いじめ防止基本方針策定協議会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成25年10月2日(水曜日) 15時~19時15分

2.場所

文部科学省15階15F特別会議室

3.議題

(1)いじめ防止基本方針の策定について
(2)その他

4.出席者

委員

安倍委員(欠席)、新井委員、尾上委員、小泉委員、國分委員、實吉委員、高田委員、田中委員(欠席)、野島委員、野原委員(欠席)、藤川委員、森田委員、山浦委員、山田委員

文部科学省

上野大臣政務官、義本大臣官房審議官、内藤児童生徒課長、池田生徒指導室長、春山課長補佐、鈴木生徒指導調査官 他

5.議事要旨

(1)上野文部科学大臣政務官挨拶

 協議会委員のお力をお借りし、この法律ができてよかった、基本方針ができてよかったと、誰もが思えるようなものに完成させていきたい。最後まで御協力をお願いしたい。

(2)文科省より、「いじめの防止等のための基本的な方針(案)」(資料2)について説明がなされ、委員から意見が出された。

 (p.9)ガイドライン(仮称)の策定

【委員】
 基本方針においてガイドラインの策定を明記し、そのことを意識して各地方なり学校なりで対応を進めていくべきだと考えられる。

 (p.10)弁護士等の協力を得て行う教育プログラム

【委員】
 本協議会のヒアリングにおいて、弁護士によるいじめを主題にした授業の取組について紹介いただいたが、その内容は法の精神に合ったものであると受け止めており、基本方針に注記として入れてはどうかという提案。

【副座長】
 現状として、学校ではいろいろな取組がなされており、本提案を含めた取組の例示という形で、「学校における『いじめの防止』『早期発見』『いじめに対する措置』のポイント(以下、「ポイント」という)」に入れてはどうか。

【座長】
 いじめの問題に対する取組が様々ある中で、本提案の取組のみを強調した表現は避けたい。

【委員】
 いじめの問題については、1週間に1回の道徳の時間だけで考えることではなく、学校の教育活動全体で、常にいじめの問題を意識するということを記載するべきではないか。

 (p.11)体罰及び教師の不適切な言動

【委員】
 特定の児童生徒に差別的な発言をしたり、いじめられる側にも原因があると発言したりするなどの教師の態度がいじめの深刻化につながるケースが多く見られ、基本方針の本文において、体罰の記載に加え、一般的な教師の不適切な言動について記載し、具体例を注記として入れてはどうかという提案。

【副座長】
 この点だけを具体例として示すのはどうか。一生懸命取り組んでいる教員が圧倒的多数いる中で、学校の取り組む意欲の問題として、注意点を記載するのであれば、「ポイント」に入れた方が、学校としても受け止めやすいのでは。

【委員】
 現場では、体罰だけに限らず教師の不適切な言動も非常に大きな問題になっている。記載の「なお、教師の不適切な言動がいじめの発生を許しいじめの深刻化を招くと考えることに注意し」の表現は、「招く」といい切り、その上で、「特に体罰については」と体罰について後述すればよいのでは。

【委員】
 「引き続き教職員研修等により」との記載の「引き続き」という表現が気になる。本当に抜本的に改革するのであれば、今までのやり方と同じという書きぶりは変えた方がよいのではないか。

 (p.12)地域や家庭との連携促進

【座長】
 早期発見のための措置としては、記載している内容だけでなく、もっと民間団体やPTA等を活用すべきところがあるのではないか。

【委員】
 「学校区」と記載があり、また、学校運営協議会や支援地域本部、放課後子供教室とあるが、私立学校の概念では取り組めない体制だと思うので、ここは公立学校と理解してよいか。

【委員】
 早期発見の観点から、現実として、いじめられている子供がその苦痛を訴えたいときに、学校では表現ができなくても、安心でき、守ってもらえる環境ではいろいろしゃべったりする。それを聞いた人が学校に伝えてくれる、相談してくれるという連携が一番大切で、学校と地域や家庭が、そういう信頼関係でつながることが一番重要ではないか。

 (p.14)地域基本方針の策定

【委員】
 基本方針の内容として、体系的かつ計画的にいじめがなくなるような施策を講じるという観点から、「その内容としては、対策の基本的な方向や内容、特にいじめ防止に資する啓発活動や教育プログラムを体系的かつ計画的に行うことやいじめの早期発見・対処のための対応マニュアルを策定することなどが考えられる」と盛り込みたいという提案。

【委員】
 提案に賛成で、啓発活動や教育プログラムを体系的・計画的にやるということを例示する必要がある。

【副座長】
 集団を対象にいじめ防止プログラムを実施すること等を否定するつもりは全くないが、ただ、取組はそれが全てではないということをきちんと伝えたい。また、いじめの問題に対するこれまでの取組をきちんと点検したり再確認したりして、その上でやるべきことを、基本方針として提示していくという形の方が、学校現場で、先生たちや子供、保護者がみんなでいじめに取り組もうという感じになるのではないか。

【委員】
 ここでは、あくまでも地域基本方針を地方公共団体がどう作るかということを書き込むことになっている。だから、「国の方針を受けて」等の追記により、地方公共団体は国の方針を受けて地域基本方針を作っていくということだけが記載されていればよいのではないか。「教育プログラム」といった言葉をここで使ってしまうと、地方公共団体はかなり神経質にこの言葉に悩むと思う。

【文部科学省】
 地域基本方針に盛り込む内容として、例えば各学校での取組が体系的あるいは計画的に行われるという方向性や、早期発見・対処に対して具体的な取組をしっかりと行っていくといった趣旨のことを追記し、具体的なことは、「ポイント」や注記に記載する等の形で整理したい。

 (p.14)いじめ問題対策協議会の設置

【座長】
 本協議会の構成として、私立学校に在籍する児童生徒は多いことから、私学の担当部局も含めておかないといけないのではないか。また、「学校」とは、公立だけでなく、国立・私立も含めたものであるとの解釈。

【委員】
 現在、東京都では協議会の設置について、私学担当部局も含めて動いているところ。各地方の実情は様々であると理解しており、私立学校と知事部局との連携がどれだけとれているか疑問に思う点もある。

 (p.15)第14条第3項の機関の設置

案2で異論なし

 (p.17)第14条第3項の機関の機能、及び(p.28)重大事態の調査

【委員】
 重大事態の調査を教育委員会の附属機関が行う場合については、一定の限定を付けてというのがこれまでの議論であり、その限定のキーワードを「経緯」「特性」「希望」とし、「従前の経緯や事案の特性、いじめられた児童生徒又は保護者の希望により」と変更することを提案。なぜならば、自殺に限らず、例えば非常に重症な障害を負っているような事態や、重篤な精神疾患にまで至っているような不登校事案もあり得ると思うので、自殺のみという限定にはしない方がよいのではないか。また、児童生徒・保護者と学校や教育委員会との信頼関係が既にかなり壊れている場合には、第三者性のある附属機関が調査する方が望ましいだろう。

【委員】
 ところで、法では明確に「組織を設ける」と書いており、「組織」なしに教育委員会が調査をすることはあり得ない。だとすると、教育委員会に回ってきた事案については、附属機関があれば附属機関で調査すべきではないのか。

【文部科学省】
 基本方針では、附帯決議などを踏まえ、教育委員会が調査する場合には附属機関を設置しておき、そこが調査するのが望ましいという方向性になっているが、法案審議においては「組織」がどういうものかについての具体的な議論はなく、法文上の整理では、いわゆる附属機関であるということはどこにも固まっていない。

【文部科学省】
 第28条の「組織」をどう捉えるかについて、この「組織」は、例えば学校に置いておくことも考えられるし、私立学校の場合は学校法人に置くということも考えられる。また、自治体の場合であっても、通常の職員だけでチームを構成してやることが必ずしも否定されているわけではないと理解している。また、附帯決議でいう「参加を図り」の趣旨が、例えば行政職員だけが調査したものについて第三者の意見を聞くということだとも捉えるなら、必ずしも自治法で言う附属機関で調査するだけではないというケースもあり得ると思う。

【委員】
 議論の中で、14条と28条の組織の関係がこじれてしまっており、重大事態に関してはp.17ではなく、p.28に詳細を記載してはどうか。

 (p.18)財政上の措置

【文部科学省】
 「いじめの防止等のための対策を推進するために必要な財政上の措置」の記載に、人的体制の整備を追記。

 (p.19)地域や家庭との連携促進 ※p.12と同じ

 p.12の内容に準じた記載に変更

 (p.23)学校基本方針の策定

【委員】
 学校基本方針の内容として、先ほどの「地域基本方針の策定」で議論した「体系的かつ計画的」に行われるという方向性を盛り込んでほしい。

 (p.25)組織の構成

【委員】
 第22条では、「当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する積極的な知識を有する者その他の関係者により構成される」組織が求められているが、法的には、当該学校の複数の教職員以外の人を入れることが必須なのか。

【文部科学省】
 記載の「複数の教職員」だけで構成してもよいというのが法の解釈だが、附帯決議が付され、外部の専門家を入れることが有効であるということが示されているところ。

【委員】
 管理職や学年主任だけではなく、学級担任や部活動顧問なども順次入るような組織であるべきではないか。教師が同僚とざっくばらんにいじめの問題について情報交換したり、意識を高め合ったり、他にも、例えば生徒会の代表やPTAから参加する者がいてもよいだろうし、そういった組織こそが、この法律が望んでいる組織ではないか。

【副座長】
 学校を挙げて取り組んでいく以上、管理職がリーダーシップをとり、責任を持っていじめの問題に対処していくことは必要。構成員としては、全学年にまたがって情報の集まる養護教諭や、生徒指導を中核で動かしている生徒指導担当教員等が参加することを基盤として、その上で学校が、場合によってはPTAの方にも入っていただくなど工夫をしていけばよいのでは。本組織はいじめ問題に取り組む中核を担う組織なので、事案に応じて適切な者を入れることができる柔軟な組織とした上で、中核となる者は一般的にはこう想定される、という書きぶりがよいのでは。

【座長】
 事態への対処もこの組織の役割の一つなので、組織の構成員としては、やはり学校の教職員や専門的な知識を有する者たちに限定せざるを得ないと思う。個人情報に関わるものを扱うので、特に生徒の代表などは、事態に応じて判断すべきではないか。

【委員】
 私立学校の部活動では、教員ではなく外部指導者が問題を起こすケースがあり、「部活動顧問」という書きぶりは、例示的にしていただきたい。

【座長】
 「情報の共有化」、すなわち「ホウレンソウ」が欠けているのが教育組織の最大の欠陥ではないか。一定の役割を分担した実効性ある機能的な組織がつくられ、情報の共有が円滑に進むことが必要。

【文部科学省】
 議論を踏まえ、組織の構成に関しては、「複数の教職員」が指す者を例示すること、いじめの問題への対応の中核でありかつ柔軟に対応できる組織とすること、情報の共有が円滑に進み、いじめの予防や対応が実効的に行われることを盛り込んだ記載としたい。

 (p.29)当該調査の公平性・中立性

【座長】
 「公平性・中立性を確保するよう努める」と記載されているが、現在、既に実態として、これら調査委員会に対していろいろな干渉波が様々な形で出てきており、それが紛争の元になって調査が一向に進まないという事態も生じている状況があり、「調査そのものの公平性・中立性をしっかりと確保する」ということを、ここで念を押しておく必要がある。

 (p.30)資料提供及び結果の尊重

【委員】
 「この調査が附属機関等を設置して行われる場合でも」との記載では、特定の場合にのみ学校が組織に協力するという意味合いになってしまう。ここでは、限定をかけた表現にする必要はないのでは。

【文部科学省】
 その通りである。要は、学校は、調査主体に対して、積極的に資料を提供すること、調査結果を重んじること、主体的に再発防止に取り組むことが必要。

 (p.31)いじめられた児童生徒からの聴き取りが可能な場合の対処

【委員】
 現に学校に登校中の子供や、不登校だが学校に復帰をしたい子供については、単なる調査をすればいいわけではなく、当該児童生徒が安心して登校できるための対処が必要で、要するに関係修復が必要であるということを盛り込んでほしい。

【座長】
 「いじめられた児童生徒」だけでなく、「情報提供した児童生徒」を守り通すという視点も重要。いじめがあったら教えてと言ってもなかなか言わない。あるいは、被害に遭った子供が先生になかなか言わないというのも、仕返しや報復行為を恐れているといった場合がある。この点は現場でしっかりと認識しなければならない事柄。

 (p.33)その他の留意事項

 青字部分は異論なし

【委員】
 「いじめられた児童生徒の就学校の指定の変更や区域外就学等いじめられた児童生徒の支援のための弾力的な対応などを、検討することも必要である」との記載について、これは当然だと思うが、学校現場で今問題になっているのは、いじめられた児童生徒がなぜ転校しなければならないのかなどの点である。いじめた生徒についても、そういった対処の在り方を考えていかなければならない時代になってきているのではないか。

【座長】
 いじめられた児童生徒の就学校の指定の変更について、この部分は「いじめられた児童生徒並びに保護者が希望する場合」とするべきであろう。

 (p.36)第三者等

【委員】
 「地方公共団体が設置している監査組織等を活用しながら調査を進めることなども考えられる」との記載に関連して、法成立以前に既に各地で設置している独自の第三者委員会的な組織が再調査をすることについても、妨げることはないという解釈でよいか。

 その他

【委員】
 「心理、福祉の専門家」の例示として「臨床心理士」が記載されているが、心理に関しては、「臨床心理士」だけでなく「学校心理士」などもあり、記載に当たっては「心理、福祉の専門家」という言葉で統一してはどうか。

(3)最後に、文科省から、今後の会議の進め方について説明があった。

── 了 ──

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成25年11月 --