学校教育法施行規則の一部改正及び単位制高等学校教育規程の制定について


文初高第143号
昭和63年3月31日



  各都道府県教育委員会・各都道府県知事・附属学校を置く各国立大学長あて



文部事務次官通達



学校教育法施行規則の一部改正及び単位制高等学校教育規程の制定について



  このたび、別添のとおり、「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」(昭和六三年文部省令第五号)及び「単位制高等学校教育規程」(昭和六三年文部省令第六号)が三月三一日に公布され、昭和六三年四月一日から施行されることとなりました。
  これらの省令の概要及び留意すべき事項は左記のとおりですので、事務処理上遺漏のないようお願いします。
  なお、都道府県教育委員会にあつては、その所管の学校及び管下の市町村教育委員会に対して、都道府県知事及び国立大学長にあつては、その管下の学校に対して、この趣旨を徹底されるようお願いします。



一 今回の改正及び制定の趣旨

  今回の措置は、学年による区分を設けない教育課程に従つて生徒が多様な科目を選択し単位を修得することを可能にするとともに、卒業の認定について生徒が過去に在学した高等学校において修得した単位をも累積して行うことを可能にするため、学年による教育課程の区分を設けない課程を置く高等学校(以下「単位制高等学校」という。)に関する制度について、定時制又は通信制の課程の特別な形態のものとして定めたものであること。

  このことは、生涯学習の観点から、学習歴や生活環境などが多様な生徒に対し広く高等学校教育の機会の確保を図るとともに、高等学校教育の多様化・弾力化に資するためのものであること。


二 学校教育法施行規則の一部改正関係

(一) 高等学校においては、学校教育法施行規則(以下「規則」という。)第六五条第一項で準用する第二七条の規定により、学年ごとに課程の修了の認定を行わなければならないこととされているが、定時制の課程又は通信制の課程においては、これにかかわらず、学年による教育課程の区分を設けないことができることとしたこと。(規則第六四条の二第一項)

(二) (一)により学年による教育課程の区分を設けない定時制の課程又は通信制の課程(以下「単位制による課程」という。)に係る入学等の特例その他必要な事項は、単位制高等学校教育規程(以下「規程」という。)の定めるところによることとしたこと。(規則第六四条の二第二項)


三 単位制高等学校教育規程の制定関係

(一) 入学者の選抜の方法(規程第二条関係)

  高等学校の入学者の選抜は、規則第五九条第一項及び第二項により、調査書及び学力検査によることを原則とすることとされているが、単位制による課程においては、多様な生徒を受け入れるため、その方法については設置者が定めることとしたこと。

(二) 入学及び卒業の時期(規程第三条関係)

  高等学校の入学及び卒業の時期は、規則第六五条第一項で準用する第四四条により、それぞれ四月及び三月とされているが、単位制による課程については、多様な生徒を受け入れるため、四月及び三月以外の時期においても、学期の区分に従い、生徒を入学させ、又は卒業させることができることとしたこと。
  なお、四月及び三月以外の時期において、学期の区分に従い、生徒を入学させ、又は卒業させる場合には、それらの者に対し適切な教育課程を編成するなど教育上支障がないよう配慮する必要があること。

(三) 編入学及び転入学(規程第四条及び第五条関係)

  高等学校の編入学及び転入学については、規則第六〇条及び第六一条により規定されており、単位制による課程においてもこれらの規定の考え方に準ずることとするが、編入学又は転入学の時点の示し方については、これらの規定における相当学年に対応するものとして、修業年限の範囲内で当該単位制高等学校において在学すべき期間を示すこととしたこと。

(四) 科目の開設等(規程第六条関係)

  単位制による課程を置く高等学校においては、高等学校教育の機会に対する多様な要請にこたえ、履修形態の多様化・弾力化を図るため、多様な科目の開設に努めるとともに、科目の開設方法について、複数の時間帯又は特定の時期における授業の実施その他の措置を講ずるよう努めるものとしたこと。

(五) 過去に在学した高等学校において修得した単位(規程第七条関係)

  単位制による課程においては、過去に修得した単位の累積を可能にするため、生徒が過去に在学した高等学校において単位を修得しているときは、その単位を卒業を認めるに必要な単位数のうちに加えることができることとしたこと。
  この場合、過去に在学した高等学校とは、当該高等学校及び他の高等学校をともに含むものであること。

(六) 定時制の課程との併修(規程第八条関係)

1 高等学校における併修については、高等学校通信教育規程(昭和三七年文部省令第三二号)第九条により通信制の課程相互の間の併修及び通信制の課程と定時制の課程との併修が認められているが、定時制である単位制による課程については他の定時制の課程との併修を可能にするため、校長の定めるところにより、生徒が他の高等学校の定時制の課程において一部の科目の単位を修得したときは、その単位を卒業を認めるに必要な単位数のうちに加えることができることとしたこと。(同条第一項)
  また、定時制の課程の生徒が、他の高等学校の定時制である単位制による課程において一部の科目の単位を修得した場合についても、同様の取り扱いができることとしたこと。(同条第二項)

2 1により生徒が併修を行おうとする場合、当該生徒が在学する高等学校の校長は、対象科目が当該高等学校の教育課程の全体からみて適切であるかどうか等に配慮して必要な事項を定めること。

3  1により生徒が併修を希望する高等学校の校長は、当該生徒について一部の科目の履修を許可することができることとしたこと。(同条第三項)

(七) 休業日(規程第九条関係)

  公立高等学校の休業日は、規則第六五条第一項で準用する第四七条第一項により、日曜日等に特定されているが、公立の単位制による課程においては、教育委員会が定めることとしたこと。

(八) 科目履修生(規程第一〇条関係)

1 単位制による課程においては、聴講生として特定の科目を履修する者(以下「科目履修生」という。)を適切に受け入れるため、必要な配慮をするよう努めるものとしたこと。

2 単位制による課程においては、入学前に科目履修生として特定の科目を履修していた生徒が入学した場合、当該科目履修生としての履修を当該入学した高等学校における履修とみなし、その成果について単位を与えることができることとしたこと。
  この場合、単位の認定については、生徒の教育上有益であるかどうか等を判断して、適切に行う必要があること。

3 なお、これらの措置を講ずるに当たつては、科目履修生の取扱いを明らかにするため、あらかじめ、その身分等について定める必要があること。


四 施行期日

  今回の措置は、昭和六三年四月一日から施行することとしたこと。






別添


学校教育法施行規則の一部を改正する省令要綱


一 高等学校の定時制の課程又は通信制の課程においては、学年による教育課程の区分を設けないことができること。

二 学年による教育課程の区分を設けない定時制の課程又は通信制の課程に係る特例その他必要な事項は、単位制高等学校教育規程の定めるところによること。

三 この省令は、昭和六十三年四月一日から施行すること。



○文部省令第五号

  学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第四十三条、第四十五条第四項及び第四十九条の規定に基づき、学校教育法施行規則の一部を改正する省令を次のように定める。


  昭和63年3月31日


文部大臣 中島源太郎


学校教育法施行規則の一部を改正する省令


  学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)の一部を次のように改正する。


「第三節 通信制の課程その他」を「第三節 定時制の課程及び通信制の課程その他」に改める。

第六十四条の二及び第六十四条の三を次のように改める。

第六十四条の二 高等学校の定時制の課程又は通信制の課程においては、第六十五条第一項で準用する第二十七条(各学年の課程の修了に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、学年による教育課程の区分を設けないことができる。
2 前項の規定により学年による教育課程の区分を設けない定時制の課程又は通信制の課程に係る入学等に関する特例その他必要な事項は、単位制高等学校教育規程(昭和六十三年文部省令第六号)の定めるところによる。

第六十四条の三 削除



附則

この省令は、昭和六十三年四月一日から施行する。






単位制高等学校教育規程要綱


一 単位制による課程に係る入学者の選抜の方法、入学及び卒業の時期、編入学、転入学並びに休業日の特例等について定めること。(第二条~第五条及び第九条関係)

二 単位制による課程においては、多様な科目を開設し、かつ、複数の時間帯又は特定の時期における授業の実施その他の措置を講ずるよう努めるものとすること。(第六条関係)

三 単位制による課程においては、生徒が過去に在学した高等学校において修得した単位数を全課程の修了を認めるに必要な単位数のうちに加えることができること。(第七条関係)

四 単位制による課程と定時制の課程との併修について定めること。(第八条関係)

五 単位制による課程の科目履修生について定めること。(第十条関係)

六 この省令は、昭和六十三年四月一日から施行すること。



○文部省令第六号

  学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第四十三条、第四十五条第四項、第四十九条及び第八十八条の規定に基づき、単位制高等学校教育規程を次のように定める。


  昭和63年3月31日


文部大臣 中島源太郎


単位制高等学校教育規程


(趣旨)
第一条 この省令は、学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第六十四条の二第一項の規定により学年による教育課程の区分を設けない定時制の課程及び通信制の課程(以下「単位制による課程」という。)に関し、同令の特例その他必要な事項を定めるものとする。

(入学者の選抜の方法)
第二条 単位制による課程に係る入学者の選抜の方法は、当該単位制による課程を置く高等学校の設置者が定める。

(入学及び卒業の時期)
第三条 単位制による課程については、教育上支障がないときは、学期の区分に従い、生徒を入学させ、又は卒業させることができる。

(編入学)
第四条 単位制による課程に係る編入学は、相当年齢に達し、相当の学力があると認められた者について、相当の期間を在学すべき期間として、これを許可することができる。

(転入学)
第五条 単位制による課程に係る転学又は転籍は、修得した単位及び在学した期間に応じて、相当の期間を在学すべき期間として、これを許可することができる。

(科目の開設等)
第六条 単位制による課程を置く高等学校においては、高等学校教育の機会に対する多様な要請にこたえ、多様な科目を開設し、かつ、複数の時間帯又は特定の時期における授業の実施その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

(過去に在学した高等学校において修得した単位)
第七条 単位制による課程を置く高等学校の校長は、当該単位制による課程の生徒が過去に在学した高等学校において単位を修得しているときは、当該修得した単位数を当該単位制による課程を置く高等学校が定めた全課程の修了を認めるに必要な単位数のうちに加えることができる。

(定時制の課程との併修)
第八条 単位制による課程(通信制の課程であるものを除く。以下この条において同じ。)を置く高等学校の校長は、当該単位制による課程の生徒が、当該校長の定めるところにより他の高等学校の定時制の課程において一部の科目の単位を修得したときは、当該修得した単位数を当該単位制による課程を置く高等学校が定めた全課程の修了を認めるに必要な単位数のうちに加えることができる。

2 定時制の課程(単位制による課程であるものを除く。以下この項において同じ。)を置く高等学校の校長は、当該定時制の課程の生徒が、当該校長の定めるところにより他の高等学校の単位制による課程において一部の科目の単位を修得したときは、当該修得した単位数を当該定時制の課程を置く高等学校が定めた全課程の修了を認めるに必要な単位数のうちに加えることができる。

3 前二項の規定により、高等学校の単位制による課程の生徒又は定時制の課程の生徒(以下この項において「生徒」という。)がそれぞれ他の高等学校の定時制の課程又は単位制による課程において一部の科目の単位を修得する場合においては、当該生徒が一部の科目の単位を修得しようとする定時制の課程又は単位制による課程を置く高等学校の校長は、当該生徒について一部の科目の履修を許可することができる。

(休業日)
第九条 公立高等学校の単位制による課程に係る休業日は、当該高等学校を設置する都道府県又は市町村の教育委員会が定める。

(科目履修生)
第十条 単位制による課程を置く高等学校においては、当該単位制による課程の聴講生として特定の科目を履修する者(以下「科目履修生」という。)に対し、多様な教育の機会の確保について配慮するよう努めるものとする。

2 単位制による課程を置く高等学校の校長は、当該単位制による課程の生徒が当該高等学校に入学する前に科目履修生として特定の科目を履修している場合において、教育上有益と認めるときは、当該科目履修生としての履修を当該入学した高等学校における履修とみなし、その成果について単位を与えることができる。


附則

この省令は、昭和六十三年四月一日から施行する。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

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