高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について

20文科初第1346号
平成21年3月12日

 各都道府県教育委員会教育長 殿
 各指定都市教育委員会教育長 殿
 各都道府県知事 殿
 附属学校を置く各国立大学法人学長 殿

文部科学省初等中等教育局長

 不登校児童生徒への対応に当たっては、平成15年5月16日付け文科初第255号「不登校への対応の在り方について」を始めとする一連の通知等を踏まえ、関係者において、これまでにも様々な努力がなされているところですが、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。以下同じ。)における不登校生徒については、近年、減少傾向にあるものの、相当数に上るなど、依然として教育上の課題となっております。
 高等学校における不登校は、中途退学に至るケースも多く、また、いわゆるニート、引きこもりといった社会的問題との関連性も指摘されていることなどから、不登校生徒への支援に当たっては、児童生徒など若者の将来的な社会的自立に向けて支援するという視点に立つことが重要です。
 また、不登校の要因・背景は様々であることから、学校における指導体制を充実することはもとより、学校や教育委員会は、家庭や学校外の関係機関等と積極的な連携を図るなど、関係機関等と日頃から情報交換等のできる連携体制を築いておくよう努めることが重要です。
 今般取りまとめた、平成19年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果においては、高等学校における不登校生徒についても、教育支援センター(適応指導教室)や民間団体・施設等の学校外の機関において相談・指導を受けている現状にあることから、学校や教育委員会は、家庭や関係機関等とより一層緊密な連携を図るとともに、学校復帰による高等学校卒業などの不登校生徒の社会的自立に向けて支援する必要があります。
 また、不登校生徒が学校外の機関において相談・指導を受けている場合には、当該生徒が在籍する高等学校は、当該機関や家庭等と連携を図り、その学習の状況等について把握することが、学習支援や進路把握を行う上で重要です。
 このたび、このような観点を踏まえ、生徒が学校外の機関で相談、指導を受ける意欲を引き出し、生徒の努力を学校として評価するため、不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて、別紙1により義務教育諸学校と同様に取り扱うことといたしましたので、適切に対応されるようお願いします。
 その際、指導要録上の出席扱いとなった不登校生徒を対象に、当該生徒の学校外施設への通所に要する交通費の負担の軽減措置に関し、関係の交通事業者の理解と協力の下に、別紙2のとおり、通学定期乗車券制度の適用をお願いしているところです。
 なお、都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して、都道府県知事にあっては所轄の私立学校に対して、この趣旨について周知を図るとともに、適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。

(別紙1)高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて

1.趣旨

 高等学校における不登校生徒の中には、学校外の施設において相談・指導を受けている者もおり、このような生徒の努力を学校として評価し、学校復帰による高等学校卒業などの将来的な社会的自立に向けて支援するため、我が国の高等学校教育制度を前提としつつ、一定の要件を満たす場合に、これら施設において相談・指導を受けた日数を指導要録上出席扱いとすることができることとする。

2.出席扱いの要件

 不登校生徒が学校外の施設において相談・指導を受けるとき、下記の要件を満たすとともに、当該施設への通所又は入所が、不登校生徒の将来的な社会的自立を助ける上で有効・適切であると判断される場合に、当該生徒の在籍校の校長(以下「校長」という。)は指導要録上出席扱いとすることができる。

  • (1)保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。
  • (2)当該施設は、教育委員会等が設置する適応指導教室等の公的機関とするが、公的機関での指導の機会が得られないあるいは公的機関に通うことが困難な場合で本人や保護者の希望もあり適切と判断される場合は、民間の相談・指導施設も考慮されてよいこと。
    ただし、民間施設における相談・指導が個々の生徒にとって適切であるかどうかについては、校長が、設置者である教育委員会と十分な連携をとって判断するものとすること。このため、学校及び教育委員会においては、「民間施設についてのガイドライン(試案)」(別添)を参考として、上記判断を行う際の何らかの目安を設けておくことが望ましいこと。
  • (3)当該施設に通所又は入所して相談・指導を受ける場合を前提とすること。

3.指導要録の様式等について

 上記の取扱いの際の指導要録の様式等については、平成13年4月27日付け文科初第193号「小学校児童指導要録、中学校生徒指導要録、高等学校生徒指導要録、中等教育学校生徒指導要録並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部児童指導要録、中学部生徒指導要録及び高等部生徒指導要録の改善等について」の別紙第3、別紙第4-3及び別紙第4-6の「指導に関する記録」中「5 出欠の記録」(別紙第4-3にあっては「7 出欠の記録」)の「(6)出席日数」のなお書きに続き、次のとおり加える。
 「また、不登校の生徒が適応指導教室等学校外の施設において相談・指導を受け、そのことが当該生徒の将来的な社会的自立を助ける上で適切であると校長が認める場合には、出席扱いとすることができる。この場合には、出席日数の内数として出席扱いとした日数及び生徒が通所又は入所した学校外の施設名を記入する。」
 なお、この指導要録上の出席扱いは、科目の履修の認定に当たって考慮される授業への出席とは異なるものであり、科目の履修の認定に当たっては、在籍校における履修要件に照らして適切に行うよう留意すること。

(別紙2)高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関等に通所する場合の通学定期乗車券制度の適用について

1.内容

 高等学校の不登校生徒が、相談・指導を行う学校外の公的機関や民間施設に通所するため鉄道又は乗合バスに乗車する場合、鉄道については実習用通学定期乗車券制度による通学定期乗車券が、乗合バスについては通学定期乗車券が、関係の交通事業者の理解と協力の下に適用される。

2.対象となる生徒

 学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている高等学校の不登校生徒で、当該生徒の在籍校の校長(以下「校長」という。)が、当該相談・指導を受けた日数を指導要録上の出席扱いとすることができることとした者とする。

3.通学定期乗車券の購入申請手続等

  • (1)鉄道については、校長が、各鉄道事業者の定めるところに基づき、実習用通学定期乗車券制度による通学定期乗車券の購入に必要な申請書の提出等必要な手続を行うこと。
  • (2)乗合バスについては、校長が、各バス事業者の定めるところに基づき、通学定期乗車券の購入に必要な申請書の提出等必要な手続を行うこと。
  • (3)各事業者における通学定期乗車券発売の開始時期や具体的な手続については、校長が、事前に対象となる生徒に対し必要な情報提供等を行うなど、円滑な事務処理に努めること。なお、JR各社の手続等については、別途連絡する。JR以外の各事業者については、校長から問い合わせること。
  • (4)通学定期乗車券の購入申請手続に当たっては、校長は設置者である教育委員会と十分な連携を図り、関係交通事業者に対し当該施設等に関する情報提供を行うなど、適切かつ円滑な運用に努めること。

(別添)民間施設についてのガイドライン(試案)

 このガイドラインは、個々の民間施設についてその適否を評価するという趣旨のものではなく、不登校生徒が民間施設において相談・指導を受ける際に、保護者や学校、教育委員会として留意すべき点を目安として示したものである。
 民間施設はその性格、規模、活動内容等が様々であり、民間施設を判断する際の指針をすべて一律的に示すことは困難である。したがって、実際の運用に当たっては、このガイドラインに掲げた事項を参考としながら、地域の実態等に応じ、各施設における活動を総合的に判断することが大切である。

1.実施主体について

 法人、個人は問わないが、実施者が不登校生徒に対する相談・指導等に関し深い理解と知識又は経験を有し、かつ社会的信望を有していること。

2.事業運営の在り方と透明性の確保について

  • (1)不登校生徒の不適応・問題行動に対する相談・指導を行うことを主たる目的としていること。
  • (2)著しく営利本位でなく、入会金、授業料(月額・年額等)、入寮費(月額・年額等)等が明確にされ、保護者等に情報提供がなされていること。

3.相談・指導の在り方について

  • (1)生徒の人命や人格を尊重した人間味のある温かい相談や指導が行われていること。
  • (2)情緒的混乱、情緒障害及び非行等の態様の不登校など、相談・指導の対象となる者が当該施設の相談・指導体制に応じて明確にされていること。また、受入れに当たっては面接を行うなどして、当該生徒のタイプや状況の把握が適切に行われていること。
  • (3)指導内容・方法、相談手法及び相談・指導の体制があらかじめ明示されており、かつ現に生徒のタイプや状況に応じた適切な内容の相談や指導が行われていること。また、我が国の高等学校教育制度を前提としたものであること。
  • (4)生徒の学習支援や進路の状況等につき、保護者等に情報提供がなされていること。
  • (5)体罰などの不適切な指導や人権侵害行為が行われていないこと。

4.相談・指導スタッフについて

  • (1)相談・指導スタッフは生徒の教育に深い理解を有するとともに、不適応・問題行動の問題について知識・経験をもち、その指導に熱意を有していること。
  • (2)専門的なカウンセリング等の方法を行うにあっては、心理学や精神医学等、それを行うにふさわしい専門的知識と経験を備えた指導スタッフが指導にあたっていること。
  • (3)宿泊による指導を行う施設にあっては、生活指導にあたる者を含め、当該施設の活動を行うにふさわしい資質を具えたスタッフが配置されていること。

5.施設、設備について

  • (1)各施設にあっては、学習、心理療法、面接等種々の活動を行うために必要な施設、設備を有していること。
  • (2)特に、宿泊による指導を行う施設にあっては、宿舎をはじめ生徒が安全で健康的な生活を営むために必要な施設、設備を有していること。

6.学校、教育委員会と施設との関係について

 生徒のプライバシ-にも配慮の上、学校と施設が相互に不登校生徒やその家庭を支援するために必要な情報等を交換するなど、学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。

7.家庭との関係について

  • (1)施設での指導経過を保護者に定期的に連絡するなど、家庭との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。
  • (2)特に、宿泊による指導を行う施設にあっては、たとえ当該施設の指導方針がいかなるものであっても、保護者の側に対し面会や退所の自由が確保されていること。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成23年09月 --