免許外教科担任の許可等に関する指針



平成30年10月5日
文部科学省初等中等教育局教職員課

趣旨

 教育職員は,教育職員免許法(昭和24年法律第147号。以下「免許法」という。)に基づいて授与される免許状を保有しなければならず,この免許状は,勤務する学校種及び担任する教科に相当するものでなければならない(相当免許状主義)。これは,教育基本法に定める学校教育の目的の達成を,教員の資質能力の面から制度的に担保する原則である。

 免許法附則第2項に定める免許外教科担任制度は,とりうる手段を尽くしてもある教科の免許状を保有する中学校,高等学校等の教員が採用できない場合の例外として,1年以内の期間を限り,都道府県教育委員会の許可により,当該教科の免許状を有しない教員が当該教科の教授を担任するものである。
 この制度は,相当免許状主義の例外として本来抑制的に用いられるべきものであり,国,教育委員会,学校におけるこれまでの取組により,長期的には許可件数が減少してきた。しかしながら,現在でも年間1万件程度の許可が行われており,これをできる限り縮小していくことが必要である。
また,免許外教科担任によらざるを得ない場合にも,当該教科を担当する教員への支援を行うことを通じて,できる限り教育の質を向上させることが必要である。

 これらのことを踏まえ,免許外教科担任の許可件数の更なる縮小と,許可が行われる場合の教育の質の向上を図るため,以下において,免許外教科担任制度の運用の指針を示す。
 
 なお,この指針は都道府県教育委員会において共通的に考慮することが適当と考えられる点を整理したものである。都道府県教育委員会においては,この指針を参照するとともに,各地域の実情に応じてより適切な制度の運用を行っていくことが期待される。

第1章 免許外教科担任制度に係る基本的な方針
 
 教員は勤務する学校種及び担任する教科に相当する免許状を有しなければならないという相当免許状主義の趣旨に鑑み,その例外である免許外教科担任については安易な許可は行わないことが原則である。許可に係る具体的な留意点については第2章に示すとおりである。

 教育委員会においては,免許外教科担任の許可が必要な状況が可能な限り生じないよう,各学校種,各教科の指導に必要な教員を計画的に採用し,適正に配置することが求められる。

 やむを得ず免許外教科担任の許可が必要となる場合には,免許外教科を担任する教員に対する研修その他の支援策を講じ,当該教員の負担の軽減及び教育の質の向上に努めることが求められる。

 以上の取組には,養成,採用,研修全体を通じた対応が必要である。そのためには,教育委員会と,近隣の教職課程を有する大学等との連携が重要であり,教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第22条の5第1項に規定する協議会を活用することが効果的であると考えられる。


第2章 免許外教科担任の許可の審査における具体的な留意事項

1.免許外教科担任の許可の手続について

 各学校が免許外教科担任制度の趣旨を正しく理解し,適切な申請が行われるよう,都道府県教育委員会においては,免許外教科担任の許可に係る具体的な審査基準を定めておくことが適当である。また,都道府県教育委員会による審査の際には,教育職員免許法施行規則附則第18項に基づいて申請書に記載される事項を十分に考慮するとともに,審査基準に基づき適切に運用を行う必要がある。
 なお,審査基準は,各地域の特性や実態,学校教育を巡る環境の変化等に応じて,適宜見直しを行うことが望ましい。

2.免許外教科担任の許可が必要な理由について

 前述のとおり,免許外教科担任制度は相当免許状主義の例外であり,都道府県教育委員会においては安易な許可を行わないよう,個々の許可の必要性について十分に吟味する必要がある。都道府県教育員会においては,許可の必要性を判断する際には例えば以下のような点に留意する必要がある。

 ・とりうる手段を尽くしても当該教科の免許状を有する教員を確保することができず,許可の申請はやむを得ないものであるか。
 ・許可を申請する学校の教員の持ち時間数の調整を目的とするようなものとなっていないか。

3.免許外教科を担任する教員について
 
 免許外教科を担任する教員は,専門としない教科の授業準備や教材研究を行わなければならないため,通常よりも負担が大きくなると考えられる。都道府県教育委員会においては,当該教員の負担が過重とならないよう,許可の際には例えば以下のような点に留意する必要がある。

 ・当該教員が免許外教科を担任することにより,担任する授業数が過重なものとなっていないか。
 ・当該教員が保有する免許状の教科を担任せず,免許外教科のみを担任することとなっていないか。
 ・他に適任者がいるにもかかわらず,研修等に専念すべき初任者や経験年数の浅い教員に免許外教科を担任させることとなっていないか。

4.免許外教科を担任する教員への支援策について

 免許外教科担任を許可せざるを得ない場合においては,当該教科の指導に必要な知識,技能をできるだけ補えるような支援策を講ずることで,教育の質を高めていくことが求められる。都道府県教育委員会においては,許可の際には,設置者,採用権者,学校等において,例えば以下のようなものを含め,適切な支援策が講じられるよう留意することが適切である。

 ・当該教員に対する免許外教科の指導に関する研修等の受講を計画すること
 ・当該教員の担任する免許外教科の免許状を有する教員が在籍する近隣校との連携や遠隔システムの活用など,当該教員を支援する体制を整備すること
 ・許可を申請する学校の校長,副校長,教頭,主幹教諭,指導教諭,その他の教職員による当該教員を支援する体制を整備すること

【参考】遠隔教育の推進について
 学校教育において,遠隔システムを活用した同時双方向型で行う教育(以下,「遠隔教育」という。)を効果的に活用することは,それぞれの学校現場が抱える様々な問題や一人一人の学習ニーズに応じ,様々な場面において,学びの質を大きく向上させる可能性を持つものである。免許外教科担任の許可を受けた教員が対面で指導している場合でも,当該教科の免許状を保有し,優れた指導力を有する他校の教員が遠隔地より参画することは,授業の質を高める上で有益と考えられる。
 遠隔教育の実施に当たっては,平成30年9月に文部科学省が策定した「遠隔教育の推進に向けた施策方針」において,遠隔システムを活用することが効果的な学習場面や目的・活動例等を示しているため,同指針を参考とすること。

「遠隔教育の推進に向けた施策方針」(平成30年9月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/14/1409323_1_1.pdf


第3章 その他

1.現職の教員以外の多様な人材の活用

 普通免許状を保有する教員以外にも,免許状を保有しないが高い専門性と多様な経験を有する社会人など,教員として働く意欲と能力を持つ者に対して免許状を授与し,非常勤講師等で活用していくことも考えられる。特に,候補者が特別免許状の授与要件を満たす場合には,積極的に特別免許状を授与し,教員として迎え入れることにより,学校教育の多様化への対応やその活性化を図ることが望ましい。

【参考】特別免許状の授与について
 都道府県教育委員会による特別免許状の積極的な授与に資するとともに,特別免許状所持者による教育の質を担保するため,平成26年6月,文部科学省において「特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針」を策定している。特別免許状の授与に当たっては,同指針を参考とすること。

「特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針」(平成26年9月)

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/06/23/1348574_3.pdf

2.複数教科の免許状取得の促進について
 
 一人の教員が複数の学校種や教科の免許状を取得して授業を担当できるようになることは,学校段階間の接続を見通して指導する力や教科横断的な視点で学習内容等を組み立てていく力など複数の学校種・教科等にわたる幅広い理解に基づいた,教員としての総合的な指導力の向上にもつながると考えられる。このような観点から,現職の教員や教職課程に在籍する学生に複数の教科の免許状の取得を促進することが考えられる。
 現職の教員が同じ学校種の別の教科の免許状を取得しようとする場合には,免許法別表第4に規定する要件を満たすため,所定の単位を修得する必要がある。この単位の修得は,教職課程の認定を受けた大学の課程での学修のほか,文部科学大臣の認定を受けて教育委員会等が開設する講習(以下「免許法認定講習」という。)の受講等により行われる。
 都道府県教育委員会においては,免許外教科担任の許可件数の多い教科の免許状についても,現職の教員が免許状の取得をできるよう,講習の受講の機会を確保することや,近隣の大学等と連携し,免許法認定講習の充実を図ることが期待される。また,免許法認定講習は,免許状更新講習や現職研修などとの相互実施が可能となっており,受講の促進とともに効率的な受講ができるよう,相互実施について積極的に検討することが望ましい。

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総合教育政策局教育人材政策課教員免許企画室

(総合教育政策局教育人材政策課教員免許企画室)