平成29年6月7日 児童生徒の自殺予防に係る取り組みについて(通知)

29初児生第17号
平成29年6月7日

  各都道府県教育委員会指導事務主管部課長
  各指定都市教育委員会指導事務主管部課長
  各都道府県私立学校主管部課長
  附属学校を置く各国立大学法人の長             殿
  小中高等学校を設置する学校設置会社を
  所轄する構造改革特別区域法第12条
  第1項の認定を受けた各市町村担当部課長


文部科学省初等中等教育局児童生徒課長       
 坪田  知広

                                                                              (印影印刷)
                                                       


児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)


 平素より,文部科学行政に対する御理解・御協力を賜り誠にありがとうございます。
標記については,これまでも自殺対策基本法(平成18年法律第85号)等に基づき,学校において,児童生徒の自殺予防に係る取組の徹底に積極的に取り組んでいただいているところです。
しかしながら,近年,自殺者全体の総数は減少傾向にあるものの,自殺した児童生徒数はおおむね横ばいとなっているところです。
自殺対策白書の資料でも指摘されているとおり,18歳以下の自殺は,8月下旬から9月上旬等の学校の長期休業明けにかけて急増する傾向があります。これらの時期にかけて,学校として,児童生徒の自殺予防について組織体制を整え,下記に掲げる取組を強化することは,児童生徒の尊い命を救うことにつながります。学校として,保護者,地域住民,関係機関等と連携の上,長期休業明けにおける児童生徒の自殺予防に向けた取組を積極的に実施するようお願いします。
貴職におかれては,下記の事項について御留意いただき,都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対し,都道府県にあっては所轄の私立学校に対し,国立大学法人にあっては附属学校に対し,株式会社立学校を認定した市町村担当部課にあっては認可した学校に対し,周知を図るとともに,適切に対応いただきますよう御指導をお願いします。



1.自殺予防に係る具体の取組について
 毎年,8月下旬から9月上旬等の学校の長期休業明けにかけて児童生徒の自殺が急増する傾向があることを踏まえ,以下に掲げる取組を,学校が保護者,地域住民,関係機関等と連携の上,これらの期間において集中的に実施することが考えられる。本年度においては,特に,(1)及び(2)の取組について,各学校において確実に実施すること。
(1)学校における早期発見に向けた取組
 各学校において,長期休業の開始前からアンケート調査,教育相談等を実施し,悩みを抱える児童生徒の早期発見に努めること。学校が把握した悩みを抱える児童生徒や,いじめを受けた又は不登校となっている児童生徒等については,長期休業期間中においても,全校(学年)登校日,部活動等の機会を捉え,又は保護者への連絡,家庭訪問等により,継続的に様子を確認すること。特に,長期休業の終了前においては,当該児童生徒の心身の状況の変化の有無について注意し,児童生徒に自殺を企図する兆候がみられた場合には,特定の教職員で抱え込まず,保護者,医療機関等と連携しながら組織的に対応すること。また,児童生徒からの悩みや相談を広く受け止めることができるよう「24時間子供SOSダイヤル」をはじめとする相談窓口の周知を長期休業の開始前において積極的に行うこと。
(2)保護者に対する家庭における見守りの依頼
 保護者に対して,長期休業期間中の家庭における児童生徒の見守りについて依頼すること。保護者が把握した児童生徒の悩みや変化については,積極的に学校に相談するよう,学校の相談窓口を周知しておくこと。その際,「24時間子供SOSダイヤル」をはじめとする電話相談窓口も保護者に対して周知しておくこと。なお,これらの各家庭における保護者による見守りについては,長期休業の開始前又は長期休業期間中における保護者会等の機会や学校(学級)通信を通じて,保護者に依頼することが考えられること。
(3)学校内外における集中的な見守り活動
 長期休業明けの前後において,学校として,保護者,地域住民,関係機関等と連携の上,学校内外における児童生徒への見守り活動を強化すること。特に,児童生徒が自殺を企図する可能性が高い場所については,これらの時期に見守り活動を集中的に実施することが有効である。例えば,鉄道による自殺を防ぐために,在籍する児童生徒の多くが利用する駅及び踏切における見守り活動を,駅又は鉄道会社と連携して長期休業明けの前後に集中的に実施することが考えられること。なお,教職員等の学校関係者が駅等における見守りを実施する際は,見守り活動の時期,方法等について,各学校から駅又は鉄道会社に対して事前に協力を依頼し,駅又は鉄道会社からの指示を踏まえた上で計画的に実施すること。
(4)ネットパトロールの強化
 児童生徒によるインターネット上の自殺をほのめかす等の書き込みを発見することは,自殺を企図している児童生徒を発見する端緒の一つである。このため,都道府県教育委員会等が実施するネットパトロールについて,長期休業明けの前後において,平常時よりも実施頻度を上げるなどしてネットパトロールを集中的に実施すること。自殺をほのめかす等の書き込みを発見した場合は,即時に警察に連絡・相談するなどして当該書き込みを行った児童生徒を特定し,当該児童生徒の生命又は身体の安全を確保すること。
2.自殺対策基本法第17条第3項に定める教育又は啓発の実施状況に係る調査結果について
  この度,自殺対策基本法第17条第3項に定める教育又は啓発の実施状況に係る調査結果を別添のとおりとりまとめた。当該教育又は啓発については,「自殺対策基本法の一部を改正する法律の施行について」(平成28年4月27日付け28文科初第219号文部科学省初等中等教育局長・生涯学習政策局長・高等教育局長通知)等において,「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」(平成26年7月文部科学省)を活用するなどして取組を行うよう,依頼してきたところ。
 ついては,各教育委員会等においては,以下に掲げる事項に留意の上,各学校における自殺対策基本法第17条第3項に定める教育又は啓発がより一層適切に推進されるよう指導及び支援を行うこと。なお,本調査結果については,今後,文部科学省において有識者の協力を得ながら分析・検討を行っていく。
(1)高等学校における取組の充実
 平成28年における児童生徒の自殺者数は,小学校の12人,中学校の93人に対し,高等学校では214人と多くなっている。今回の調査結果も踏まえつつ,高等学校において,可能な限り時間を確保しながら,当該教育の充実を図るよう努めること。
(2)文部科学省が作成した教職員向け手引及び啓発教材の活用
 これまでも,文部科学省において「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育の手引)」(平成26年7月文部科学省)や健康問題について総合的に解説した啓発教材を,研修教材等として活用すべきことを周知しているところであるが,今回の調査結果では,必ずしも十分に活用されていない状況が見られた。改めて,各学校で適切に活用し,研修等を行うよう周知徹底すること。
(3)自殺予防に向けた啓発の実施
 今回の調査結果では,小学校,中学校及び高等学校を通じて,自殺予防に向けた啓発が十分に行われていない状況が見られた。改めて学校の設置者又は学校として,児童生徒に対して,「24時間子供SOSダイヤル」をはじめとする相談窓口の周知を含め,自殺予防に向けた啓発を行うこと。


【参考】
○「平成27年版自殺対策白書(抄)」
○「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)」
○「子供に伝えたい自殺予防」
 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/063_5/gaiyou/1351873.htm
○「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/gaiyou/1259186.htm 
○「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/11/11/1304244_01.pdf
○健康問題に関する啓発教材(「わたしの健康(小学校5年生用)」,「かけがえのない自分,かけがえのない健康(中学生用)」,「健康な生活を送るために(高校生用)」)
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1353636.htm

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

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