『生徒指導メールマガジン』 第12号

(平成17年9月30日)
文部科学省初等中等教育局児童生徒課

目次

  1. 巻頭言:「垣根を低く」(児童生徒課倉見課長補佐)
  2. 長崎県教育委員会:「小学校児童殺傷事件後の主な施策について」
  3. 施策紹介:
    • 「生徒指導上の諸問題の現状について」
    • 「新・児童生徒の問題行動対策重点プログラム(中間まとめ)について」
  4. 各地域の特色ある取組事例:「成田市・富里市・栄町JSL(ジュニア・セーフティー・リーダー)活動について」(森田俊一郎千葉県成田警察署長)
  5. 主要行事の予定又は連絡事項等
  6. 施策に関する各地域からの提言又はQ&A

1 巻頭言:「垣根を低く」(児童生徒課倉見課長補佐)

  子どもたちが起こす事件は後を絶たず、不登校児童生徒もいまだに12万人という数となっています。
  私たち生徒指導室は、これらの問題の、国としての対応に毎日エネルギーを注いでいますが、教育委員会の皆さんは学校の管理機関として、学校の先生方は直接子どもたちを指導する立場として、それぞれ同じように日々ご努力されているかと思います。置かれている立場や役割は違いますが、少しでも子どもたちの問題行動や不登校を無くし、みんなが学校で楽しく元気に過ごしてほしいという願いは一緒です(当たり前ですが)。
  この同じ願いを実現させるために、国(文部科学省)と地方(教育委員会)と現場(学校)が、正しい情報を共有し、解決しなければならない課題に対し、それぞれの立場で対処していく方策を理解し合っていくことが大事だと思っています。
 そこで生徒指導室では、今後、出張や地方で開催される会議等を利用して、できるだけ教育委員会の生徒指導担当の方々と膝を交えてお話しする機会を設け(お酒の席ということではありません。念のため。)、教育委員会に取り組んでいただきたいこと(教育委員会として各学校に指導してもらいこと)、あるいは教育委員会が現在抱えている問題や課題、文部科学省(国)に対する意見や要望などをザックバランに語り合い、互いの風通しをよりよくしていきたいと考えています。

  そこで、「まず手始めに」といっては何ですが、私たち生徒指導室の面々をここで紹介し(人柄については私の勝手なイメージですが)、少しでも身近に感じていただければと思います。
  亀田 徹(生徒指導室長):この7月1日から室長に。それまでは児童生徒課の企画ライン(課として対外的な窓口)の課長補佐。生徒指導で大切なことは、「対話・コミュニケーションを中心に据えた学校づくり」と説く。常に冷静沈着であり、当たりはソフト。生徒指導の総括ではあるが、不登校や問題行動調査を主として担当。東京都出身。

  今泉 柔剛(課長補佐):この「メルマガ」の編集長。自分の信念をしっかり持ち、仕事に対する情熱は人一倍。大学時代は応援団に所属していたらしいが(前号のメルマガをご覧ください)、一見、体育会系テニス部というイメージ。生徒指導室のキーマンとして、問題行動や人権教育、行動連携などに当たる。千葉県出身。

  寺坂 公佑(生徒指導企画係):入省3年目なので係長ではないが、係長としての役割を担っている。物静かな感じでクールでドライ。大きな事件があればホットラインとして彼の携帯に連絡が入ることになっている。問題行動、人権教育、体験活動(渉外)などを担当。香川県出身。

  林 寛之(生徒指導第一係長):法務省からの人事交流で今年の4月にこのポストへ。それまでは大阪の浪速少年院に法務教官として勤務。細かいことは気にしない明るい性格。不登校、問題行動調査、行動連携などを担当。奈良県出身。

  齊藤 大輔(生徒指導第二係長):教科書課で6年間、無償給与や教科書の需給調整などを担当し、昨年4月に現在のポストへ。目がクリッとしていて優しい性格。先月、女の子が生まれ二児のパパに。スクールカウンセラーや子どもと親の相談員などの教育相談体制と体験活動事業を担当。東京生まれの奈良育ち。

  赤坂 真弓(生徒指導第一係主任):大阪大学に約3年間勤務後、平成13年4月に文部科学省へ。現在のポストは昨年4月から。膨大な資料の中から瞬時に必要書類を引き出す、しっかり者のお姉さん。不登校、問題行動調査、行動連携などを担当。兵庫県出身。

  桑田 美季(生徒指導企画係):平成15年11月入省。現在のポストは昨年1月から。普段3~4時間しかない睡眠時間は朝の通勤電車の中で補っているとか。係としては問題行動や人権教育などが担当ではあるが、むしろ生徒指導室の窓口として対外的な業務に当たる。大阪生まれの千葉育ち。

  また、生徒指導室には、現在、山本泰昌さん(広島県教育委員会)、藤村幸秀さん(横浜市の小学校教諭)、羽田浩さん(京都市教育委員会)の3人が研修生として勤務されていますが、藤村さんと羽田さんについては10月から教職員課、教育課程課にそれぞれ移られ、代わって、大嶺悟さん(沖縄県教育委員会)、吉川廣一さん(千葉県教育委員会)が来られることになっています。研修生の方々には、実務の貴重な戦力として、また現場の声を日常的に直接聞けるスタッフとして、大変お世話になっています。
  最後になりましたが、非常勤職員として山本亜希さんが事務補助に当たっています。

  いや、忘れていました。私の自己紹介をしなければなりませんね。私は大分県臼杵市教育委員会に出向しておりましたが、この4月から現在のポストに着いています。主に体験活動とスクールカウンセラーなどの教育相談体制を担当しております。周りからは「お調子者」と言われております。なぜか独身、東京都出身。 このメンバーでチームワームよく業務を進めていきたいと思いますので、どうそよろしくお願いします。

2 長崎県教育委員会:「小学校児童殺傷事件後の主な施策について」

  本県では、一昨年7月、昨年6月と痛ましい少年事件が続けて発生し、教育関係者はもとより、多くの県民がたいへんな衝撃を受けました。
  長崎県教育委員会では、事件発生後直ちに対策本部を設置し、佐世保市教育委員会と一体となって、このような悲劇がなぜ起こったのか、なぜ未然に防ぐことができなかったのか、事件発生までに何らかの予兆があったのではないかなど、主として教育的観点から可能な限り調査を行うとともに事件の要因や背景等を分析し、再発防止のための対応策について全力を挙げて検討を重ねてきました。そして、これまでの調査・分析結果を総括し、学校、家庭、社会それぞれの在り方や今後の対策を含めた、事件に関する県教育委員会としての最終的なまとめとして12月に「最終報告」を行いました。
  現在、事件から浮かび上がった教訓や課題を踏まえ、幼稚園や保育所、小学校、中学校間での連携や日頃の心の状態や変化を的確に把握し対応するシステムづくりの整備を進めているところです。
  これらは、学校・家庭・地域社会全般にわたる広範な対応策であり、県教育委員会としては、体系的にまとめ「子どもの心と向き合う本県独自の教育システム」の構築を目指していますが、中でも、次の3点は、事件の再発防止に向けた本県教育の重点的な取組となるものです。

1 「子ども理解支援シート」の活用

  事件の再発防止に向けた施策の一つとして「子ども理解支援シート」を活用することにしていますが、佐世保市の小学校で発生した事件の後、加害児童から事件の予兆と思われる何らかのサインが出ていなかったのかということが問題視されました。また、昨今、全国的に起きている重大な少年事件を考えますと、学校や地域において「普通の子」あるいは「おとなしくて良い子」と言われ、特に気にならなかった子どもが、想像を超えた事件を起こすケースが多いことに着目する必要があると思われます。一般的に、事件を起こす前に、何らかのサインが出ていなかったのか、出ていたはずであると考えられがちですが、そのような従来の見方や考え方に加え、サインを出さない子ども、出すすべを知らない子どもがいるということを前提に、子ども理解や対応の在り方を検討することが大切であると考えています。
  そこで、県内外の大学教授や精神科医、臨床心理士等の専門家の意見をもとに作成した本県独自の「子ども理解支援シート」を全公立小中学校で活用し、子どもたちの日頃の心の状態や変化の的確な把握に努めるとともに、状況に応じて学校が臨床心理士等の専門家からなる「支援チーム」に相談できるシステムを構築し、子どもたちの健やかな心の成長を図っていきたいと考えます。
  「子ども理解支援シート」は、日常の観察や個人面談などを通して児童生徒の生活の様子や心の状態を確認し、教師と子どもとの日頃の関わりを深め、サインの発信につながる豊かな感情表出を育てるためのものであると同時に、教師にとって、これまで気づかなかった児童生徒理解につながる新たな視点を広げ深めるためのものでもあります。
  実施に当たっては、「子ども理解支援シート」を活用するに当たっての有効性や問題点等を検証するために、研究協力校として指定した19校において試行し、得られた成果や課題、教員の声をもとに、原案の一部改善を図りました。併せて5月には、本シートの作成に御尽力いただいた東京学芸大学教育心理学講座大河原美以助教授を講師としてお招きし、全公立小中学校長を対象とした「子ども理解のための研修会」を実施しました。さらに、県内8会場において「子ども理解支援シート」の活用の仕方をはじめとした事業全体についての研修会を実施し、9月以降に全公立小中学校で活用するようにしています。
  なお、「子ども理解支援シート」と「活用に当たって」については、県教育委員会のホームページで紹介しています。

2 「心を育てる道徳教材集」の活用

  学校においては、これまでも、生命尊重をはじめとした道徳教育の充実に努めてきているところですが、2年続けて発生した痛ましい少年事件を踏まえると、子どもたちに、命はかけがえのないもであり、ひとたび失われた命は二度と取り戻すことができないものであることをしっかりと教えていく必要があります。
  また、昨年実施した「児童生徒の『生と死』のイメージに関する意識調査」の結果から、非行や犯罪とそこから派生する罰や社会的責任にまで踏み込んだ学習をする機会はほとんどないということもあり、子どもたちに、どのようなことがあっても人の命を奪うようなことがあってはならないことを法制度の切り口から学ばせる機会が必要であると考えました。
  そこで、県内の公立小中学校における命を大切にする教育の一層の充実を支援する立場から、昨年度、児童生徒の発達段階に応じて、命の大切さや「生と死の意味」を見つめ考えさせるための本県独自の「心を育てる道徳教材集」を作成し、今年度当初に全公立小中学校や関係機関に配布しました。

  本教材の特徴は、

  • 「生と死」の両面から子どもたちに迫ることのできるものであること、
  • 児童生徒にとって身近な教材となるよう長崎県の名物や伝統的行事、被爆体験や普賢岳の噴火災害等を取り上げていること、
  • 関連教材として「児童生徒の『生と死』のイメージに関する調査」の結果を活用した教材や過去の事件の判例を活用した教材も添付していること、というところです。

  本教材集は、全教材に指導展開例を備えていますが、県内の各小中学校において、児童生徒の発達段階に配慮しながら、子どもたちに命を大切にする心や他人を思いやる心などの豊かな心をしっかりとはぐくむため、本教材集を活用した授業を確実に実施していくよう働きかけています。6月には、県内8会場において、各小中学校の道徳教育担当者を対象として、本教材集の有効な活用の在り方等について研修会を実施しました。
  なお、本教材集についても、すでに県教育委員会のホームページで紹介しています。

3 「情報モラル・マナー指導教材」の活用

  佐世保市の事件において、家庭裁判所の審判決定要旨の中で、「加害児童はインターネットのホームページ上に記載されている内容を見て、被害児童に対する怒りを募らせ殺害に至った」ことが指摘されました。
  そこで、子どもの発達段階に応じて、ネットコミュニケーションの危険性を繰り返し指導し、健全かつ有効な活用の仕方を身につけさせるため、小中学校及び高等学校それぞれの授業で活用できる「情報モラル・マナー指導教材」を平成17年3月に作成し配布しました。
  本教材は、すべての学校教育活動の中での活用を目指して作成したものであり、すべての教師が各学校の実態に即して活用方法を工夫するとともに、「人と人とのかかわり」の中で情報機器等を有効に活用すべきものであることを的確に指導し、健全な人間関係を築いていけるような子どもたちの育成に資するものであると考えています。
  これらの重点的な取組をとおして、悲劇を再び繰り返すことのないよう教育に携わるすべての者が危機意識を共有し、教育の原点である「一人の教師と一人の子どもが向き合う関係」を中心軸とした学級、学校づくりに全力を傾けることが、本県の子どもや保護者の期待に応えることであり責務であると考えています。
  しかしながら、事件の再発防止や子どもたちの健全な心の育成は学校だけでできるものではありません。本年7月、金子知事は、子どもたちが健やかに成長できる安全・安心な環境づくりが急務であり、県民一人ひとりが力を合わせて、できることから第一歩を踏み出さなければならないという強い思いから緊急アピールを宣言しました。

<緊急アピールの主な柱>

  • あいさつをしましょう
  • 家族一緒の食事を大切にしましょう
  • 父親も子育てに参加しましょう
  • 子どもに声をかけましょう
  • 地域行事にさんかしましょう
  • 子育てしやすい職場環境を作りましょう

  本県は、今こそ、県民あげて明日の長崎を担う子どもの育成に取り組んでいきます。

3 施策紹介

「生徒指導上の諸問題の現状について」

  (1)平成16年度における児童生徒の問題行動等の状況については,9月22日付けで公表しました。昨年までは、出席停止、自殺、教育相談、体罰については、不登校の確定値と同時に12月に公表してましたが、調査結果を早期に施策に反映させることができるよう、今年から一度に公表しております。また、国立、私立の小中学校を対象とした不登校児童生徒の実態調査とともに、平成15年の不登校に関する調査研究協力者会議において実態把握の必要性が指摘されていた高等学校における長期欠席、不登校に関する調査を新たに実施しました。

  (2)その内容については、文部科学省のホームページ上に掲載しておりますので、そちらをご参照ください。
  特にその中で大きな注意点が2点あります。1つ目が小学校の暴力行為の増加であり、もう1つが高等学校の長期欠席者の件です。
  新聞等で大きく報道されているところですが、暴力行為について、中学校及び高等学校において発生件数が減少している一方、小学校において、発生件数が2,100件で前年比18.2%増で2年連続で増加する結果となっています。小学生による重大事件が発生した昨年から小学校における生徒指導体制の強化について取組を進めていただいているところですが、今一度、小学校における生徒指導体制を点検し、その充実を図っていただければと思います。
  新たに調査した高等学校における不登校生徒数は67,500人で、在籍者に占める割合は1.82%となっています。特に、不登校生徒のうち36.6%が中途退学に至っている状況は、憂慮すべき状況です。高等学校における不登校への対応が中途退学の問題への適切な対応にもつながっていくものと意識を持ち、きめ細かな教育相談やガイダンスの実施等の個に応じた指導の充実を図るなど、不登校への対策をさらに進めていく必要があるものと考えています。

  今回の調査結果を踏まえ、今後とも生徒指導のより一層の充実を図っていただければと思います。よろしくお願いします。

「新・児童生徒の問題行動対策重点プログラム(中間まとめ)について」

(1)はじめに

  本年6月には、山口県光高等学校での爆発物傷害事件、東京都板橋区での管理人夫婦殺害事件など、児童生徒による重大な問題行動が相次ぎ、最近も、宮城県で中学生が警察官を刃物で刺して重傷を負わせる事件が発生するなど、児童生徒の問題行動は非常に憂慮すべき状況となっている。
  文部科学省では、昨年6月に長崎県佐世保市での小6児童殺害事件の再発防止を図るため、「児童生徒の問題行動に関するプロジェクトチーム」を設置し、昨年10月に「児童生徒の問題行動対策重点プログラム」を作成し、各種施策を講じてきたが、本年6月以降における一連の児童生徒による問題行動を踏まえ、同プロジェクトチームを7月に再開し、従前の取組のフォローアップを行うとともに、今回の一連の事件により提起された課題に対する対応策を検討してきた。
  そして、当面の対応として、以下の通り、1.生徒指導体制の整備、2.情報社会の中での有害情報対策、3.社会性を育む教育の充実及び4.家庭教育の一層の充実の4つを柱とする諸施策を取りまとめ、学校と家庭、地域、関係機関等とが一層緊密に連携しつつ、その推進に当たることとした。

(2)最近の少年事件の特徴的な課題と当面の対応策

1.生徒指導の組織体制の整備・関係機関との連携の強化等について

  ア:今回の一連の事件においては、これまで生徒指導上の課題が見えにくく、真面目で口数が少なくおとなしい子どもが重大犯罪を犯す例が目立っているが、これらの子どもは、様々な形でストレスを溜め込んでおり、周囲に何らかの形で前兆を見せていた。
  このことから、子ども達が自分の中にストレスを溜め込まないように、気軽に他者に相談できるような学校内外の相談体制の整備を図ること、子どもが示す前兆を見逃さないようにするために複数の視点できめ細かく子どもを見守ることができるような生徒指導体制を構築することなどが重要である。
  また、学校内で発生した事件では凶器が学校外から学校内に持ち込まれていたこと等を考えると、危険物の学校内への持込みの禁止をはじめとする学校内のルールを遵守させるなど、学校内規律の維持とこれを通じた児童生徒の規範意識の醸成という観点から、生徒指導の在り方を見直していくことが必要である。

  イ:これらの観点を踏まえると、各学校及び教育委員会においては、

  • 学校内で複数の教職員等の視点で子どもの状況を見守り、子どもの変化を見逃さず、広く子どもの現状を理解することができるよう、学校全体で一体となって生徒指導に当たるとともに、きめ細かな教育相談を実施すること、
  • 例えば、カッターナイフ等の危険物について、あらかじめ学校に備え付けて学校で集中管理するなどの取組みを進めることと併せて、「危険物は校内に持ち込まない」等の学校内のルールを守らせ、「いけないことはいけない」と毅然とした態度で児童生徒に接することなどについて、学校全体で一体となって生徒指導に取り組むこと、
  • 生徒指導上の取り組みを推進するため、警察や児童福祉施設等の関係機関との連携を一層促進すること、などの取組が求められる。

  ウ:文部科学省においては、これらの各学校等の取組みを支援するため、

  • 「複数の視点から子どもの変化に対応できる教育相談体制の確立等」として、教師の教育相談能力の一層の向上やスクールカウンセラーの高等学校への配置の促進等を実施していく。
  • 「生徒指導体制の強化」として、児童生徒の規範意識の向上及び子ども達の安全な学習環境の確保の観点から、学校内規律の維持を指向する「ゼロ・トレランス(毅然とした対応)方式」のような生徒指導の取組みを調査・研究するなど、生徒指導体制の在り方について見直しを図る。また、生徒指導主事のコーディネーター機能の強化等小学校からの生徒指導体制の強化を図るための諸方策を推進する。さらに、各地方公共団体の実情に応じて、子ども達のストレスが溜め込まれると考えられる5月から6月にかけて「生徒指導月間」を設定するなど、各地域で生徒指導に関する集中的・重点的な取組を促進する。
  • 「関係機関等との連携の強化(犯罪抑止教育の推進を含む)」として、児童生徒の問題行動の未然に防止し、又は早期に的確な対応を行うため、学校と警察等関係機関との連携の充実強化を図るとともに、問題行動発生時にはサポートチームの迅速な立ち上げ等早期に関係機関等と連携していく体制の確立を図る。
      また、予防措置として、「非行防止教室」について、平成17年1月に警察庁と共同で作成した「非行防止教室プログラム事例集」の活用促進を図るとともに、非行防止教室を実施するための補助教材を警察庁と共同して本年度中に作成し、各学校等に配布する。
2.有害環境対策等の推進について

  ア:一連の事件には、危険物の入手・製作に必要な情報をインターネット上から得ていたとの情報が見られるなど、子どもの行動や考え方にインターネット等による有害情報が強い影響を及ぼしていることが窺われるところであり、社会全体で子ども達を取り巻く有害環境対策を進めるとともに、学校等における情報モラルやマナーに関する教育の推進方策が必要だと考える。

  イ:こうした観点を踏まえると、有害環境から子どもを守るため、社会全体として

  • 子どもが有害情報に触れる危険性があるものについての自主規制を進めること、
  • 子どもを有害情報から守るための諸活動を推進すること、などの取組が求められる。
      また、各学校及び教育委員会においては、情報モラル等の育成等を通じて情報リテラシーの育成を推進すること等が求められる。

  ウ:文部科学省においては、これらの学校・地域等の取り組みを支援するために、以下の対応策を重点的に推進する。

  • 「有害環境対策の推進」として、地域で大人たちが有害情報から青少年を守る取組等を実施する。また、青少年を有害情報から守る観点から、情報発信等にかかる実効性のある自主的措置を確実に行うよう、平成17年度中に関係業界団体等へ要請を行う。さらに、他省庁と連携してフィルタリング・ソフトの一層の普及を促進する。
  • 「子どもに対する情報モラル教育の充実」として、情報モラル等についての効果的な指導手法の調査研究を引き続き実施する。また、青少年が情報を主体的に読み解き、適切に活用する力を育成する。
3.社会性を育む教育等の充実について

  ア:今回の一連の事件に関わった子どもに共通するものとして、自分の行為がもたらす影響への思慮の無さ、他者への配慮の欠如、自分の気持ちを的確に表現できる表現力等が十分に身についていないこと等が指摘できるが、これらの点は、都市化、少子化の進展等、社会環境や家庭環境の激変の中で、「多様な人間関係の中で社会性や対人関係能力を身に付ける機会が減少している」といった、全ての子どもが直面している課題でもあると考えられる。このことから、学校とともに地域の関係者等の支援を得ながら、社会性や対人関係能力を育むための教育の推進が重要である。

  イ:これらの観点を踏まえると、各学校及び教育委員会においては、

  • 社会性を育む教育を充実すること、
  • 伝え合う力と望ましい人間関係作りのための指導を推進すること、
  • 命を大切にする心を育む教育を推進すること、などの取組が求められる。

  ウ:文部科学省においては、これらの各学校等の取組みを支援するため、以下の対応策を重点的に実施する。

  • 「社会性を育む体験活動の充実」として、学校や地域において、社会性を育成するプログラムも活かしながら、豊かな人間性や社会性を育むこと等を目的とした体験活動を充実する。
  • 「伝え合う力と望ましい人間関係作りのための指導の推進」として、学校の各教科等を通じ自分の気持ちや考えを適切に相手に伝え、生活上の諸問題を言葉で解決する力の育成を図るとともに互いに尊重し合い望ましい人間関係を構築するための指導を推進する。また、自分の大切さとともに他者の大切さを尊重するような人権教育を推進する。
  • 「命を大切にする心を育む教育の推進」として、学校で自他の生命のかけがえのなさや死の重さなどを取り上げ、命の大切さを実感する教育や、地域の様々な団体や有志などの支援を得て子ども達の豊かな心を育む教育を推進する。
4.家庭教育への一層の支援の充実について

  ア:今回の一連の事件の中でも、家庭でのいさかいが事件の背景となっているものが見受けられたが、家庭において子どもが置かれた環境や親をはじめとする関係者の子どもへの対応の在り方は、児童生徒の問題行動の防止と子どもの健全な育成を図る上で極めて重要な要素であると考えられる。
  この点については、前号のメールマガジンにおいて示した研究においても、子どもの問題行動については、家庭での養育環境の改善と家庭教育の改善・充実が重要であること、前兆行動として凶器の収集、攻撃的・暴力的なゲームやビデオ、書物への著しいのめり込みなどの行動を示している場合には十分な注意が必要であることなどが指摘されているところである。また、関係省庁や関係機関等と連携しつつ、家庭教育の支援も含めた家族関係の構築の支援を推進することが重要である。

  イ:これらの観点を踏まえると、各家庭においては、

  • 基本的生活習慣の確立等をはじめ家庭におけるしつけや基本的マナーの育成などを徹底するなど家庭教育の充実を図ること、
  • 子どもの変化を見過ごさないこと、特に自分の内的世界にこもりがちになったり、凶器の収集、攻撃的・暴力的なゲームやビデオ、書物への著しいのめり込みなどの行動を示している時には十分注意し、不安な点がある場合には相談機関に相談すること、
  • フィルタリングソフトの活用や「家族の決まりごと」の作成等を通じて、有害情報への接触の制限等を行うこと、などの取組が求められる。

  ウ:文部科学省においては、これらの各家庭の取り組みを支援するため、以下の対応策を重点的に推進する。

  • 「家庭教育への支援や情報提供の一層の充実」として、家庭の教育力を向上し、親と子どもの豊かな育ちを支援するため、子どもの望ましい基本的生活習慣を育成し、生活リズムを向上させるための国民運動の展開や、すべての親に対するきめ細やかな家庭教育への支援や情報提供など、家庭の教育力の向上に向けた総合的な施策を推進する。
  • 「幼児期からの相談体制の充実」として、子育てに不安を抱える保護者等へのカウンセリング等を行う「保育カウンセラー」等からなるサポートチームを市町村教育委員会に設け、幼稚園等施設や家庭、地域社会における教育力を支えるための体制を整備する。
  • 「家庭における情報モラル教育や有害情報対策への支援」として、家庭における情報モラル教育や有害情報対策等について保護者の理解・啓発を図る取組を推進し、家庭における子どもへの教育を支援する。
      また、PTA等の協力を得つつ、家庭におけるインターネットのフィルタリング・ソフト等の活用の促進・普及を図るなど、保護者が子どもを有害情報から守るための取組を促す。

(3)今後の課題と取組

  ア:子ども達を取り巻く社会的な環境や子どもたちの心の諸課題等について、現在の子ども達の状況や課題の所在を見極め、子ども達の心身に何がどのような影響を与えているかについては、科学的な解明のための取組が進められることが重要である。
  このため、現在、「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」において、既存の脳科学等の研究成果を踏まえて子どもの情動や心の発達に関する検討が進められているが、今後、このような取組の進捗状況を的確にフォローアップしていく。

  イ:今回の一連の子どもの問題行動を通して垣間見られる、現在の子ども達を取り巻く環境の変化等の諸課題については、単に教育分野の対応だけでは解決を期し得ないものが多々あるものと考えられる。
  このため、今後は、関係省庁や関係機関等とも連携・協力するとともに、有識者等からの意見を聴取するなどして、学校、家庭又は社会等の各関係者がさらに取組むべき対策を検討していくこととしたい。

4 各地域の特色のある取組事例:「成田市・富里市・栄町JSL(ジュニア・セーフティー・リーダー)活動について」(森田俊一郎千葉県成田警察署長)

(1)はじめに

  千葉県成田警察署は、関係市町の教育委員会・学校と連携を図って平成17年5月20日少年ボランティアJSLを立ち上げました。JSLとは、ジュニア・セーフティー・リーダーの略称です。同署は成田市・富里市・栄町の2市1町を管轄していますが、その中学校・高等学校の全校にあたる14中学、5高校に設置しています。メンバーは全部で203人です。設置した目的は、少年自ら犯罪の被害者、加害者にならないように規範意識の醸成を図るとともに、地域の安全のために防犯活動や交通安全などの社会活動に貢献し、自分たちで何ができるかを考え、話し合い実行するというものです。以下、そのJSLについて紹介します。

(2)JSLの発足

  同年5月20日は、成田防犯連合会と成田警察署の主催により同市内の運動公園駐車場において「安心な街づくり大会」が開催されました。この大会で担当教諭に引率された各校のJSL代表メンバーが、学校名の入ったプラカードを先頭に入場しました。そして、参加した団体の長からその代表者の腕にJSL腕章をつけてもらい、中学校と高等学校の代表者2名が「各学校のコミュニケーションをとりながら安心な街づくりに積極的に活動します。」と決意表明しました。

(3)JSLの内容

  窓口は学校警察連絡委員会です。メンバーは各学校単位で生徒概ね3人以上のメンバーで構成しています。活動内容は、メンバーが自主的に話し合って、学校・地域ぐるみの防犯活動や少年非行防止、交通事故防止などの啓蒙活動を行います。また、その学校で行う防犯教室や交通安全教室のお手伝いをしたり、学校周辺の美化活動などその学校の特色を生かした活動を行います。定期的に機関誌「JSLニュース」を発行して各学校のJSLメンバーの紹介や活動状況を紹介しています。そしてその機関誌は、市町の行政・関係教育委員会・各学校に配布されます。

(4)研修会の開催

  同年6月13日、成田市保健福祉館においてJSL研修会を開催しました。参加者は、学校警察連絡委員会委員長、警察署の担当者、各学校のJSLの代表者と担当教諭などです。この研修会では、年間の活動予定やJSL活動上の注意事項などについて説明するとともにJSL活動例について紹介されました。またメンバーに交付予定のJSLバッジのデザイン募集について説明があったところです。

(5)JSLの活動

  これまでに行ってきたJSLメンバーによる活動は、

  • JSL発足当日の夕方、JR成田駅前において乗り物盗防止リーフレット等の防犯グッズを配って防犯意識の高揚を訴えました。
  • 交通安全の日、交通安全協会の役員や白バイの警察官と一緒に通学路の交差点で黄色の横断旗を持って交通街頭監視を行いました。
  • 国際麻薬乱用撲滅デーに、保健福祉センターの職員と薬物乱用防止ヤング街頭キャンペーン活動に参加しました。
  • 中学校で行われた防犯教室で、不審者に遭遇した場合の対処方法を全校生徒の前で実演しました。
  • 社会を明るくする運動で、JR成田駅前において市の職員と一緒にキャンペーン活動を行いました。
  • 地域の夏期合同防犯パトロールにおいて、自治会員や中学校PTA・防犯指導員などと一緒に防犯キャンペーンを行いました。

(6)効果と今後の課題

  JSLメンバーが街頭で防犯のチラシを配布していると、大人は子どもたちが「何を配って居るんだろう」と関心を持ちます。同じ年頃の子どもたちも「何をしているんだろう」とそのことに興味を持ちます。メンバー自身も通行人から「ご苦労様」と声を掛けられることによって自分も人のためになれるんだという気持ちが湧き起こり、 ボランティア活動に喜びを感じることができます。

  この他、

  • 少年の規範意識や生活マナーの醸成
  • 少年の防犯意識、交通安全意識が芽生える
  • 人を思いやる気持ち、お互いの連帯意識ができる
  • 少年と地域社会のつながりの場を持つことができる等の効果があげられます。

  また興味深いことは、このJSLは千葉県内において全国に先駆けて平成15年5月に成東警察署管内の11校に設置されましたが、同署管内の街頭犯罪が減少していると言うことです。
  今後の課題は、

  • 各学校のJSLの自主活動の促進と研修会を通じた各学校間の連携であろうと考えます。

(7)おわりに

  千葉県内で2番目となる成田警察署管内のJSLはまだ発足したばかりです。大事なことはこのJSLを行政・地域・警察の三者が協力して支援していくことです。そのための働きかけを関係者が積極的に行ってJSL活動が活発化し定着することを期待しています。

5 主要行事の予定又は連絡事項等

  (全てを記載しているわけではありませんので、必ず正式文書で確認をお願いします。)

  • 生徒指導メール・マガジン第13号 10月28日(金曜日)
  • 「問題行動に対するブロック協議会」(中部ブロック) 10月14日(金曜日)於:「アスト津」
  • 「問題行動に対するブロック協議会」(中国・四国ブロック) 10月24日(月曜日)於:「徳島プリンスホテル」
  • 「問題行動に対するブロック協議会」(近畿ブロック) 10月31日(月曜日)於:「ホテルアバローム紀の国」

6 施策に関する各地域からの提言又はQ&A

  今回は特になし。

本件連絡先

  • 文部科学省初等中等教育局児童生徒課 生徒指導企画係
  • メール・マガジン問い合わせ先 <jidou@mext.go.jp
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  • ※ 生徒指導及び進路指導上の優れた実践事例を公募したいと思います。全国的に紹介したい事例がある場合には、ご執筆の上、送信いただきたいと思います(その際、執筆者が都道府県・指定都市教育委員会でなくても、学校又は市町村教育委員会の執筆でも可です)。内容を見て、「各地域又は学校の優れた取組みの紹介」の項で紹介していきたいと思います。
  • ※ 教育課題についての質問や提言、他の都道府県教育委員会へ伝えたいニュースや連絡事項などありましたら、上記アドレスまで返信メールの送信をお願いします。なお、恐縮ですが、質問に関しては、全体に周知する事が必要なものについて、本メール・マガジンで回答していきます。
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