第2節 教育課程の編成

第1 一般方針

1 各学校においては、法令及びこの章以下に示すところに従い、児童又は生徒の人間としての調和のとれた育成を目指し、その心身の障害の状態及び発達段階や特性等並びに地域や学校の実態を十分考慮して、適切な教育課程を編成するものとする。
 学校の教育活動を進めるに当たっては、自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図るとともに、基礎的・基本的な内容の指導を徹底し、個性を生かす教育の充実に努めなければならない。

2 学校における道徳教育は、学校の教育活動全体を通じて行うものとし、道徳の時間はもとより、各教科、特別活動及び養護・訓練においても、それぞれの特質に応じて適切な指導を行わなければならない。
 道徳教育を進めるに当たっては、教師と児童生徒及び児童生徒相互の人間関係を深めるとともに、豊かな体験を通して、児童生徒の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない。その際、中学部においては、生徒が人間としての生き方についての自覚を深めるよう配慮する必要がある。また、家庭や地域社会との連携を図り、日常生活における基本的な生活習慣や望ましい人間関係の育成などにかかわる道徳的実践が促されるよう配慮しなければならない。

3 学校における体育に関する指導は、学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に、体力の向上及び健康の保持増進に関する指導については、小学部の体育科及び中学部の保健体育科の時間はもとより、特別活動、養護・訓練などにおいても十分行うよう努めることとし、それらの指導を通して、日常生活における適切な体育的活動の実践が促されるとともに、生涯を通じて健康で安全な生活を送るための基礎が培われるよう配慮しなければならない。

4 学校における養護・訓練に関する指導は、心身の障害に基づく種々の困難を克服させ、社会によりよく適応していく資質を養うため、学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に、養護・訓練の時間における指導は、各教科、道徳及び特別活動と密接な関連を保ち、個々の児童又は生徒の心身の障害の状態や発達段階に即して行うよう配慮しなければならない。

第2 内容等の取扱いに関する共通的事項

1 第2章以下に示す各教科、道徳、特別活動及び養護・訓練(以下「各教科等」という。)の内容に関する事項は、特に示す場合を除き、いずれの学校においても取り扱わなければならない。
 学校において特に必要がある場合には、第2章以下に示していない内容を加えても差し支えないが、その場合には、第2章以下に示す各教科等及び各学年、各分野又は各領域(精神薄弱者を教育する養護学校においては各教科等)の目標や内容の趣旨を逸脱したり、児童又は生徒の負担過重となったりすることのないようにしなければならない。

2 第2章以下に示す各教科等及び各学年、各分野又は各領域の内容に掲げる事項の順序は、特に示す場合を除き、指導の順序を示すものではないので、学校においては、その取扱いについて適切な工夫を加えるものとする。

3 盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校の小学部において、学年の目標を2学年まとめて示した教科については、学校において教育効果を高めるために必要がある場合には、当該学年間において、当該教科の内容について学年別の順序によらないことができる。

第3 必修教科及び選択教科の取扱い

 盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校の中学部における必修教科及び選択教科については、次のとおり取り扱うものとする。

(1)学校においては、必修教科及び選択教科のそれぞれの特質を生かし効果的な指導が行えるよう、学校や生徒の実態を考慮して、これらの教科相互の関連を図りつつその授業時数及び指導内容を適切に定め、各教科等の全体的な指導計画を作成すること。

(2)生徒に履修させる選択教科の数は、第1学年及び第2学年においては1以上、第3学年においては2以上とし、生徒の心身の障害の状態、特性等を十分考慮して、それぞれの生徒に適した選択教科を履修させること。

(3)選択教科のうち、国語、社会、数学又は理科については、第3学年において履修させること。

第4 重複障害者等に関する特例

1 当該学校に就学することとなった心身の障害以外に他の心身の障害を併せ有する児童又は生徒(以下「重複障害者」という。)については、次に示すところによることができる。
(1)盲学校、聾学校又は肢体不自由者若しくは病弱者を教育する養護学校に就学する児童を又は生徒のうち、精神薄弱を併せ有する者については、各教科又は各教科の目標及び内容に関する事項の一部を、当該各教科に相当する第2章第1節第2款又は第2節第2款に示す各教科又は各教科の目標及び内容の一部によって替えること。
(2)重複障害者のうち、学習が著しく困難な児童又は生徒については、各教科、道徳若しくは特別活動の目標及び内容に関する事項の一部又は各教科に替えて養護・訓練を主として指導を行うこと。

2 心身の障害の状態により学習が困難な児童又は生徒について特に必要がある場合には、各教科の目標及び内容に関する事項の一部を欠き、又は各教科の各学年の目標及び内容の全部若しくは一部を当該学年の前各学年の目標及び内容(中学部においては、中学部の各教科に相当する小学部の各教科の目標及び内容を含む。)の全部若しくは一部によって替えることができる。

3 心身の障害のため通学して教育を受けることが困難な児童又は生徒に対して、教員を派遣して教育を行う場合については、上記1又は2に示すところによることができる。

第5 授業時数等の取扱い

 授業時数については、次のとおり取り扱うものとする。
(1)小学部又は中学部の各学年における総授業時数は、小学校又は中学校の各学年における総授業時数に準ずるものとすること。この場合、各教科等(特別活動については、学級活動(学校給食に係るものを除く。)及びクラブ活動に限る。(6)において同じ。)の目標及び内容を考慮し、それぞれの年間の授業時数を適切に定めること。
(2)盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校における小学部又は中学部の各学年の養護・訓練に充てる授業時数は、年間105日単位時間を標準とするが、児童又は生徒の心身の障害の状態に応じて適切に定めること。
 また、精神薄弱者を教育する養護学校における小学部又は中学部の各学年の養護・訓練に充てる授業時数は、児童又は生徒の心身の障害の状態に応じて適切に定めること。
(3)重複障害者、療養中の児童若しくは生徒又は教員を派遣して教育を行う場合について、特に必要がある場合には、実情に応じた授業時数を適切に定めること。
(4)小学部又は中学部の各教科等(特別活動については、学級活動(学校給食に係るものを除く。)及び小学部のクラブ活動に限る。)の授業は、年間35週(小学部第1学年については、34週)以上にわたって行うように計画すること。ただし、中学部における選択教科の授業については、学校において特に必要がある場合には、適切な計画の下に35週を下回って行うことができること。いずれの場合にあっても、児童又は生徒の心身の障害の状態を十分考慮し、週当たりの授業時数が負担過重とならないようにすること。なお、給食、休憩などの時間については、学校において工夫を加え、適切に定めること。
(5)特別活動の授業のうち、中学部のクラブ活動については、学校や生徒の実態等を考慮して、年間を通じて計画的に行うようにすること。また、小学部の児童会活動及び中学部の生徒会活動並びに学校行事については、それらの内容に応じ、年間、学期ごと、月ごとなどに適切な授業時数を充てるようにすること。
(6)小学部又は中学部の各教科等のそれぞれの授業の1単位時間は、小学部においては45分、中学部においては50分を標準とし、学校や児童又は生徒の実態に即して適切に定めること。なお、各教科等の特質に応じ、指導方法の工夫によって教育効果を高めることができる場合には、適切な計画の下に授業の1単位時間を弾力的に運用することができること。

第6 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項

1 学校においては、次の事項に配慮しながら、学校の創意工夫を生かし、全体として調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。
(1)各教科等及び各学年相互間の関連を図り、系統的、発展的な指導ができるようにすること。
(2)盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校の小学部において、学年の目標を2学年まとめて示した教科については、当該学年間を見通して地域や学校及び児童の実態に応じた効果的な指導ができるようにすること。
(3)各教科の各学年、各分野又は各領域の指導内容については、そのまとめ方や重点の置き方に適切な工夫を加えるとともに、教材等の精選を図り、効果的な指導ができるようにすること。
(4)小学部の低学年においては、児童の実態等を考慮し、合科的な指導が十分できるようにすること。
(5)地域や学校の実態等に応じ、地域社会との連携を深めるとともに、学校相互の連携や交流を図ることにも努めること。特に、児童又は生徒の経験を広め、社会性を養い、好ましい人間関係を育てるため、学校の教育活動全体を通じて、小学校の児童又は中学校の生徒及び地域社会の人々と活動を共にする機会を積極的に設けるようにすること。

2 以上のほか、次の事項に配慮するものとする。
(1)学校の教育活動全体を通じて、個々の児童又は生徒の心身の障害の状態及び特性等を的確に把握し、個に応じた指導など指導方法の工夫改善に努めること。その際、児童又は生徒の心身の障害の状態や学習の進度等を考慮して、個別指導を重視するとともに、必要に応じて授業形態や集団の構成を工夫し、学習活動が効果的に行われるようにすること。
(2)学校生活全体を通して、言語に対する意識や関心を高め、言語環境を整え、児童又は生徒の言語活動が適正に行われるよう努めること。
(3)各教科等の指導に当たっては、体験的な活動を重視するとともに、児童又は生徒の興味や関心を生かし、自主的、自発的な学習が促されるよう工夫すること。
(4)教師と児童生徒及び児童生徒相互の好ましい人間関係を育て、生徒指導の充実を図ること。また、中学部においては、生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じて、計画的、組織的な進路指導を行うこと。
(5)学校の実態等に応じ、教師の特性を生かしたり、教師間の連携協力を密にしたりするなど指導体制の工夫改善に努めること。
(6)海外から帰国した児童又は生徒などについては、学校生活への適応を図るとともに、外国における生活経験を生かすなど適切な指導を行うこと。
(7)視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図るとともに、学校図書館を計画的に利用しその機能の活用に努めること。なお、児童又は生徒の心身の障害の状態及び特性等に即した教材・教具を創意工夫し、それらを活用して指導の効果を高めるようにすること。
(8)指導の過程や成果を評価し、指導の改善を行うとともに、学習意欲の向上に生かすよう努めること。
(9)学校医等との連絡を密にし、児童又は生徒の心身の障害の状態に応じた保健及び安全に十分留意すること。
(10)家庭、児童福祉施設、医療機関等との連携を密にし、指導の効果を上げるよう努めること。

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