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学習指導要領「生きる力」

第2章 言語の役割を踏まえた言語活動の充実

  第1章(3)にあるとおり,平成20年答申において,言語は知的活動(論理や思考)の基盤であるとともに,コミュニケーションや感性・情緒の基盤であるとされている。このため,各教科等において言語活動を充実する際には,このような言語の果たす役割を踏まえた指導を行うことが大切である。また,言語活動が単に活動することに終始することのないよう,各教科等のねらいを言語活動を通じて実現するために意図的,計画的に指導することが重要である。以下,言語の役割を踏まえた,高等学校における言語活動の指導の在り方と留意点について整理する。

(1)知的活動(論理や思考)に関すること

各教科等の指導において論理や思考といった知的活動を行う際,次のような言語活動を充実する。
  ○事実等を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝えること
  ○事実等を解釈するとともに,自分の考えをもつこと,さらにそれを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
これらの指導に当たっての留意点を例示する。

ア 事実等を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝えること

(ⅰ) 事実等を正確に理解すること

  事実や他者の意見を正確に理解するためには,主観にとらわれず,事実等と意見や考えなどを明確に区別することが必要になる。
特に,複雑な事実等については,解釈のための視点がないと理解することは難しい。そこで,事実等を正確に理解するために,事実等の内容について,例えば5W1H(いつ,どこで,誰が,なにを,なぜ,どのように)など,どのような点に着目して理解するか,視点をもつことが必要である。そうした視点に応じて事実等の対象から情報を適切に取り出すことによって,事実等を正確に理解することができるようになる。
  事実等を正確に理解するための指導を行う際には,(1)生徒が理解するに当たって,視点をもたせるようにすること,(2)設定した視点に応じて対象から情報を適切に取り出すようにすることなどに留意することが大切である。

(ⅱ) 他者に的確に分かりやすく伝えること

  理解した事実等を他者に的確に分かりやすく伝えるためには,自分や聞き手・読み手の目的や意図に照らして事実等を整理し,明確に伝えることが必要である。
そのため,的確に分かりやすく伝えるように指導をする際には,(1)自分や伝える相手の目的や意図を捉えるようにすること,(2)目的や意図に応じて事実等を整理できるようにすること,(3)構成や表現を工夫しながら伝えられるようにすることに留意することが大切である。      

イ 事実等を解釈し説明するとともに,自分の考えをもつこと,さらに互いの考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること

(ⅰ)事実等を解釈し,説明することにより自分の考えを深めること

事実等を正確に理解した後,それを自分の知識や経験と結び付けて解釈することによって自分の考えをもつこと,さらにその自分の考えについて,理由や立場を明確にして説明することなどを通じて,自分の考えを深めていくことが重要である。
  また,他者の考えを認識しつつ自分の考えについて前提条件やその適用範囲などを振り返るとともに,他者の考えと比較,分類,関連付けなどを行うことで,多様な観点からその妥当性や信頼性を吟味し,考えを深めること,すなわちクリティカル・シンキングも大切になる。
そのため,自分の考えを深める指導を行う際には,(1)事実等を知識や経験と結び付けて解釈し,自分の考えをもたせるようにすること,(2)自分の考えについて,探究的態度をもって意見と根拠,原因と結果などの関係を意識し,説明する際にはそれを明確に示すこと,(3)自分の考えと他者の考えの違いを捉え,それらの妥当性や信頼性を吟味したり,異なる視点から検討したりして振り返るようにすることなどに留意することが大切である。

(ⅱ)考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること

  考えを伝え合うことは,自分の考えになかったものを受け入れて自らの考えに生かしたり,相手の立場や考えを考慮し,尊重したりすることで自らの考えや集団の考えを発展させることにつながる。
  そのためには,集団の中で生徒がそれぞれの考えを表明し合うことを通じて,いろいろなものの見方や考えがあることに気付き,それぞれの考えの根拠や前提条件の違い,特徴などを捉えることが重要である。また,それぞれの考えの違いや特徴を確認し合いながら,それらの考えを整理することを通じて,更に自分や集団の考えを振り返り,考えを深めることが重要である。
このため,考えを伝え合う指導をする際は,(ⅰ)にあるように,自分の考えや意見をもち,深めることを前提としつつ,(1)考えを伝え合う中でいろいろな考えや意見があることに気付くことができるようにすること,(2)それらの考えには根拠や前提条件に違いや特徴があることに気付くことができるようにすること,(3)それぞれの考えの異同を整理して,更に自分の考えや集団の考えを発展させることができるようにすることなどに留意することが大切である。

(2)コミュニケーションや感性・情緒に関すること

各教科等において,コミュニケーションに関する指導を行う際には,他者との対話を通して考えを明確にし,自己を表現し,他者を尊重し理解するなど互いの存在についての理解を深めるような言語活動を充実する。
  各教科等において,感性や情緒に関する指導を行う際には,体験したことや事象との関わり,人間関係,所属する文化の中で感じたことなどを言葉にしたり,それらの言葉を互いに伝え合ったりするような言語活動を充実する。

ア 互いの存在についての理解を深め,尊重すること

  よりよい生活や人間関係を築くためには,自分や他者の思いや考えを共通の目的の下に整理して,互いに理解し合うといったコミュニケーションが重要である。しかし,近年,自分や他者の思いや考えを表現したり受け止めたりする語彙力や表現力が乏しいことにより,他者と適切な関係がとれなくなったり,容易に「キレて」しまったりする生徒が見られるとの指摘がある。
良好なコミュニケーションを図るためには,思いや考えを表現するための語彙を豊かにし,表現力を身に付けることが重要である。また,自分の思いや考えをもちつつそれを相手に伝えるとともに,相手の思いや考えを理解し,尊重しようとすることも大切である。その上で,自分と相手の思いや考えについて,「何が同じ」で「何が異なるか」という視点で整理しながら,相手の話をしっかり聞き取り,受け止めるようにするとともに,納得したり,合意したり,折り合いを付けたりするなど,状況に応じて的確に反応することができるようにすることも大切である。
  このため,コミュニケーションに関する指導を行う際には,(1)語彙を豊かにし,表現力を育むこと,(2)自分の思いや考えを伝えようとするとともに,相手の思いや考えを理解し尊重できるようにすること,(3)自分の思いや考えの違いを整理しつつ,相手の話を聞き,受け止めることができるようにすること,(4)相手の話に対して,状況に応じて的確に反応できるようにすることなどに留意することが大切である。
なお,コミュニケーションについては,(1)イ(ⅱ)の知的活動において考えを伝え合うことも含むが,ここでは主として人間関係の構築等を目的とした活動について整理している。

イ 感じたことを言葉にしたり,それらの言葉を互いに伝え合ったりすること

感性・情緒は,事象との関わりや他者との人間関係,所属する文化などの中で感じたことを言葉にしたり,心のこもった言葉を交わし合ったりすることによって一層育まれていくものである。そのような豊かな感性・情緒を通して,良好な人間関係を築くことにもつながる。
なお,論理と情緒とが対立する問題として捉えられることがあるが,必ずしも適当ではない。物事を直観的に捉えるだけではなく,分析的に捉えることも情緒を豊かにしていく上で有効である。例えば,単に「わぁー,すごい」という言葉だけで感情表現するのではなく,「何が」「どのように」「すばらしい」のかについて,具体的な表現を用いて相互に伝え合うことにより,より細やかな感性・情緒を実感できるようになる。
  このようなことから,感性・情緒等に関する指導を行う際,(1)様々な事象に触れさせたり体験させるようにすること,(2)感性・情緒に関わる言葉を理解するようにすること,(3)事象や体験等について,より豊かな表現,より論理的で的確な表現を通して互いに交流するようにすることが大事である。

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初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

-- 登録:平成24年06月 --