長期宿泊体験活動が子どもたちに及ぼす影響

前ページまでで紹介したY校の児童の「生きる力」の変容をみるため、「IKR評定用紙」(簡易版28項目)を用いたアンケート調査を事前と事後に行い、各回の平均値を比較しました。

「生きる力」を測定する「IKR評定用紙(簡易版)」

  • 筑波大学の橘らが「生きる力」の変容を測定するために開発したアンケート。
  • 「生きる力」を「心理的社会的能力」「徳育的能力」「身体的能力」の三つの指標に分類し,さらにそれらを14指標に分類し,指標ごとに2項目の質問を設け(例えば「いやなことはいやとはっきり言える」、「人の心の痛みがわかる」、「自分に割り当てられた仕事はしっかりやる」など),「とてもよくあてはまる」から「まったくあてはまらない」の6段階評価で回答を求める評定用紙
  •  「IKR評定用紙」は本来70項目のアンケート用紙です。70という質問数が児童への負担が大きく、また、プログラムを実施していく中でアンケートをとる時間が多くかかると、プログラム自体に影響を与えることから、14指標ごと×2項目に質問を精選した28項目からなる簡易版も存在します。

 事前事後で比較すると、児童の「生きる力」は全体で向上しています。これは、統計的に見ても有意な差です(tイコールマイナス2.979**(0.01以下))。「生きる力」を構成する「心理的社会的能力」「徳育的能力」「身体的能力」(注)の各3指標についても、全ての指標で向上しており、統計的に見ても有意な差があります。
 この結果、長期の宿泊体験活動が子どもたちの「生きる力」の向上に影響を与えたと考えられます。

  • (注)「心理的社会的能力」には、積極性、明朗性、交友・協調、視野・判断、適応行動という指標等が、「徳育的能力」には、自己規制、勤勉、思いやりという指標等が、「身体的能力」には、日常的行動、身体的耐性という指標等が含まれている。

研修支援事業Y小学校「生きる力」の変容

長期宿泊体験活動で向上した「生きる力」は子どもたちに身に付いている!?

 他の1週間の宿泊体験活動において、各指標につき5項目、計70項目の「IKR評定用紙」を用いて、「1週間前」「初日」「最終日」「1ヶ月後」「2ヶ月後」の計5回にわたり調査を行った結果が下の表です。この長期宿泊体験活動は、小学校6年生全員(45名)が7泊8日、自然の家に宿泊しながら学校に通う、通学型合宿です。夕方から朝にかけては、7日目に設けた児童自ら企画・実施する日に向けて班ごとの話し合いや、夕食作りや洗濯等の生活体験が行われた活動です。
 事業終了後に向上した値が、1〜2ヶ月を経過してもほとんど変化していないことがわかります。
 しかし、長期の宿泊体験活動を行うことで向上した子どもたちの「生きる力」は、その後も継続していく可能性があります。体を使って行う「本物体験」を行うことで、子どもたちに「生きる力」が一層身に付いていくものと考えられます。

調査結果図

-- 登録:平成21年以前 --