現在長期間学校を休んでいる児童生徒の状況等に関する調査結果とその対応について(通知)

平成16年4月15日
16初児生第2号 

各都道府県・指定都市教育委員会担当課長
各都道府県私立学校主管課長
付属学校を置く各国立大学法人学長あて

文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知

 標記の調査を全公立小中学校について実施したところ、結果は別添1のとおりとなりました。

 児童生徒の状況の把握や児童虐待防止に向けた対応につきましては、本年1月30日付け通知「児童虐待防止に向けた学校における適切な対応について」  (15初児生第18号)や本年2月6日に開催した「平成15年度第2回都道府県・指定都市生徒指導担当指導主事連絡会議」等において、日ごろからの児童生徒の状況把握、関係機関等との連携、学校としての組織的な対応や教育委員会との連携など、適切な対応が図られるようお願いしているところです。

 ついては、今回の調査結果を踏まえ、都道府県教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して、都道府県私立学校主管課にあっては所轄の私立学校に対して、下記の点に留意の上、児童生徒の状況の把握に一層努めるとともに、児童虐待防止へ向けての一層適切な対応が図られるよう御指導をお願いいたします。

 なお、児童虐待の問題につきましては、「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、また、「児童福祉法の一部を改正する法律案」が国会に提出されておりますので、参考までに概要(別添2及び3)をお送りいたします。これらにつきましては、今後、必要に応じ情報提供等を行うこととしておりますのでよろしくお願いいたします。

1. 長期にわたって欠席している児童生徒の状況の把握について

  1.  長期にわたって欠席している児童生徒については、その要因や背景は様々であることから、状況を適切に把握した上で対応を検討する必要があること。その際、長期にわたる欠席の背景に児童虐待が潜んでいる場合があるという認識を持ち、学校は、当該児童生徒の家庭等における状況の把握に特に努める必要があること。
  2.  教職員が当該児童生徒に会えていないなど状況の把握が困難な場合については、校内の不登校対策委員会等を活用して学校としての対応方針について具体的に検討し、対応すること。
  3.  児童生徒本人の心身上の理由により会うことができない場合などにあっても、対応を学級担任のみに任せるのではなく、生徒指導担当教員、養護教諭、スクールカウンセラー、相談員等、当該児童生徒と関わりを持てる者が継続的に家庭訪問を行うなど、学校として組織的な対応を行うこと。その際、保護者と会うことができる場合には、保護者との信頼関係を築きつつ、保護者を通じての状況把握に努めること。状況に応じて、学校から医療機関や相談機関等の専門機関へ相談したり、保護者へ専門機関を紹介することも考えられること。
  4.  当該児童生徒に会うことができず保護者から協力が得られないなど、学校関係者のみでは当該児童生徒の状況把握が困難である場合には、学校だけで対応しようとせず、早期に教育委員会への連絡、相談を行うとともに、地域の民生・児童委員、主任児童委員、児童相談所、福祉事務所、警察署、少年サポートセンター、少年補導センターなどの関係機関等の協力を得て状況把握に努めること。
  5.  長期にわたって状況の改善が見られない場合などにおいても、学校は、在籍している当該児童生徒への意識を低下させることなく、家庭訪問等を継続するなど、当該児童生徒への関わりを持ち続け、状況の把握に努めること。その際、個別の児童生徒ごとに関係機関等から構成されるサポートチームの活用や教育支援センター(適応指導教室)等が行う訪問指導の活用など効果的な取組に努めること。
  6.  学校関係者が家庭訪問等を行う際は、当該児童生徒が長期欠席や不登校に至った経緯を踏まえ、当該児童生徒及び保護者の心情等には十分配慮し、機械的な働きかけをすることで児童生徒及び保護者を追い詰めることなどがないようにすること。
  7.  教育委員会は、定期的な学校からの報告や学校訪問を通じ、日ごろから域内の児童生徒の状況把握に努めること。また、学校からの連絡、相談等に対しては、具体的な指導、助言を行い、学校を積極的に支援すること。
     学校だけでは対応が困難な場合については、学校に対して、サポートチームの活用や教育支援センター等が行う訪問指導の活用など関係機関等との連携について具体的な指導、助言を行うこと。その際、学校に対して適切な関係機関等を紹介したり、教育委員会から関係機関等へ働きかけるよう努めること。

2. 児童虐待防止に向けての適切な対応について

  1.  学校の教職員は、職務上、児童虐待を発見しやすい立場にあることから、学校生活のみならず、幼児児童生徒の日常生活面について十分な観察、注意を払いながら教育活動をする中で、児童虐待の早期発見・対応に努める必要があること。
  2.  児童虐待を受けた幼児児童生徒を発見した場合は、速やかに児童相談所又は福祉事務所へ通告すること。また、児童虐待の疑いがある場合には、児童相談所等の関係機関へ連絡、相談を行い、その際は疑いの根拠となる事情を明確に伝えること。さらに、関係機関へ相談等を行った後も、関係機関と連携し、当該幼児児童生徒の状況把握を行うなど、必要な支援を継続して行うこと。
     児童虐待の防止等に関する法律において、通告を受けた児童相談所等の職員等は、当該通告を行った者を特定させる情報を漏らしてはならないことととされており、学校においては、幼児児童生徒の保護者との関係が悪化することなどを懸念して通告をためらうことがないようにすること。
  3.  今回の調査結果においては、関係機関等へ相談等を行わず学校のみで対応した理由として、「学校の指導により状況が解消・改善されたため」、「状況を確認中のため」、「虐待の事実がないことが判明したため」などが挙げられているが、児童虐待の疑いがある場合には、確証がないときであっても、早期発見の観点から、児童相談所等の関係機関へ連絡、相談することが重要であること。
  4.  教育委員会は、児童虐待に関する域内の学校からの連絡、相談等に対して適切な指導、助言を行うこと。また、教職員一人一人が児童虐待に関する知識や理解を有した上で、幼児児童生徒の行動の変化等に着目することが児童虐待の早期発見・対応には不可欠であり、そのための研修の充実を図ること。
  5.  学校及び教育委員会は、虐待防止ネットワークに参加するとともに、教職員等に対して、学校及び教職員等に期待されている役割や関係機関等の役割の周知に努めるなどにより、日ごろから関係機関等との連携を推進し、児童虐待防止に向けた取組の一層の充実を図ること。

〈別添1〉

現在長期間学校を休んでいる児童生徒の状況及び児童虐待に関する関係機関等への連絡等の状況について<概要>
(都道府県教育委員会を通じ公立小中学校について調査した結果)

1. 現在長期間学校を休んでいる児童生徒の状況    

(平成16年3月1日現在 「30日」は平成16年1月31日~2月29日である)

  • 学校を30日以上連続して休んでいる児童生徒数は49,352人 
  • 30日以上連続して休んでいる児童生徒のうち,学校の教職員が会えていない児童生徒数は13,902人(28.2%)
    (うち,教職員がその保護者には会えていることを学校が把握している数は10,012人)
  • 30日以上連続して休んでいる児童生徒のうち,学校も他の機関の職員等も会えていないと思われる児童生徒数は9,945人(20.2%)
  • 学校も他の機関の職員等も会えていない主な理由は,
    • 児童生徒本人の心身上の理由により会うことができない(66.1%)
    • 保護者の拒絶により会うことができない(9.1%)
    • その他(居所が不明,域外に居住,連絡が取れない等)(16.7%) など

 2. 児童虐待に関する教育委員会や関係機関等への連絡等の状況

(平成15年4月~平成16年2月)

  • 児童虐待の発見や疑いにより,学校が教育委員会へ報告・連絡・相談を行った児童生徒数は5,837人
  • 児童虐待の発見や疑いにより,学校が関係機関等へ通告・連絡・相談を行った児童生徒数は8,051人
  • 学校が最初に通告・連絡・相談等を行った関係機関等は,
    • 児童相談所(63.1%)
    • 福祉事務所(10.8%)
    • 警察(2.2%)
    • その他(民生・児童委員,主任児童委員,都道府県・市町村の福祉部局等)(23.9%)
  • 虐待を疑った際,学校のみで対応した児童生徒数は597人
  • 学校のみで対応した理由は
    • 学校の指導により状況が解消・改善されたため
    • 状況を確認中のため
    • 虐待の事実がないことが判明したため

など

〈別添2,3略〉

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導調査分析係

-- 登録:平成23年01月 --