児童虐待防止対策に係る学校等及びその設置者と市町村・児童相談所との連携の強化について

府子本第189号
30文科初第1616号
子発0228第2号
障発0228第2号
平成31年2月28日


   都道府県知事
   都道府県教育委員会教育長
   指定都市市長
   指定都市教育委員会教育長
   中核市市長
   児童相談所設置市市長
   附属学校を置く国立大学法人学長
各  附属学校を置く公立大学法人学長          殿
   小中高等学校を設置する学校設置会社
   を所管する構造改革特別区域法第12条
   第1項の認定を受けた地方公共団体の長
   独立行政法人国立高等専門学校機構理事長
   高等専門学校を設置する地方公共団体の長
   高等専門学校を設置する公立大学法人の理事長
   高等専門学校を設置する学校法人の理事長
 

内閣府子ども・子育て本部統括官
(公印省略)
文部科学省総合教育政策局長
(公印省略)
文部科学省初等中等教育局長
(公印省略)
文部科学省高等教育局長
(公印省略)
厚生労働省子ども家庭局長
(公印省略)
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長
(公印省略)


児童虐待防止対策に係る学校等及びその設置者と市町村・児童相談所との連携の強化について

 児童虐待については、児童相談所への児童虐待相談対応件数が年々増加の一途をたどっており、子どもの生命が奪われるなど重大な事件も後を絶たないなど依然として深刻な社会問題となっている。
 このような状況から、学校等(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校、高等課程を置く専修学校、保育所、地域型保育事業所、認定こども園、認可外保育施設(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第59条の2第1項に規定する施設をいう。)及び障害児通所支援事業所をいう。以下同じ。)及びその設置者や市町村・児童相談所等の関係機関に対しては、「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」(平成30年7月20日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)等を踏まえた対応をお願いしているところであるが、本年1月に千葉県野田市で発生した小学校4年生死亡事案を受け、「「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」の更なる徹底・強化について」(平成31年2月8日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)が決定され、児童相談所及び学校における子どもの緊急安全確認を実施するなど緊急点検を実施し、抜本的な体制強化を図ることとされた。
 こうした対応を受け、増加する児童虐待に対応するため、とりわけ、学校等における児童虐待の早期発見・早期対応、被害を受けた子どもの適切な保護等について、学校等及びその設置者と市町村・児童相談所が連携した対応が図られるよう、下記に掲げる取組の徹底を改めてお願いする。
 なお、児童虐待への対応に当たっては、
 ・学校等においては、児童虐待の早期発見・早期対応に努め、市町村や児童相談所等への通告や情報提供を速やかに行うこと
 ・児童相談所においては、児童虐待通告や学校等の関係機関からの情報提供を受け、子どもと家 族の状況の把握、対応方針の検討を行った上で、一時保護の実施や来所によるカウンセリング、家庭訪問による相談助言、保護者への指導、里親委託、児童福祉施設への入所措置など必要な支援・援助を行うこと
 ・市町村においては、自ら育児不安に対する相談に応じるとともに、市町村に設置する要保護児童対策地域協議会の調整機関として、支援を行っている子どもの状況把握や支援課題の確認、並びに支援の経過などの進行管理を恒常的に行い、自ら相談支援を行うことはもとより関係機関がその役割に基づき対応に当たれるよう必要な調整を行うこと
 ・警察においては110番通報や児童相談所等の関係機関からの情報提供を受け、関係機関と連携しながら子どもの安全確保、保護を行うとともに、事案の危険性・緊急性を踏まえ、事件化すべき事案については厳正な捜査を行うこと
等といった固有の責務を関係機関それぞれが有しており、こうした責務を最大限に果たしていくことを前提として下記の連携などの取組を進めることが必要である。
 
 都道府県においては管内市区町村、所轄の私立学校及び関係機関へ、都道府県教育委員会・指定都市教育委員会においては管内市区町村教育委員会、所管の学校及び関係機関へ、指定都市・中核市・児童相談所設置市においては関係機関へ、附属学校を置く国立大学法人及び公立大学法人においては附属学校へ、独立行政法人国立高等専門学校機構並びに高等専門学校を設置する地方公共団体、公立大学法人及び学校法人においてはその設置する学校へ、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体においては認可した学校へそれぞれ周知いただきたい。
 なお、本通知については、警察庁生活安全局と協議済であることを申し添える。



1.今回事案を踏まえて対策の強化を図るべき事項

(1) 要保護児童等の通告元に関する情報の取扱いについて 
  市町村・児童相談所においては、保護者に虐待を告知する際には子どもの安全を第一とするとともに、通告者保護の観点から、通告元(児童虐待の防止等に関する法律第6条第1項に規定する児童虐待に係る通告を行った者をいう。)は明かせない旨を保護者に伝えることを徹底すること。

(2)要保護児童等の情報元に関する情報の取扱いについて
  学校等及びその設置者においては、保護者から情報元(虐待を認知するに至った端緒や経緯をいう。以下同じ。)に関する開示の求めがあった場合は、情報元を保護者に伝えないこととするとともに、児童相談所等と連携しながら対応すること。
さらに、市町村・児童相談所においては、子どもの安全が確保されない限り、子どもからの虐待の申し出等の情報元を保護者に伝えないこと。
現に、保護者との関係等を重視しすぎることで、子どもの安全確保が疎かになり、重大な事態に至ってしまう事例が生じていることに十分留意すべきである。

<児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策の更なる徹底・強化『2新たなルールの設定』>

(3)保護者からの要求への対応について
  学校等は、保護者が、児童虐待の通告や児童相談所による一時保護、継続指導等に関して不服があり、保護者から学校等に対して威圧的な要求や暴力の行使等が予想される場合には、複数の教職員等で対応するとともに、即座に設置者に連絡した上で組織的に対応すると同時に、設置者と連携して速やかに市町村・児童相談所・警察等の関係機関や弁護士等の専門家と情報共有することとし、関係機関が連携して対応すること。
  学校等の設置者は、保護者が、児童虐待の通告や児童相談所による一時保護、継続指導等に関して不服があり、保護者から学校等又はその設置者に対して威圧的な要求や暴力の行使等が予想される場合には、児童相談所・警察等の関係機関や弁護士等の専門家と情報共有することとし、関係機関が連携して対応すること。
また、学校等又はその設置者と関係機関が連携して対応した結果については、要保護児童対策地域協議会(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第25条の2に規定する要保護児童対策地域協議会をいう。以下同じ。)において、事案を共有し、今後の援助方針の見直し等に活用すること。

<児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策の更なる徹底・強化『2新たなルールの設定』>

(4)定期的な情報共有に係る運用の更なる徹底について
  学校等から市町村又は児童相談所への定期的な情報提供については、本通知と同日付けで「学校、保育所、認定こども園及び認可外保育施設等から市町村又は児童相談所への定期的な情報提供について」(平成31年2月28日付け内閣府子ども・子育て本部統括官、文部科学省総合教育政策局長、文部科学省初等中等教育局長、文部科学省高等教育局長、厚生労働省子ども家庭局長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長連名通知)を発出し、要保護児童等(要保護児童対策地域協議会において、児童虐待ケースとして進行管理台帳に登録されており、学校等に在籍する子ども。)の出欠状況や欠席理由等について、学校等から市町村又は児童相談所へ定期的に情報提供を行うこととし、その適切な運用をお願いしたところである。
  当該通知の運用に当たっては、当該要保護児童等に関して、不自然な外傷、理由不明の欠席が続く、虐待の証言が得られた、帰宅を嫌がる、家庭環境の変化など、新たな児童虐待の兆候や状況の変化等を把握した時は、定期的な情報提供の期日を待つことなく、市町村又は児童相談所へ情報提供又は通告すること及び学校等又はその設置者から情報提供を受けた市町村又は児童相談所は、当該学校等又はその設置者から更に詳しく事情を聞き、組織的に評価した上で、状況確認、主担当機関の確認、援助方針の見直し等を行うこととともに「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」を踏まえて適切に警察と情報共有することについて、徹底されたい。
  また、学校等は保護者等から要保護児童等が学校等を欠席する旨の連絡があるなど、欠席の理由について説明を受けている場合であっても、その理由の如何にかかわらず、休業日を除き引き続き7日以上欠席した場合(不登校等による欠席であって学校等が定期的な家庭訪問等により本人に面会でき、状況の把握を行っている場合や、入院による欠席であって学校等が医療機関等からの情報等により状況の把握を行っている場合を除く。)には、定期的な情報提供の期日を待つことなく、速やかに市町村又は児童相談所に情報提供することについても、徹底されたい。(なお、障害児通所支援事業所におけるこれらの取扱いは、原則として当該障害児通所支援事業所をほぼ毎日利用している子どもを想定しているが、障害児通所支援事業所の利用頻度が低い又は利用が不定期である子どもについては、本取扱いに準じた取扱いとすることとし、具体的な内容については、別途お示しする。)
  その際、学校等又はその設置者から情報提供を受けた市町村又は児童相談所は、当該学校等又はその設置者から更に詳しく事情を聞き、組織的に評価した上で、状況確認、主担当機関の確認、援助方針の見直し等を行うとともに、「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」を踏まえて適切に警察と情報共有すること。
  ※詳細は、「学校、保育所、認定こども園及び認可外保育施設等から市町村又は児童相談所への定期的な情報提供について」(平成31年2月28日付け内閣府子ども・子育て本部統括官、文部科学省総合教育政策局長、文部科学省初等中等教育局長、文部科学省高等教育局長、厚生労働省子ども家庭局長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長連名通知)を参照されたい。

<児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策『関係機関(警察・学校・病院等)間の連携強化』>
<児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策の更なる徹底・強化『2新たなルールの設定』>

(5)児童虐待に関する研修の更なる充実について
  3.(1)記載のような研修の機会を活用するとともに、児童相談所の職員を講師に招くなどして、研修の充実に努めるほか、学校長等の管理職に対しても、児童虐待に関する具体的な事例を想定することなどによる実践的な研修に取り組まれたい。

<児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策の更なる徹底・強化『3児童相談所、市町村、学校及び教育委員会の抜本的な体制強化』>


2.ケース対応において留意すべき事項

(1)学校等からの通告・相談における連携 
  市町村・児童相談所は、学校等又はその設置者からの通告は、地域、近隣住民あるいは家族、親族からの相談とは異なり、通告した機関が特定される可能性が高いことを説明すること。学校等又はその設置者からは通告の事実を保護者に伝えないようにすること。その際、保護者に対する対応方法について、市町村・児童相談所と事前に綿密な協議を行った上で、連携した対応を図られたい。

<子ども虐待対応の手引き 第3章通告・相談の受理はどうするか 1.通告・相談時に何を確認すべきか
  (4)通告・相談者別の対応のあり方 ⑥『保育所、学校等からの通告相談』>

(2)保護者への告知の方法 
  保護者に虐待の告知をすることで、保護者の怒りが子ども本人に向かい、さらなる虐待を誘発することを避けるよう何よりも注意すること。在宅での援助を続けることを前提に虐待の告知を行う場合は、子どもの安全は守られるという見通しを持って行うことが不可欠であり、そのためには、援助の方向性を示すことで養育を改善することはできると保護者が感じられるような方針を持って説明をすることなどを心がけること。
  また、虐待の告知をした後、「余計なことは言うな」などと保護者が子どもの口を封じるなどして、子どもが正直に話さなくなることもあり得るので、その点も念頭に置いて、子どもの所属する機関(学校等)などと連携しながら子どもの様子に十分な注意を払うこと。
  保護者が虐待の告知を受け止められず、虐待であることを否認して養育態度を改める姿勢がないような場合には、子どもの保護を図るなど、在宅での援助という方針自体を再検討しなければならないこと。 <子ども虐待対応の手引き『告知の方法』>

 <子ども虐待対応の手引き 第4章調査及び保護者と子どもへのアプローチをどう進めるか 2.虐待の告知をどうするか(4)告知の方法 ①『虐待通告を受けて在宅で支援する場合の告知』>

(3)一時保護解除後の対応
  一時保護解除等により子どもが家庭復帰した後、児童相談所への来所が滞ったり、家庭訪問を拒んだり、不在が続くなど支援機関との関係が疎遠になるときは、子どもにとっての危機のサインであると考える必要があるため、学校等及びその設置者と市町村・児童相談所の間において、子どもから直接SOSを出せるような方法を確認しておくとともに、特に学齢期以降の子どもには関係機関の連絡先を伝えておくよう対応されたい。

 <子ども虐待対応の手引き 第10章施設入所及び里親委託中の援助 5.家庭復帰の際の支援 (4)家庭復帰後のケア>


3.児童虐待防止対策の強化を図るべき事項

(1)児童虐待防止に係る研修の実施について
  児童虐待を発見しやすい立場にある教職員等に対する児童虐待に関する研修の実施を促進されたい。
  学校等及びその設置者におかれては、教職員等が、虐待を発見するポイントや発見後の対応の仕方等についての理解を一層促進するため、以下の研修について受講を勧奨されたい。
  また、都道府県・市町村におかれては、主催する児童虐待防止に関する各種研修会について、教職員等の参加を呼びかけ、受講を促進されたい。
  なお、教職員等を対象とした研修事業(国庫補助事業)は以下のとおりであるので、積極的に活用されたい。

<児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策『児童虐待に関する研修の充実』>

  ○子どもの虹情報研修センター主催 『教育機関・児童福祉関係職員合同研修』
   学校や教育委員会で児童虐待に携わる者、市町村で児童虐待を担当する者、児童相談所職員による合同研修

  ○都道府県主催 『虐待対応関係機関専門性強化事業』
   地域で活動する主任児童委員、保育所職員、児童養護施設職員、ケースワーカー、家庭相談員等の子どもの保護・育成に熱意のある者を対象とした児童虐待等に関する専門研修。


  (以上)

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課