第1章 第1節 はじめに

  近年、児童虐待に関しては、大阪府岸和田市等における児童虐待事件など重大な児童虐待事件が後を絶たないこと、虐待に関する児童相談処理件数が約3万3千件で過去最多となっていること、又は医療的ケアが必要となるような困難な事例や最悪の場合死に至るような事例が増えているなど、依然として深刻な社会問題となっている。
  児童虐待は、子どもの心身を傷付け、時には、その小さく尊い命さえも奪ってしまうという、子ども達の基本的な人権に対する重大な侵害であるだけでなく、その後の健やかな成長や人格形成等に深刻な影響を与えるものである。また、児童虐待は、その虐待によるストレスが、反社会的な行動として歪んだ形で表出されることがあったり、被虐待児童が保護者になった時に、自分の子どもを虐待するなどのいわゆる「虐待の連鎖」として引き継がれる危険性があることも問題である。
  このような、「子ども達の反社会的な行動と虐待体験との関連」については、1全国の児童相談所で非行相談を受付けた子どもの約30パーセントが虐待された経験があり、約半数が成長の途中で養育者が変わり、親や家族との愛着関係を断たれる経験をしていた事が報告されている(平成16年厚生労働科学研究費補助金「こころの健康科学研究事業」)こと、2全国の少年院在院者の72.7パーセントが被虐待体験を認めている等の報告がされている(平成12年:法務総合研究所)ことなどからも推測される。
  児童虐待は、児童虐待の防止に関する法律(平成12年法律第82号。以下「児童虐待防止法」という。)第3条において「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない」と、法律上禁止されている。しかし、それに加えて、子ども達の健全な成長のためにも、社会の安定のためにも、児童虐待は、絶対に許されるものではなく、その防止に向けては、子ども達を取り巻く各関係機関が連携して、総合的な支援体制を整備して、その対策に取り組まなければならないものである。
  その一環として、学校等が行うことができる児童虐待防止に向けた取組について、国内外の先進的な事例等を示すことによって、学校等の取組を支援することを目的として、本調査研究を実施してきた。

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