ここからサイトの主なメニューです

特別支援教育について

特別支援学校(聴覚障害)と中学校との交流及び共同学習-部活動を通して-

学校の現状

 本校では、交流及び共同学習として部活動に力を入れています。卓球部、バレーボール部、陸上部、情報文化部、音楽文化部が設置されており、生徒はいずれかの部に所属しています。しかし、本校の中学部、高等部生徒は合わせて40名程度なので、各部活動に所属する部員が自ずと少なくなってしまう現状があります。そこで、部活動を充実させ、これらの活動を通して活気のある学校生活を築くことができることを願い、近隣の中学校との部活動における交流及び共同学習を進めています。
 本校卓球部は、15年前までは全国聾学校卓球大会(以下、「全国大会」という。)で何度も優勝した強豪校でした。その後も何度か全国大会に出場しましたが、入賞するまでには至っていません。これまで部活動を充実させるために、地域と連携し、市民クラブや卓球協会のメンバーの方に指導をお願いしたこともありました。
 また、本校の体育館改修に伴い、近隣の学校とも体育館を借りて合同練習をしていました。地域の方や近隣の中学校と一緒に活動した直後は、意欲も技術も増しますが、それらの取組は年に1、2回しか実施できず、定期的に実施できる方法を模索していました。
 そこで、平成17年度より、月に1回程度、近隣の2つの中学校と合同練習及び交流試合を計画し、基本的な技術や練習方法、強い気持ちを育てることをねらいとして実施してきました。

3校合同での部活動交流

交流及び共同学習の実際

1 ねらいと活動計画

 平成19年度の部活動交流のねらいと活動計画は、以下のとおりです。

<部活動交流のねらいと成果>

目標・ねらい 相手校 本校の成果
5 新入生の紹介をし、違う学校の選手と積極的に練習する。 A中学校 生徒の意欲向上
6 交流校の練習方法を学び、技術を高める。
挨拶や自己紹介をしっかり行う。
B中学校 ラリー技術の向上
8 サーブの技術を高め、試合に勝つ方法を学ぶ。
よいプレーを見た時は、やり方を聞く。
A中学校 サーブ技術の向上
生徒同士の話合い
3校合同で練習試合を行い、試合の経験を積む。
たくさんの選手と試合し、顔と名前を覚える。
A中学校
B中学校
試合経験の向上
選手同士の自然な握手
9 東海地区聾学校卓球大会
(高等部団体戦は生徒数が足りなかったため、規定に則り、中学部生徒を中心に構成した。全国大会については規定により中学部生徒は参加不可のため、個人戦、団体戦ともに全国大会には出場せず。)
中学部個人戦(1位、2位、3位)
高等部団体戦(2位)
10 実施せず(卓球部選手が東海地区バレーボール大会に向け、臨時でバレーボール部に所属したため)(中学校、特別支援学校ともに3年生が引退し、新チーム結成)
11
12 次年度に向け基礎練習を充実させる。
新しい選手の顔と名前を覚え、積極的に話しかける。
B中学校 基礎の向上
生徒同士の自然な自己紹介
1 体力とフットワーク技術の向上をねらう。
休憩中に相手校選手とコミュニケーションを図る。
A中学校 フットワークの向上
休憩中の話合いや質問
2 ドライブとブロック技術の向上をねらう。
自然な選手同士のアドバイスができるようにする。
B中学校 ドライブ・ブロック技術の向上
プレーに対する選手同士のアドバイス
3 つつき技術の向上をねらい試合経験を積む。
1年間の交流練習に感謝し、互いにお礼をする。
A中学校
B中学校
つつきの回転技術の向上
3校合同でのコミュニケーション

2 活動の様子

 A中学校、B中学校の両校共に当初は、本校との部活動における交流及び共同学習について、生徒、顧問共に戸惑いが多かったようです。特に部活動顧問には、「どのように聴覚障害のある生徒とコミュニケーションをとればよいか」、「本当にこの活動が互いの生徒のためになるのか」という懸念もありました。時には生徒同士の会話が成立せず、困ることもありましたが、特別支援学校生徒の卓球技術の高さや練習場所が優先的に使用できることに魅力を感じてもらい、活動を続けることになりました。生徒には無理にコミュニケーションを図ることは要求しませんでした。コミュニケーションがなかなか図れないのは、話し始めるきっかけを見つけられないだけだと考えていました。そこで、顧問間で話し合い、A中学校では、「何かを聞く時は、特別支援学校の生徒に分かりやすいようにゆっくり、大きな声で話すこと」という指示を出しました。B中学校では、「いつもの練習のように、特別支援学校の生徒のよいプレーをまねること」という指示を出しました。無理にコミュニケーションを図ろうとするのではなく、まず一緒に練習したりラリーをしたりするなど、共にスポーツを楽しむことを優先しました。コミュニケーションが円滑にでき、不安が解消されるまで、両校の顧問としっかり話し合い、時間がかかることを恐れなかった結果、生徒同士の自然な交流が形成されていきました。

ガイド:両者にどのような教育的効果があるのかを明らかにしておく。

 この活動の場合、特別支援学校の生徒にとっては、多数の生徒と一緒に練習することで意欲や技術が向上するという効果が望めます。一方、中学校の生徒にとっては、練習場所を優先的に使用することができて、技術レベルの高い特別支援学校の生徒と競い合うことで、一層の技術の向上が期待されます。

<指導の実際(8月の交流練習)>

  活動内容 指導上の配慮 相手校顧問との話合いと配慮
1 挨拶 大きな声で挨拶し、互いに活動への意欲を高める。 挨拶はコミュニケーションの基本なので、大きな声でしっかりとできるよう互いに指導し合う。
2 ラリー練習 A中学校の先生が紹介したラリー方法を生徒に手話通訳し、理解を図る。互いの動きを見合い、ポイントを指示し合うよう声かけする。 特別支援学校の顧問がA中学校の顧問の話を通訳し、練習方法を分かりやすくする。練習内容が間違っている時は、A中学校の生徒から特別支援学校の生徒に教えられるよう顧問からは直接注意はしない。
3 サーブの説明・練習 サーブの効果的な出し方、回転のかけ方について分かりやすくするために、A中学校の顧問と生徒から実際に見せてもらう。 回転のかけ方、サーブの動きについては、互いの生徒が紹介し合えるよう顧問から自然に促す。生徒同士の会話時はあえて通訳を外し、自然なコミュニケーションの成立をねらう。
4 練習試合 互いの挨拶、自己紹介をしっかり行うよう指示し、勝敗表に記録をとらせ、次回へ向け、意欲を育てることに使用する。 練習試合では、勝敗を記録し、団体戦と個人戦を行う。きちんと互いのプレーを意識し、よいところをまねることで、親近感や敬愛の気持ちを育てられるよう配慮する。
5 挨拶 感謝の気持ちを込め、互いに礼儀正しく挨拶し、見送りできるよう声かけする。 次回の練習日を生徒に知らせ、互いの意識を高めて日々の練習に取り組むよう決めた。交流及び共同学習を楽しみに練習に取り組める環境づくりをする。

交流及び共同学習の成果

 本校の取組では当初、コミュニケーションの面で不安がありました。しかし、担当者がそれぞれの立場やニーズを出し合い、話し合うことで、生徒同士の自然な活動を設定することができました。そして、担当者の理解が深まることで、定期的な交流練習を継続して実施することができました。また、一緒に練習を重ねることで、生徒の意欲が増し、共に同じ競技に親しむものとしての連帯感が生まれました。言葉の壁を越えた親近感や信頼感が練習中のアドバイスのやり取りや休憩中の話合いで育っていきました。

ガイド:活動の様子を見ながら内容を調整していく。

 部活動顧問が生徒の様子を見ながら話合いを重ねる中で、相互理解に基づいた練習方法の工夫や自然なコミュニケーションが生まれてきました。生徒の様子に合わせて、少しずつ練習方法・内容を変化させたことが有効でした。

 部活動を通した交流及び共同学習は、特別支援学校、中学校共にメリットがあります。中学校の生徒は、相手校の生徒が特別な存在ではないと実感することができ、特別支援学校の生徒は地域とのかかわりが深まり、社会性を培うことにつながります。身構えて、「何かを得るために交流及び共同学習を始める」のではなく、「交流及び共同学習を始めてみることで、障害の有無にかかわらず生徒同士の理解が深まることにつながっていく」ことがあるのではないかと思います。

休憩中の話し合い

ガイド:共に活動を楽しむことを大切にする。

 部活動交流では、互いに強い興味・関心を抱く活動に両者が共に取り組む中で、両者の心理的な距離が近づいていきました。これは、卓球を楽しむという共通の目的を通して活動できたことによると考えられます。

-- 登録:平成21年以前 --