平成27年8月17日 平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の一部見直しについて(依頼)

27初児生第26号
平成27年8月17日


各都道府県教育委員会指導事務主管部課長 
各都道府県私立学校主管部課長  殿
附属学校を置く各国立大学法人担当課長
株式会社立学校を認定した各市町村担当部課長


文部科学省初等中等教育局児童生徒課長       
       坪田  知広

(印影印刷)


平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に 関する調査」の一部見直しについて(依頼)


 平素より、文部科学行政に対する御理解・御協力を賜り誠にありがとうございます。
  先日、岩手県矢巾町で中学2年生が自殺した事案では、亡くなった生徒がアンケート調査にいじめを受けている旨を記載したものの、学校は、人間関係上のトラブルと捉え、しかもそのトラブルは解決済みと判断し、結局いじめと捉えませんでした。全国的にも、この事案と同様、いじめとして認知されず、組織的な対応がなされていない事案があるのではないかと懸念しており、さきに発出した「いじめ防止対策推進法に基づく組織的な対応及び児童生徒の自殺予防について」(平成27年8月4日付け27初児生第20号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)においても緊急の点検をお願いしたところです。
 また、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(以下「問題行動等調査」という。)における児童生徒1,000人当たりのいじめの認知件数については、都道府県間の差が極めて大きい状況でありますが(別添1のとおり、平成25年度分調査では最大で約83倍の差となっている。)、実態を正確に反映しているとは考え難く、問題行動等調査が国の施策を考える上で極めて重要な指標であることを踏まえると、看過し得ない課題となっています。
 そこで、このたび、いじめの認知について抽出による聴き取り調査を実施した結果、いじめの認知をめぐる課題が明確になったので、従来、示しているものも含め、いじめの認知に関する考え方を記1のとおり示します。
  ついては、都道府県教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対し、都道府県にあっては所轄の私立学校に対し、国立大学法人にあっては附属学校に対し、株式会社立学校を認定した市町村担当部課にあっては認可した学校に対し、下記事項を周知するとともに、正確な状況の把握のため、既に提出いただいた平成26年度問題行動等調査「調査Ⅱ 平成26年度における小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校におけるいじめの状況等」についてのみ、記2に記載の留意点を踏まえて見直しを行い、再度御提出いただくようお願いします。その際、各学校に対しては、アンケート調査や個別面談の結果、いじめの防止等の対策のための組織で共有した情報などを丁寧に精査し、認知漏れの絶無を期するよう御指導願います。
  なお、提出の方法は、原則として平成26年度問題行動等調査と同様であり、詳細は、別添3を参照してください。


1  いじめの認知に関する考え方

(1) いじめは、社会性を身に付ける途上にある児童生徒が集団で活動する場合、しばしば発生するものである。例えば、言い過ぎてしまい相手を傷付ける、自分勝手な行動をとって周囲の反感を買うなど、子供たちは、成長の過程で様々な失敗を経験するのであるが、その中には、いじめに該当するものもしばしば含まれる。したがって、どの学校においても、一定数のいじめが認知されるのが自然である。
(2) 初期段階のいじめは、子供たちだけで解決に至ることも多々あり、大人が適切に関わりながら自分たちで解決する力を身に付けさせることも大切である。しかし、いじめは予期せぬ方向に推移し、自殺等の重大な事態に至ることもあることから、初期段階のいじめであっても学校が組織として把握し(いじめの認知)、見守り、必要に応じて指導し、解決につなげることが重要である。
(3) 世間の耳目を引くいじめ事案が発生した直後に認知件数が急増し、翌年度から漸減する傾向があるが、このことは、いったんは事案を深刻に受け止めるものの、徐々に風化していくことを反映していると考えるべきである。この例に限らず、いじめの認知件数が減少した場合に、対策が奏功したものと即断することは禁物であり、減少の理由を十分考察する必要がある。
(4) 各学校においては、発生しているいじめを漏れなく認知した上で、その解消に向けて取り組むことが重要である。そのため、文部科学省としては、いじめの認知件数が多い学校について、「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と極めて肯定的に評価する。
  反対に、いじめの認知件数が零又は僅少である学校については、真にいじめを根絶できている場合も存在するであろうが、解消に向けた対策が何らとられることなく放置されたいじめが多数潜在する場合もあると懸念している。そのいずれであるかを検証するための有効な手段として、特に、昨年度中におけるいじめの認知が零であった学校においては、当該事実を児童生徒や保護者向けに公表し、検証を仰ぐことで認知漏れがないか確認されたい。
  また、各教育委員会等は、学校や教職員の評価において、「積極的にいじめを認知し、適切に対応すること」を肯定的に評価する必要がある。
(5) 「いじめの真の発生件数/児童生徒数」に、都道府県間で数十倍の差があるとは考えられないことから、仮に、今回の再調査の結果、平成25年度分調査における児童生徒1,000人当たりの認知件数が上位に属さない都道府県において同件数が急増したとしても、それは、いじめの認知が正確に行われるようになり、実態をより正確に反映した数値になったというだけで、その都道府県におけるいじめの発生が増えたと捉える必要はないと考えられる。

2 見直しに当たり留意すべき点
(1) 初期段階のいじめや、ごく短期間のうちに解消したいじめ事案(解消したからといっていじめが発生しなかったことになるものではない)についても遺漏なく認知件数に計上すること。
(2) 対人関係のトラブルと捉えていた事例の中に、いじめと認知すべきものがあった可能性を踏まえ、慎重に確認すること。
(3) アンケート調査や個別面談等におけるいじめを受けた旨の申出は、重く受け止め、いじめの定義に従い適切に判断すること。
(4) 都道府県への抽出調査で使用した具体的な事例(別添2)を参照し、校内で共通理解を形成した上で、今回の再調査に当たること。
(5)  平成26年度問題行動等調査「調査3 平成26年度における小学校及び中学校における不登校の状況等」及び「調査Ⅳ 平成26年度における高等学校における長期欠席の状況等」の「不登校になったきっかけと考えられる状況」において「いじめ」に計上した事案については、特段の事情がない限り、今回の見直しにおいて、全て「いじめ防止対策推進法第28条第1項に規定する「重大事態」の発生件数」に計上すること。(別添4参照)
  また、重大事態に計上したにもかかわらず、いまだ同項の規定による調査を実施していない場合は、速やかに調査を実施すること。

お問合せ先

文部科学省初等中等教育局児童生徒課

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(文部科学省初等中等教育局児童生徒課)