小・中学校の特別支援学級や高等養護学校とは学級定員や教員数が異なり、人的な面での配慮による指導の充実は難しい。
今年度、一人一人の障害の状況に対応した支援を充実するために導入した習熟度別学習は、教員の持ち時間の増加や使用教室の割り振りなど、さまざまな課題があったが、教員の理解の下、実施することができた。担当教員からは「強く手応えを感じている」との報告を受けており、生徒からも「勉強がわかるので楽しい」、「個別に親切に教えてくれる」等の感想を聞いている。生徒にとっては「自分のことをしっかり見てもらっている」と実感でき、大学教授からは「大変有効である」との助言を得ている。このように、習熟度別学習はたいへん効果的であることから、定時制高校においては速やかに導入するべきであると考えている。
また、教科の授業をはじめ、学校行事や部活動など、学校生活における全ての場面で、周りの生徒が発達障害について理解をし、お互いを認め合う集団づくりをすすめるための指導の充実が大切である。
今年度の見学旅行では、ケアホームの職員に引率の支援をお願いした。発達障害のある生徒に対して、交通機関を利用しての移動時、起床・就寝時、自主研修等での支援を行った。
日常当該生徒に接しているケアホームの職員によるタイミングの良い声の掛け方など、支援の実際を間近に観ることができたことは、教員にとって今後の指導に活かせる良い機会になった。
課程 | 学科 | 第1学年 | 第2学年 | 第3学年 | 第4学年 | 合計 | |||||
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学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | ||
定時制 | 普通科 | 3 | 127 | 3 | 81 | 2 | 53 | 2 | 41 | 10 | 302 |
校長 | 教頭 | 教諭 | 養護教諭 | 非常勤講師 | 実習助手 | ALT | 事務職員 | 司書 | その他 | 計 |
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1 | 1 | 18 | 1 | 5 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 30 |
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成22年07月 --