第3章 第2節 3.広報用啓発資料の作成

  広報誌等による啓発は、未実施が都道府県では55パーセント、市町村が71パーセントである。教職員に向けた指導資料が作成されていないのは、都道府県が31パーセント、市町村が93パーセントである。市町村は都道府県作成の広報誌や指導資料を活用することがよくあることなので、市町村の数字が高いのは当然である。
  しかし、未実施の数字は、国を挙げて虐待防止に取り組んでいるにはあまりにも高い数字といえるのではないか。
  児童虐待防止について教職員に周知を図るには、CD-ROM等の資料が有効である。児童虐待の防止等に関する法律第5条3項には、「学校は、児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない」ことを規定している。学校が保護者に啓発を行うための資料、地域を巻き込んで地域社会全体で児童虐待防止の機運を高める啓発資料、さらに学校が児童生徒に教育を行うための資料を作成して支援を行うことが望まれる。

1.教職員向け資料

  児童生徒に日常的に接し、虐待を発見しやすい立場にある学校の教職員に課せられた通告の義務については、様々な機会に周知は図られてきてはいるが、その徹底率はまだ低いと言わざるを得ない。児童虐待防止法の趣旨や内容、早期発見と通告義務、虐待の発生要因、早期発見のポイント、組織的対応と関係機関との連携などについて資料を作成して、周知の徹底を図る必要があると考える。

2.保護者向け資料

  学校が保護者に対して行う児童虐待防止のための啓発資料の作成も併せて必要となる。子どもの小学校入学の機会を捉えて全ての保護者に児童虐待防止について考えてもらう資料を配付している教育委員会も見られる。
  しつけは「子どもの健全育成を目的とした行為」であり、保護者が子どものしつけに関して親権を行使する際には、適切に行わなければならないとされている。
  一方、虐待は「子どもの健全育成を害する行為」であり、すなわち子どもの人権侵害である。愛情に根差したしつけのつもりでも、現実に子どもの心や体が傷付く行為であれば、それはまさしく虐待であること、感情のおもむくままの言動は健全育成ではなく、子どもの人権侵害であることの周知を図る必要がある。
  また、具体的にどのような行為が虐待に該当するのか、虐待を受けている子どもが示す不自然さ(不自然な説明、不自然な表情、不自然な傷やあざ、不自然な行動や関係)などについてわかりやすく示すことも必要である。さらに、子どもへの接し方や子育てに不安や悩みがあった場合の相談先を示すことも必要であろう。

3.相談機関の周知を図る資料

  相談機関の周知は、「1.子ども自身が虐待から逃れようとしても、どこの誰に相談したらいいのかがわかることになる。2.保護者が自分の子育ての悩みを打ち明け、共感的に理解をしてもらい、助言をもらって虐待を未然に防ぐことになる。3.地域住民が市町村や児童相談所に通告となると抵抗感があるが、もっと気軽に近隣の家庭の子育ての状況について相談できる。」という効果が考えられ、そのため、相談機関等について、周知を図るポスターやリーフレットを作成して配付する取組も必要であると考える。その際、教育委員会単独ではなく首長部局と連携して作成して効果をあげている例もある。

4.児童虐待防止推進月間のキャンペーン資料

  11月に実施される児童虐待防止推進月間に合わせ、講演会やシンポジウムなどのイベントを開催している所も多い。開催案内と併せて児童虐待防止の機運を高める資料を作成することなども効果的である。

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初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --