これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い,高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~(平成27年12月21日 中央教育審議会答申)(抄)

4.改革の具体的な方向性

(2)教員採用に関する改革の具体的な方向性

◆ 国及び各都道府県の教育委員会等は,後述する教員育成協議会(仮称)における協議等を踏まえ,採用前の円滑な入職や最低限の実践力獲得のための取組を普及・推進する。
◆ 国は,教員採用試験の共通問題の作成について,各都道府県の採用選考の内容分析やニーズの把握等,必要な検討に着手する。
◆ 国は,後述のように特別免許状授与の手続の改善を図るなど活用を促進する。
◆ 国は,特別免許状以外にも,教員免許を有しない有為な外部人材を教員として確保するための方策について検討する。

 教員採用に関しては,後述の教員育成指標を踏まえつつ求める教員像を明確にした上で,男女共同参画等の動きを踏まえつつ,引き続き人物重視の採用を進めていくことが必要である。さらに,学校における教育課題が多様化する中,多様な専門性を持つ教員を採用していくことが重要であり,特別免許状の活用等による学校外の人材の採用を推進する必要がある。
 また,採用の際のミスマッチの防止や新規採用者の円滑な教職の開始のため,入職の前後における研修や学校現場体験の機会を設けることも重要であるとともに,年齢構成の不均衡を是正するための方策を検討することも必要である。
さらに,一般に教員の採用時期が国家公務員等の採用時期と比べても遅く,優秀な人材を確保する際の課題となっているとの指摘もある。就職・採用活動時期の変更の趣旨や教育実習の実施時期なども踏まえつつ,改善のための検討を進めるべきである。

○1 円滑な入職のための取組の推進

 採用の際のミスマッチを防止するとともに,新規採用の教員が円滑に教職を開始できるようにする取組などが重要である。このような観点からも,後述のように教職課程において学校現場に参画する学校ボランティア等の活動は効果的である。また,一部の教育委員会では,新規採用の教員の円滑な入職や学校における必要最低限の実践力獲得のため,教員志望の学生を対象にいわゆる「教師養成塾」等を実施したり,採用前の時期に採用予定の学生を対象に,配置予定校において校務の体験や教員から説明を受ける機会を設けたりする取組を行っている。
 これらの取組は,ミスマッチの解消のみならず教職に必要な最低限の実践力を身に付けさせることにも有効であると考えられることから,より一層の普及・推進が期待される。

○2 教員採用試験における共通問題の作成に関する検討

 教員採用に係る課題を踏まえ、まずは,各都道府県等における教員採用の際の試験問題作成上の負担軽減や,新たな教育課題を踏まえた適切な試験の実施等の観点から,各都道府県等の採用選考の内容分析やニーズの把握等,必要な検討に着手すべきである。
 独立行政法人教員研修センターが,教員の資質能力の向上に関する調査研究を行うようになることを考慮すれば,こうした調査研究が教員採用試験の共通問題の作成し検討する際にも大いに役立つと考えられることから,当該法人が積極的に関わるべきである。

○3 特別免許状制度の活用等による多様な人材の確保

 複雑化・多様化する教育課題に対応するためには,これらの教育課題に対応できる高度な専門性を持った多様な人材を確保し,教育の質の向上を図ることが重要である。
 このためには,特別免許状制度や特別非常勤講師制度の活用が有効である。特に,特別免許状については,制度創設以来,特別免許状の授与基準や手続上の課題があり活用が不十分であった。このため,平成26年6月に各都道府県教育委員会に授与基準の弾力化を進めるよう依頼し,各都道府県において授与基準の弾力化を図る取組が進んでいる。
 今後,後述のように,特別免許状授与の手続の改善を図るなどして特別免許状の活用を促進する必要がある。
 なお,後述の教員育成指標との関わりで,特別免許状によって採用された者の,高度専門職業人としての教員として必要な能力や専門性が十分担保されるよう,選考や研修等で適切に対応することも必要である。
 これまでの議論の中心は,教員を育てるという視点からであったが,加えて,有為な人材を教壇に確保するという視点も必要となっている。有為な人材には,はじめから教員を志して教員免許状を取得した人材のほかに,各種業界で活躍する中で途中から教員を志す人材も考えられる。
 複雑化・多様化する教育課題への対応のためには,各種業界で活躍する人材にも教員として活躍してもらえるような環境づくりを行うことが重要である。これまでは,教員免許を有しない外部人材を教員として雇用する場合,特別免許状制度を活用した取組が行われてきたが,今後,更に高度な専門性をもって他業種で活躍する人材を教壇にリクルートするという仕組みについても,後述する教員養成・採用・研修の一体的改革のための教員育成指標等を踏まえつつ,教員免許制度の全体的な改革の中で併せて検討する必要がある。

(6)教員免許制度に関する改革の具体的な方向性

○4 特別支援学校教諭等免許状の所持率向上

 特別支援学校の教員は,幼稚園,小学校等の免許状に加えて,特別支援学校教諭免許状を所持しなければならないが,相当免許状主義の例外として,教育職員免許法附則第16項において,当分の間特別支援学校教諭免許状を所持しなくても特別支援学校の教員となることができるとされている。
 そのため,特別支援学校の教員の特別支援学校教諭等免許状の所持率は,72.7%にとどまっている。しかし,特別支援学校の教員は子供一人一人の障害に応じた適切な指導が求められるほか,障害の多様化や重度・重複化への対応,特別支援学校が地域の特別支援教育のセンター的機能を発揮する必要性等から,これまで以上に特別支援学校の教員としての専門性が求められている。
 このため,教育職員免許法附則第16項の廃止も見据え,平成32年度までの間に,おおむね全ての特別支援学校の教員が免許状を所持することを目指し,国が必要な支援を行うことが適当である。集中的に所持率の向上を図るためには,都道府県教育委員会等,学校設置者における特別支援学校の教員の採用や配置,研修等を通じた取組を求めるとともに,国においても,現職教員に対する免許法認定講習の開設支援や,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所による免許法認定通信教育の実施,養成段階での免許状取得促進等の取組を進めることが考えられる。
 また,小中学校の特別支援学級や通級による指導の担当教員は,教育職員免許法上特別支援学校教諭免許状の所持は必要とされていないが,特別支援学級等での指導のみにとどまらず,小中学校における特別支援教育の重要な担い手であり,その専門性が校内の他の教員に与える影響も極めて大きい。
 そのため,小中学校の特別支援学級担任の所持率も現状の2倍程度を目標として,特別支援学校教諭免許状の取得を進めることが期待される。

(7)教員の資質能力の高度化に関する改革の具体的な方向性

○1 拡充期を迎えた教職大学院の在り方

 教職大学院の設置拡充に伴い,新任教員の採用に当たり,大学院修了者向けの採用試験の実施,名簿登載期間の延長や初任者研修の免除などによりインセンティブを付与することや,現職教員については,教職大学院における履修の促進方策の検討に加え,教職大学院の学びを教職生活全体のキャリアの中に明確に位置付けることも重要である。また,拡充期を迎えた教職大学院では,「チーム学校」を形成する教員としての力量を育成できるカリキュラムの充実に努めるとともに,教育委員会の行う教員研修の中核的パートナーとして役割を果たすことが求められている。このためにも,教職大学院でのこれまでの成果や学びの有効性・メリットなどについての対外的な広報を強化するとともに,更なる教育委員会との連携・協働により,学校現場での実践に即した教育内容への改善・充実を図ることで,入学のための動機付けやニーズを高めることも可能となる。

○3 教員養成系以外の修士課程等における教員養成機能の充実

 教員養成の高度化を図っていくためには,国公私立大学の教員養成系以外の大学院における教員養成の取組について,「教員育成協議会」(仮称)に参画するなど一層の充実も必要であり,これらの教職課程においては,アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた実践的指導力を保証する取組を進めつつ教科等の一定の分野について学問的な幅広い知識や深い理解を強みとする教員の養成を行うことが求められる。
 このため例えば,教職大学院等との連携を図ることにより,教科の指導法等の「教職に関する科目」や「教科の内容及び構成」に関する科目など教員養成に資する実践的な科目を開設するなどの取組を進めていくことが考えられ,過去の中央教育審議会答申における提言を踏まえつつ,今後,引き続きこの問題について検討していく。
 また任命権者においては,これらの教職課程を経て専修免許状を取得した者についても,教員採用や人事上の配置・昇進,処遇への反映を行うなど,教員養成の高度化を促進する観点からインセンティブとなる取組を進めていくことが期待される。
 さらに,学校に対するニーズの複雑化・多様化や社会全体の高学歴化に対応して,より高い専門性を持った人材の確保も重要であることから,博士号取得者が実践的な指導力を身に付け専門的な知識との統合を図ることにより,教職を目指しやすくするための仕組みも期待される。

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総合教育政策局教育人材政策課

(総合教育政策局教育人材政策課)

-- 登録:平成28年09月 --