社会に学び、将来を切り開く力を育む
本校は、三好町の南西部に位置し、町の中心部にあたる。全校生徒数447名、各学年4学級、特別支援学級1学級の13学級の中規模校である。校訓「たくましく うるわしく かがやかしく」のもと、「自主、創造に富み、個性豊かでたくましく、誠実な人間の育成」を教育目標としている。
創立60周年を迎え、町内では一番伝統がある学校である。校区には3つの小学校があり、その児童のほとんどが本校の生徒となる。本校の生徒は誰とでもあいさつができ、明るい生徒が多い。また、行事や自分たちが興味をもったことに対しては意欲的に取り組むことができる。反面、学校生活の中で目的意識が低く、向上心に欠ける場面も見られる。
そこで、常に目標を持ち、見通しと意欲をもって取り組めるようになってほしいと考え、様々な実践をした。
本校では、体験活動前の事前・事後学習を重視するとともに、「5daysチャレンジ(5日間の職場体験活動)」を中核に、1年生を事前学習、3年生を事後学習と考え、3年間を見通した実践を目指している。
三好中学校の組織だけでなく、愛知教育大学教授である、竹内登規夫教授を委員長に三好町教育委員会、三好町商工会、三好町工業経済会、ライオンズクラブ、三好町PTA、4中学校推進担当者で「キャリア・スタート・ウィーク実行委員会」を組織し、三好町全体で取り組んでいる。
平成18年8月21日(月曜日)〜25日(金曜日)
第2学年 159名
本校では、職場体験活動は生徒全員が自己有用感を獲得できる場であると考え、職場体験活動を中学校生活3年間の中核として取り組むことにした。職場体験活動の事前学習・事後学習を大切にするとともに、3年間を見通し、1年生では、発表の力を育てたり、職業に対する意識を高める事前学習、3年生では、職場体験活動で学んだことを自分なりに地域に生かしたり、上級学校との円滑な接続をしたりする事後学習の機会と考え、題材系統図を作成した。
今まで、第2学年だけの実践という意識が否めなかった。そのため、各事業所への打ち合わせ、生徒一人一人への声かけ、励ましが少なかった。そこで、全職員で第2学年の生徒とかかわるようにした。まず、学級活動の時間で学級担任以外の全校職員によるゲーム的要素を取り入れた人間関係作りのエクササイズを行った。また、活動前に教員一人一人の激励の言葉が書かれたお便りを配ったり、体験時には、各事業所を回り、激励を行った。
生徒の活動の様子紹介や教師・保護者・事業所の激励の言葉などを載せた通信を職場体験活動期間中毎日発行した。生徒たちも、励ましの言葉や他の職場の生徒の様子を知り、やる気になっていった。また、各事業所にも配り、好評だった。
6月に職場体験活動の保護者ボランティアを募り、説明会を行った。保護者ボランティアは、事業所へ行き、生徒を励ますとともに、活動の様子を写真に撮ったり、お便りに載せる記事を書いたりした。今年度は20名程度であったが、生徒の活動の様子を見たいという保護者や、来年のために1年生の保護者も参加したいという意見があり、来年度はさらに人数が増えそうである。
職場体験活動の発表会の時には、事業所の方と1年生を招待した。2年生にとっては、来年職場体験を行う1年生のために役立ったという自己有用感につながり、1年生にとっては、来年に向けての心がまえをつくる機会とした。お世話になった事業所の方に声をかけられ、2年生にとっては活動の価値を自覚する良い機会となった。
真夏を思わせるような暑さにも負けず,三好中学校初めての取り組みである,「社会に学ぶ『5daysチャレンジ』に,2年生が挑戦をスタートさせました。保護者ボランティアの方々が戻ってこられるたびに,子供たちの元気な姿や緊張した様子を話してくださり,がんばってくれている生徒の姿を実感として捉えることができました。
また,どの事業所の方も子供たちを温かく受け入れてくださっているという話を聞くことができました。事業所の方々や保護者ボランティアの方々のご協力に,心から感謝しております。
一人は砂場で、一人はプールに入っていて二人とも園児に囲まれていました。まだ緊張している様子もあり、園児になつかれているところもあり、先生方も温かく見守っていてくださいました。
(保護者ボランティア 石河千佐子さん)
入っていったところ、お皿やカップを拭いているところでした。緊張しているとのこと。「頑張って」と声をかけてきました。
(保護者ボランティア 石河千佐子さん)
6月 |
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7月 |
〔体験当日〕(三好町民病院の例)
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9月 |
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10月 |
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5月中旬 職場体験ガイダンス(職場体験の説明会)
その後、生徒の興味関心を中心とした第1回希望調査を行った。M男は、第1回希望調査では、スタントマンの経験をしたいと言っていた。しかし、実際に三好町近辺では、そのような経験ができるところはないため、担当教諭は、数回M男とキャリアカウンセリングをして、本人の希望である、体を動かす職業、ものづくりができる職業をキーワードに建設会社に体験に行くことにした。決定時期は、7月初旬であった。
希望通りの生徒も第1回目の希望調査後、自分の適性や自分のよさを知る学級活動の授業、働く意義や職業の特性を考える授業などを行った後、キャリアカウンセリングを行い、興味関心だけでなく、自分の特性も考えながら体験先を決定した。
2年次での活動の「事前学習」に当たる1年次では、以下のような活動をしている。
1年生の総合的な学習では、夢や希望とは何か、「働く」とは何かを知り、さらに自己理解を深めることを通して、将来へのより具体的な目標をもつことを一つのねらいとしている。1年生の生徒は、これまで、夏休みを利用して、主に保護者の勤務先を訪問先として職場訪問を行ってきた。保護者の働く姿を見ることで「働く」ということのもつ多様な面を感じとることができた。また、発表会でたくさんの職業について聞き、自分の将来の職業について意識を高めることができた。
そこで今回は、自分で選択した職場を訪問しようと考えた。自分で選択した職種を体験先とすることで、生徒はより自発的な学習に取り組むことができると考えたからである。まず、職場訪問の前に、学級活動で自分の適性や特徴を知り、それをふまえて職場を決めさせた。また、職場を決めた理由を明確にして課題を作り、その課題を解決させるための質問作りにも取り組む。事後には、聞いたり、見たりした内容をポスターにまとめ、保護者を呼んで発表会を開くこととした。
自分の希望する職場を決め、訪問を実施した。62箇所の受け入れ事業所に1〜3人に分かれて訪問をした。時間は30分程度を予定していたが、事業所によってはとても丁寧に説明をしていただいた。中には2時間近く時間を割いていただいた事業所もあった。
40分前には会社についてしまい、会社の近くで待っていた時間がとても怖かった。いざ、会社の前に行ってみると入り口がわからず困っていたところを従業員の方が声をかけてくれました。本当ならこっちが聞かないといけないのにと思いました。
見学したのは実際にバネを作っている現場でした。うるさい機械がいっぱいあって驚きました。インタビューでは担当の人と話をしました。質問の中で、「バネづくりに大切なことは?」と聞くと、「お客様に迷惑にならないバネをつくること。」という返事が返ってきました。ものづくりに大切なことは、使う人に迷惑がかからない部品・製品をつくることだと思いました。
帰路では自分の将来のことを考えていました。自分の夢をかなえるためにもっと勉強しないといけないなと思いました。
はじめはグループ発表として、学級を解体して様々な職種の発表が見られるようにグループ分けをして実施した。グループ発表の結果、代表者を1人ずつ選び、代表者24人の発表会を行った。発表者と聞き手を6グループずつに分け、聞き手が2箇所の発表を聞く形式とした。発表者は2回目ということで、前回の反省を生かして方法を改善しながら発表することができた。
この発表会でお互いの職場訪問での成果を認め合うとともに日常生活のなかでも職業について、また人の生き方について考えることができるようになってきた。
今回の職場訪問では自分の希望の職業、またはそれに近い職業を見ることができるということで、生徒の意欲もより高まった状態で取り組むことができた。体験後は「次はこうしたい!」という気持ちをもつことができた生徒が多かったように感じる。2年生での「5DAYSチャレンジ」に発展させていきたい。また、自分でポスターを作り、発表をすることや友達の発表を見ることによって体験が共有できた。
生徒の行ってきた活動は素晴らしいものであった。しかし、自分の活動の価値に気づくためには教師の働きかけが不可欠である。例えば「つまらなかった。」という感想しかもてなかった生徒にも、教師の言葉がけによって、少しでも成長した自分に気づき、活動に価値が見出せると考える。活動の後に活動の振り返りと教師の言葉がけの場面をもっとつくる必要があると感じた。面接時間の確保やワークシートへの朱書きの活用を今後の課題としていきたい。
学習や毎日の学校生活のなかで目的意識がもてず、受け身的に物事に取り組んでしまう生徒たちがいた。しかし、体育大会や合唱コンクールなど、自ら目的を見出したときには主体的に動くこともできる。また、1、2年生における職場体験や選択ボランティアを通して、「人の役に立ちたい」「すすんで人のために働きたい」という気持ちが芽生えてきている時期でもある。
また、自分の考えや思ったことなどを発言できる生徒が少ない。それは本人が自信をもてないという点と周りの生徒の認め合う雰囲気に欠けるという点に起因するのではないか。また、相手の気持ちを理解できず、自分本位な言動をする生徒も少なくない。
独り暮らしの在宅高齢者の方に対する介護などについて具体的な活動を進めるなかで、相手の気持ちになって、見方を新たにするとともに、福祉に対する意識を高め、自分にできることを自ら見出し、積極的に活動を展開する。
独り暮らしをしている方のところに、事前訪問を含めて、お年寄りとかかわる場を複数設定し、そのお年寄りに合わせた活動内容を検討したうえで、計画準備をする。当日は一日日程でお年寄りの自宅を訪問し、交流を深めてくる。(昼食作り、クラフト、談話など)
職場体験・訪問、社会人学級、選択ボランティアにおいて、自分は何に興味や関心があり、何を学んだのかを振り返ることで、社会貢献活動で自分がどんな活動をしたらよいのかを考えるきっかけとする。
「興味関心の履歴」と「活動の履歴」を併せて「自分の学び」を具体的に振り返ることのできるワークシートを作成し、肯定的に受け入れる朱書きを入れる。
社会貢献活動への意識を持ち始めた生徒たちに、障害者・高齢者福祉施設で働く現場の方の体験談や思いを直接聞くなかで、「人の役に立ちたい、自分もやってみたい」という実践意欲を高める。
「興味関心の履歴」と「活動の履歴」を併せて「自分の学び」を具体的に振り返ることのできるワークシートを作成し、肯定的に受け入れる朱書きを入れる。
手紙の雛型になかに「訪問の目的と活動したい内容」「お年寄りとの接点(話題)になりそうなもの」が含まれるように、記入項目を列挙しておいた。
「打ち合わせ例」を事前に配付し、進め方を説明。その時に「どんな活動を予定しているか」を、自分たちの口からはっきり言えるように口頭練習させた。
お年寄りとの会話をもとに「追加情報」を作成し、各グループとの対話の時間を設け、「可能な時間」と「お年寄りが楽しみにしていた」ことも伝えた。
相手のお年寄りを意識したプレゼントや準備をする過程を設け、活動をするなかで「お年寄りの喜んでもらいたい」という思いを高める。
生徒へのアドバイスや相談の時に、「そうすることでさんが喜ぶんだね?」と常にお年寄りの名前を出しながら生徒たちに問いかけるよう心がけた。
事前学習までに,教師からの「これだけはおさえたい」ということを生徒たちに伝え,指導をしたら,その後はできるだけ生徒たちの立てた計画やアイディアを尊重する。安全性やお年寄りに大きな迷惑をかけないようなものであれば,認めた。失敗やうまくいかない恐れがあるものについては,事前にお年寄りにお願いしておくことも大切である。
来てくださった生徒さんは手際よく料理ができ,感心しました。孫と一緒に食べているようで,とてもおいしかったです。若いエネルギーをもらい,楽しく過ごさせていただきました。またいつかできたらうれしいなあ・・・。
Aさんと一緒に,折り紙を折ったこと,昔の話をしたこと,もっと知りたいと思うことがいっぱいで,できるのなら,もっとお話ししていたかったです。今度は個人的に行きたいです。Aさんの家に行くと,まるでおばあちゃんの家にいるみたいで,とても,ほっとできました。Aさんから,「孫と一緒に料理をしている感じ,ほんとうに来てくれてありがとう」と言っていただけて,とてもうれしかったです。
大人とのかかわりにおいて、「気持ちを考慮する」「人の役に立つ」「人を助ける」という項目などで、実践前の9月と比較して、広がりがみられる。
カテゴリー(接する相手)によって、生徒の学びの深さ・広がりが違ってしまう。例えば、独居老人の訪問は双方が良い関係で展開でき、生徒も得るものが多かった。一方、障害者の方の施設では、相手の生活を乱してはいけないということもあり、現状を理解するうえでは成果があったが、交流による自己有用感という点では十分ではなかったようである。
事前学習をしたものの、目的意識や切実感がなかなか高まらない生徒がおり、活動時にも十分な取組ができなかった生徒がいる。
-- 登録:平成21年以前 --