池田町における自殺事案を踏まえた生徒指導上の留意事項について(通知)

29初児生第28号
平成29年10月20日


 各都道府県教育委員会指導事務主管課長
 各指定都市教育委員会指導事務主管課長
 各都道府県私立学校主管課長
 附属学校を置く各国立大学法人担当課長
 附属学校を置く各公立大学法人担当課長   殿
 小中高等学校を設置する学校設置会社を
 所轄する構造改革特別区域法第12条
 第1項の認定を受けた各地方公共団体の担当課長


文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
坪田  知広

(印影印刷)

池田町における自殺事案を踏まえた生徒指導上の留意事項について(通知)


 平素より,学校等においては,生徒指導の不断の改善に御尽力いただいているところです。
 本年3月,福井県池田町において,中学2年生が自ら命を絶つという大変痛ましい事案が発生しました。本事案に関しては,生徒指導上の不適切な対応,学校における組織的な対応の欠如といった諸課題があることが指摘されています。
 この度,下記のとおり,本事案の生徒指導上の課題を踏まえた各教育委員会,各学校等における留意事項を示すこととしました。
 貴職におかれては,域内の学校及び学校の設置者において適切に生徒指導が行われ,同種の事案の再発防止が徹底されるよう御指導いただくとともに,都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して,都道府県にあっては所轄の学校法人及び私立学校に対して,附属学校を置く国立大学法人及び附属学校を置く公立大学法人にあっては附属学校に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体にあっては認可した学校に対して,本通知を周知くださるようお願いします。

1.生徒指導の在り方
(1)生徒指導の基盤
   生徒指導の基盤は,児童生徒理解の深化とともに,教職員と児童生徒との信頼関係を築くことにあることを踏まえ,生徒指導に当たっては,児童生徒の持つそれぞれの特徴や傾向をよく理解し,個々の児童生徒の特性や発達の段階に応じた指導を行う必要があること。反対に,児童生徒の特性や発達の段階を十分に考慮することなく,いたずらに注意や叱責を繰り返すことは,児童生徒のストレスや不安感の高まり,自信や意欲の喪失,自己評価,自尊感情の低下を招き,児童生徒を精神的に追い詰めることにつながりかねないことに留意すること。
また,問題行動の増加への予防や対策として,特に,中学校では規範意識を養うための毅然とした指導も行われるようになるが,生徒指導とは,児童生徒の人格を尊重し,個性の伸長を図りながら,社会的資質や行動力を高めることを目指して行われるべきものであることに常に立ち返り,児童生徒への共感的理解に努めつつ,指導方法や指導体制を継続的に工夫・改善することが重要であること。
加えて,教職員による不適切な指導等が不登校のきっかけとなる場合もあるところであり,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本方針」(平成29年3月31日,文部科学省)にあるとおり,教職員による体罰や暴言等,不適切な言動や指導は許されないこと。

(2)組織的な生徒指導
   複雑化・多様化する児童生徒の抱える課題を解決するためには,学級担任・ホームルーム担任が一人で問題を抱え込むのではなく,管理職,生徒指導担当,教育相談担当,学年主任,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーなどの教職員が一体となり,学校として組織的に対応することが重要であること。特に,児童生徒が抱える課題の背景には,家庭環境をはじめとする児童生徒を取り巻く様々な環境が影響を及ぼしている事例が少なくなく,そのような事例に適切に対応するためには,いち早く学校内で情報を共有し,チームを組み,早期から対応していくことが大切であること。

(3)学校種間の連携
   児童生徒の抱える課題に適切に対応していくためには,就学前から小学校,小学校から中学校,中学校から高等学校への系統的,継続的な生徒指導体制の構築が大切である。このことを踏まえ,教職員一人一人が就学前段階から高等学校段階までのつながりの中での各学校種の役割を認識して計画的に指導を行うとともに,学校種を超えた連携を深め,各学校において適切な関わりができるよう情報の共有を行うこと。

(4)校長のリーダーシップ
   学校運営と生徒指導は相互に深く関わり合うものであることを踏まえ,各学校の校長は,リーダーシップを発揮して学校運営の方向性を示すとともに,生徒指導上の問題が生じた場合は,校長のリーダーシップの下,指導の方針を明確に示し,問題が深刻化する前に組織的かつ迅速に対応することが重要であること。

(5)保護者や地域等との連携
生徒指導は,学校の中だけで完結するものではなく,家庭や地域社会及び関係機関等との連携・協力を密にしていくことが重要であることから,保護者との間で学校だよりや学級・学年通信等,あるいはPTAの会報,保護者会などにより相互の交流を深めることが大切であること。また,地域住民に学校だよりなどを配布し,学校としての指導方針や教育活動の現況を広報したり,地域懇談会や関係機関等との懇談会などを通して交流と連携を深めたりするなどの取組が必要であること。

2.学校の設置者等の対応
(1)学校の設置者は,所管の学校における生徒指導が適正に行われているかどうかについて,平素から校長及び教職員と連携を取り,各学校の課題等について常に学校と情報を共有し,必要に応じて速やかに指導,助言又は援助を行うこと。

(2)万が一生徒指導上の不適切な対応等を原因として,児童生徒の自殺又は自殺が疑われる死亡事案が発生したときは,学校及び学校の設置者は,「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」(平成26年7月,文部科学省)に従って背景調査を行うことが必要であり,いじめや体罰が背景に疑われる場合と同様に,基本調査だけでなく詳細調査についても実施すること。
   その際,遺族に寄り添いながら,遺族の心情を理解して丁寧に対応することが重要であり,特に,基本調査から詳細調査への移行に当たっては,学校及び学校の設置者は,遺族に対して,調査の趣旨等や調査の手法,調査組織の構成,調査に要する期間,入手した資料の取扱い,遺族に対する説明の在り方等について説明するとともに,これらに対する遺族の要望を,詳細調査の中で,十分に配慮していくこと。



お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)