2.交流体験 37.東京都昭島市立多摩辺中学校

豊かな心の育成をめざす体験活動

【活動のポイント】

 学校の周辺には拝島大師、日吉神社等の古くからの寺社もあり、祭りなどの伝統行事が受け継がれている。近くに多摩川が流れ、所々水田や畑が残り、自然も多いが、農業を身近に感じる体験等については未経験の生徒も多い。

【農業体験を実施したポイント】

  • ア 農作業体験を通して、食物を作る知恵や技術、働くことの楽しさ、意義などを学び、自らの課題研究の意識を高める。
  • イ 農家の人たちと生活を共にすることで、人とのふれあいの大切さを学び、交流を深める。
  • ウ 宿泊を伴う生活の中で、仲間意識を深め、協力して行動する力を高める。
    また、農業体験を核にした交流体験活動のねらいとして、「体験する」「ふれあい、感じる」「知る」「考える」「表現する」を設定した。
  • 小川村での移動教室・農業体験は、今年度で6回目。第1回目が平成9年、第2回目が平成12年、第3回目の平成15年からは、総合的な学習の時間と関連付けた体験活動として毎年実施。

活動内容(対象:2年生)

 5月中旬、2年生が、長野県上水内郡小川村の農家に分宿し、各農家の方の指導のもと、2泊3日の行程で、田植え、野菜作り、りんごの摘花、森林の伐採等の農業体験を行っている。

  • 交流体験が始まったきっかけは、小川村と繋がりのある教員が当時異動してきたことであった。交流体験を数回実施し、生徒がスキー教室では得られない良さを体験できたことが教員や保護者の理解を得て、現在に至っている。

 この生徒の農業体験を中心にして、小川村の人々と次のような地域交流を行っている。

  • ア 農家の人々との手紙の交換
  • イ 農業体験をまとめた班新聞・個人新聞を作成し、多摩辺中展示会にて展示し、小川村の人々を招聘して特産物予約販売と懇談会を実施
  • ウ 農業体験に関する作品(班・個人新聞等)を小川村福祉大会の展示会に出品
  • エ PTA研修旅行で保護者が小川村に出かけ、村の人々と交流を実施
  • オ 教職員も農繁期に手伝いに出かける
  • 受入農家が兼業であることが多く、実施日程が土曜日〜月曜日となるため、この日程を生かして、当該実施学年以外の教員有志によるボランティア活動が契機。このような教員による活動が、学校と村の一層の交流を生んでおり、交流活動の支えになっている。

○小川村での農業体験

  • 1農作業 各農家の畑や水田、1日目午後、2日目午前と午後、3日目午前
  • 2取材等 1日目夜、2日目夜
  • 3食事の支度手伝い、清掃 1日目〜3日目

○指導・支援

 農作業等については、農家の方に指導していただいた。清掃や食事の仕度の手伝い等は、計画表を班で作成し、それに従って全員で行う。生徒への指導内容(農作業中、家での生活、食事等)について、具体的な注意事項や依頼事項をあらかじめプリントにして配付し、共通理解を図る。

全体の指導計画

活動の名称 学年 内容 期間

事前指導

小川村と同村の農作業を知る

1年 【知る】【ふれあい、感じる】
  • 12年生の発表会への参加、展示会作品の見学、前年度のビデオ視聴。
  • 22年生にアンケート形式で農作業の内容、注意事項、楽しかったこと、学んだことなどを答えてもらい、回答結果の読み合わせを行う。
  • 3小川村の位置、気候、人口、歴史、郷土食、産業と特産物、観光名所等について、小川村観光案内パンフレットやインターネットを利用しての調べ学習。農業(稲作、田植え、野菜やりんご栽培)や林業について文献やインターネットを利用した調べ学習。
    • 都道府県調べ(長野県)、地形図学習(地形図で小川村の地形をよむ)
2月
3月

移動教室準備

2年 【ふれあい、感じる】【考える】【表現する】【知る】
  • 1農業体験で学ぶこと、スローガン、持ち物や行動のきまりを考える。
  • 2農家の人への質問事項を考える。(小川村、農業、生活、生き方)
  • 3生徒による挨拶状の作成(自己紹介・班紹介カードと班員の写真)
  • 4班旗の作成。アイデアを出し合いオリジナル作品を作成する。体験期間中は各農家の玄関で体験中の目印とする。多摩辺中の展示会と小川村での展示会において展示し、その後は農家ヘプレゼントする。
  • 5農家から返送されたアンケート内容を各自がしおりに記入し、班員の共通理解を図り、持ち物や注意事項の徹底を図る。
  • 6給食の時間等に、箸の使い方、などの食事のマナーや好き嫌いをなくす、野菜を食べることについて指導する。
    • 礼儀とマナー、集団生活
4月
5月

当日

農業体験と交流

2年 【体験する】【ふれあい感じる】【知る】
  • <農作業>
    田植え、畑での野菜作り、リんごの摘花、森林の伐採等
  • <郷土料理等>
    おやき作り、草木染、うどん作り、そば作り
  • <その他>
    食事の仕度の手伝いと後片付け、風呂掃除、部屋掃除、玄関掃除、トイレ掃除等を分担して行う。
  • <取材・インタビュー>
    農家の人を人生の先輩として位置付け、これまでの生き方を聞くことで、人間としての生き方について考える。
5月

事後指導

まとめる

2年 【ふれあい、感じる】【考える】【表現する】
  • 1お礼の手紙、お礼の色紙作成…記念になるように感謝の言葉や農家の方との写真などをつけて作成する。
    • 手紙の書き方
  • 2農業体験新聞(班新聞)の作成
  • 3農業体験記(個人新聞)の作成
  • 4文集原稿の作成…「小川村農業体験で学んだこと」「3日間の記録」
  • 5農業体験文集の作成…完成後、分宿した農家と役場に配付する。
6月
7月
9月

事後指導

発表する

2年 【考える】【表現する】
  • 1農業体験発表会の準備
    • 発表内容の組み立て
    • 発表原稿書き
  • 2農業体験発表会…班単位の発表だが、班員全員が必ず何かの事項について発表する
    • 保護者への案内、1年生の参観あり
  • 3展示会での作品展示(1月)→2月に小川村で展示会開催
10月

交流を続ける

2年
3年
【ふれあい、感じる】【表現する】
  • 1暑中見舞い(残暑見舞い)、年賀状を書く
  • 2多摩辺中展示会にて小川村特産物予約販売を行うため、小川村をPRする内容を考え、全員で作業に取り組む
    • 小川村紹介新聞作成
    • 農産物予約販売のチラシ作成
    • 農産物紹介イラスト作成
    • 小川村PRポスター作成
  • <3年次>
    修学旅行先(京都)からの旅のたよりを書く
10月以降

体験活動の支援体制

【学校支援委員会の体制】

[構成]

  • 小川村・・小川村役場助役、建設経済課産業係長、宿泊農家代表、つながりづくり委員
  • 学校・・校長、副校長、2学年主任、各学年から委員1名

[活動]

受入農家の選定、農作業体験活動に関する学校と農家との連絡調整、引率教員の村内移動のための車の手配、入村式・お別れ式の準備設営、多摩辺中学校展示会での小川村物産展の準備運営、小川村での生徒作品展示会の準備運営

  • 小川村役場の担当者と学校とが連絡をとり、受入農家の選定は村の活動委員会と学校が連携して行った。

[打合せ]

電話やFAX、電子メールによる。実施1ヶ月前からは2〜3日に一度は連絡をとっていた。

【配慮事項】

  • 農家への依頼は、活動委員会による農家対象の事前説明会において実施。
  • 土曜日、日曜日を日程に含め、5月以降に実施した。(週末の農作業、田植え等の時期に合わせる)
  • 雨天時の対応については、あらかじめ協議し、特に作業中の服装(雨具)について確認をする。
  • グループ(班)については、農家の要望(人数、男女等)、生徒の希望(体験したい事柄)等を考慮し、調整して決定する。場合によってはクラスを超えての班編成も検討する。
  • 食物アレルギー、動植物に関するアレルギー等に関して、伝達できる範囲であらかじめ農家に伝達し理解を得て、注意をしてもらう。その他、お客様扱いをせずに農作業をさせること、人生の先輩として話をしていただきたいこと、等も伝えた。
  • ねらい等に関して、保護者に十分な理解を求め、協力を得る。
    (事前に送る手紙への一言と事後のお礼)

体験活動の成果と課題

○生徒の感想

  • 農業体験はもちろん心に残っているけど、それよりも一番心に残っているのは、家の方々の心の温かさです。(男子)[人とのつながり、思いやり、コミュニケーション]
  • 1日目、2日目、3日目と仕事をだんだんやっているうちに、時間を無駄にせず、仕事を大切にやっていこうという心が持てたと思いました。(男子)[勤労意識、責任、意欲]
  • 一番心に残ったことは、おじいちゃんやおばあちゃん、お父さんとお母さんといっぱい話せたこと。それから、自分らしく3日間いられたこと。(女子)[高齢者との交流、自分らしさ]

○保護者の感想

  • 帰ってくるなり、初めての農作業が大変だったこと、でもみんな優しく接してくれたからとても楽しかったこと、ごはんが美味しくておかわりしたことなど、日焼けした顔でいろいろと話してくれました。(女子・母)

○心の成長

 小川村での体験を通した生徒の心の成長は、人権作文コンクールや社会を明るくする運動作文コンクールなど各種作文コンクールでの生徒の作品によく現れている。小川村での体験で感じたことを題材にして書いた生徒の作文が、社会を明るくする運動作文コンクールで東京都更正保護施設連盟会長賞に選ばれ、小川村広報に全文掲載された。(平成18年2月)

○今後の課題

  • 1指導体制の充実(特色ある教育活動の一つとして継続、発展させていくため)
  • 2家庭や地域との連携
  • 3学校間交流などの取組(生徒会を中心に)
  • 4秋に同じ小川村で農業体験を行っている埼玉県越谷市の中学校との連携

-- 登録:平成21年以前 --