京都府教育委員会からの御意見

所属・現職等

京都府教育委員会 教育委員長 大橋 通夫  氏
京都府教育委員会 教育委員   冷泉 貴実子 氏(委員長職務代理者)
京都府教育委員会 教育委員   畑  正高  氏   
京都府教育委員会 教育委員   谷口 知弘  氏
京都府教育委員会 教育委員   平塚 靖規  氏

御意見

<項目>  学力向上等に向けた取組について

<現状と課題>

  前回改訂の学習指導要領においては、児童生徒に基礎・基本を確実に身につけさせるとともに、完全学校週5日制が生み出す「ゆとり」のもとで、学校・家庭・地域社会が連携して子どもたちに社会体験や自然体験など様々な体験をさせ、自ら学び自ら考える力など「生きる力」の育成を目指すこととされた。そして、新たに「総合的な学習の時間」が設けられる中、それぞれの学校では工夫して教育実践を推進してきたところである。
 しかしながら、「生きる力」の意味や必要性について十分な共通理解がなされなかったり、家庭や地域の教育力が低下したことを踏まえた対応が十分ではなかったこと等、学習指導要領の理念を実現する手立てには課題があったと考えられる。
 PISA調査の結果を受けて、知識や技能の習得に加え、それらを活用する力が社会的にも大きな注目を集める中、東京都教育委員会では、公立小・中学校が土曜日を活用して教育課程に位置づけられた授業を実施する場合においての、配慮すべき基本的考え方等をまとめられるという新たな動きも出ている。
 今回の学習指導要領改訂を受け、「確かな学力」「生きる力」を豊かにはぐくむための学習内容や指導法の工夫と併せて、学校週5日制についてもタブー視せずに議論することが不可欠である。

<解決策・今後の方向性>

  京都府教育委員会においては、平成23年度に、年間授業時数の確保や充実した体験活動の取組を進めるための土曜日の活用について、教育活動や法制度に関する課題整理を行う検討委員会を設置し、調査研究を行うこととしている。
 学校週5日制の扱いについては、財政とも関わる根本的な問題であるので、国としても、これまでの成果と課題を検証し、今後の在り方についてしっかりと議論・検討されることを望むところである。

<項目>  就職支援・キャリア教育について

<現状と課題>

 リーマン・ショック以降の経済・雇用情勢の悪化により、高卒求人が大幅に減少し、学校や生徒の自助努力だけでは、就職先の確保が極めて厳しい状況が続いている。この傾向は、特に都市域以外にある高校で顕著となっていることから、地域の特性を踏まえた就職支援の在り方が問われている。
 一方で、中小企業の中には求人を出しても応募が少なく、人が集まらないという声も多くあることから、求人側の企業と就職を希望する高校生のマッチングを適切に行うための環境づくりの積極的な支援が求められている。
 若年者のフリーターやニート化を防ぎ、ロストジェネレーションを生み出さぬよう、未内定者に対する就職支援策のさらなる充実と合わせて、大学等の進学者も含めた職業観・勤労観の育成をはじめとするキャリア教育を進める必要がある。

<解決策・今後の方向性>

  現在の経済不況下において、関係省庁における密接な連携により、国全体での雇用に係る構造改革が推進され、派遣法に基づく企業派遣なども含めて雇用形態の見直し等による新たな雇用創出に向けた取組の充実が求められる。
 加えて、就職未内定のまま卒業した者に職業訓練の機会を与えることやトライアル雇用奨励金などの施策による支援は、フリーターやニート防止に効果的であると考えられるため、更なる就職促進に向けたシステム化やソフト面での充実が望まれる。
 昨年度より、全府立高校を対象に緊急雇用創出事業を活用した進路指導支援員を配置しているが、緊急雇用創出事業であることから、任用期間等の制約があったり、財源である基金も来年度限りの措置となっていることから、今後とも継続して、進路指導担当教員に対する負担軽減と進路指導(特に就職指導)のより一層の充実といった観点からは、更なる省庁間の連携が図られ、新たな人員配置等のための財源措置を早期に実現されたい。

<項目>  高等学校における特別支援教育の充実について

<現状と課題>

  府立高校における特別な教育的支援を必要とする生徒の割合は、平成14年に文部科学省が実施した全国調査(高校進学者の約2%が支援を要し、全日制に比し定時制 ・通信制では相対的に高い)の結果と概ね同様の傾向であると考えられる。
 府立高校においては、小・中学校と比較して、生徒側の実態が課程、学科等で大きく異なることと、教員側の理解・認識の差も大きく、さらに、高校入試、単位認定、大学入試や就労支援などについて、多くの課題が見られ、義務教育段階の特別支援教育への対応と比較すると、明らかに体制整備が遅れている状況である。
 府教育委員会としても、文部科学省のモデル事業における成果の普及、特別支援学校をはじめ関係機関との連携や教員研修など、体制整備の充実に向けて取り組んでいるが、各高校とも試行錯誤しながらの手探りの状態で、一部の教員等の担当業務となるなど、学校組織としての特別支援教育への対応には至っていない。さらに、対象生徒について、小・中学校では問題が表面化せず、高校入学後に初めて実態が明らかになるケースもあり、幼少期からこれまで特別な教育的支援を受けていなかった生徒・保護者からは、理解や協力が得られにくく、対応に苦慮する状況が生じている。

<解決策・今後の方向性>

  府立高校における特別支援教育については、これまでの高校教育の教育水準の維持向上を図りつつ、障害のある生徒はもとより、その周りにいる生徒も含め全ての生徒にとって必要な教育であることから、特別支援教育を取り巻く状況の変化等を踏まえながら、国において更なる支援の充実を図られることを願う。具体的には、各府立高校が校長のリーダーシップのもと全校体制で取り組めるよう、管理職をはじめ各教員の特別支援教育に対する理解と認識の深化に向けた研修会の実施や大学の教員養成課程における特別支援教育の必修化など、早期実現に向けた対応を図られたい。
 さらに、特別支援教育コーディネーターの授業時数の軽減や加配教員の配置などの教員定数の増、専門性のある支援員の配置が可能となる人的措置に向けた財政措置の拡充。また、高校入学者選抜制度における特別な配慮や支援、幼稚園から高校卒業まで一貫した教育的支援ができる教育システムの導入等を早期に実現願いたい。

<項目>  生徒指導(高等学校)について

<現状と課題>

 府立高校では、生徒の生活実態に応じた集団指導を軸に、状況に応じて個別指導を実施している。
 平成21年における京都府下の少年検挙・補導状況(1000人当たりにおける刑法犯)は全国ワースト1位、平成22年はワースト3位と憂慮すべき状況である。
 一方で、府立高校における問題行動による指導件数はここ数年来減少し、ほぼ全国平均並みで底打ち感があるものの、集団での問題行動、逮捕事象については、顕著であり、警察をはじめ関係機関との連携により指導を強めている。
 特に、問題行動のうち暴力行為、いじめについては「絶対に許されない行為である」として、指導の徹底を図っている。
 また、不登校については、カウンセリング等による個別指導でも解消しないケースが見受けられたり、学業不振に起因するケースも多く、義務教育段階からの基礎学力の充実や学ぶ意欲の醸成が不可欠である。

<解決策・今後の方向性>

  規範意識の醸成については、学校だけでなく家庭、地域社会及び警察等関係機関との連携を基軸として「社会総がかり」で幼少期から一貫して取り組むグランドデザインが必要であり、そのために国としての仕組み作りとそれに伴う財政措置等が必須条件である。
 府立高校においては、教育活動全体を通じて行う道徳教育や特別活動における体験的な活動等により、道徳的実践力や思いやりの心、社会への適応性の育成を図り、継続して規範意識の醸成に努めることが重要である。また、生徒に自己存在感を与え、共感的な人間関係を構築する場面を体験するよう、日々の教育活動を工夫する必要があると考える。
 いじめの問題は教員側からの観察だけではなかなか把握しにくい事象であることを踏まえ、日頃から生徒の発するサインを見逃さないよう、組織的な早期発見・早期対応に努めることが必要であり、そのため、各府立高校において生徒指導に特化した教員の配置が望まれる。
 不登校の未然防止や解決については、教育相談機能の充実を図る観点から、一人一人の状況に応じた個別計画に基づく指導や中学校との連携強化、スクールカウンセラーの一層の活用など取組の充実を図ることが必須である。特に、教育相談機能の充実に繋がり、教員の資質向上の観点からも効果的なスクールカウンセラーの増員に向けた財政措置の一層の充実が必要である。

<項目>  高等学校生徒への修学支援の充実について

<現状と課題>

 高等学校生徒への修学支援事業は、昨年10月末現在で累計約100億円を貸与しており、今後、10年間を想定すると、約250億円の貸与総額となる一方、回収返還額は、約60億円程度が見込まれる。なお、平成21年度において、初めて貸与人数が5000人を超えており、特に、平成21年秋以降の不況の進行も伴い、修学資金の需要は高まっている。
 また、平成20年度文部科学省の「子どもの学習費調査」によると公立高校(全日制)では、授業料以外に約24万円の経費がかかるなど、なおかつ、授業料以外の保護者負担が残っている。なお、これまで経済的に低所得者層として授業料減免の対象であった生徒(平成21年度において、全体生徒に占める減免割合:16.1%)については、既に授業料が免除されていたことから、実質、授業料無償化の恩恵を受けているとは言えず、今後とも低所得者世帯の高校生等への更なる支援が求められている。
 また、修学資金の貸与対象となっている生活保護基準1.5倍以下生徒のうち、低所得世帯(1.2倍以下)が約9割となっていることから、今後とも低所得層にシフトした修学支援のより一層の拡充が必要である。
 加えて、修学資金の返還状況については、昨年末時点で、要返還額の5割程度の返還で、経年で約2億7千万の未収額となっており、件数・要返還額とも増加の一途をたどっている。今後とも、一定の収入率を確保したとしても、現状から推察すると未納者数・未納金額の増加傾向に歯止めがかかることは、極めて困難である。

<解決策・今後の方向性>

 貸付・回収に要する人件費や手間等の労力を考えると、返還することを要しない給付型奨学金制度(若しくは、新たな減免制度)など、教育格差を生まない施策の創設が必要。
 また、貸与額や未納額の増加を考慮すると、将来的な財政負担への懸念とともに、修学支援制度を堅持・拡充させるためにも、国から府県への交付金の増額と併せて、運用面で返還金回収の厳格化、貸与基準の見直し等の検討が必要。
 具体的には、現行の修学支援事業の実態にあった国交付金の大幅な増額を求めるほか、貸付も民間に任せて、回収業務において、ノウハウのあるプロ(行政での対応には限界がある。)が行う。一方で、審査基準を厳しくして給付に切り替え(基準を下げる。)、貸付も民間(プロ)に任せるなどの方策の検討が必要。

所属・現職等

京都府教育委員会 教育委員長(学校法人成光学園ひかり幼稚園理事長・園長) 大橋 通夫 氏

<項目>  学力向上等に向けた取組の充実について

<課題>

  • 高校教育は、基礎・基本の学力を身につけさせる責務、個々の能力、適性、興味・関心、進路希望等に応じて学習に取り組む力を育成する責務、社会人として自立でき、国際社会の中で活躍できる人材を育成する責務を担っている。
  • 個々の生徒の能力、適性、興味・関心、進路希望等に応じて幅広い選択肢のある、学校、学科(コース)の設定が必要。
  •  「ゆとり教育」と銘打つ学校完全週5日制は、教員の年間労働時間2千時間以内とする外国からの圧力を受けた労働行政の中から生まれたもの。
      ・・・学力低下を招いた一因。
  • 学習塾に頼ることなく基礎・基本の学力が身につく取組が必要。
  • 教員の弛まぬ教科指導力向上努力が必要。

<解決策・今後の方向性>

 ○ 授業時間の確保:土曜日の活用、長期休業日(夏休み)の活用。 
    朝学習、補習授業。          ・・・教員配置によって可能。
 ○ 少人数授業、習熟度別授業。 実験・実習、フィールド授業。
    特別講師(社会人)の体験談授業。
 ○ 中学校との連携強化:スムーズな接続、高校前段階での課題解決
 ○ 学習意欲の向上
 ○ 読解力、国語力の強化・・・読書活動(偉人伝、文学書、漢文、古文)
 ○ 英会話によるディベート力の涵養、海外でのホームステイ体験、日本の文化の理解

所属・現職等

京都府教育委員会 教育委員(財団法人冷泉家時雨亭文庫常務理事) 冷泉 貴実子 氏

 <項目>  今後の高校教育の在り方に関する意見

  少子化の中で、エリート教育は、結局のところ淘汰された私学が担い、公立高校は底上げの教育を担うことになると思われる。殊に京都のような私学が多い都会では、その傾向は著しくなっていくと考える。
 近年目立つ、不登校や引きこもりは、社会の大問題である。人口が減少していく中で、社会生活が出来る人間を高校の中で育てていくのは、今日の課題である。
 そのための特別のシステムやプログラムを持った高校の整備が必要と考える。現在も定時制や通信制があるが、そもそも設置された目標が異なる。より現実に則した高校の設置が急務であると考える。
 両親の就労により、しつけ教育、食事の提供などのできない家庭が増えている。給食、寮などのある高校を考えていきたい。

所属・現職等

京都府教育委員会 教育委員(株式会社松栄堂代表取締役) 畑 正高 氏

<項目>  21世紀の国際人を考える

<課題> 

 昨今の日本社会において、海外を目指す若者が減少しているという。ダイナミックに変貌を続ける世界情勢の中で、わが国の将来を考えると、青年期により多くの海外経験を積んで、世界を股に掛けて活躍のできる人材に育ってほしい。海外への旅に挑戦し異文化との遭遇の中で自己の発見に目覚め、より大きな視野を養い自己啓発に励むことは、真の国際人を養成する上で欠かせない。
  青年の多くが渡航を夢見ていた40年昔、そのほとんどは米国を意識していた。当時、渡航経験とは即ち渡米を意味するほどだった。その先に欧州もあり、とにかく渡航は憧れだった。
  アジア諸国の台頭が目覚しい今日、世界では多様な価値を共有することが求められている。多様な文化を互いに尊重しあうことが重要となっている。情報化の進展に伴い物理的な距離を越えて世界は実に小さくなり流動化も激しい。そのような中に通用し、より深い洞察力を持ちより強い指導力を発揮しうる人材には、従来考えられてきた国際人とは比較にならないほどの大きさが求められる。
  わが国におけるこれからの国際人教育は、名実ともに結果の伴うものでなければならず、工夫と責任の伴う挑戦が必要となっている。

<解決策・今後の方向性> 

 国際人として通用するためには自己の人格形成が不可欠。アイデンティティーの確立のためには、歴史・文化教育は欠かせない。過去に踏み込むことで、未来を見る視座が固まると考える。自己を語れることがたいへん重要となる。
 過去半世紀以上にわたって欧米の価値を規範と考えてきたわが国は、今一度、世界には多様な価値がひしめいていることを一考する必要があろう。高校生による国際文化使節を組織し、わが国の多岐に渡る文化の数々を、多様な海外に紹介する機会を数多く持たせることが、異文化圏における刺激的な自己発見の始まりになるであろう。単に見聞を広げるための従来型「海外修学旅行」などは、既に過去のものにすべきと考える。
 私自身、イスタンブールを訪問し大きな発見をした。彼の地に立ってみると、地球が全く違ったものに見えた。トルコ語は、日本語と言語学的に近似しており日本語教育も熱心だ。欧米やアジアの国々への訪問の機会はもちろん重要だ。しかし、イスラム文化圏でありながら政教分離を成し遂げ近代化の道を邁進するトルコのような国にこそ、わが国の若者には将来に対して学ぶべきものがあると感じる。歴史を持つ意味を再発見し、多民族の間に生きる知恵と気概こそ真にわが国の将来を担う世代に身をもって体験し学んでほしいものと願っている。

所属・現職等

京都府教育委員会 教育委員(同志社大学教員) 谷口 知弘 氏

<項目> 高校教育について

<課題>

 先行きの見えない経済、混沌とした政治。子どもたちが将来に希望を持ちにくい時代であると思う。子どもたちを見守り育む家庭や地域では経済格差や価値観の多様化、人間関係の希薄化などから教育力に差が生じている。または、全般的な教育力の低下傾向にあるのではと懸念する。
 このような状況にあって、ニートや引きこもり、不登校や非行など多様化あるいは増加する問題に対し、その解決を公教育に求める声は大きくなる一方であるが、経済的にも質的にも、充分応えられる状況にないのが現実ではないだろうか。

<解決策・今後の方向性>

 まずは、子どもたちが未来に希望を持てる社会。子どもを生み育てたいと若者が希望を持てる社会であってほしいと願う。そのために我々大人達が努力することはもちろんのこと、100年先の国づくりを見通した政治の舵取りが今求められるが、現状は光を見いだしにくい状況にある。
 このような現状にあって、高校期における子どもたちには、社会人として自立するための基礎的学力とライフスキルを身につけ、社会に出て働くことへの意欲を育てる教育が必要であり、特に公立の高校教育には求められていると考える。大学へ進学するための学力を身につけるだけではなく、就職・進学を含め社会で経済的にも精神的にも自立して生活するために必要な基礎的な知識・技能・態度を習得する教育である。子どもから社会人へ移行するための準備やトレーニングをする時期が高校の期間であったならば、就職のみならず進学した場合にもその先の高等教育、職業教育での成果はより大きく効果的なものになると推察する。
 これらの実現に向けては、家庭・地域・学校の連携協力に加え、大学、企業やNPOなど民間の組織とネットワークを形成し協働した活動が欠かせないだろう。また、教育委員会を含め教職員には、急速に変化する社会を見つめ問題を発見し解決する主体的・自立的な問題解決能力を身につけるとともに、教育関係者以外の多様な人々と連携・協力するための幅広い視野とコミュニケーション力、マネジメント力が求められる。

所属・現職等

京都府教育委員会 教育委員(歯科医師) 平塚 靖規 氏

<項目> 高校教育における生徒指導、学力向上等に向けた取組について

<課題>

 身近な例で恐縮ですが、私が会長を勤める京都府歯科医師会では、歯科医師従事者(歯科衛生士、技工士)を養成する専門学校(京都歯科医療技術専門学校)を経営・運営しており、私も平成19・20年度に学校長を兼務しました。
 推薦入試も行い、高校の成績平均3以上の学生に入学していただいておりますが、近年、専門教育を行う前提となる基礎学力(問題を把握する国語力/分数や%、小数点等を理解する基礎数学)が極めて不十分なため、専門カリキュラムをこなせない学生が増え、苦慮しているとの報告を現場教員からよく受けます。現場教員は専門カリキュラム以前の分数等を理解することから始めるのです。
 そのようなことを聞く度ごとに、高校での指導力が求められていると痛感しています。

<解決策・今後の方向性>

 入学時点での学力を把握するため、個別相談等に応じた上で、早期に基礎学力の再教育を施す機会が必要だと思います。

所属・現職等

京都府教育委員会 教育長 田原 博明 氏

<項目>  高校改革について

<課題>

 社会の変化・進展とともに、子どもの状況には多くの変化や多様化が見られる。
 具体的には、学力下位層の増加(PISA調査による)、意欲・興味の多様化、特別な支援を要する児童生徒(不登校経験、発達障害、外国籍等)の増加等である。
 また、保護者には、子どもや学校への期待や要求の多様化が見られるとともに、取り巻く環境の変化による保護者自身の課題の深刻化も見られる。
 一方で、少子化・高齢化などによる子どもの生育歴や教育環境の変化により、教育活動に困難な状況が生まれてきている。
 さらに、地方の過疎化、都市への人口集中等も課題を多様化・深刻化させる大きな要因になっている。塾などの民間教育機関や大学入試制度も高校教育の推進に大きな影響を与えている。
 こういった状況を踏まえ、子どもや保護者のニーズや実態に対応するための高校改革が必要である。

<解決策・今後の方向性>

1 生徒・保護者の視点・ニーズで選べる多様な学校づくり

  •  学力・意欲・興味等、多様化する生徒・保護者に対応できる多様な学校を作り、選択肢を増やすことが必要である。
  •  様々な課題や困難な状況のある生徒などを受け入れ、柔軟に教育できる学校や教育システムを作ることが求められる。
      →(1)全日制・定時制・通信制の枠を取り払い、自由な教育課程が編成できる高校
       (2)必履修科目・標準単位数の見直しによる自由な教育課程の編成
       (3)土曜日の授業実施
       (4)学び直しができる高校の設置
       (5)都道府県を越えて受け入れることが可能な高校制度
       (6)姉妹校・協力校などによる単位認定の互換制度

2 入学者選抜制度の改善

  •  希望する高校を主体的に選択できる入学者選抜制度が必要である。
  •  セーフティネットの設定や学び直しができるシステムも必要である。
  •  シンプルでわかりやすい制度であることが重要である。
      →(1)(上記1(4)に関わって)学び直しを可能にする入学選抜制度
       (2)(上記1(5)に関わって)都道府県の枠を越えて受験可能な入学選抜制度

3 民間教育機関との共存

  •  生徒・保護者の期待に応えるために、本来高校が持つ機能を十分に発揮できる高校づくりが求められる。そのため、教育内容・教育施設の充実、教員の質の向上などが必要である。
    →(1)塾・予備校講師の活用や教員の塾や予備校での研修

4 大学等との連携

  •  大学教員による高校での講義や大学での高校生対象講座だけでなく、多様な高大連携の在り方を考える必要がある。
    →(1)単位認定の互換制度(高大連携事業参加者に対する大学入学後の単位認定、
        大学の公開講座等への参加の単位認定、
        大学入学後の基礎学力補充のための講座の高校での開講と単位認定)
      (2)教員免許取得や教員免許更新における高校等の活用
      (3)高校・大学・企業等の相互活用による共同研究等の実施

5 大学入試制度の検討

  •  高校教育の推進にとって大学入試が大きな影響を与えている。大学入試センターテストや高大接続テスト(仮称)の在り方を含めて検討する必要がある。
    →(1)高校卒業資格と大学入学資格の関係の見直し 

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --