2.文化体験 41.青森県立田子高等学校

郷土の文化・芸術の継承と地域への社会奉仕活動

【活動のポイント】

  • 郷土の文化・芸術体験活動を通して、郷土の素晴らしさを認識するとともに、本校文化祭の前日祭に行われる「流し踊り」を習得し、披露する。
  • 社会奉仕活動を体験することにより、ボランティア精神を育む。
  • 集団宿泊により、規範意識を醸成するとともに、生徒間、生徒と教員間の信頼関係を築く。

活動内容(対象:1年生)

<事前指導>

  • 活動のねらい・活動内容・昨年度の取組の反省点等について、生徒と保護者にそれぞれ長期宿泊体験活動に関する説明会を行った。
  • 社会奉仕活動の際には、担当教員や同じ係の本校上級生の説明・アドバイスを受けて実施した。

<活動の展開>

1期:郷土の文化・芸術体験(6月28日〜7月2日)

体験の種類(活動場所) 内容 教育課程上の位置付け
1

ア 郷土芸能の学習と習得
(二戸市の岩手県立県北青少年の家)

郷土の伝統芸能であるナニャドヤラ・サイノ節・囃子の太鼓等、田子町ナニャドヤラ保存会、田子神楽保存会の指導の下、その歴史を学び、技能を習得する。 特別活動(学校行事)

イ 郷土の食文化・木工の体験
(田子町のタプコプ創遊村)

作陶・絵付け・木工、蕎麦打ち・蒟蒻作りの二分野から一つずつ選び、それぞれ専門家から指導を受けて、作品と食品を作る。
  • ナニャドヤラは、様々な語源説がある。いつ頃から踊られていたのかについては、はっきりと記されているものがなく、「昔から」としか言われていない。本来は、各集落の神社で、「盆踊り」として、さらには「産土様(うぶすなさま)」の祭礼の夜にも踊られていた。満月の頃、明るい月影を浴びながら、若い男女が呼びかけあい、答え合って恋を語らう。それはわが家の繁栄をこい願っているご先祖様の喜びでもあった、とされている。締太鼓の伴奏で、音頭取りの歌声を受けて、踊り手たちも歌いながら踊ったとされている。
  • サイノ節:「盆踊り」の際に、「ナニャドヤラ」とセットで、早踊りとして踊られていたものらしい。
  • 「田子神楽(タッコカグラ)」は450年ほど前から伝えられており、山伏神楽がスタートといわれている。南部藩26代信直公が世子として田子城に居城し、27代利直公は天正4年(1576年)にここで誕生。そのころから、田子神楽は田子城下を守護する神楽だったとされている。三戸(サンノヘ)城主となった利直公は、田子の山伏「大法院」に神楽を舞わせ、南部藩の御用神楽とし発展させた、とされている。
     現在、「大法院」の子孫斉藤家の絶えた後、権現様は田子町鎮守八坂神社の境内に権現堂を建てて奉安し、諸道具は宝庫に納められ、神社総代の管理下にあり、歌・舞ともに「田子神楽保存会」によって継承され、昭和36年1月14日青森県技芸指定(無形民俗文化財)、昭和46年度には文化庁から無形民俗文化財記録作成指定とされた。
  体験活動内容
6月28日(火曜日) 午前 11時30分〜 入所式
午後 13時30分〜14時 座学(ナニャドヤラの歴史・範囲など):A
14時〜14時40分 ビデオ(文化祭・高総文祭など)
15時〜16時30分 流し踊り練習:B、E
18時30分〜20時 田子神楽保存会による実演見学:C
6月29日(水曜日) 午前 9時〜10時 流し踊り練習:B
10時〜10時30分 流し踊り自主練習・準備
10時30分〜12時 レクリエーション
午後 13時30分〜14時30分 プラネタリウム
14時30分〜15時 流し踊り自主練習・準備
15時〜16時30分 流し踊り練習:B、E
18時30分〜20時 流し踊り練習:A
6月30日(木曜日) 午前 9時〜10時 流し踊り練習:B
10時〜10時30分 流し踊り自主練習・準備
10時30分〜14時30分 野外炊事
14時30分〜15時 流し踊り自主練習・準備
午後 15時〜16時30分 流し踊り練習:A、E
18時30分〜20時 流し踊り練習
7月1日(金曜日) 午前 10時〜12時 タプコプ創遊村での体験学習
午後 13時30分〜15時30分 タプコプ創遊村での体験学習
18時30分〜20時 二戸市ナニャトヤラ保存会との交流:D
7月2日(土曜日) 午前 10時〜 退所式
  • 協力者
    • A:田子町ナニャドヤラ保存会
    • B:佐藤美智子氏(田子高校旧職員で、郷土芸能に精通している方)
    • C:田子神楽保存会
    • D:二戸市ナニャトヤラ保存会
    • E:郷土芸能部の3年生

2期:社会奉仕活動(10月1日〜10月2日)

「にんにくとべごまつり」ボランティアの業務内容
体験の種類(活動場所) 内容 教育課程上の位置付け
2

田子町「にんにくとべごまつり」
ボランティア
(田子町の大黒森229ドーム)

総務係・バーベキュー係・野菜係・駐車場係・丸焼きコーナー係等に分かれ、田子町職員や一般町民とともにまつりの運営に携わる。 特別活動(学校行事)
【総務】

本部テントにて当日券の販売など、事務局の補助

【アトラクション係】

アトラクション進行補助

【バーベキューコーナー係】

バーベキュー用鉄板・炭の準備、鉄板の掃除

【野菜係】

カットした野菜を容器に詰める

【券引換係】

来場者が持参したチケットと引換えに、バーベキューセットを渡す

【駐車場係】

駐車場にて来場者の誘導

【丸焼きコーナー係】

来場者が持参したチケットと引換えに、切り分けられた丸焼き肉を、皿に盛り渡す

<事後指導>

  1期・2期それぞれの活動終了後に、積極的に活動できたか、活動を通して自らを変容させることができたか等必ず自己評価をさせ、今後の学校生活に生かせるよう意識付けを図った。

体験活動の支援体制

○学校支援委員会の体制

  • 1学年担任団を中心に、教務部、生徒指導部、郷土芸能部顧問、生徒会顧問、地域の指導者である田子町ナニャドヤラ保存会理事、田子神楽保存会伎芸部長等で構成し、計画・実施方法等について協議した。
  • 計画の一部変更や、実施する際のアドバイスを頂いた。

○配慮事項等

  • 事前に岩手県立県北青少年の家(二戸市)・タプコプ創遊村(田子町)の下見をし、それぞれの職員と打合せをして臨んだ。
  • 昨年度の活動の際にあまりに気温が高かったことから、生徒の健康面に配慮し、宿泊体験の実施時期を約1ヶ月早め、7月上旬とした。
  • 「にんにくとべごまつり」実行委員会には生徒指導部長が出席して運営の協議に加わり、体験活動の円滑な実施を図った。

期間中の評価・指導の工夫等

○評価の工夫について

  1期・2期ともに活動終了後に自己評価をした。活動全般、細かな体験内容、二戸市ナニャトヤラ保存会との交流、施設、活動参加後の変容等、細部と全体を評価できる項目を設定し、生徒自身の変容の自覚の有無とその具体的内容も分かるようにした。

○指導の改善について

 今年は、生徒実行委員会を編成し、準備・活動全般の運営についても生徒自らが教員と協力して行い、生徒の意見も組み入れるよう改善した。

体験活動の成果と課題

  • 郷土芸能の技能を習得し、社会の一員として地域に奉仕することの意義ややりがいを実感できた。
  • 中でも二戸市ナニャトヤラ保存会との交流は、練習の成果を発揮する機会であったとともに、地域によって表現方法が違うことを発見したり、田子独自の流し踊り(サイノ節)を披露する楽しさを十分味わうことができた。
  • 外部指導者からは「今年度の生徒はおとなしく積極性に欠けるところもあったが、素直で飽きずに取り組むことができたため、変な癖がつかず正確に踊れるようになった。ボランティア活動で視野を広げ、更に成長するよう期待している。」という感想を頂いた。
  • 学年団としても、生徒同士だけでなく、生徒と教員間の信頼関係も深まり、互いの良さを発見する貴重な時間であったと考えている。
  • 他の地域の方々との交流は、生徒にとって大きな刺激、励みともなり、また生徒の郷土の文化や芸術に愛着を持つ機会ともなる。郷土の文化・芸術を継承する担い手としての自覚と自信を更に育てるためにも、これを契機に同じ郷土芸能を継承する二戸市ナニャトヤラ保存会との交流を継続していきたいと考えている。

-- 登録:平成21年以前 --