外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議(第1回)議事録

1.日時

令和元年8月14日(水曜日)10時30分~12時00分

2.場所

文部科学省17階17F1会議室

3.議題

1.外国人児童生徒等が教科書を使用する際の困難について

2.その他

4.出席者

委員

齋藤座長、金森座長代理、井阪委員、犬飼委員、小澤委員、河村委員、築樋委員、土屋委員

文部科学省

中野教科書課長、季武教科書課長補佐、小林男女共同参画共生社会学習・安全課専門官

5.議事録

外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議(第1回)

令和元年8月14日


【季武課長補佐】  ただいまから「外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議」,第1回につきまして,開催させていただきます。
 本日は皆様,お暑い中,お盆の時期にも関わらず,お集まりいただきまして本当にありがとうございます。
 私,教科書課の課長補佐に着任いたしました季武と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日第1回の会議となりますので,最初の進行をさせていただきます。
 まず初めに資料を確認させていただきます。座席表の次に議事次第を置いておりますので,それに沿って御確認いただければと思います。もし足りない資料がございましたら,事務局にお申し付けください。大丈夫でしょうか。
 それでは,委員の皆様方の紹介をさせていただきます。
 まず,和泉市立国府小学校指導教諭,井阪委員でございます。
【井阪委員】  よろしくお願いいたします。
【季武課長補佐】  一般社団法人教科書協会特定図書専門委員会委員長,犬飼委員でございます。
【犬飼委員】  よろしくお願いします。
【季武課長補佐】  立命館大学産業社会学部教授,小澤委員でございます。
【小澤委員】  よろしくお願いいたします。
【季武課長補佐】  大阪教育大学特別支援教育講座特任教授の金森委員でございます。
【金森委員】  よろしくお願いします。
【季武課長補佐】  日本DAISYコンソーシアム運営委員長の河村委員でございます。
【河村委員】  よろしくお願いします。
【季武課長補佐】  東京学芸大学教職大学院教育実践創生講座教授の齋藤委員でございます。
【齋藤委員】  よろしくお願いいたします。
【季武課長補佐】  豊橋市教育委員会学校教育課外国人児童生徒教育相談員の築樋委員でございます。
【築樋委員】  よろしくお願いします。
【季武課長補佐】  横浜市立教育委員会事務局学校教育企画部小中学校企画課主任指導主事の土屋委員でございます。
【土屋委員】  よろしくお願いいたします。
【季武課長補佐】  皆様,よろしくお願いいたします。
 続いて,座長の選任に入らせていただこうと思います。
 座長の選任に当たりまして,事務局からは齋藤委員にお願いをしたいと考えておりますが,皆様,御異議ございますでしょうか。
 了承いただけたということで,齋藤委員,これから司会をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【齋藤座長】  よろしくお願いいたします。それでは,御指名いただきましたので,座長を務めさせていただきますが,どうぞ御協力のほど,よろしくお願いいたします。
 それではまず,本検討会議の運営につきまして,事務局から説明をお願いいたします。
【季武課長補佐】  資料2を御覧ください。こちらは「外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議の運営について」ということで,資料を出させていただいております。こちらに沿って御説明させていただきます。
 まず第1条として,「外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議(以下,「検討会議」という。)の運営については以下のとおり定めることとする」としまして,第2条「検討会」において「座長は検討会議の議長となり,議事を運営する。」「2 座長がやむを得ない理由により検討会議の会議に出席できないときには,検討会議に属する委員のうち座長があらかじめ指名する者がその職務を代理する」とさせていただいております。また,第3条から第5条につきましては「会議の公開」,「会議資料の公開」,「議事概要の公開」についてでして,原則として会議自体,会議資料,議事概要については公表,公開するということにさせていただきます。ただ,座長が非公式,非公開とすることが適当と認める場合には,その一部又は全部を非公開とすることができるということで,運営を定めさせていただければと考えております。
 以上でございます。
【齋藤座長】  では,本検討会議の運営についてはこの案のとおりとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。本会議の運営について皆様の御了承を頂きましたので,資料2のとおりとさせていただきます。また,この運営に沿って部会長代理の指名をさせていただきたいと思います。私からは金森委員にお願いしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
【金森座長代理】  よろしくお願いします。
【齋藤座長】  よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 では,金森委員に座長代理を務めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,続きまして開会に当たり事務局を代表して,中野教科書課長より一言御挨拶をお願いいたします。
【中野課長】  改めまして,この度は本会議の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。また,本日第1回ということで,委員全員の方に御出席いただいております。重ねて御礼申し上げます。日程調整の結果,お盆のど真ん中になってしまいまして申し訳ありません。本当にありがとうございます。
 この会議,「外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議」ということで,これから御審議いただくということでございますけれども,外国人児童生徒,また日本国籍で帰国子女等で日本語指導が必要な児童生徒は,近年非常に増えております。この10年間で約1.7倍,また28年度現在で約4.4万人,公立の小中高に在籍しているということでございます。
 文部科学省におきましては,こういった外国人児童生徒等の日本語指導を含めた指導体制の充実ということを図っておりますけれども,今後更にこういった外国人児童生徒等が増えていくということが見込まれる中で,本年4月に中央教育審議会の方で諮問させていただいております,「新しい時代の初等中等教育の在り方について」という中でも,この増加する外国人児童等への教育の在り方が審議事項の1つとされているというところでございます。後ほど御説明もあるかと思います。
 また,その諮問に先立ちまして,省内で浮島文部科学副大臣をヘッドにしまして,外国人の受入れ,これは大人も含めてということですけれども,外国人の受入れ・共生のための教育推進チームというものを本年1月に設置いたしまして,6月に報告を取りまとめております。その中で,外国人児童生徒等にとっても利用しやすい教材の活用といったことが言われているということでございます。
 これを受けて,この会議で御議論いただくということですが,教科書制度につきましては,平成20年にいわゆる教科書バリアフリー法が成立,公布,施行されておりまして,教科書発行者から教科書のデジタルデータの提供がなされております。
 また,それを受けて,ボランティア団体等におきまして,音声教材等の作成を進めていただいておりまして,多くの障害のある児童生徒等が音声教材等を使用しているところでございます。
 平成31年度の需要調査では,この音声教材につきましては全国で約7,300名,また,部数で言うと4万1,000部あったということでございます。
 また,それに加えまして,昨年は学校教育法の一部改正がございまして,いわゆる学習者用デジタル教科書が制度化されています。こちらは今年の4月施行でございますけれども,これを受けて多くの教科書発行者でデジタル教科書の作成が進んでおりますが,多くのデジタル教科書では音声の読み上げ機能や漢字のルビを付ける機能,またハイライト機能等を付与していただいているということでございます。
 こういった音声教材,デジタル教科書等につきましては,外国人児童生徒にも有効な場合があるのではないかということで,例えば読むことは苦手だが読み上げがあれば理解できる,漢字は読めないけれども,振り仮名があれば読めるといった外国人児童生徒等につきまして,教材の利点を生かすことで解決できる課題があるのではないかと考えているところでございます。
 本日は第1回の会議ということで,ただいま申し上げたことも含めまして外国人児童生徒の支援の状況や,教科書制度の状況について事務局から御説明をさせていただいた後に,お二人の委員の先生から実際の外国人児童生徒の支援の今の状況や,教科書の使用実態について御発表いただき,その後皆様で意見交換をしていただければと考えております。
 今後増加が見込まれる外国人児童生徒等にとって,教科書がより使いやすいものになるようにどうすればいいかということを是非考えていきたいと思いますので,委員の皆様方には忌憚のない御意見を幅広く頂ければと思います。
 簡単ですが,御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【齋藤座長】  ありがとうございました。
 それでは,これから議題に移らせていただきます。カメラ,ビデオカメラ等による撮影はここまでとさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
 では,まず資料3の「教科書制度の現状」について,事務局から説明をお願いいたします。
【季武課長補佐】  改めまして,教科書課の季武でございます。座って失礼させていただきます。まず,教科書制度の現状につきまして,概略を御説明させていただこうと思います。
 まず,ページの方をめくっていただきまして1ページ目,教科書制度の全体的な概要です。特に真ん中あたりにございます教科書の意義としましては,教科書は,教育課程の構成に応じて系統的に組織配列された各教科の主たる教材であり,児童生徒に国民として必要な基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するものとして,学校教育において重要な役割を果たしている,ということが教科書の意義として中央教育審議会において言われているものです。
 また,その次の教科書の使用義務というところになりますが,小学校,中学校,高等学校,特別支援学校等において,教科書を使用しなければならないという義務が課されているところでございます。
 その上で,こちらの資料の方で②としておりますが,教科書以外に有益適切な補助教材を用いることは可能になっているところでございます。
 続けて,2ページ目になりますが,平成20年にいわゆる教科書バリアフリー法と言われている障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律が制定されています。
 こちら,1条と5条を資料に引用しておりますが,この法律において障害のある児童生徒のために,文字や絵などを大きく印刷した拡大教科書や点字教科書,そして,今回の会議の中心にもなるデイジー教材などをはじめとした音声教材等が教科用特定図書等として教科書に代えて使用することができるとされているところです。
 この教科用特定図書のうち拡大教科書等については,教科書発行者が発行することが努力義務とされておりまして,実際に小学校,中学校段階ではほとんどの教科書発行者で発行されています。
 ページをおめくりいただきまして,3ページ目です。音声教材等,より個別的な工夫が必要な児童生徒に向けた教材は,ボランティア団体等において製作していただいているところでございます。
 文部科学省では,教科書デジタルデータを活用した拡大教科書,音声教材等普及促進プロジェクトというものを実施しておりまして,こちらで調査研究を実施して,その成果物である音声教材等を児童生徒に無償提供しているところでございます。
 この図にありますが,音声教材の製作はボランティア団体などにやっていただいているという形になっております。
 文科省の方では,なるべくそういった団体に負担の掛からないように効率的に教科用特定図書等の制作を実施していくということができるように,こういったプロジェクトを進めているところでございます。
 特に,今年度は令和2年度から使用される新学習指導要領に対応した小学校の教科書を,一から作成していただき,新しい教科書に切り替えていただく必要があるので,極力そういった負担軽減を図れるように,なるべく効率化できるようにということを意識して実施しているところでございます。
 4ページ目については,その委託を実施している団体で,現在6団体に委託しているところでございます。
 続きまして,5ページ目,6ページ目では,こういった教科用特定図書等の関係で,実際に音声教材の発行点数が増えてきていることが5ページ目に記載しております。6ページ目は,需要数が現在どのようになっているのかという,平成30年10月現在の調査結果でございます。
 ただ,このように発行数が増えていたり,需要も少なくなかったりする状態ではあるものの,現在の制度では音声教材を使えるのは飽くまで障害のある児童生徒に限られておりまして,障害はないけれども日本語教育が必要な外国人児童生徒等が活用するということは許可されておりません。飽くまで全て障害のある児童生徒向けのものという形になっているところでございます。
 ページをめくっていただきまして,7ページ目,8ページ目で,学習者用デジタル教科書について説明させていただきます。8ページ目は参考に関連情報を掲載しているところですが,主に7ページの方を見ていただければと思います。
 今年の4月から改正された学校教育法において,学習者用デジタル教科書は教科書発行者が作成する紙の教科書と同一の内容がデジタル化された教材のことを指しておりまして,一定の要件の下で紙の教科書に代えて使用することができる状況になっております。デジタル教科書でも,音声教材などと同様に音声読み上げやルビ付けの機能が付いているものがあるというような状況でございます。
 ただ,このデジタル教科書につきまして,現在の制度では紙の教科書が無償給付されており,デジタル教科書は無償給付の対象とはなっていない状態です。その中で,費用を負担して実際に導入するかどうかということは,校長や学校の設置者において判断いただくものとなっています。
 なお,文部科学省では,現在このデジタル教材の効果・影響について実証研究を行っておりまして,その一環として日本語に通じない外国人児童生徒や,障害のある児童生徒に向けて,学習者用デジタル教科書を無償で実際に試していただき,その結果をフィードバックしていただくという検証を行うことを予定しております。
 まだ実際に試していただく学校等の募集をかけている段階ですので,結果が出るのは先のことになってしまうのですが,もし外国人児童生徒向けにデジタル教科書を使ってみた学校で得られた感想などをまとめることができましたら,この会議でも発表させていただければと考えているところでございます。
 教科書制度についての説明は以上になります。ありがとうございます。
【齋藤座長】  ありがとうございました。今の御説明に関するものも含めて最後にまとめて意見交換の時間を設ける予定ではあるんですけれども,現時点で御質問があれば,お願いいたします。
 私から1つよろしいですか,申し訳ありません。今,検証を行う予定ということなんですが,その検証の対象に外国のお子さんがたくさんいる学校も含まれるということですか。
【季武課長補佐】  そうです。学習者用デジタル教科書ですと,使用できるのが障害のある児童生徒に限られているわけではありませんので,外国人児童生徒がいるような場で使いたいという学校にも無償で使っていただけるという形で今募集しています。
【齋藤座長】  ありがとうございます。
【中野課長】  1点だけ補足させていただきますと,先ほどの資料の8ページのところになりますけれども,紙の教科書は使用義務があり,一般的には各教科の授業時間の2分の1まではデジタル教科書に代えてもいいという制度となっているのですが,この3ポツのところで,視覚障害,発達障害等の障害だけではなくて,日本語に通じないこと,またこれらに準ずるものということで,デジタル教科書が効果的であるという場合には,全部において紙の教科書をデジタルに代えることができるとなっております。
 実証授業では,通常の実証もやりますが,特に障害のある児童生徒や,日本語に通じない児童生徒については,しっかり使っていただいて,効果がどうかということを教科書会社さんの御協力を得て,募集をして使ってみていただくということを実施しております。
【齋藤座長】  ありがとうございます。先生方もよろしいでしょうか。
 では,また審議の時間,意見交換の時間が後ほどございますので,何かお気付きの点などありましたらそのときにお願いいたします。それでは,次の御説明に移らせていただきます。
 続きまして,資料4の「外国人児童生徒教育の現状と課題」について,文部科学省から説明をお願いいたします。
【小林専門官】  男女共同参画共生社会学習・安全課外国人児童生徒教育専門官の小林と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは,外国人児童生徒教育の現状や最近の動きについて御説明させていただきたいと思いますので,資料4を御覧ください。
 まず,外国人児童生徒教育の現状ということで,幾つかデータをお示しさせていただきます。3ページを御覧いただくと緑と青の帯グラフがありますが,文部科学省において,公立学校における日本語指導が必要な児童生徒の数などを隔年で調査を行っております。その調査結果を直近10年間でまとめたものでございますけれども,日本語指導が必要な日本国人の児童生徒及び日本語指導が必要な外国人の児童生徒の数を合わせますと,この10年間で約1.7倍まで増えているというような現状があります。
 更に1枚めくっていただきますと,日本人の児童生徒,外国人の児童生徒を学校種ごとに分けたデータをお示ししております。外国人児童生徒もですが,近年では特に日本人ではありますけれども,日本語の指導が必要な児童生徒がかなり顕著に増えているような現状にあります。これは例えば国際結婚の御家庭のお子さん,若しくは海外で長く生活をしておりほぼ生まれ育ちも海外で,帰国してきたようなお子さんなどが含まれると理解をしているところでございます。
続きまして5ページですけれども,これは外国籍の児童生徒の在籍状況を都道府県ごとにお示ししたグラフでございます。圧倒的に多いのが愛知県で,東京や大阪など首都圏などを中心に,また製造業などの拠点となっているような都道府県で非常に多い状況にあります。
 もう1枚めくっていただきますと,こちらは日本語指導が必要な日本人の児童生徒の都道府県別の在籍状況でございます。これもやはり圧倒的に愛知県が多い状況にはありますけれど,日本人児童生徒も外国人児童生徒も,多く在籍している地域については余り変わりはないのかなと考えております。
 めくっていただきまして,ページ番号7でございますが,こちらは日本語指導が必要な児童生徒の母語や比較的使用頻度の高い言語などをまとめたデータを上段でお示ししております。ポルトガル語や中国語,フィリピン語,スペイン語などの児童生徒が多い状況にはありますけれども,母語や使用頻度の高い言語は非常に多様化をしており,その他の中に含まれる言語はインドネシア語,ウルドゥー語,タイ語,ネパール語など様々でございます。先日浜松市教育委員会さんからお話をお聞きしたのですけれども,浜松はポルトガル語,スペイン語の児童生徒が中心ではあるのですが,全ての児童生徒の母語を数えると30か国語程度まであるということで,非常に多様化している現状が分かるなと思っております。
 下段ですけれども,日本語指導が必要な児童生徒の在籍があるなしの学校のデータですとか在籍のある学校につきましては何人ずついらっしゃるのかというふうなデータをお示ししております。在籍のない学校の方がいまだに多いのではありますけれども,例えば5人以上,また更に多いという学校も非常に多くありまして,1つの学校にたくさんの子供たちがいるという状況もあります。
 一方で,一人しかいないという学校も非常に多い状況にはありますので,一人ずつの学校が点在しているような地域もたくさんあるという状況でございます。
 右の方は公立の小・中・高等学校等で日本語指導が必要な児童生徒が在籍している市町村のデータでございます。既に市町村レベルでは在籍があるというような自治体の方が多いという状況にございます。
 1枚おめくりいただきまして,こういった日本語指導が必要な児童生徒に対しましては,教科の補習などを取り出しで行うという特別な指導を行っている学校や,また特別の教育課程を編成して,一人一人に応じた日本語指導の指導計画の作成や教育課程の編成などを行うことができるようになっておりますけれども,そういった指導を受けている児童生徒のデータをまとめたものでございます。
 左側は教科の補習などの特別な指導を受けている児童生徒のデータでございますけれども,これは実は近年,年々と割合が下がってきているところです。恐らくこれは児童生徒の母数の伸びが大きくなっているので,こういった状況になっているのかなと理解はしております。ただ,ここはやはりもっと指導を受けている児童生徒の割合を文科省としても伸ばしていかないといけないと考えているところです。
 右側は特別の教育課程を編成して指導を受けている児童生徒のデータでございます。この特別の教育課程による指導が可能となりましたのが,平成26年4月からですので,まだちょっとデータは少ないのですけれども,一応2年間では伸びてはいます。ただ,まだ4割前後と非常に割合として低い状況にありますので,ここもしっかりと全ての児童生徒が必要な指導を受けられるような体制をとっていく必要があると考えております。
 もう1枚おめくりいただきますと,今申し上げました特別の教育課程の編成・実施についてまとめた資料でございます。これは平成26年度に学校教育法施行規則の一部を改正いたしまして,こういった教育課程の編成というのも可能としたところでございます。
 もう1枚めくっていただきますと10ページです。これは平成29年4月から施行した学校の教員の定数に関する内容でございます。日本語指導が必要な児童生徒の対応のための教員配置につきましては,従前から加配で行っていたのですが,やはり近年の児童生徒の数が非常に増えていることを踏まえまして,平成29年4月施行の改正後の法律におきまして,児童生徒18人に1人の基礎定数化を図ったところでございます。
 これ以降は施策に関することですので,一旦割愛させていただきます。もし後ほど御質問等あれば,是非お願いいたします。
 最近の主な動きということで,27ページを御覧ください。先ほど中野課長からも紹介がありましたけれども,今年の1月から浮島副大臣を座長とする外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チームを立ち上げました。何回か学校現場の視察なども含めて検討を重ねまして,6月17日に報告書を取りまとめたところでございます。
 1枚めくっていただいた28ページにこの検討チームの報告書の骨子についてお示しをしております。中段の緑の枠囲みの中が外国人児童生徒等への教育の充実ということで,これまでやってまいりました学校における教員や支援員の充実,教員の資質能力の向上などはもちろんですけれども,障害のある外国人児童生徒への支援や外国人児童生徒の就学状況の把握,就学促進や⑦の異文化理解,多文化共生の考え方に基づく教育の充実などについて報告がまとめられたところでございます。
 27ページにお戻りいただければと思いますけれども,中央教育審議会におきまして,4月17日に大臣から諮問が行われました。その際の審議事項の1つとして「外国人児童生徒教育の在り方について」が盛り込まれたところでございます。
 こちらも30ページを御覧いただければと思いますけれども,これが中教審において諮問がなされた審議事項の一覧でございます。そのうちの3つ目に外国人児童生徒教育の在り方が盛り込まれております。今回の諮問につきましてはかなり包括的な初等中等教育の諮問である中で,こうした形で外国人児童生徒教育の在り方について,が審議事項の1つに位置付けられたことは非常に大きなことだと思っておりまして,我々としても現在,担当課内で検討を進めているところでございます。
 今,御説明しました浮島副大臣をヘッドとしたチームと,中教審の諮問事項も受けまして,有識者会議を立ち上げました。27ページの中教審等における検討のところの2つ目の丸でございます。外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議ということで,5月30日に設置をしております。ここで諮問の内容やそれ以外につきましても幅広く議論を行っていただきまして,今後の施策につなげていきたいと思っておりますし,また,中教審に対しても報告を行っていくようなことを考えております。
 もう1つ新しい動きといたしましては,日本語指導アドバイザリーボードというものを設置いたしました。今日御出席いただいています齋藤委員,築樋委員にも御参画いただいておりまして,我々文科省の施策に対するアドバイスを頂くとともに,自治体若しくは大学などの要請に応じて,地方にも赴いていただきまして,新たな施策を立案する際の助言ですとか,若しくは教員に対する研修を行う際の講師を務めていただくなどの取組を行っていただこうと思っております。
 駆け足になりましたけれども,私からは最近の動き等の御説明とさせていただきます。
【齋藤座長】  ありがとうございました。今の御説明について何か御質問ございますか。お願いいたします。
【小澤委員】  この会議の「外国人児童生徒等における」という,外国人児童生徒等について,中野課長の方から日本語指導が必要な児童だということで,国籍に関わらずという説明がありましたが,今の御説明の7ページでそれぞれの外国人児童,日本国籍児童の使われている母語についてありますけれども,例えば日本国籍の場合で日本語というと,要するに日本の御家庭で海外在住が長い子弟の方々と思われますが,そういった対象も含めて外国人児童生徒等というふうに捉えてよろしいでしょうか。このターゲットといいますか,検討する外国人児童生徒等の概念の範囲ですが,要するに日本語指導で学校で困難を抱えている生徒さんたち一般と考えておいた方がよいのでしょうか。
【小林専門官】  そうですね,日本語に通じないと法律に記載はしていますけれども,先ほど御説明した特別の教育課程を編成する対象もそういった法律上の規定になっているのですけれども,日本国籍であっても日本語に通じていなくて日本語の指導が必要な児童生徒も正にターゲットになってくると考えています。
【小澤委員】  現在4万4,000人程度いらっしゃるということですね。分かりました。
【齋藤座長】  ほかによろしいでしょうか。今の日本国籍で日本語指導が必要な子供には実は日本生まれで,日本語の方が自分の親の言葉より強いので,母語とカウントされている場合も実は含まれていて,必ずしも海外での滞在が長い日本人の子供には限らないようです。大事なところは日本語指導が必要な子供たちというところで押さえてよろしいでしょうか。
【小林専門官】  そうですね。
【小澤委員】  ありがとうございます。
【齋藤座長】  大事な御質問だったと思います。ありがとうございました。
 そのほかございますか。
【河村委員】  よろしいですか,今のことと対象がどこになるかということと非常に関連するんですが,例えばブラジルの児童生徒が数学や理科の学習を中学生ぐらいでするというときに,日本語はとても読めない,漢字仮名交じりは全く読めないけれども,同じような学年のブラジルで使っている教科書,教材が補助的にあればすごく分かりやすいというケースがあると思うんです。特に国語の場合はちょっとどうしようもないですけれども,数学とか理科とか割と普遍的な科学的な事象について学ぶというときには,自分の母語の教科書,教材というのが補助的に非常に役に立つと。
 幸い日本政府はマラケシュ条約を今年の1月に批准して,ブラジルは昔から批准していますので,少なくとも先ほどの特別支援学校・学級に在籍している生徒たちは,先ほど著作権法の33条が引用されましたけれども,同じような著作権の制限の下,ブラジルで作られたデイジー版の教材はすぐ使える状態になっています。ですから,そういったものも含めて教材等を考えていくのかどうかということが,この委員会の検討の範囲を決める際に重要だと思います。マラケシュ条約を活用しましょうということはみんなで合意して批准しているので,今後の検討課題として,相互に交換できる外国で障害者用に製作されたデイジー版等の教材をターゲットに入れるか入れないかということをお考えいただければと思います。
【齋藤座長】  ありがとうございました。今日それについて議論できるかどうか,ちょっと分からないんですけれども,この検討会議では,是非取り上げて一度議論をさせていただければと思います。もちろん教科書課の所管として何ができるのかというところと,教育・支援全体として何が有効かということと少し区分けが必要かもしれないですけれども,よろしくお願いします。
【中野課長】  事務局でまた調整して,御説明できるようにいたします。
【齋藤座長】  よろしくお願いいたします。
 それでは,次に資料5に基づきまして,横浜市における日本語指導が必要な児童生徒への支援について,土屋委員から御説明をお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。
【土屋委員】  横浜市教育委員会の土屋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは横浜市における日本語指導が必要な児童生徒の支援について,簡単に御説明をさせていただきます。
 横浜市の人数の状況ですが,今年度5月1日現在で外国籍及び外国につながる児童生徒の総数が1万103人,外国籍3,658名,外国につながる児童生徒6,445名ということで,合計1万人を今年度超えている状況になります。また日本語指導が必要な児童生徒につきましては,2,705名ということで,各学校からの報告がございます。国籍で見ますと全国ではポルトガル語が一番多いかと思いますが,横浜市としてはやはり中国語を話す児童生徒が多く在籍しています。
 続いて2ページ目を御覧ください。そのような状況ですので,国際教室を設置しています。こちらについては日本語指導が必要な児童生徒の人数に応じて,その指導を担当する教員を配置し,その学校に国際教室を設置するものです。国際教室では日本語指導や教科指導,また生活,学校に適応するための指導等を行っています。
 下の方に表で国際教室の教員の配置校の校数を載せております。今年度,横浜市立の小中学校義務教育学校は合計で488校ございますが,そのうちの142校に国際教室が設置されております。
 表の中で平成28年が合計80校,平成29年が合計109校ということで,この年に29校増えています。もともとこの国際教室というのは神奈川県の制度で,外国籍で日本語指導が必要な児童生徒の人数に応じて,国際教室が設置されていたわけですが,平成29年から横浜市教員の市費移管に伴い,横浜市では国籍に関係なく日本語指導が必要な児童生徒の人数に応じて配置ということにしましたので,平成29年に109校ということで,29校一気に増え,そして今年度は142校ということになります。
 上の方の真ん中を御覧いただくと国際教室が設置されているとしても,学校によって在籍する児童生徒という人数は各学校でまちまちです。そういった状況ですので,人数が余りにも多く,2名の教員の配置だけでは足りないと判断された学校には最大で4名の教員を配置,またさらにそれでも足りないという場合には一番右側にあります非常勤講師を人数に応じて配置,そのほかにも外国語補助指導員という方を1名配置しています。外国語補助指導員は何らかの母語ができる方に,様々な学習指導であるとか保護者の対応,電話対応といったものを担っていただいております。
 続いて次のページを御覧ください。横浜市日本語教室というものがございます。先ほどの国際教室は学校の教員が指導するものですが,この日本語教室は日本語指導の資格を持った日本語講師が指導を行っていきます。細かい内容についてはお時間のあるときにお読みいただければと思いますが,小学生と中学生で指導の形態が違っております。中学生の場合は横浜市内に5か所ある集中教室に生徒自身が午後の時間帯に週2回通ってグループ指導を受けます。ただ,小学生の場合はやはり安全面を最優先に考え,日本語講師が週1回,その在籍校に派遣をされて,日本語指導を行うことになります。
 次のページは母語による各種支援です。先ほど母語のお話もございました。横浜市では母語による初期適応・学習支援,学校通訳ボランティア,各種ガイドブックということで,母語による3つの支援を行っております。
 左上の母語による初期適応・学習支援というのは児童生徒を対象にするものです。学校が母語のできるボランティアの方に依頼をして,そのボランティアの方が学校内で学習支援等の通訳をします。あとは生活,行事の部分で説明がなかなかできないというところに関しては,この学習支援ボランティアの方が母語で必要な持ち物などを伝えるということがございます。
 右上の学校通訳ボランティアは主に保護者を対象としているものですが,個人面談や家庭訪問などで担任がうまく伝えたいことも伝えられないといったときに,この学校通訳ボランティアの方が担任と保護者の通訳を行うというものです。
 下の方は各種ガイドブック,「ようこそ横浜の学校へ」というものを三部構成で作成しております。第1部は日本語指導が必要な子供たちが編入学をしてきたときにどういう体制で指導をしていけばいいか,主に学校の教員が見る手引き。第2部,第3部に関しては,各学校から様々な通知文が出されるのですが,保護者が日本語を理解できないと何が書いてあるかなかなか分からない。そういったときに使えるような通知文の対訳集や,保護者の方に対して横浜の学校について母語でお伝えするようなものを作成しております。
 次のページをごらんください。日本語支援拠点施設「ひまわり」についてです。こちらは平成29年,2017年9月に新しく開設をされたものになります。日本語支援拠点施設として3つの事業を行っております。プレクラス,学校ガイダンス,さくら教室というものになります。まず右上のプレクラスにつきましては,帰国,来日間もない初期の日本語指導が必要な児童生徒を4週間,こちらに通って集中的な初期の日本語指導や,生活適応の指導を受けることになります。4週間といいましても水木金の3日間の4週間になりますので,合計12日間で,月曜日,火曜日に関しては在籍校で指導を受けることになります。こちらについては1週間丸々の方がいいのではないかという御意見など頂いたりしますが,私たちの考え方としてはやはり日本には慣れてほしいが,学校にもきちんと慣れてほしい。ただ,学校でずっとということはなかなか日本語指導の部分でうまくいかないこともございますので,学校に慣れつつ日本語指導を受けていくということで,こちらプレクラスでは週3日の指導を行っております。
 そのほかにも学校ガイダンス,保護者に対して日本の学校についてだけでなく,入学のときはこんな持ち物が必要ですというような説明や,編入学の手続のとき,保護者も日本が分からないと何を書いていいか分からないというところがございますので,そういった記入の支援などを行っております。
 最後に,さくら教室というのは3月に行っているものですが,新しく小学校1年生として入学をする子供たちに日本の学校に慣れてもらう,また保護者に対しても日本の学校の行事の説明であったり,あとは先輩保護者からメッセージを送ったりしております。
 今,御説明させていただいた内容については,次のページに細かく説明させていただいておりますので,お時間のあるときにお読みいただければと思います。
 次のページは教員等を対象とした各種研修です。様々な日本語支援も行っておりますが,やはり一番大切なのは学校の教員が指導を行える,理解があるというところが大切です。まず上の3つ,日本語指導者養成講座,中級講座,上級講座に関しては,主に国際教室を担当する教員に向けたもので,実際の日本語指導の話や,どうやって受け入れていくか,実際に今日いらっしゃっている齋藤座長にも講師をお願いしたりして,講座を行っております。それ以外にも国際教室の担当者の担当者会,あとは教職員育成課の方で行っております新任の校長研修であったり,初任者研修であったりそういったところでも時間をもらいまして,外国につながる児童生徒の理解といったものや各種制度についての説明をしております。
 次が実際の指導でどういうイメージで行っているかということになります。先ほど申し上げたように,国際教室がある学校ですと,指導を主に担当する教員が配置をされておりますので,実際に日本語指導や,教科指導,適応指導など丸が付いている,実際に指導できるところはあるのですが,どうしても国際教室がない学校ですと,小学校では担任の先生が実際に在籍級の授業を見ながら,合間合間で日本語指導が必要な子たちに指導していくというような形になってしまいます。日本語教室の日本語講師につきましては,飽くまでも指導の内容は初期の日本語指導になりますので,教科の指導はできません。
 次のページを御覧ください。こちらは私の方で考えている課題になります。指導者についてということと,教科指導についてということになります。指導者については国際教室が設置されていない場合は学級担任であったり,教科の授業担当者が一斉の授業の中で,日本語指導が必要な児童生徒の個別に課題を出したりする指導が多いように感じております。また,日本語指導と国際教室に担当が配置をされていたとしても,初めてそういった日本語指導が必要な子供たちを指導するという教員も多いので,今まで研修を受けているという方は少ない。また,母語ボランティアという制度が先ほどございましたが,一斉授業の中で横にボランティアの方が付いて,通訳をするというのであったとしても,やはり通訳できる内容が限られてしまう。通訳するには2倍ぐらいの時間がかかってしまうのですが,授業の方は一斉授業ですと待っている間にどんどん先に進んでしまうという問題もございます。教科指導については日本語の会話がある程度流暢にできるような児童生徒であったとしても,授業や教科書の内容まで理解をできているかというところはなかなか難しいところになります。
発達の段階,年齢ですとか出身国がどこの地域だったのかというような個人の差によるところも非常に大きいと感じております。また,本来,現地の学校では非常に成績が優秀だったのですが,日本に来てしまうと日本語の壁であったり授業の内容が変わったりして,本来の自分の力を発揮できないという子も存在しています。
 簡単ではございますが,私からは以上になります。
【齋藤座長】  ありがとうございました。土屋委員からの御説明については,また全体討議の中で何か御質問等あればお受けしたいと思います。
 続けて,資料6の外国人児童生徒等が教科書を使用する際の困難についてということで,築樋委員から御説明をお願いいたします。資料6をごらんください。
【築樋委員】  豊橋市教育委員会で外国人児童生徒教育相談員という仕事をしております築樋と言います。よろしくお願いします。
 今日私が持ってきた資料は,外国人の子供たちが教科書を使うに当たって,どんな状況であるかということを豊橋の現場で先生方の御意見を伺ったものです。
 豊橋は外国人児童生徒の集住地域でありまして,古くから外国人児童生徒教育の支援を進めています。今年度は小学校が1,302人,中学校が595人,外国にルーツのある子供あるいは外国人の子供が在籍をしており,その中で小学校では日本語指導が必要な児童生徒が1,056人,中学校では491人です。豊橋市の小中学校では,平成26年度から「特別の教育課程」による日本語指導をスタートさせております。「特別の教育課程」による日本語指導では,個別の指導計画を作成して指導を行うということになりますので,先生方は子供たちの日本語の力について,確認をしつつ指導計画を立てるということになります。
 その日本語の力をどう把握するかということにつきましては,文部科学省から出されています『外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA』や,文部科学省の検討会議で作りました「学習目標例」というようなものを参考にして作っています。ここでは日本語の力について,ステージ1からステージ6という形で,1が一番低くて6が一番高いというような見立てで,指導計画を立てています。
 ですから,これからお話をするアンケートにつきましても,先生方に子供たちの日本語のステージの1から6までの段階の中でどう教科書を使っているかお尋ねをしたものです。
 今回アンケートをとらせていただいたのは,外国人の子供たちの教科書の難しさについて,何となく分かっているというところがあるのですが,それを先生方にお聞きすることで,数字として見えるといいなと思ったからです。そして,アンケートにお答えいただいた先生方は,小学校の先生が40人,中学校の先生が20人で,この方たちはみんな国際教室の担当者であったり,あるいは校務分掌で外国人教育の担当者であったりして,外国人教育の研修を受けていて,このステージという考え方がお分かりになっているという方たちです。
 では,次のページにいきます。日本語指導が必要な児童生徒の取り出し指導。取り出し指導ということは,「特別の教育課程」を編成して日本語指導を行っているということなのですが,この指導の中で教科書を使っていますかとお尋ねをしました。小学校ではステージ1,2,日本語がほぼほぼ分からないという子供たちですが,その子たちについては81.8%の先生が教科書を使っている。ステージが上がりまして,ステージ5,6となりますと96%の先生が教科書を使っている。中学校については,ステージ1,2とステージが低い子供につきましては教科書を使用する指導は57.9%ということで,教科書を使ってもなかなか分からないということがありますので,使っていないという状況がありますが,ステージが上がってステージ5,6とかなり日本語分かるという子供については,今度は取り出し指導の中で教科書を使って指導しているということで,100%の先生が教科書を使いながら指導を行っています。
 そして次に,教科書を使っている場合にどの教科を使っているかとお尋ねをいたしました。小学校の方は豊橋市の国際教室では,ほぼほぼ皆さん国語と算数をベースにして日本語指導を行っているということがありますので,結果としても国語や算数での指導の率が高いということになります。中学校の場合はステージが低い場合は国語や社会科のような言語の負担が大きい教科につきましては,教科書を使っていないということがあるのですけれども,逆にステージが上がるにつれて,社会や国語のように言語の負担が大きい教科も取り出して,更にプラスアルファの支援をしているというような結果になりました。
 そして,中学校では受験までの日数ということもありますので,先生方の支援が非常に多岐にわたっていて,ある特定の教科だけではなくて,むしろたくさんのいろいろな教科で支援をしてくださっているということがここで見とれるかと思います。
 こうやって教科書を使っている率が非常に高いのですが,では,教科書の使用についての困難さがありますかとお尋ねをしたところ,小学校についても中学校についても日本語の力が弱い,低いという子供たちにつきましては,ほぼ100%の先生が困難さを感じていると。小学校については日本語の力が高くなってステージが5,6の段階になりますと,半数ぐらいの先生が教科書を使うことに困難がないと思っておられますけれども,中学校につきましてはステージが上がっても,ステージが上がるということになると日本語の力も高い,更に滞日歴も長いというような子供ではあるんですけれども,77.8%の先生が困難さを感じているとお答えいただいています。
 そして,教科書のどのような点について困難さを感じているかということについて,お尋ねをいたしました。そこでは,アンケートの項目をマルチメディアデイジーの申請書に書かれています主な読みの困難さというところから少しピックアップをして,そこに対応するような形で少し質問をさせていただきました。
 そこでは,資料の黄色のところのアルファベットの入っているところがデイジーの申請書に書かれている主な読みの困難さというところですけれども,このピンク色に塗ったところは50%以上の方たちが困難さを感じているという部分です。そしてマルチメディアデイジーの教科書の申請書に書かれている主な読みの困難さにほぼ一致するところで,日本語指導が必要な児童生徒の読みの困難さについても感じておられます。
 ただ,中学校につきましてはこの項目の1から5ぐらいのところは,本当に読みの基本的な段階のところだと思うのですが,小学校ではそこでの困難さを感じる先生が多くおられるんですが,中学校になると滞日歴が長くなって,ある程度基本的な読みというようなスキルの部分ではクリアできていても,そこから更に内容的なものについては分からないという困難さを感じているという先生が多くあったかと思います。
 では,その次にいきます。先生方がこうやって困難さを感じておられる中で,実際にどのような支援をしてくださっているかということについてお尋ねをしました。これを見ていただきますと,項目のところで,私はデイジー教材についてそんなに詳しいわけではなくて,少し勉強してデイジー教材の支援の形と一致することについて,黄色で色を示したのですけれども,例えば2の教科書を拡大コピーしたものを使用するということについては,先生方はほぼこういったことをされていないということで,これは障害に対する支援の在り方と日本語指導が必要な児童の支援の在り方と少し違うのかなと感じたんですが,それ以降の部分で,3の単語や文節の切れ目に印を付けるだとか,読む箇所を指で指し示すとか,漢字に平仮名でルビを打つとか,そういったことについては日本語指導が必要な児童生徒の支援としても同様に先生方がやっておられるかなと感じました。
 それから,8以降の項目につきまして,これは外国人の子供の日本語が分からないという部分について,特に有効であるのではないかと思われる支援なんですけれども,そういったところでも先生方は支援をしてくださっているというところでした。ただ,ここで豊橋市の現場の課題と思うのですが,例えば15で音声教材を使っているかとか,あるいは16のデジタル教科書を使っているかというような支援の在り方については,ほぼしておられる先生がおられないということで,これにつきましては国際教室が児童が在籍する学級という扱いではなくて,通級の教室という形で成り立っているものですから,例えば国際教室には在籍学級の教室にあるようなテレビが用意されていないとか,あるいは電子黒板が用意されていないとか,そういった環境的な問題も大きいのかなと感じたところです。
 次のページに挙げている指導例につきましては,これは日本に来てまだ2か月ぐらいのブラジル人生徒の指導として,こういったことがやられていると載せています。例えば中国の生徒ですと,漢字で推測して意味が分かるということがありますが,ブラジルの生徒ですと非漢字圏で漢字が分かりませんので,漢字にルビを付けて,その漢字に更に語彙集のようなものを使ってポルトガル語で語彙を確認して,この子の既有知識を引き出す形で授業を行っているような指導の在り方です。
 豊橋市は南米日系人の子供たちが集中して入っているという地域ですので,土屋先生の横浜市の状況と少し違って,中国の子供ではなくて漢字が全く分からない子供たちの地域ということになりますので,この漢字が読めないというところがあらゆる場面において負担になっているということは確かかなと思います。
 それから,今回のアンケートでは質問項目には入れませんでしたが,母国の環境であったり母国の教育課程の状況によって,学びの穴があったりだとか,まだ学んできていないものがたくさんあるというようなことがあります。先ほど河村委員から本国の教科書を使ってというようなお話もあったのですが,そもそも日本のカリキュラムの在り方と本国のカリキュラムの在り方が違っているということがあって,中学校レベルの子供たちであっても,小学校や下の学年のことについて未習ということがあります。実際国際教室では,下の学年の教科書を使って教えるというようなことも行われています。ですから,そういったことも少し配慮があるといいのかと思っています。
 最後に,先生方にこのマルチメディアデイジーについてお聞きをして,知っているかとかあるいは使ったことがあるかということをお尋ねしましたが,知らないという先生がまだ大変多くて,これは日本語指導という先生方ですので,こういった知識をお持ちでないということもあると思います。ただ,詳しく知りたいという先生方は大変大勢おられましたので,今後こういったことが先生方にお伝えできていくといいかなと思いました。
 ありがとうございました。
【齋藤座長】  ありがとうございました。それでは,ここで自由討議ということで今日御説明いただいた内容,土屋委員,築樋委員から御紹介のあった横浜市の実情や,豊橋市の先生方の教科書使用の状況等も含めて御質問,あるいは御意見など頂きたいと思います。それを基に教科書を使用する際の困難について,検討したいと思います。いかがでしょうか。
【小澤委員】  豊橋市の調査,すごく興味深く拝聴させていただきました。それと関連して横浜市の取組について質問させていただきます。母語ボランティアが支援の中に入られており,配布資料の「学校での日本語教科書指導,適応指導のイメージ」というページの一番下に,「教科指導等では母語ボランティアによる通訳支援が可能」とあります。他方,「日本語指導が必要な児童生徒への指導における課題」のページでは,教科書の理解で高い壁があるということが最後に課題として挙げられています。母語ボランティアが教科書の理解を促進するために,教科書の部分的な翻訳を行ったりするということも支援の場面では想定されているのでしょうか。
【土屋委員】  母語ボランティアの方につきましては,やはり飽くまでもボランティアなので,かなり個人によるところの差が大きいです。例えば生活言語の部分で行事の説明や持ち物の説明ぐらいであれば,ほとんどのボランティアの方が対応可能なのですが,やはり学習の内容を通訳できるとなるとかなり人数が狭まってきて,なおかつ中学校の内容となると,更に難しい。
 ですから,ボランティアの方が実際に授業のときに,その児童生徒の横に付いたとしても通訳できる範囲というのはかなり限定的になってしまう。実際通訳されるボランティアの方がその授業の内容をほとんど受けたことがないというような状況で,いきなりこの授業の通訳をしてくださいといっても,現実的にはとても難しいので,本当に最低限の部分での通訳のみになってしまうかと思います。
【小澤委員】  ありがとうございます。築桶委員の報告では,豊橋市の指導事例として,公立中学の数学の事例が示されており,教科の語彙集などの母語対訳表の活用や生徒自身による教科書への母語翻訳の書き込みという教育実践が示されています。母語ボランティアに更に専門家が一緒になって,基本語彙の母語対訳表や教科書本文の母語翻訳が整えられていくと日本語に通じない生徒の教科書に対する障壁をかなり低められるかもしれません。こうした指導実践はすばらしいと思います。大阪市の各学校でも,個別にこうした努力をされているのを拝見しています。教科書の本文を生徒自身がポルトガル語翻訳して書き込んでいますが,これなども出来がよいものを選んで,更に,専門家がチェックすれば,翻訳教材として使えるものと思います。特に数学という教科では,日本語に通じない児童生徒が文章題で戸惑うということが多く,もし母語翻訳文で理解が促進できる場合は,そうした母語翻訳教材は有効であると思います。
【齋藤座長】  築樋委員,何かございますか,小澤委員からの御質問ですが。
【築樋委員】  今のこの指導例は本国で学年相当の教育を受けてきていて,子供の中にそういった知識があるという子供に特に有効な支援の形かとは思っていて,逆に滞日歴が長くて日本で学んできていて,教科の学習が分からないという子供には適してない,母語では分かっていないということになりますので,支援の形も日本語のステージと滞日歴等を考慮して,先生方は分けて考えていると思っています。
【齋藤座長】  ありがとうございます。このような語彙の母語訳に関しては,実は文科省でもJSLカリキュラム中学校編のときに複数言語で教科用語の対訳をされていますし,語彙の母語訳の市販の本なども出ているのですが,それを担当する先生方がうまく活用できるかどうかについては,情報の掌握の問題と,活用の適切さという課題がまだまだ残っているというのが現状なのかと思われます。
 ほかにございませんでしょうか,いかがでしょうか。
【河村委員】  やはり母語でコミュニケーションをとってアプローチするということが,いろいろなところで非常に重要だということは拝見していてよく分かりました。特別支援学校に在籍していて,今回の検討委員会の対象となる児童は,60人が日本国籍を持つ者でそれ以外が261人,合わせると321人になるという理解をしています。それで間違いなければ,浮島副大臣が,確か調査結果か,懇談会の結果を発表される時の談話で,日本語に通じていなくて特別支援が必要な子供たちは二重の負担になっており,特にそこに注目すべきという御発言をされています。
 321人というのは決して少ない数ではありません。そうした子供たちが実は先ほど申し上げたマラケシュ条約を使って母語のデイジー版教材を入手して提供する対象になり得る子供たちです。ブラジルは基本的に教科書を国がデイジー化させていますから,もしブラジル人の子供たちが321人に含まれていれば,ポルトガル語の音声読み上げ部分がハイライト表示される教材が割とスムーズにすぐオンラインで手に入るという状態にあります。例えばそういうものを一方で活用しつつ,日本語学習を進めて,語彙を豊富にしたり,概念を強化したりしていくということに役立つと思われます。特に,科学的な知識の概念形成では,日本語学習と母語での概念形成の連携がすごく重要なんではないかと思うんです。
 そこで,少なくとも今の321人の生徒については,そうした支援を可能にする法的な枠組みが国際的にはできています。国際的な交換をするための調印が終わっていて,国立国会図書館と,障害者のためにつくられているサピエ図書館ではもう交換できる体制を整えています。そういったところとの連携で,321人については特別の支援がすぐにできるのではないのかと思います。そうした実践の中で恐らくデイジー化された教科書,教材を使う経験というのが生徒にも,先生の方にもできてくると思います。それがどこまで有効なものかというのは,また実践から,知見を得られる可能性があるのかなと思います。
【齋藤座長】  ありがとうございます。今の河村委員のお話は,母語をうまく活用して概念形成,教科の知識,スキルの向上に支援をしていくという御提案だったかと思うんですが,いかがでしょうか,ほかの皆さん。井阪委員,現場でお子さん方を見ていて何か。
【井阪委員】  私がいる国府小学校では,それほど母語を使っている子がいなかったのですが,以前中国からすぐに転校してきたという子がいたときは,担任がスマホで翻訳しながら指導していました。一斉指導して,個別に学習するような時間帯にスマホ片手に指導したわけです。大丈夫かと言ったんですけど,とにかくこれでやっていますという感じで指導していました。対象児童が3年生のときだったのですが,子供たち同士の関わりはとても大きいので,先ほど横浜市のケースについて土屋委員が伝えられたように,3日間は個別に日本語教育に時間を使い,それ以外は学校に戻るという方式は,学校には同じ学年のクラスの子供たちがいるので,そこでの交流によって語彙力も増えますし,日本語というものに親しんでいくので,とても大事じゃないかなと拝聴していました。
 私は通級を担当しているのですが,最近は,母親だけが外国の方や父親だけが外国の方というケースが多くなっており,そうした子供たちは学習障害と同じ状況になりやすいので,通級に通ってくるということが多いです。読み書きでひっかかってくるので,その子たちにデイジー教材を使うことは,正しい発音も聞けるので,大変有効です。母親が外国の方だと発音がどうしても曖昧,イントネーションも違うので,構音自体も少し練習しないといけないという子もいます。その子がデイジー教材で学習することによって正しい発音もでき,語彙力も伸び,理解もし,というふうになっていくため,私はデイジー教材を大変活用させていただいています。
【齋藤座長】  ありがとうございます。今,国際結婚の御家庭の状況から,音声面でデイジー教材を子供が活用することが非常に有効ではないかというお話でしたが,犬飼委員,教科書を作られる側のお立場から何かありますでしょうか。
【犬飼委員】  発行者の立場からということですが,この外国人児童生徒の課題に関する検討会議のお話を頂いたところで,頭の中ではある程度こういったことが課題なのかというのは分かっていたつもりでしたけれども,今日の土屋委員と築樋委員のお話を聞いて,具体的に指導するときの困難さというのがよく分かりました。デジタル教科書等々も含めて,ここから先,どういった対応ができるかというところはすごく難しい問題だなと感じています。本日は,いろいろ勉強させていただいたというところが現状です。
【齋藤座長】  ありがとうございます。小澤委員,お願いします。
【小澤委員】  デジタル教科書については,この間,第4回関西教育ICT展が開催され,多数の教科書出版会社のブースが出ていまして,現状をつぶさに見させていただきました。来年度から発行されるデジタル教科書のサンプルが提供されていましたが,障害を持った子供たち用のオプションが付いていて,かなりデイジー教科書に近付いてきているなという印象を持ちました。
 特に印象に残っていたのは,教科書本文の分かち書きの提供です。私が見たのは小学校国語デジタル教科書ですが,全ての学年の分かち書きPDFが付けられていました。ただし,PDFテキストを読み上げソフトで読ませる,要するに合成音声で読ませていく形だそうです。
 そのときにデイジー関係者の方もおられて,その方からの情報ですが,次年度からのデイジー教科書では,分かち書き版のデイジー教科書も作っていく動きがあるとのことです。築樋委員の御報告で,教科書の「読み」に困難がある場合,どのような点で困難さを感じますかという質問に対する複数回答のデータでは,単語や文節の切れ目が分からないと答えた先生方が,小学校で80%,中学校で65%とあります。こうしたニーズから見ても,文節区切りの教材提供はすごく有り難いなと思います。
 分かち書き版がデイジー教科書でも作成されると,文節ごとにハイライトされて,そこに肉声の音声が付くことになります。井阪委員が先ほどおっしゃっていたように,外国のお子さんにとって,文字と音声が同時にシンクロして,頭の中に入ってくる教材になりますので,強力な支援教材として活用ができるのではないかなと思います。
【金森座長代理】  ちょっといいですか。
【齋藤座長】  お願いします。
【金森座長代理】  大阪の第二の都市で同じようなアンケートを取らせてもらったのですが,そこで問題になったのはやはり教材の不足ですね。それから,人員の少なさに悩まされている教育現場の現状が明らかになりました。教材に関してでは,マルチメディアデイジーを知らない方が多いということもありました。今後,こうした支援ツールの有効性を知っていただいて,また将来,外国にルーツのある子たちにも提供できるならば,私はすごく現状を変えることに有効だという感じを受けています。介護福祉士の資格を取るために外国から来た方に,教本をデイジー化したのですが,やはり母語がないと分からないね,と言われまして,日本語と母語を表示できる教材で学習できれば一番いいのかなという感じをすごく持ちました。また,デイジー化に際して,ハイライトを文単位だけではなく,更に短くさせるように工夫して提供すると,「内容理解が楽になりました」と支援した方から回答が戻ってきています。
 先ほど小澤委員が指摘した文節区切り教材の重要性ですが,Windowsで使えるソフトである「いーリーダー」では分かち書きを一応自動的にしてくれます。問題は平仮名が多い,片仮名が多い文章については適当な文節の仕方をできないケースがある点です。漢字仮名交じり文であれば,教科書を分ち書きで表示して読んでくれますので,便利かなと思っています。
【齋藤座長】  ありがとうございます。お願いします。
【小澤委員】  文部科学省からの御報告で,デジタル教科書の効果に関しては,今後,検証実験をされることになっています。これに対して,デイジー教科書などの特定教科書は障害を持ったお子さんしか使えないという指導があって,教育現場の多くの先生方が外国にルーツを持つ児童には使えないものだと思いこんでいます。そのため,外国にルーツを持つ児童に対するデイジー教材の有効性という実験が進んでいないのが現状です。デジタル版教科書と併せて,デイジー版教科書についても,外国にルーツを持つ児童を含めた活用検証を行えると有り難いと思います。
 外国人のお子さんで障害を持っている方も多いので,デイジー教科書を登録されている方もおられます。こうした対象者に対して,検証という意味で実証実験が実現できると良いかなと思います。
【季武課長補佐】  現状だと,発表させていただいた資料の2ページ目の著作権法などで,どうしてもデイジーを使える対象が障害のある児童生徒に限られてしまうので,まずは実際に外国人児童生徒にデジタル教科書を使っていただいて,その結果とデイジー等で使えるような機能との関係を照らし合わせて考えるということになります。実際デイジー教科書を使ってみていただくことができれば,よりいいとは思うのですが。
【小澤委員】  その状況は理解できます。
【齋藤座長】  ありがとうございます。もうそろそろ時間ですけれども,私の方からも少し今日お聞きした報告に対してコメントさせていただいてよろしいでしょうか。
 まず1点目ですけれども,学校での教科学習において,子供たちや御家庭が持っている母語の資源を,資本となるような形で活用することを積極的に進めていく検討をしたいということについては,多分皆さん同じお気持ちでいらっしゃると思います。ですが,日本生まれのお子さんの場合は母語での読み書き自体が難しいという状況があり,また,読み書きが難しいだけではなくて,その母語での概念形成というものもまだできていないという留意点があります。その上で日本語の状況もまだ十分に学習に資するまで高まっていないというケースも最近の報告では非常に多くございます。
 例えば築樋委員がいらっしゃる豊橋市などでも,日本生まれのお子さんが半分以上きっといらっしゃるでしょうし,横浜市の集住地域などでも学校の外国人児童生徒等に当たる子供の70%から80%が日本生まれということもありまして,そうした児童の場合は母語での支援に関しては,アイデンティティや自分の文化,言語を継承していくという意味での母語の支援は非常に大きな価値があると思うのですが,教科学習においてどの程度母語支援が有効なのかということも併せて検討していくことが必要だというのが1点目です。
 それから,2点目としまして,築樋委員が御報告くださった資料5ページの「教科書の『読み』に困難がある場合,どのような点で困難さを感じますか」という調査結果を拝見しますと,この項目は,特別支援の場合の困難さを基にした分析結果だと思われるのですが,言語習得の視点で見ますと,この(3)の1から4までは,文字の認識とその文字を音声化していくというプロセスにおける困難と考えられると思います。これに関して言いますと,先ほど小澤委員から御指摘がありましたように,音声を聞きながら文字との対応関係を学んでいくという点で,非常にデイジー教材が有効ではないかと思いました。
 一方で,5から7までは語彙の量や,語彙の深さという言い方を言語教育ではするんですけれども,どういった状況の中で語彙がどのように使われているかということについての知識,技能となると思います。この5,6,7はそこにかなり大きな関連があり,分かち書きをすることが一定程度それをサポートしていくであろうとは思われます。ただし,語彙の意味の捉え方や使用の仕方については,音声を聞くだけでは十分ではないわけですので,そこでデジタル教材をどんなふうに活用しながら補っていくのかということが非常に期待されるかと思います。
 8に関しましては文構造,文法と言ったらよろしいでしょうか,そういった側面の課題かと思われるのですが,そこに関しては静態的な状態で教材を見せられるだけでは難しい側面もあって,指導の仕方との併せた提案ということが必須になると思います。
 それから,9に関しましては先ほど来,河村委員からも教科の内容についての概念形成であるとか教科学習,経験といったようなものが底力になってようやく理解が促されていくと御指摘がありましたが,デジタル教材の開発までこの検討会議で提案できるかどうか分からないですけれども,内容理解のためのデジタル化の工夫と一緒に検討を進められるとよろしいかと思いました。
 いずれにしてもこのデジタル教材,デイジー教材を外国人の子供たちの教育活動に活用できるような状況を作っていくということについて,今日は全ての委員から非常に前向きで,積極的な強いサポートの御意見が頂けたかと思います。今後あと3回ほど会議が残っているんですけれども,そこでまた委員の皆さん方から新しい情報であるとかお考えをお聞きして進めさせていただければと思います。
 ありがとうございました。では,今日はこのあたりで閉じさせていただきたいと思いますが,最後に次回以降のスケジュールについて,事務局より御説明をお願いいたします。
【季武課長補佐】  資料7番を御覧いただければと思います。今,正に齋藤座長の方から言っていただきましたが,第4回まで会議を行いまして,それまでにこの会議としての方向性を示していければと考えておりまして,現時点では次回を10月頃に開催できればと考えております。内容としましては,本日外国人の児童生徒の状況について土屋委員,築樋委員に御発表いただいたので,これを踏まえて,デイジー教材,音声教材を,こういう場面ではこういうように使うことで解決することができるのではないか,といった具体的な対応について,検討していければと思います。
 また,第3回では,実際に外国人の児童生徒が使うに当たり,現行の制度をどのようにすることで実際に使えるのかということについて,また検討できればと考えております。ここには書いていないですけれども,最初に伝えさせていただいた文科省で実施している学習者用デジタル教科書の事業のフィードバックなども可能なところで入れていければと考えております。そういった検討を踏まえまして,年度内にその方向性について,報告書などを策定できればと考えておりますので,皆様方に御発表などをお願いすることもあるかと思います。本日頂いた御意見なども含めまして,齋藤座長とも御相談させていただきながら,進めさせていただければと思います。
【齋藤座長】  ありがとうございます。それでは,時間となりましたので,本日はこれで閉会といたします。皆様方,スムーズな会議の進行に御協力いただきましてありがとうございました。次回以降も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


―― 了 ――


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