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総合学科について

文初職第203号 
平成5年3月22日


各都道府県教育委員会、各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学長あて

文部省初等中等教育局長通知


総合学科について


  高等学校に総合学科を設けることについては、平成5年3月22日付け文初高第202号初等中等教育局長通達により通知したところであります。
  総合学科は普通教育及び専門教育を選択履修を旨として総合的に施す学科であり、高等学校教育の一層の個性化・多様化を推進するため、普通科、専門学科に並ぶ新たな学科として設けられたものであります。
  ついては、別添の高等学校教育の改革の推進に関する会議の第四次報告(以下「第四次報告」という。)の内容を十分に参考の上、総合学科の設置に対する積極的な取組みをお願いします。第四次報告のうち特に留意すべき内容は左記のとおりであります。
  また、既存の普通科及び専門学科についても、特色ある個性的な教育の展開の一層の推進が重要であり、前記第四次報告においても指摘されているとおり、多様な生徒の持つ様々な能力・適性等に対応できるよう積極的な取組みをお願いします。
  なお、総合学科における教職員定数及び施設・設備の整備に対する措置等については、国としても別途検討中であることを申し添えます。
  おって、都道府県教育委員会にあってはその所管の学校及び管下の各市町村教育委員会に対して、都道府県知事にあってはその所轄の学校法人及び私立学校に対して、国立大学長にあってはその管下の附属学校に対して、この趣旨の徹底を図るようお願いします。



1  教育の特色及び活用される諸制度について

一 教育の特色

(一) 将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視すること。
  このため、在学中に自己の進路への自覚を深める動機付けとなるような科目を開設するとともに、生徒の科目選択に対する助言や就職希望者・進学希望者の双方を視野に入れた進路指導などのガイダンス機能を充実すること。

(二) 生徒の個性を生かした主体的な学習を通して、学ぶことの楽しさや成就感を体験させる学習を可 能にすること。
  このため、教育課程の編成に当たっては幅広く選択科目を開設し、生徒の個性を生かした主体的な選択や実践的・体験的な学習を重視し、多様な能力・適性等に対応した柔軟な教育を行うことができるようにすること。



二 活用される諸制度

  前記の総合学科における教育の特色を発揮させるため、総合学科への入学者選抜に当たっては、多様な能力・適性等を持つ生徒を入学させるため、文化・スポーツ活動、ボランティア活動等の実績を重視した推薦入学の導入をはじめとする多様な選抜方法を工夫するほか、次のような制度の積極的な活用を図ること。


1 単位制による教育課程編成
  学年による教育課程の枠を設け、学年ごとに課程の修了の認定を行う学年制ではなく、卒業までに所要の単位を修得すれば卒業を認定する単位制により教育課程を編成することを原則とすること。
  また、学期の区分に応じた分割履修や二以上の学年にわたっての分割履修を広く認めるなど教育課程の弾力化を図るとともに、その履修については生徒の選択を尊重すること。

2  学校間連携の推進
  総合学科においては、可能な限り多様な教科・科目を開設する必要があるため、他の高等学校と連携する方策を積極的に活用するものとすること。その場合、他校において当該教科・科目の授業を特定の学期又は期間に実施する等の協力を得るなど適切な措置を講じること。

3 専修学校における学習成果や技能審査の成果の単位認定の活用
  総合学科においては、地域の実情や生徒の進路希望等に応じ、専修学校高等課程等における学習成果や技能審査の成果の単位認定の活用に努めること。

4 専門学科への転学の配慮
  専門教科・科目の履修を通して特定の分野への関心が高まり、専門的に当該分野を深く学び卒業後はその分野への就職・進学を志望するようになった生徒に対応するため、専門学科への転学が可能になるよう特段の配慮を行うこと。

5 転・編入学についての積極的な受入れ
  総合学科においては、選択幅の広い教育課程編成を行ったり、複数の年度にわたって履修できる科目を設けたりするなど弾力的な教育課程編成に特色があるので、いったん入学した高等学校になじめない生徒や中途退学をしたものの高等学校に再度就学したい生徒に対し、転・編入学の積極的な受入れを進めることにも配慮すること。



2 教育課程の編成について

  総合学科の教育課程は、高等学校必修科目、学科の原則履修科目、総合選択科目、自由選択科目による構成が考えられるが、各学校においてその教育内容・方法等について創意工夫を行い、それぞれの特色を発揮することが望まれること。

一 学科の原則履修科目
  総合学科においては、自己の進路への自覚を深めさせるとともに、将来の職業生活の基礎となる知識・技術等を修得させるため、原則として全ての生徒に履修させる「産業社会と人間」、情報に関する基礎的科目及び「課題研究」を開設することが適切であること。


(一) 産業社会と人間

1 「産業社会と人間」の目標は、次のとおりとすること。

ア 自己の生き方を探求させるという観点から、自己啓発的な体験学習や討論などを通して、職業の選択決定に必要な能力・態度、将来の職業生活に必要な態度やコミュニケーション能力を養うとともに、自己の充実や生きがいを目指し、生涯にわたって学習に取り組む意欲や態度の育成を図ること。

イ 現実の産業社会やその中での自己の在り方生き方について認識させ、豊かな社会を築くために積極的に寄与する意欲や態度の育成を図ることとすること。

2  「産業社会と人間」の内容は、「職業と生活」(職業人として必要とされる能力・態度、望ましい職業観を養う学習)、「我が国の産業の発展と社会の変化」(我が国の産業の発展について理解し、それがもたらした社会の変化について考察する学習)及び「進路と自己実現」(自己の将来の生き方や進路について考察する学習)とすること。

3 「産業社会と人間」は、学習指導要領上の「その他特に必要な教科に関する科目」(第一章第二款の四)として設けること。
  また、履修単位数は二単位から四単位を標準とし、原則として入学年次に履修させること。

4 指導教員については、前記[cir2 ]の内容のうち、特定の教科に相当しないものにあっては免許状の教科を問わず指導するものとし、特別な知識・技術を必要とする内容の学習を行う場合には当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有する者が中心となり、複数の教員によるティームティーチングによって指導するものとすること。


(二) 情報に関する基礎的科目

1 情報に関する基礎的科目の目標は、社会における情報化の進展及び情報の意義や役割について理解させるとともに、コンピュータとその活用についての基礎的な知識と技術の習得を通して、情報を主体的に活用する能力と態度の育成を図り、情報化社会と人間との望ましいかかわり方について認識させることとすること。

2 情報に関する基礎的科目については、地域、学校及び生徒の実態等に応じ、次の二つの場合が考えられること。

ア 教科「数学」や「理科」等の教科に関する「その他の科目」(学習指導要領第一章第二款の三)又は「その他特に必要な教科に関する科目」(同章第二款の四)として設ける科目とする場合。

イ 学習指導要領第二款の二に掲げる「情報処理」、「情報技術基礎」、「農業情報処理」、「水産情報処理」、「家庭情報処理」又は「看護情報処理」とする場合。

3 情報に関する基礎的科目の履修単位数は、二単位から四単位を標準とすること。

4 指導教員については、情報に関する基礎的科目を上記[cir2 ]の「その他の科目」又は職業教科・科目として設ける場合には当該教科の免許状を有する者、「その他特に必要な教科に関する科目」として設ける場合には当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有し当該科目を担当するものとして適当な者が指導するものとすること。


(三) 課題研究

1 「課題研究」の目標は、多様な教科・科目の選択履修によって深められた知的好奇心等に基づいて自ら課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して、問題解決能力や自発的、創造的な学習態度を育てるとともに、自己の将来の進路選択を含め人間としての在り方生き方について考察させることとすること。

2 「課題研究」は、地域、学校及び生徒の実態等に応じ、職業教科以外の教科に関する「その他の科目」(学習指導要領第一章第二款の三)又は「その他特に必要な教科に関する科目」(同第二款の四)として設けること。

3 「課題研究」の履修単位数は、二単位から四単位を標準とし、原則として卒業年次に履修させること。

4 指導教員については、「課題研究」を前記[cir2 ]の「その他の科目」として設ける場合には当該教科の免許状を有する者、「その他特に必要な教科に関する科目」として設ける場合には、当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有し当該科目を担当するものとして適当な者が指導するものとすること。



二 総合選択科目

  総合学科においては、生徒の主体的な選択を重視する観点に立ち、普通科目及び専門科目にわたって多様な選択科目(総合選択科目)を開設すること。その際、前記一の学科の原則履修科目と併せて三〇単位以上となるような専門教科・科目を設けることとすること。

  総合選択科目の開設に当たっては、生徒にある程度のまとまりのある学習を可能にするとともに、生徒自身の進路の方向に沿った科目履修ができるようにするため、体系性や専門性等において相互に関連する総合選択科目によって構成される科目群(総合選択科目群)としてまとめて開設すること。

  生徒は、総合選択科目群を参考にして、自己の興味・関心等に基づき一又は複数の総合選択科目群について履修する科目の選択を行うこととすること。


(一) 総合選択科目群の開設

  学校において総合選択科目群の種類を定めるに当たっては、生徒の多様な興味・関心等に応え幅広い進路選択が可能となるように、学級規模に応じできる限り多くの分野にわたって複数の総合選択科目群を開設すること。


(二) 総合選択科目群の種類の例

  総合選択科目群の種類としては、例えば、情報系列、伝統技術系列、工業管理系列、流通管理系列、国際協力系列、地域振興系列、海洋資源系列、生物生産系列、福祉サービス系列、芸術系列、生活文化系列、環境科学系列、体育・健康系列等の科目群が考えられるが、その種類及びその科目構成については地域や生徒の実態を考慮しつつ設置者及び学校が定めること。



三 自由選択科目

  総合選択科目群としてまとめて開設する科目のほか、開設されている総合選択科目群の性格とは異なる科目を自由選択科目として必要に応じ開設すること。




3 授業形態、履修方法等について

(一) 表現力、コミュニケーション能力及び実践的能力等の育成を図るため、個別学習、グループ学習等の多様で弾力的な授業形態とすることが望ましいこと。

(二) 選択の幅を拡大し社会の第一線で活躍する人材に接する機会を確保するため、特に「産業社会と人間」や「課題研究」にあっては、非常勤の社会人講師による授業の積極的な実施に努めること。

(三) 教育課程の編成・実施を円滑に行うため、特に必要がある場合には、特定の学期又は期間に集中的に授業を実施するなど弾力的な履修方法等を工夫すること。

(四) 総合学科の教育課程は単位制によって編成することを原則とするためホームルーム活動の充実に留意し、生徒指導に支障が生じないよう配慮すること。




高等学校教育の改革の推進について(第四次報告)

――総合学科について(報告)――

平成5年2月12日


高等学校教育の改革の推進に関する会議


1 高等学校教育の現状と課題

  これからの我が国の社会は、国際化、情報化、高齢化の進展などを背景に、急速にかつ大きく変貌していくことが予想される。その中で高等学校教育は、同世代のほとんどすべての青少年を受け入れながら、彼らが将来の社会の中でより充実した人生を送りつつ、社会の有為な形成者となるよう、そのための様々な能力を育成することが期待されている。今後の高等学校教育の基本的な方向として、個人としてまた国家・社会の一員として必要とされる基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせるとともに、生徒一人一人の興味・関心等に基づく主体的な学習を促し、それぞれの個性を最大限に伸長させ、生涯にわたって継続的に学習する意欲や態度を育成することが求められている。

  この基本的な方向は、平成六年度から実施される新しい高等学校学習指導要領の改訂のねらい、すなわち、「これからの社会の変化とそれに伴う生徒の生活や意識の変容に配慮しつつ生涯学習の基礎を培うという観点に立ち、二一世紀を目指し社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図る」という方針とも軌を一にするものである。

  先の第一四期中央教育審議会答申においては、高等学校教育の改革の方向として、

ア 今日、中学校卒業者の九五%に及ぶ者が学んでいる高等学校には、能力・適性、興味・関心、進路等の極めて多様な生徒が入学しており、このため、その教育の水準や内容については一律に固定的に考えるべきものではなく、できる限り幅広く柔軟な教育を実施することが必要となってきていること

イ 生徒一人一人に対して、自分の興味・関心や進路などに基づく主体的な学習を促し、それぞれの個性を最大限に伸長させるための選択の幅の広い教育を推進していくことが大切であること

ウ この時期の生徒は、家族や友人との人間関係をはじめ、自己の進路、将来の生き方などの青年期特有の問題に直面するため、高等学校においては、こうした青年期の生徒が、自己を見つめながら自我を確立し、人間としての在り方生き方についての自覚を深め、人間性を豊かに育むことができる教育が求められていること

等が指摘されており、このような考え方に基づいて、同答申は「普通科と職業学科とを総合するような新たな学科」の設置を提言している。

  こうした中で、従来から置かれている普通科及び専門学科は、それぞれの教育目標等を踏まえ、望まれる高等学校教育の実現に大きな役割を果たすことが期待されているが、社会の変化や生徒の実態に適切に対応するためには、これらの学科においてさらに改善を図る必要があることは言うまでもない。

  しかしながら、普通科と専門学科に区分された現行の学科制度は、普通科は進学、専門学科のうちほとんどを占める職業学科は就職という固定的な考え方に結び付きやすく、学校間の序列化、偏差値偏重の進路指導などの問題を生じさせる一因になっている。同時に、普通科における就職希望者や職業学科における進学希望者への対応が不十分となっていることなどの問題を生み出している。

  このため、生徒の主体的な学習を促し個性を伸長させ国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を育成するという高等学校教育改革の基本的な方向を、教育内容や教育方法のみならず、学科という枠組みにおいても推進するという新たな発想に立つ学科を設置し、高等学校における学科制度を見直すことが必要となっている。



2 総合学科設置の趣旨

一 社会的背景 -生涯学習社会への移行-

  我が国では従来から教育全体に占める学校教育の比重が極めて大きく、しかもその学校教育は主として青少年期に集中的に行われてきた。このため、高等学校や大学への進学に際して過度の受験競争を生じ、そのための学習塾通い等が見られる。また、業者テストによる偏差値等に過度に依存した中学校の進路指導、高等学校への不本意入学や中途退学などが社会的問題となっているところである。

  その改善のためには、基本的には社会における学歴偏重の考え方を是正していくことが必要であり、青少年期に卒業した学校の学歴のみを重視するのではなく、生涯にわたってどのような知識、技術や資格を身に付け、どのようにして豊かな人間性を養ってきたかなどの個人の生涯にわたる学習歴が正しく評価されるような学習歴社会を創り出していかなければならない。

  このため、学校においては、生涯にわたる人間形成の基礎を培うため、基礎的・基本的な内容の指導を徹底し、個性を生かす教育の充実や自己教育力の育成を図ることが期待されている。その場合、学力を単なる知識や技能の量の問題としてとらえるのではなく、それを支える能力や関心・意欲・態度の全体的構造、さらに学校、家庭及び地域における学習や生活を通して生徒が自ら考え主体的に判断し行動するために必要な資質や能力などの総合力としてとらえることが重要である。また、生涯学習社会と密接な関連を有するボランティア活動は、現代社会における諸活動を背景として個人の自由意思に基づきその技能や時間等を進んで提供し社会に貢献するものであり、豊かで活力ある社会を築き、生涯学習社会の形成を進める上で重要な役割を持つことから、学校教育においては、生徒のボランティア精神などを培うための体験的活動の機会を設けるなど、教育活動全体を通じて積極的な指導を行うことが重要である。



二 総合学科への進学者像

  今日、人生八〇年時代を迎え、また、今日のように技術革新の進展等に伴い産業・就業構造が大きく変化している時代にあっては、将来の進路についての明白な展望を見定めることが難しいなどの理由から、若者の職業の選択についても先送りされる傾向が目立ってきたと言われている。また、めまぐるしく変化する現代社会においては、産業構造の変化等に伴い従来には見られなかった新たな職業分野が生じてきており、高等教育機関においても学部・学科等の改編が進められている。

  こうした状況のもとにあっては、中学校卒業時に将来の進路について一部の生徒が明確な見通しを持たないことを、自己の進路に対する意識が希薄であるとして一概に否定的にとらえるのではなく、高等学校における様々な学習や活動を通して自己の能力や適性を見いだしていこうとする積極的な契機としてとらえることも必要である。

  このような観点から総合学科への進学を希望する生徒像としては、

1 総合学科を置く高等学校の特色、すなわち、将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習の重視、生徒の個性を生かした主体的な学習を通して、学ぶことの楽しさや成就感を体験させる学習の実現等に魅力を見いだし、そこでの学習成果を自己の将来の進路に積極的に結び付けようとする生徒

2 高等学校卒業後は就職を希望し、そのための専門的な知識・技術等を身に付けたいと考えているが、中学校卒業の段階ではいろいろな専門分野のいくつか、あるいは、いずれにも魅力を感じ、進路選択をこの学科における総合選択科目群の選択による学習あるいはガイダンスに期待している生徒

3 高等学校卒業後は大学等の上級学校に進学し高度の専門的技術を身に付け専門的技術者等になりたいと考えているが、自己の能力・適性等に合っている分野を高等学校に入ってからの学習を通して見極めたいと考えており、そのためには専門的分野の学習が少ない普通科や特定の専門分野に学習が固定される専門学科よりは幅広い分野の学習を通して自己の能力・適性等に合った分野を見いだしたいと考えている生徒

4 高等学校卒業後は就職するか進学するかなど将来の進路をより適切に決定しようとし、高等学校における学習を通して、自己の能力や適性を見極めるとともに働くことあるいは学び続けることの意義や目的を理解したうえで就職又は進学し、将来における自己実現を図りたいと望んでいる生徒

などが予想される。



三 総合学科における教育の特色

(一) 総合学科における教育の特色

  個人の活動領域が、職業生活をはじめ社会生活のあらゆる面にわたって、拡大し複合化しつつある中で、国民一人一人が主体性を確立し、豊かな人間関係を築いていくことが望まれている。このため、それぞれの個性に沿った専門的な能力とともに、より普遍的で根源的な人間理解・文化理解に立って、物事を総合的に理解し行動する能力が求められている。一方、産業社会の発展等に伴い多くの仕事に創造的な要素が増大しつつあり、職業を通しての自己実現の可能性が一層拡大している。したがって、学校教育においては、心豊かに主体的・創造的に生きていくことができる資質や能力を確実に身に付け、社会生活においてそれらを最大限に活用して自己を取り巻く環境に柔軟に対応し、自らの仕事を創造的に遂行したり、生活を豊かにしたりしていくことができる人間の育成が求められている。

  上記の要請から、総合学科においては次のような教育上の特色を持たせることが必要であると考えられる。

1 将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視すること。

  今日の豊かな社会の中で、多くの事柄について選択の幅が広がってきているが、このことは一面において、青少年が将来の生き方を考え決定していくことが先送りされる傾向にある。しかし、このことを消極的にのみとらえるのではなく、自己の在り方生き方をより深く考えていくという積極的な契機としてとらえていく必要がある。

  このため、在学中に自己の進路への自覚を深めることが重要であることから、その動機付けとなるような科目を開設するとともに、生徒の科目選択に対する助言や就職希望者・進学希望者の双方を視野に入れた進路指導などのガイダンス機能を充実する必要がある。

2 生徒の個性を生かした主体的な学習を通して、学ぶことの楽しさや成就感を体験させる学習を可能にすること。

  生徒の能力・適性、興味・関心等に応じた学習を進めることにより、学ぶことの楽しさや成就感を得させながら学習に対する意欲の形成を図っていくことが重要である。

  このため、教育課程の編成に当たっては幅広く選択科目を開設し、生徒の個性を生かした主体的な選択や実践的・体験的な学習を重視し、多様な能力・適正等に対応した柔軟な教育を行うことを可能にする必要がある。



(二) 総合学科において活用される諸制度

  総合学科における教育の特色を発揮させるため、総合学科への入学者選抜に当たっては、多様な能力・適性等を持つ生徒を入学させるため単なる狭義の学力のみならず、文化・スポーツ活動、ボランティア活動等の実績を重視した推薦入学の導入をはじめとする多様な選抜方法を工夫するほか、次のような制度の積極的な活用を図る必要がある。


1 単位制による教育課程編成
  学年による教育課程の枠を設け、学年ごとに課程の修了の認定を行う学年制ではなく、卒業までに所要の単位を修得すれば卒業を認定する単位制により教育課程を編成することを原則とする。また、学期の区分に応じた分割履修や二以上の学年にわたっての分割履修を広く認めるなど、教育課程の弾力化を図り、どの教科・科目をいつ履修するかは原則として生徒の自由な選択に委ねる。


2 学校間連携の推進
  総合学科においては、可能な限り多様な教科・科目を開設する必要があるため、他の高等学校と連携する方策を積極的に活用するものとする。その場合、他校において当該教科・科目の授業を特定の学期又は期間に実施してもらう等の協力を得るなど、必要な措置を講じる。


3 専修学校における学習成果や技能審査の成果の単位認定の活用
  総合学科においては、地域の実情や生徒の進路希望等に応じ、専修学校における履修や技能審査の成果の単位認定の活用に努める。


4 専門学科への転学の配慮
  専門教科・科目の履修を通して特定の分野への関心が高まり、専門的に当該分野を深く学び卒業後はその分野への就職・進学を志望するようになった生徒に対応するため、専門学科への転学が可能になるよう特段の配慮を行う。


5 転・編入学についての積極的な受入れ
  総合学科においては、選択幅の広い教育課程編成を行ったり、学年を超えて履修できる科目を設けたりするなど弾力的な教育課程編成に特色があるので、いったん入学した高等学校になじめない生徒や中途退学をしたものの高等学校に再度就学したい生徒に対し、転・編入学の積極的な受入れを進めることにも配慮していく必要がある。



(三) 総合学科を設置する意義

  総合学科の教育の特色として挙げた事項は、従来の普通科及び専門学科においても積極的に推進すべきものであるが、総合学科を新たに設ける意義は、次のような点に求められるものと考えられる。

1 第一に、既存の学科の枠にとらわれず、所要の条件整備と相まって、先に提言された「全日制課程における学年の区分によらない教育課程の編成・実施」、「学校間連携」、「専修学校における学習成果の単位認定」及び「技能審査の成果の単位認定」を含めた諸制度を大胆に活用するなど、思い切った教育課程の弾力化を容易にすることが期待できることである。

2 第二に、推薦入学をはじめとする多様な選抜方法の工夫や多様な教科・科目の開設に伴い可能となる履修科目の自由な選択を通して、能力・適性等の多面的な角度からの評価が行われることにより、学力を単なる知識の量としてとらえることから生じる、いわゆる偏差値を尺度とする高等学校間の序列意識を打破する契機となることが期待できることである。

3 第三に、総合学科においては、様々な分野の基礎・基本を学習するのに適切な科目が多数開設されるため、地域の人々の要望を踏まえつつ生涯学習機関としての役割を果たすことが期待できることである。

  また、現在、普通科においてはコースや類型の設置、生徒の興味・関心等に沿った科目の開設等、職業学科においては社会の変化や技術の高度化に対応した教育内容の改善、複合的な知識・技術を習得させるような学科の設置、学科の枠を超えた選択制の導入、継続教育の途の拡大等の改革の努力がなされているところであるが、今般創設される総合学科が新しい高等学校教育の在り方を目指して充実した教育を展開することにより、既存の学校や学科におけるこれらの改革への努力をさらに促進し、高等学校教育が全体として、多様な生徒の持つ多様な能力・適性等に対応できるようになっていくことが考えられる。
  このことは、学歴社会の弊害の除去や過度の受験競争の緩和にもつながり、その意味でも総合学科が今後の高等学校教育改革のパイオニア的役割を果たすことが期待される。




3 名称及び位置付け

  総合学科は生徒が科目を選択して行う履修上の区分に応じ普通教育及び専門教育を総合的に行う新しい視点に立った学科であり、普通科、専門学科に並ぶ新たな学科として位置付ける。




4 教育課程の編成

  総合学科の教育課程は、次のような科目によって構成されるが、各学校においてその教育内容・方法等について創意工夫することが望まれる。

1 高等学校必修科目(高等学校学習指導要領によりすべての生徒に履修させることとされている科目)

2 学科の原則履修科目(総合学科の生徒に原則として履修される科目(三科目))

3 総合選択科目(生徒が自己の興味・関心、進路等に基づき選択して履修する科目)

4 自由選択科目(学校において必要に応じ開設される科目)



一 学科の原則履修科目

  総合学科においては、自己の進路への自覚を深めさせるとともに、将来の職業生活の基礎となる知識・技術等を修得させるため、原則としてすべての生徒に履修させる次のような内容の科目として「産業社会と人間」、「情報に関する基礎的科目」及び「課題研究」を開設することが適切である。

  これらの科目は、地域、学校及び生徒の実態等に応じ、既存の学科においても開設することができる。



(一) 産業社会と人間

1 目標
  自己の生き方を探求させるという観点から、自己啓発的な体験学習や討論などを通して、職業の選択決定に必要な能力・態度、将来の職業生活に必要な態度やコミュニケーション能力を養うとともに、自己の充実や生きがいを目指し、生涯にわたって学習に取り組む意欲や態度の育成を図る。
  また、現実の産業社会やその中での自己の在り方生き方について認識させ、豊かな社会を築くために積極的に寄与する意欲や態度の育成を図る。


2 内容

ア 職業と生活
  職業の種類や特徴、職業生活などについて理解するとともに、勤労の意義について考察し、職業人として必要とされる能力・態度、望ましい勤労観、職業観を養うための学習を行うこと。


(ア) 職業の種類とその特徴に関すること。
  職業の種類や特徴、様々な職場で働く人々の生き方について理解するため、各種企業、工場、商店、農家、市場、研究所、医療・社会福祉施設、官公庁、健康増進施設等の見学及びこれらの場における勤労体験学習やボランティア活動を行うこと。

(イ) 職業生活と法律等に関すること。
  希望する職業に就くまでの過程、就職後の職業生活、勤労者に対する法律上の保護等について理解し、将来の職業生活について幅広く考察することができるようにするため、関係諸機関の職員の講話を聴くほか卒業生等との対話を行うこと。

(ウ) 勤労・職業の意義と望ましい勤労観、職業観に関すること。
  勤労・職業の意義や職業人としての規律について考え、望ましい勤労観、職業観を養うことができるようにするため、校内における栽培、加工等についての基礎的な実習、訪問先での勤労体験学習についての発表・討論、広く社会で活躍している職業人を学校に招いたうえでの生徒との対話を行うこと。


イ 我が国の産業の発展と社会の変化

  我が国の科学技術の発達や産業・経済の発展・変化について理解し、それがもたらした情報化、国際化等の社会の変化、人々の暮らしへの影響について考察するための学習を行うこと。

(ア) 科学技術の発達に伴う産業の発展と社会の変化に関すること。
  科学技術の発達や産業社会の発展及びこれらによってもたらされた情報化、国際化等の社会の変化を理解するため、先端的な工場、農場、研究所、医療施設や情報関連企業、新聞社、放送局等の見学を行うとともに、企業人、技術者、ジャーナリスト、海外勤務経験者等による講話を聴くこと。

(イ) 産業の発展と日常生活への影響に関すること
  産業の発展に伴なう日常生活や環境等に対する影響を理解し、これらの問題への取組みや産業と文化とのかかわりに関する調査、調査結果の発表・討論、関係施設等の見学を行うこと。


ウ 進路と自己実現

  自己の能力・適性、興味・関心等と各種職業に求められる資質・能力を踏まえ、自己の将来の生き方や進路について考察すること。

(ア) 職業と自己の適性に関すること。
  各種の職業に必要とされる能力・適性、職業資格等についてのこれまでの学習や適性検査等の活用などをもとにして、職業に対する自己の関心や能力・適性等についての発表・討論を行うこと。

(イ) 自己の適性と進路に関すること。
  ホームルーム活動における進路学習やガイダンスとの関連を図りつつ自己の職業に対する適性など自己理解を深めるとともに、職業を通しての自己実現について今後の学習とのかかわりから考察し、自己の学習計画を立てること。


3 指導計画の作成と内容の取扱い

ア 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。

(ア) 「産業社会と人間」は、総合学科において原則として履修させることとし、学習指導要領上の「その他特に必要な教科に関する科目」(第一章第二款の四)として設ける。また、履修単位数は二単位から四単位を標準とすること。なお、原則として一年次に履修させること。

(イ) 「2 内容」に掲げる事項の順序は、必ずしも指導の順序を示すものではなく、各事項のまとめ方、順序及び重点の置き方に適切な工夫を加えて、効果的な指導を行うこと。また、年間指導計画に定めるところに従い、必要に応じて弾力的に授業時間を配当することができること。

(ウ) 見学、実習、調査研究、意見発表、対話、討論、講話の聴講等の内容及び方法については、地域、学校及び生徒の実態等に対応することができるよう適切に取捨選択すること。

(エ) 各種企業、工場、商店、農家、市場、研究所、医療・社会福祉施設、官公庁、健康増進施設等の見学及びこれらの場における勤労体験学習やボランティア活動を行うに当たっては、生徒に見聞を広めさせるため、地域の実態に応じて可能な限り多くの種類を対象とすること。

(オ) 企業、官公庁等に勤務している人々や地域の有識者を講師とするなど地域の教育力を積極的に活用すること。

(カ) 各活動の実施に当たっては、事前指導において課題を明確にするとともに、レポートの作成、調査結果の発表・討論等により当該活動のまとめを行うこと。


イ 内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

(ア) 教科「公民」の科目及び特別活動との関連を図りつつ、理論的な学習よりも体験的・実践的な学習を重視することとし、必要に応じて適切な教材を活用すること。

(イ) 一年次のホームルーム担任及びこの科目を構成する学習内容と関連の高い教科の免許状を有する教員が互いに分担・協力して、年間指導計画を作成すること。

(ウ) 「2 内容」の(ア)及び(イ)については、郷土の産業や社会とのかかわりについて配慮すること。



4 指導教員及び評価

ア 指導教員
  官公庁への訪問、社会人や卒業生を招いての職業体験談などのように特定の数科に相当しない内容については免許状の教科を問わず指導するものとし、特別な知識・技術を必要とする内容の学習を行う場合には当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有する者が中心となり、複数の教員によるティームティーチングによって指導するものとすること。

イ 評価
  それぞれの学習内容ごとに中心となった教員が学習後のレポートや意見発表等の内容によって評価を行い、学期末に関係教員により全体的な評価を行うものとすること。
  なお、評価に当たっては、知識、技能面のみならずレポートや意見発表等多角的な視点に立って評価を行うこと。また、「生徒が、いかに関心を持ち、意欲的に問題解決に取り組んだか。」という自主性、持続性、協調性などの視点も評価の対象に加えること。その際、自己の生き方を自主的・自律的に探求させ、主体的な学習活動を継続発展させるため、学習日誌等の有効な活用等により学習の各段階で生徒に積極的に自己評価させること。



(二) 情報に関する基礎的科目

1 目標

  社会における情報化の進展及び情報の意義や役割について理解させるとともに、コンピュータとその活用についての基礎的な知識と技術の習得を通して、情報を主体的に活用する能力と態度の育成を図り、情報化社会と人間との望ましいかかわり方について認識させる。


2 内容

  情報に関する基礎的科目についての内容は、地域、学校及び生徒の実態等に応じ、左記のア又はイに掲げた二つの場合が考えられる。

ア 教科「数学」や「理科」等の教科に関する「その他の科目」(学習指導要領第一章第二款の三)又は「その他特に必要な教科に関する科目」(同第二款の四)として設ける科目とする場合。
  なお、学校において「その他特に必要な教科に関する科目」として科目を設ける場合、その内容は例えば次のようなものとすることが考えられること。

(ア) 社会の情報化と人間生活
  情報化社会の特質、日常生活とコンピュータ、社会生活とコンピュータ等

(イ) 職業と生活における情報
  情報産業の広がり、コンピュータ関連職業、情報通信システムによる進路情報の選択等

(ウ) 情報化社会における人間としての在り方生き方
  著作権の保護、情報公開とプライバシー等

(エ) コンピュータの歴史と特徴
  コンピュータの発達、これからのコンピュータ等

(オ) コンピュータの仕組みとソフトウェアの活用
  ハードウェア・ソフトウェアの仕組み、各種基本的応用ソフトの活用等

(カ) コンピュータによる問題解決
  情報の収集・分析・処理、情報の表現等

(キ) プログラムの作成と実行
  フローチャートの作成、プログラムの作成と実行等


イ 高等学校学習指導要領第二款の二に掲げる「情報処理」、「情報技術基礎」、「農業情報処理」、「水産情報処理」、「家庭情報処理」又は「看護情報処理」とする場合。


3 指導計画の作成と内容の取扱い

ア 「情報に関する基礎的科目」は、総合学科において原則として履修させること。また、履修単位数は二単位から四単位を標準とすること。

イ 履修する科目は原則として[cir2 ]のアによることとし、地域、学校及び生徒の実態等に応じ、2のイによることもできること。

ウ 2のアによる場合、例として掲げる事項の順序は、必ずしも指導の順序を示すものではなく、各事項のまとめ方、順序及び重点の置き方に適切な工夫を加えて、効果的な指導を行うこと。

エ 2のイによる場合、「情報処理」においては経営活動と情報処理、「情報技術基礎」においてはコンピュータとその活用、「農業情報処理」、「水産情報処理」、「家庭情報処理」及び「看護情報処理」においては産業社会とコンピュータ、コンピュータの活用等、社会における情報化の進展やコンピュータの役割を理解させるための内容に重点を置くこと。

オ 中学校の「技術・家庭」における情報基礎領域の学習内容を踏まえるとともに、「産業社会と人間」との関連を図ること。

カ 総合選択科目群の科目として情報に関する科目が設けられている場合には、当該科目の履修をもって「情報に関する基礎的科目」を履修したものとすることができること。


4 指導教員及び評価

ア 指導教員
  情報に関する基礎的科目を「その他の科目」又は職業教科・科目として設ける場合には当該教科の免許状を有する者、「その他特に必要な教科に関する科目」として設ける場合には当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有し当該科目を担当するものとして適当な者が指導するものとすること。

イ 評価
  評価に当たってはコンピュータ等の技能面のみに偏らないように留意し、コンピュータ等を活用して問題解決していく能力と態度、情報化社会と人間生活とのかかわりについての理解等幅広い視点から評価すること。



(三) 課題研究

1 目標

  多様な教科・科目の選択履修によって深められた知的好奇心等に基づいて自ら課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して、問題解決能力や自発的、創造的な学習態度を育てるとともに、自己の将来の進路選択を含め人間としての在り方生き方について考察させる。


2 内容

  地域、学校及び生徒の実態等に応じ、職業教科以外の教科に関する「その他の科目」(学習指導要領第一章第二款の三)又は「その他特に必要な教科に関する科目」(同第二款の四)として設け、その内容は例えば次のようなものとすること。

ア 調査、実験、研究
  幅広い分野の中から一定の課題を設定し、調査、実験、研究を通して自己の興味・関心等を深化させるとともに、問題解決能力を育てること。

イ 作品製作
  個人又はグループにより作品の製作を行い、創造的な能力や態度を育てること。

ウ 産業現場等における学習
  自己の興味・関心等を深化させるため、あらかじめ設定した課題に基づいた実際的、体験的な活動を関係の深い企業や関係機関などにおいて行い、その成果をまとめること。


3 指導計画の作成と内容の取扱い

ア 「課題研究」は、総合学科において原則として履修させること。また、履修単位数は二単位から四単位を標準とすること。なお、原則として三年次に履修させること。

イ 生徒の興味・関心、将来の進路希望などに応じて、「[cir2 ] 内容」のアからウまでのうちから個人又はグループで適切な課題を設定し、研究等を行うこと。

ウ 年間指導計画に定めるところに従い、必要に応じて弾力的に授業時間を配当することができること。

エ 調査、実験、研究に当たっては、必要に応じ、適宜コンピュータの活用を図ること。

オ 作品製作を選択する場合には、その成果を生かすため各種コンクール等への積極的な参加が望ましいこと。

カ 産業現場等における学習は、あらかじめ設定した課題に基づき自己の興味・関心等を深化させるために行うものであることを踏まえ、「産業社会と人間」における学習を基礎にし、より発展的な内容のものとすること。


4 指導教員及び評価

ア 指導教員
  「課題研究」を「その他の科目」として設ける場合には当該教科の免許状を有する者、「その他特に必要な教科に関する科目」として設ける場合には、当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有し当該科目を担当するものとして適当な者が指導するものとすること。

イ 評価
  評価に当たっては知識や技能についての目標の現実のみに偏らないように留意し、生徒が自らの力によって課題を見いだし、それを解決する過程の中で形成される問題解決能力、表現力などの能力や探求意欲、粘り強さ等の態度についての評価も重視すること。その際、自己の在り方生き方を主体的・自律的に探求させ、主体的な学習活動を継続発展させるため、学習日誌等の有効な活用等により学習の各段階で生徒に積極的に自己評価させること。



二 総合選択科目

  総合学科においては、生徒の主体的な選択を重視する観点に立ち、多様な選択科目(総合選択科目)を開設する。この際、原則として履修させる科目(「産業社会と人間」、「情報に関する基礎的科目」、「課題研究」)を含む三〇単位以上の専門教科・科目を設けることとする。

  この総合選択科目の開設に当たっては、生徒にある程度のまとまりのある学習を可能にするとともに、生徒自身の進路の方向に沿った科目履修ができるようにするため、体系性や専門性等において相互に関連する普通科目及び専門科目を科目群(総合選択科目群)としてまとめて開設する。

  生徒は、この総合選択科目群を参考にして、自己の興味・関心等に基づき一又は複数の総合選択科目群にわたって履修する科目の選択を行うこととする。

  総合選択科目群は、生徒が科目選択を行っていくうえで履修上の指針であり、生徒が行う選択は基本的には「科目」の選択である点において、「類型」を選択する類型制又は「コース」を選択するコース制とは異なり、また、生徒が特定の総合選択科目群に所属するものではないという点において、小学科制とも異なるものである。

  また、一般の高等学校における類型制(コース制)と比べて、幅広く選択科目を開設し生徒の個性を生かした主体的な学習を重視している点において、いわゆる総合選択制高等学校(小学科における専門教育等を維持しつつ一部その枠を超えた選択を認める方式の高等学校)と共通している。しかし、総合選択制高等学校が普通科又は専門学科として設置されていることから、生徒は基本的には特定の小学科における学習を希望して入学してきている点、また、教員数や施設・設備等の面において多様な専門教科・科目又は普通教科・科目の開設にはおのずから制約があるという点で、総合学科と相違している。



(一) 総合選択科目群の開設及びその科目構成

  学校において総合選択科目群の種類を定めるに当たっては、生徒の多様な興味・関心等に応え幅広い進路選択が可能となるように、学級規模に応じできる限り多くの分野にわたって複数の総合選択科目群を置くこととする。また、総合選択科目群の科目構成を定めるに当たっては、普通科目及び専門科目にわたって多様な教科・科目を総合的に設けることが望ましい。

  なお、生徒が難易度に応じ段階的に科目を履修することができるようにするため、各総合選択科目群に属する科目は、当該総合選択科目群の教育目標に照らし基礎科目と基礎以外の科目に分けて構成することが望ましい。



(二) 総合選択科目群の種類の例

  総合選択科目群の種類としては、例えば、情報系列、伝統技術系列、工業管理系列、流通管理系列、国際協力系列、地域振興系列、海洋資源系列、生物生産系列、福祉サービス系列、芸術系列、生活文化系列、環境科学系列、体育・健康系列等の科目群が考えられるが、その種類及びその科目構成については地域の生徒の実態を考慮しつつ設置者及び学校が定める。


1 情報系列の総合選択科目群(( )内は教科名、以下同じ。)

ア 目標
  コンピュータのハード・ソフトについての基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、ビジネス活動にコンピュータを応用することのできる能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  国語表現(国語)、情報技術基礎(工業)又は情報処理(商業)、流通経済(商業)等

ウ 基礎以外の科目
  プログラミング技術(工業)、ハードウェア技術(工業)、ソフトウェア技術(工業)、文書処理(商業)、簿記(商業)、コンピュータ造形(美術)等


2 伝統技術系列の総合選択科目群

ア 目標
  地域の歴史や文化に対する理解を深めるとともに、伝統的な染織・工芸品産業等地域に根付いた産業に対する理解を深め、地域文化を担うことのできる能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  古典I(国語)、日本史B(地理歴史)、美術II又は工芸II(芸術)、服飾デザイン(家庭)、郷土の歴史と文化(その他)等

ウ 基礎以外の科目
  美術III又は工芸III(芸術)、手芸(家庭)、林産加工(農業)、木材工芸(工業)、染色技術(工業)、デザイン技術(工業)、セラミック工業(工業)、流通経済(商業)等


3 工業管理系列の総合選択科目群

ア 目標
  工場で用いられている機械の基本的な操作を習得させ、工業生産における技術革新の現状を理解し、効率的に工場の管理と運営に当たることのできる能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  物理IA(理科)、工業基礎(工業)、情報技術基礎(工業)、流通経済(商業)等

ウ 基礎以外の科目
  機械工作(工業)、機械設計(工業)、製図(工業)、工業管理技術(工業)、電子基礎(工業)、経営(商業)、マーケティング(商業)、工業簿記(商業)等


4 流通管理系列の総合選択科目群

ア 目標
  商品の流通に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、経済活動についての意義や役割を理解させるとともに、流通活動を円滑に行うための能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  流通経済(商業)、情報処理(商業)、英語一般(英語)等

ウ 基礎以外の科目
  マーケティング(商業)、計算事務(商業)、簿記(商業)、商業法規(商業)、消費経済(家庭)、食品流通(農業)、水産食品流通(水産)等


5 国際協力系列の総合選択科目群

ア 目標
  国際社会、特に開発途上国の現状と問題を認識し、これらの国の発展に積極的に寄与することができる知識・技術を習得させるとともに、国際交流に参加しようとする意欲と態度を育てる。

イ 基礎科目
  世界史B(地理歴史)、日本史A(地理歴史)又は地理A(地理歴史)、オーラルコミュニケーションA・B・Cから一科目(外国語)、農業基礎(農業)又は工業基礎(工業)等

ウ 基礎以外の科目
  公衆衛生(家庭)、国際経済(商業)、農地開発(農業)、機械工作(工業)、英語表現(英語)、外国事情(英語)、フランス語(外国語)、その他の外国語(その他)等


6 地域振興系列の総合選択科目群

ア 目標
  地域の歴史や文化に対する理解を深めるとともに、観光など地域の開発や活性化に資する知識・技術を習得し、地域の発展に寄与しようとする意欲と態度を育てる。

イ 基礎科目
  国語表現(国語)、日本史A(地理歴史)又は地理A(地理歴史)、オーラルコミュニケーションA・B・Cから一科目(外国語)、流通経済(商業)、郷土の歴史と文化(その他の科目)等

ウ 基礎以外の科目
  音楽II又は美術II(芸術)、造園計画(農業)、環境工学(工業)、英語実務(商業)、野外活動(体育)、観光一般(その他)等


7 海洋資源系列の総合選択科目群

ア 目標
  海洋における生産や環境などについての基礎的・基本的な知識と技術を習得させ海洋の意義・役割を認識させることを通して、海洋資源の保護の重要性に対する理解を深める。

イ 基礎科目
  地理B(地理歴史)、生物IA(理科)、地学IA(理科)、水産一般(水産)、水産情報処理(水産)

ウ 基礎以外の科目
  食品(家庭)、環境工学(工業)、水理(工業)、操船(水産)、水産生物(水産)、栽培漁業(水産)、外国事情(英語)、海洋スポーツ(その他)等


8 生物生産系列の総合選択科目群

ア 目標
  農水産物などの生産及び生産物の加工や流通に必要な基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、食品産業についての意義や役割を理解し、食生活の改善に努める能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  化学IA又は生物IA(理科)、農業基礎(農業)、食品加工(農業)、流通経済(商業)等

ウ 基礎以外の科目
  化学IB又は生物IB(理科)、食物(家庭)、食品製造(農業)、食品流通(農業)、応用微生物(農業)、林産加工(農業)、環境工学(工業)、水産食品製造(水産)等


9 福祉サービス系列の総合選択科目群

ア 目標
  福祉サービスに必要な基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、児童の発育や高齢者の介護・福祉や関連する産業についての理解を深め、健康な生活の実現に努める能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  生物IA(理科)、家庭看護・福祉(家庭)、看護基礎医学(看護)、家庭情報処理(家庭)又は看護情報処理(看護)等

ウ 基礎以外の科目
  インテリア計画(工業)、流通経済(商業)、児童福祉(家庭)、保育(家庭)、基礎看護(看護)、老人介護(その他)、社会福祉制度(その他)等


10 芸術系列の総合選択科目群

ア 目標
  音楽や武術・デザインなどの諸活動を通して、創造的な表現の能力や芸術の鑑賞の能力を伸ばすとともに、美に対する豊かな感性と生涯にわたって芸術を愛好する心情を育てる。

イ 基礎科目
  現代文(国語)、芸術II(音楽、美術、工芸、書道)から二科目(芸術)等

ウ 基礎以外の科目
  芸術III(音楽、美術、工芸、書道)から二科目(芸術)、デザイン技術(工業)、商業デザイン(商業)、服飾デザイン(家庭)、映像(美術)、コンピュータ造形(美術)等


11 生活文化系列の総合選択科目群

ア 目標
  健康で快適な家庭生活の在り方について科学的・文化的・社会的視野から見つめ直し、日常生活の改善や生活関連産業への理解を深めて、豊かな生活文化の創造に取り組む能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  日本史A(地理歴史)、芸術II(音楽、美術、工芸、書道)から一科目(芸術)、流通経済(商業)、家庭情報処理(家庭)、消費経済(家庭)、看護基礎医学(看護)等

ウ 基礎以外の科目
  現代文(国語)、古典I(国語)、生活園芸(農業)、インテリア計画(工業)、水産食品衛生(水産)、被服(家庭)、食物(家庭)、住居(家庭)等


12 環境科学系列の総合選択科目群

ア 目標
  環境の保全に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、環境問題の正しい理解を得させるとともに、よりよい環境の創造に取り組む能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  地理B(地理歴史)、化学IA(理科)、地学IA(理科)、環境工学(工業)等

ウ 基礎以外の科目
  生物IA(理科)、地学IB(理科)、栽培環境(農業)、育林(農業)、環境保全(工業)、土木計画(工業)、水産生物(水産)、生態学概論(その他)等


13 体育・健康系列の総合選択科目群

ア 目標
  運動の合理的な実践や健康についての理解を通して、健康の増進や体力の向上を図り、生涯スポーツの普及発展に寄与するとともに、健康な生活を送る能力と態度を育てる。

イ 基礎科目
  看護基礎医学(看護)、体育理論(体育)、体操(体育)、健康科学(その他)等

ウ 基礎以外の科目
  栄養(家庭)、公衆衛生(家庭)、スポーツI・II・III又はダンス(体育)から二科目、野外活動(体育)、健康管理(その他)、スポーツ心理(その他)等


(備考) ( )中「その他」とは、その他の科目又はその他特に必要な教科に関する科目



三 自由選択科目

  総合選択科目群としてまとめて開設する科目のほか、例えば、発展的な内容の科目や開設されている総合選択科目群の性格とは異なる基礎的な科目等を自由選択科目として位置付け、それらの科目を必要に応じ開設することができるものとする。




5 望まれる授業形態、履修方法等

(一) 表現力、コミュニケーション能力及び実践的能力等の育成を図るため、個別学習、グループ学習等の多様で弾力的な授業形態とすることが望ましい。

(二) 選択の幅を拡大し社会の第一線で活躍する人材に接する機会を確保するため、非常勤の社会人講師による授業を積極的に実施する。

(三) 教育課程の編成・実施を円滑に行うため、特に必要がある場合には、特定の学期又は期間に集中的に授業を実施するなど弾力的な履修方法等を工夫する。

(四) 総合学科の教育課程は単位制によって編成することを原則とするため、基本的には生徒は自己の興味・関心等に基づき自由に教科・科目を選択することとなり、ホームルームと学習集団が一致しなくなるが、そのことにより生徒指導に支障が生じないよう配慮するとともに、異学年交流の実施などこのことによるメリットを積極的にホームルーム活動に活用することが望ましい。




6 教育条件等

(一) 総合学科においては、生徒の幅広い選択やガイダンス等を重視していることにかんがみ、教職員定数の面で特段の配慮をする必要がある。

(二) 総合学科においては、職業教育に関する教科・科目を開設したり、生徒の自発的な学習意欲を高めるため、授業形態に工夫を加える必要があること等にかんがみ、施設・設備の整備のために指針を策定するなど所要の配慮をする必要がある。

(三) 各教科・科目、特に新しく設けられる「産業社会と人間」については、総合学科の目的を踏まえた適切な指導を実現することが重要であり、指導方法等の研究や教員の資質向上を図るための研修を充実する必要がある。

(四) 総合学科の特色を発揮するためには、当該高等学校の教職員は、知識・技術の伝達という発想だけにとどまらず、大学等への進学や就職といった将来の進路希望を踏まえた生徒の学習上の要求を的確に把握しそれに適切に応えるとともに、新しい制度を創造するという意識の改革を図ることが重要である。

(五) 総合学科の設置に当たっては、中学校関係者や生徒、保護者が総合学科の趣旨や特色について理解を得るよう努めることを含め、設置者において教育課程の編成についての研究、教職員の配置、施設・設備の整備等について十分な計画を立て着実に整備していく必要がある。

(六) 現在大学等においては、その教育内容の個性化・多様化を図るとともに、大学入試についても多様な入学者選抜方法の導入が推進されつつあるが、これらのことと相まって大学等への進学に当たり総合学科における多様な能力・適性等に対応した柔軟な教育が積極的に評価されるよう、大学等に理解を求めていくことが重要である。

(七) 産業構造の変化等に伴い従来には見られなかった新たな職業分野が生じ複合的な知識・技術が求められるようになってきたこと等を踏まえ、企業等への就職に当たり総合学科における多様な能力・適性等に対応した柔軟な教育が積極的に評価されるよう、企業等に理解を求めていくことが重要である。

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