平成25年9月5日(木曜日) 13時~15時30分
中央合同庁舎4号館12階1214会議室
(1)いじめ防止基本方針の策定について
(2)その他
安倍委員、新井委員、尾上委員、小泉委員、國分委員、實吉委員、高田委員、田中委員、野島委員、野原委員、藤川委員、森田委員、山浦委員、山田委員
谷川文部科学副大臣、義家大臣政務官、義本大臣官房審議官、白間児童生徒課長、池田生徒指導室長、春山課長補佐、鈴木生徒指導調査官 他
(1)文科省より、事務局作成の「いじめ防止基本方針」について説明がなされ、委員から意見が出された。
【文科省】
基本方針は、
1)はじめに
2)第1いじめの防止等のための対策の基本的な方向に関する事項
3)第2いじめの防止等のための対策の内容に関する事項
4)第3その他いじめの防止等のための対策に関する重要事項
から構成。2)では、いじめの定義や理解、いじめの防止に関する基本的な考え方について、3)では、いじめの防止等のために国、地方公共団体、学校が実施すべき施策、及び重大な事態への対処について定めている。
《基本方針全般について》
【委員】
本法律にのっとった方針としての方向性を明確にすべきではないか。一つは危機管理の視点、もう一つは費用対効果の視点。危機管理というのは、いじめが生じ得る、あるいは、いじめが深刻化し得るリスクとなる要因を広く挙げて、それらを解消していくという観点。例えば、学級崩壊が起きている学級でいじめを抑止するというのは非常に困難。ここには加配教員などをつけるなどの予算的な措置による解決が必要。
【委員】
これまで行ってきたいじめ施策と、今回新たに法が制定されたことによる違いは何か。これこそが最も重要な総論として冒頭に書かれなければならない。これまでのいじめ施策と異なる特色は、附属機関などが設けられたこと。
【座長】
基本方針の策定に当たって、これ一冊で全てを網羅して完成させるのか、あるいは、別途、例えば、ガイドラインなり、指導の手引きなりという形で示すのか。基本方針が教育現場に手渡されたときに、その活用の仕方というものにも関わってくるところ。
《「第1 いじめの防止等のための対策の基本的な方向に関する事項」について》
【座長】
いじめの問題への対応においては、個々の教員の資質向上だけでは限界があり、いかに組織として機能し対応していくかが重要。その視点が今回の新しい一つの提案。
また、いじめという問題に何を関連させて取り扱うか。暴力等の犯罪、特別支援、偏見差別、格差、これらの問題も触れておく必要がある。
【委員】
本法律は、生徒指導と個々の教員の力量を高めるところに特徴がある。教員が教育の要。教員に、いじめを含む生徒指導の技法をどんどん勉強してもらうことが重要。
【委員】
総論の中にいじめの原因論を入れる必要がある。どの子供でも、どの学校でもいじめは起こり得るというのは、なぜそう言えるのか。原因論なしには対策は出てこない。
【委員】
教員が多忙な状況にある中で、やはり教師の働く環境の改善、チームワークを構築し余裕を持っていじめに対処できる体制をつくるということを、方向性として出しておく必要がある。
【委員】
学校現場に多忙感はあるが、忙しいと思えば忙しいが、そこを参画意識を持ってやれば、忙しいという気持ちにはならない。同じ目的に向かって進む教師集団の在り方を考えていく必要もある。
【文科省】
教員の多忙さの解消について、必要なものについては予算要求という形で対応。
【委員】
私立学校では、日常の学校生活で出てきた問題にどう対処していくかは、学校設置者である理事長なり、学校の運営を任されている校長の見識にかかってくる。私立学校については、各学校が責任を持ってやっていると考えていただきたい。
【委員】
いじめの定義について、スポーツ少年団や塾など学校外の場でのいじめもあり、そういう場で起きるいじめについても触れる必要がある。
《「第2 いじめの防止等のための対策の内容に関する事項」について》
《国が実施すべき施策》
【委員】
基本方針では、国が実施すべき施策にかなりの量があるべき。逆に、地方公共団体や学校がすべきことについては、地方公共団体等に任せる部分があり、骨格等だけを示せばよいのではないか。
【委員】
本法律では、国の組織設置について何らうたわれていない。積極的な施策の一つとして一定の組織を作るということは、法の目から見ても推奨されるべき。
また、地方公共団体等が第三者性のある組織、機関を設置する際、その人選は難しい。そこで、国が、日本弁護士連合会や日本医師会といった全国規模の職能団体等と協議会を設け、地域での専門家の人選について支援できる体制を整えるなどの対応が考えられる。
【文部科学省】
国の関わりについて、現行の地方教育行政上は、国が学校及び地方自治体の教育委員会に対して権限がない。現行の法律の中でできる最大限のことは何なのかという議論をしていただきたい。
また、国と全国規模の職能団体との連携について、大いに前向きなプランとして検討すべき重要事項。
【委員】
社会総がかりで、子供たちのいじめをどう解決していったらいいのかという機運を醸成することが重要。子供たちの豊かな心を育成するために、社会は一体何をしたらいいかという発信をテレビ放映やインターネット等でしていくことが重要。
《地方公共団体が実施すべき施策》
【委員】
14条3項の教育委員会の附属機関について、「置くことができる」という任意の規定を、地方もできる限り積極的に取り組むよう書きぶりを改めるべき。また、重大事態時に迅速な対応が可能であることや、学校や教育委員会に対して信頼関係が壊れ不信感を持っているいじめ事案もあることから、平時から附属機関が設置されていることは非常に望ましい。
【文部科学省】
附属機関について、置くことが望ましいか望ましくないかというより、起こった事象についてどう対応するか、どう対応することが正しいのかということを、この協議会で議論して、発信していくことが重要であろう。
【座長】
地方公共団体といっても、都道府県レベルの問題と市町村レベルの問題、また、市町村教育委員会と都道府県教育委員会との関係付け、これらの点も考えながら、もう少し細かく砕いていく必要がある。
【委員】
私立学校では、いじめが発生した際、即対応していかないと、新入生徒募集が成り立たないという状況があり、いじめ防止ということに視点を置いて指針を出していく必要がある。
【委員】
地方公共団体、あるいは、学校に基本方針を作ってもらう手順として、指導主事等を集めて会議等を持つのか。その方が徹底も図りやすいし、現場も基本方針が作りやすい。
【文部科学省】
定めていただいた基本方針について、全国の担当の方に集まっていただき、文科省から詳細説明させていただくことを検討する。
《学校が実施すべき施策》
【委員】
学級で子供同士の人間関係が深まるようなプログラムを展開したり、学級担任が普段からクラスの子供と週に1回は交換日誌でコメントを書いたりして、子供同士の人間関係、教師と子供の人間関係を深めていく。また、学校でのいじめ予防として、教員全部を上手にコーディネートする生徒指導担当教員を常駐させるシステムを作る必要がある。
【委員】
アンケートの実施について、月1回必要ではないか。また、年間計画にいじめの防止に係る内容を盛り込むなどして、教師、子供に意識させないとこの問題は解決できないのではないか。
【委員】
学校の組織について、方針(案)では、「改めて新たな組織を設ける必要はなく」とあるが、原則として、新しい組織、いじめに特化した組織、第三者が参加し得る組織というふうに記載する必要がある。そして、ただし書きとして、規模の小さい学校では現実に即応して柔軟に対応しても構わないと記載されるべき。
【委員】
東京都の小学校の場合、子供たちの生活指導全体を把握している者として生活指導主幹を配置。また、生活指導の問題等について月1回組織的に対応。特に、いじめの問題があったときに、学校全体として、些細なことでも組織的に共有して対応していくという意識を常に校長として教員に伝えている。
【委員】
相談で得た個人情報について、依頼者に相談もなく学校に通報してしまうことが行われていて、そこが相談する児童生徒や保護者の信頼を損なっている。共有を否定するものではないが、両方大事だからこそ、文科省が、守秘義務はどうあるべきか、個人情報の管理保護はどうあるべきかなど、きちんとガイドラインに示すべき。
【委員】
ある教員が、「きょうは○○ちゃんが風邪引いて休んでる」とクラスで言ったら、その母親が「『○○は休んでる』だけで結構です。風邪引いてるなんていうのは余計なことです」と言って怒ったそうだが、このような守秘義務で教員が縛られたら心の通う教育はできない。いじめを起源に、同じプロフェッショナルの教師と、プロフェッショナルの治療者と、プロフェッショナルの弁護士と、やはり違いがあるということは認識してほしい。
【委員】
「いじめに対する措置」の項目で、「いじめが起きた集団への働きかけ」や「傍観者や観衆になった児童生徒への働きかけ」等の集団への対応も記載する必要がある。
【委員】
山口県にはCRTという第三者組織があり、緊急対応時には学校を支援。その際、子供に悪影響を及ぼす報道の制限などについて、報道機関との協定はかなり綿密に行っている。そこには、隠蔽しないことが前提であるとか、記者会見の仕方であるとか、マスコミ対応の在り方がある程度蓄積されている。
【委員】
私立学校の場合には、危機管理というのは常に頭の中にあり、報道対応をどうするかというのは学校の中で決まっている。
【委員】
隠蔽しないことこそ大事という点が、今回非常に明確に出されたことについて歓迎。それに加え、地方公共団体に第三者機関や附属機関があると、きちんと解明していこうという機運が生まれる。
【委員】
学校で事件が起きたときに、学校で隠蔽するといったことは通用しないということを校長は認識している。また、過去の事件の判例等における、学校の安全配慮義務等を校長自身がしっかり押さえていけば問題はそれほど大きくはならないだろう。
《重大な事態への対処》
【副座長】
「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」において、自殺が起きたときのガイドラインを策定し、自殺事案の背景調査において活用されているが、現在、課題を洗い出しガイドラインの修正をし始めているところ。本協議会の中でも、同様の背景調査の問題が出てくるが、ここでの議論と自殺予防会議での議論とをすり合わせないと、現場は非常に混乱するのではないかと思われる。
【委員】
副座長の問題提起について、本協議会は組織の在り方、あるいは、中立性、公平性を保つためのシステムの在り方について中心に議論するべきだと思う。
【座長】
国が定める調査委員会の目的は、一点目は遺族の思いに対してどう対応するかという観点。二点目は、同様の事案が二度と再発しない、そのための在り方をどうすればいいのかという観点。重大事案が再発しないようにするために、学校としての取組をどう進めていくかということは非常に大事な論点。条文にもそれが反映されている部分があり、その点をしっかりと記載する必要がある。
【委員】
子供たちの人間関係からいじめが行われて、そこで重大な傷害が起きたり、金銭のやり取りがあったりした場合、警察事案になると考えるが、その場合の学校・教育委員会の調査と、刑事事件の調査がおのずと違ってきて、学校としての限界があると思われるが、その点はどうか。
【文部科学省】
犯罪に抵触する場合は、しっかりと警察と連携して対応すべきであろう。一方で、警察に通報して、当該の一部の児童が何らかの調査を受けているから、それでいいだろうというのでは全くなく、見て見ぬふりをしてきた状況はどういう形だったのかとか、今後どのようにしていくのか等、調査委員会できちんと調査する必要はあるだろう。
【委員】
例えば、文科省と警察庁が刑事事件と教育問題としての調査との関係について、協議の機会を持つなどして、現場で警察と連携できる体制の支援を行うことが重要。
【座長】
警察と教育委員会とが、どれだけ日頃からの信頼関係を構築できているかというところが重要。
(2)最後に、文科省から、今後の会議の進め方について説明があった。
── 了 ──
初等中等教育局児童生徒課
-- 登録:平成25年11月 --