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2 スクールカウンセラーについて

(1) 経緯と現状
 平成7年度から調査研究を実施しているスクールカウンセラーは、平成18年度には全国で約1万校に配置・派遣されるに至っているが、都道府県市により活用の状況は様々である。

 近年のいじめの深刻化や不登校児童生徒の増加など、児童生徒の心の在り様と関わる様々な問題が生じていることを背景として、児童生徒や保護者の抱える悩みを受け止め、学校におけるカウンセリング機能の充実を図るため、臨床心理に専門的な知識・経験を有する学校外の専門家を積極的に活用する必要が生じてきた。

 このため、文部科学省では、平成7年度から、「心の専門家」として臨床心理士などをスクールカウンセラーとして全国に配置し(平成7年度 154校)、その活用の在り方について実践研究を実施してきた。

 また、平成13年度からは、各都道府県等からの要請を踏まえて、全国の中学校に計画的に配置することを目標とし、その成果と課題等を調査研究するため「スクールカウンセラー活用事業補助」を開始し、各都道府県等がスクールカウンセラーを配置するために必要な経費の補助を行っている。(平成18年度予算 4,217百万円)

 これにより、文部科学省が経費補助を行っているスクールカウンセラーは、平成18年度において全国の中学校 7,692校(4校に3校の割合)に配置されるとともに、中学校を拠点として小学校 1,697校、高等学校 769校にも派遣されている。また、地震災害や事故等の場合には、都道府県等の要請に応じてスクールカウンセラーの緊急派遣に対する支援を行っている。

 しかしながら、各都道府県における中学校へのスクールカウンセラーの配置率は、90パーセント以上が14ある一方、50パーセント未満も13あり(平成18年度)、人材の不足や偏在、財政状況等の理由によって活用の状況は様々である。

 スクールカウンセラーは非常勤職員で、その8割以上が臨床心理士である。また、相談体制は1校あたり平均週1回、4〜8時間といった学校が多い。

(2) スクールカウンセラーに関するアンケート結果について
 スクールカウンセラーに関するアンケートの結果、スクールカウンセラーの配置及び時間数の拡大を希望する意見や、スクールカウンセラーの効果を評価する意見が多い。

 文部科学省では、スクールカウンセラーに関する学校現場の活用状況やニーズを把握することを目的として、平成19年3〜5月にかけて、全国のスクールカウンセラーが配置されている校長(各都道府県・指定都市ごとに10校程度抽出)及び都道府県・指定都市教育委員会に対してアンケートを実施した。(参考資料4)

 「スクールカウンセラーに対してあった相談等の割合」については、スクールカウンセラーの配置が多い中学校について、約5割が児童生徒からの相談、約3割が教職員からの相談、約2割が保護者からの相談であった。

 「学校の教育相談体制をどのように充実すべきと考えるか」(複数選択)については、「スクールカウンセラーの配置や充実」を選択した学校が小学校と高等学校では8割を超え、「教員間の連携の強化、情報の共有」を選択した学校は小学校、中学校、高等学校で6割以上で、すでに多くの学校にスクールカウンセラーが配置されている中学校では一番多かった。また、教育委員会では「スクールカウンセラーの充実」を選択したところが約9割、「教育相談等に関する教員研修の充実」を選択したところが約7割であった。

 「スクールカウンセラーの活用についてどのように考えるか」については、小学校、中学校、高等学校及び教育委員会ともに「1週間に複数日の勤務が望ましい」を選択した学校等が約5割であった。

 学校に対して「スクールカウンセラーについてどのように受け止めているか」と尋ねたところ、小学校、中学校、高等学校ともに「外部の専門家という位置づけで効果があると感じている」と回答した学校が約5〜6割であった。

 教育委員会に対して「スクールカウンセラーの配置についてどのように考えるか」と尋ねたところ、「中学校同様、小学校や高等学校にもできる限り配置することが望ましい」と回答したところが約6〜7割であった。

(3) スクールカウンセラーの役割及び意義・成果について
 スクールカウンセラーの業務は、児童生徒に対する相談のほか、保護者及び教職員に対する相談、教職員等への研修、事件・事故等の緊急対応における被害児童生徒の心のケアなど、ますます多岐にわたっており、学校の教育相談体制に大きな役割を果たしている。

 スクールカウンセラーは、17のような児童生徒が抱える問題に学校ではカバーし難い多くの役割を担い、教育相談を円滑に進めるための潤滑油ないし、仲立ち的な役割を果たしている。
1  児童生徒に対する相談・助言
2  保護者や教職員に対する相談(カウンセリング、コンサルテーション)
3  校内会議等への参加
4  教職員や児童生徒への研修や講話
5  相談者への心理的な見立てや対応
6  ストレスチェックやストレスマネジメント等の予防的対応
7  事件・事故等の緊急対応における被害児童生徒の心のケア

 スクールカウンセラーが相談に当たる児童生徒の相談内容は、不登校に関することが最も多いが、いじめ、友人関係、親子関係、学習関係等多岐にわたっており、近年は、発達障害、精神疾患、リストカット等の自傷やその他の問題行動などますます多様な相談に対応する必要性が生じている。

 また、近年、様々な課題に直面する学校現場でストレスを抱える教員が増加していることが、精神性疾患による休職者数の増加(表8)に表れている。教員のストレスは、職場内におけるものに起因する割合が高く、こうした教職員のメンタルヘルスに求められるスクールカウンセラーの役割も期待されている。

 さらに、スクールカウンセラーが、特別活動や道徳の時間などの授業に参加する取組も見られたり、教育相談に関する校内体制におけるコーディネーターの役割も期待される場合もある。

 不登校に関するスクールカウンセラーの効果として、文部科学省が毎年行っている調査では、「不登校児童生徒への指導の結果、登校するようになった児童生徒に特に効果があった学校の措置」として、「スクールカウンセラー等が専門的指導にあたった」と回答した学校が、学校内での指導の改善工夫中、最も多い。また、「不登校児童生徒が相談、指導、治療を受けた機関等」としては、スクールカウンセラーが小・中学校ともに最も多い状況である。(表9−1表9−2

 また、スクールカウンセラーを派遣した学校の暴力行為、不登校、いじめの発生状況を全国における発生状況と比較(表10)すると、いずれもスクールカウンセラーを派遣した学校の発生状況の方が低い数値となっていることや、過去5年間で中学校へのスクールカウンセラーの配置率が50パーセント以上向上した県におけるいじめの減少率(マイナス27パーセント)は、全国平均値(マイナス23パーセント)を上回っている状況が見られる。

 さらに、児童生徒の不登校や問題行動等への対応のみならず、自然災害や事件・事故等の被害にあった児童生徒に対する緊急時の心のケアなどに果たす役割や期待も極めて大きい。最近のいじめ自殺の対応においても、スクールカウンセラーの存在は不可欠であった。

 このような多様な役割と期待に加えて、スクールカウンセラーについては、
1  学校外のいわば「外部性」を持った専門家として、児童生徒と教員とは別 の枠組み、人間関係で相談することができるため、スクールカウンセラーな らば心を許して相談できるといった雰囲気を作り出している。
2  教職員等も含めて、専門的観点からの相談ができる。
3  相談場所が学校であるため、児童生徒、教職員、保護者が外部の専門機関 に自費で相談に行かなくても、比較的平易に相談できる。
4  学校全体の連絡会等に参加することによって、学校の一体的な教育相談体 制を向上させ、生徒理解の促進に寄与する。
といった点での意義・成果が認められる。
 なお、スクールカウンセラーの「外部性」は、教育の専門性を持っている教員とは異なる、臨床心理の専門性を生かすことができるという点で意義があり、教員と連携して児童生徒の自己実現を助ける役割を果たしている。

(4) スクールカウンセラーに関する課題について
 スクールカウンセラーの配置の拡大に伴い、資質や経験に違いが見られたり、学校における活用の仕方に大きな差が見られるなどの課題も指摘されている。

 スクールカウンセラーの活用の仕方は、学校の教員や校内組織のあり方、校長を始めとした教職員の意識の差などにより、また、学校及び都道府県等によって大きな差がある。
 例えば、学校において、教職員とスクールカウンセラーとの連携が不十分であったり、その役割が理解されていないことにより、組織的な活用が十分になされていないケースや、教育委員会(行政側)において、スクールカウンセラーをどのように活用するかについてのビジョンや方針が明確でない場合もある。

 スクールカウンセラーの拡大に伴い、スクールカウンセラーの資質や経験に違いがみられ、また、児童生徒の相談内容が多岐にわたる中で、各教育委員会等としては、その資質の向上(ある一定の均質化された資質の保証)やマネジメントをどのように図っていくかが課題となっている。
 また、都市部以外では、スクールカウンセラーとなる者の人材不足が懸念されている。

 非常勤という不安定な身分や、スクールカウンセラーの1校当たり勤務時間数が週4〜8時間程度に限定されていること、また、児童生徒の問題の状況に応じた柔軟な対応がしにくいことは、学校における相談体制の充実という観点から大きな課題と考える。
 とりわけ、学校にとっては、スクールカウンセラーの相談時間が短いことや、曜日が限られていることから、児童生徒や保護者が相談したいタイミングに相談できないという課題がある。

 スクールカウンセラーは、その専門性とともに、いわゆる「外部性」に有効な側面を有しているとされるが、一方で、学校組織の一員として、管理職の指導や学校の方針のもとで活動を行っているという側面もある。こうした認識が十分でないため、スクールカウンセラーと学校の教職員との間において、必要な情報の共有がなされないことがある。

 各学校においては、児童生徒や保護者がスクールカウンセラーに一層相談しやすい体制づくりが求められる。

(5) 今後の検討の方向
 スクールカウンセラーに期待されている役割は大きく、今後、可能な限り中学校以外の学校種における配置・活用や相談時間数の増加等を検討することが必要である。また、スクールカウンセラーをスーパーバイズする者の配置や、地域の実態に応じた一層多様な人材の活用等について検討することが必要である。

 スクールカウンセラーは、相談室で待っているばかりでなく、いろいろなところで児童生徒に積極的に関わるといったような、待機型から接近型の行動姿勢が求められる。また、相談室については、相談する児童生徒の立場に立って、相談しやすい場所、相談しやすい雰囲気等の配慮が必要である。

 各学校は、教育委員会とも連携し、児童生徒や保護者に対して、スクールカウンセラーにいつどのような形で相談することができるかなどの情報を周知するとともに、スクールカウンセラーに対する各学校の実情に応じた相談体制の工夫が求められる。

 各学校においては、教育相談体制を充実する観点から、スクールカウンセラーの役割、業務等を明確にし、全教職員が共通認識を持つことが必要である。
 また、スクールカウンセラーを学校における相談体制の一員として位置づけ、児童生徒に関する状況や悩みに関して、児童生徒やその保護者のプライバシーに配慮しつつ、適切な連携の観点から、必要な情報の共有を行うことが大切である。このため、教員がスクールカウンセラーから専門的な助言を得たり、お互いの情報交換が可能となるような学校運営上の工夫(職員室にスクールカウンセラーの机を置くなど)が求められる。

 各教育委員会や各学校とスクールカウンセラーは、日頃から意思疎通を図り、意見交換等によりお互いの理解を深めることが大切である。

 スクールカウンセラーは、児童生徒の多様な悩み等に応えているが、児童生徒の状況によっては、医療的な観点での治療が必要なケースなど多様であり、個々のケースに応じて、スクールカウンセラーは一人で抱え込むことなく、関係機関や養護教諭等と適切な連携を図ることが必要である。

 スクールカウンセラーの安定した配置に対する教育委員会や学校の要望は極めて多く、社会全体に関わる全国的な課題であるいじめや不登校を始めとした児童生徒の様々な問題に対応していくためには、今後とも、引き続き、国及び都道府県等が連携協力して配置体制を整えていくことが適切である。

 各学校におけるスクールカウンセラーの派遣が週1回となっている現状では、継続的な相談効果や校内の一体的、組織的な相談体制の確保は困難であり、何よりスクールカウンセラーを待つ児童生徒の心にしっかりと応えていくことは困難である。このため、可能な限り、週当たりの相談時間の増加や相談日数の増加について検討することが必要である。

 中学校を中心としたスクールカウンセラーの配置については、少年非行の低年齢化や児童虐待の深刻化等を踏まえた小学校への配置の拡大、高等学校を含めて地域や学校の実情を踏まえた弾力的な配置・活用、緊急時における柔軟な活用等が一層可能となる方向で検討することが必要である。とりわけ、小学校への配置の拡大は、中学校において増加する問題行動等の未然防止といった観点からも大切である。

 スクールカウンセラーの柔軟な活用の観点から、心のケアを必要とする児童生徒が在籍する教育支援センター(適応指導教室)や児童自立支援施設へのスクールカウンセラーの派遣についても検討することも大切である。

 スクールカウンセラーの量的な拡大に伴い、経験豊かなスーパーバイザーを、例えば各教育事務所に配置し、スクールカウンセラーをスーパーバイズ、マネジメントする体制を整えていくことが必要である。

 また、経験年数を基本として、その職務内容等も考慮し、処遇も含めてスクールカウンセラーに段階を設けることも検討することが必要である。

 スクールカウンセラーのいわゆる「外部性」は、たとえ学校の中に常勤として勤務するとしても、十分にその特徴を確保することができるという考え方もあり、スクールカウンセラーに携わる者の身分の安定化については、臨床心理士の国家資格化の動向にも留意する必要がある。

 スクールカウンセラーに対して、学校教育や児童生徒に関わる課題等(いじめ、不登校、虐待、発達障害、薬物乱用など)に対する理解や都道府県等の方針等に対する理解を深めるために、各教育委員会において、スクールカウンセラーを対象とした様々な観点からの研修を充実することが適当である。この際、経験年数の浅い者を育てていくという観点も大切である。

 スクールカウンセラーとなる人材については、都道府県等や地域の状況により、臨床心理士が偏在しているなど様々であることから、スクールカウンセラーとなる者の質を確保する一方、一層多様な幅広い人材の活用を検討することが必要である。

 教育委員会は、スクールカウンセラーの活用に関する方針を定め、組織的にスクールカウンセラーの機能を発揮させる視点が大切であり、共通的な指針としてのガイドラインを作成することも有益である。

 スクールカウンセラーの活動や活用状況をさらに明らかにするために、今後、国において各都道府県等の参考となるよう、スクールカウンセラーに関する様々な事例を集約することも必要である。

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