第1章 第2節 児童虐待の現状等

1 児童虐待の現状

(1)児童相談所への児童虐待相談処理件数

  平成16年度の全国の児童相談所で処理した児童虐待相談件数は、33,408件であり、統計を取り始めた平成2年度に比べて伸び率は約30倍、児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べて約3倍に増加しており、平成2年度以降一貫して増加傾向が継続している。
  また、前年度に比べても約25パーセントと大幅に増加しているが、これは、1平成16年10月の改正児童虐待防止法の施行により、通告対象の範囲が、「虐待を受けた子ども」から「虐待を受けたと思われる子ども」に拡大されたこと、2社会を騒がすような痛ましい児童虐待に関する事件の発生等もあり、国民や関係機関に、児童虐待についての認識や理解の高まりが見られることなどが主な増加要因として考えられている。

(2)児童相談所に寄せられる虐待相談の経路

  児童相談所に寄せられる虐待相談の経路は、平成16年度では、家族(15.9パーセント)、学校等(15.2パーセント)、近隣・知人(14.5パーセント)、福祉事務所(13.3パーセント)からの相談が多く、これらだけで全体の約59パーセントを占めている。
  また、前年度に比べて、近隣・知人が約41パーセント増、学校等が約30パーセント増となるなど、全体の前年度伸び率(25パーセント)を大きく上回っている。このことからも、学校等において、虐待防止法の趣旨が浸透し、早期発見・早期通告がなされてきていることを示しているとともに、国民全般に対しても、児童虐待についての認識や理解の高まりが見られることなどが示されている。

(3)虐待の内容別

  虐待の内容別に見ると、身体的虐待が14,881件(44.6パーセント)で最も多く、ついでネグレクトが12,263件(36.7パーセント)、心理的虐待5,216件(15.6パーセント)、性的虐待1,048件(3.1パーセント)となっている。
  特に、最近の動向としては、心理的虐待が対前年度比約48パーセント増となっており、全体の前年度伸び率(25パーセント)を大きく上回っているなど、その増加の度合いが突出している。

(4)主たる虐待者

  主たる虐待者は、実母が20,864件(62.4パーセント)と最も多く、ついで、実父が6,969件(20.9パーセント)、その他(祖父母や叔父・叔母等)が2,946件(8.8パーセント)、実父以外の父が2,130件(6.4パーセント)、実母以外の母が499件(1.5パーセント)となっている。ここ数年の傾向としてはさほど変化が無いが、「その他(祖父母や叔父・叔母等)」が対前年度比32パーセント増となり、全体の前年度伸び率(25パーセント)を上回っている。

2 留意事項

  以上のような児童虐待の現状について、特に注意が必要なことは、上記の児童相談所に相談があった虐待件数は、あくまで児童虐待の現状の氷山の一角に過ぎない、ということであり、この数字以上に、児童虐待の問題に対しては、予断が許されない状況が続いているものと考えなければならない。
  現に、「児童虐待に関する学校の対応についての調査研究」(平成14年~平成15年度文部科学省科学研究費補助金・山梨大学教育人間科学部玉井邦夫助教授他)によれば、調査対象となった教員の5人に1人が、被虐待児童生徒を教えた経験があることが示されており、教員は、「被虐待児童生徒の存在は、どの学校にも、どのクラスにも存在しうるものである」という危機感をもって日常的な指導にあたらなければならない。
  また、学校等から児童相談所に相談する事例が増えているものの、身体的虐待と異なり、一見しただけでは分かりにくい心理的虐待の件数が増えていることや、実父母が虐待者であるケースが多いことから、教員達は早期発見・早期通告の役割の一端を担うこととなっているものの、その虐待の発見やその後の保護者との関係において、引き続き困難な対応が求められている状況である。

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