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埼玉県教育委員会からの御意見

所属・現職等

埼玉県教育委員会 教育委員長(社団法人大宮法人会会長) 樋爪 龍太郎 氏

御意見

1.今日の高校教育が抱える問題点

 問題点は多岐にわたるが、ここでは「年齢相応の成熟がみられない生徒が多い」点を指摘したい。
 第1に、経済統計で言う「生産年齢」に達しているにもかかわらず、自ら働いて自立した生活を営むことへの展望、意欲に乏しい生徒が多い。将来どのような仕事について、自らの生活や社会への貢献を実現したいか、を考えることなく、漫然と親や教師の勧めにしたがって大学への進学や就職を選ぶ傾向が否定できない。このことが、高校・大学での学びを貧しいものにし、また就職後の早期離職の原因にもなっている。
 第2に、欲望に任せて他を省みず、ほしいままの行動をとることが、新しい生き方とか価値観の多様化とかと勘違いしている生徒が少なくない。規範を守り(欲望をコントロールし)、他を思いやる気持ちを持つことが、社会で自立していくために欠くことができないことを理解しなければならない(この点は高校生に限らず、社会一般に再認識すべきだが)。この点の理解が進めば、非行、暴力、ひきこもりなどの問題もかなり減っていくであろう。
 第3に、競争に耐え、困難に挑戦していくたくましさに乏しい生徒が増えている。グローバル経済のなかで他国の若者との競争は激しくなる一方であり、環境・エネルギー問題など困難な課題が山積しているなかで、高校生や大学生にたくましさが切望されるが、現状は特に男子に気力の乏しい生徒が増えている。

2.その解決策

 上記の問題点は、背景に経済社会の近代化がほぼ達成され、いわゆる「坂の上の雲」が見出せなくなっている日本の現状を反映したものであるため、高校教育だけで解決できるわけではない。広く社会全体で取り組んでいかなければならないが、少なくとも以下のような点で高校教育の改善が期待される。
 第1は、高校教師 は生徒の「多様な価値観」におもねったり、振り回されるのではなく、自分の考えなり価値観なりを、自信を持って打ち出すべきであり、生徒もそれを期待しているのではないか。一番いけないのは物分りよく、生徒に嫌われないことのみを考えて、主体性を失った教師であろう。
 第2に、豊かな自然に接したり、優れた人物に直接出会う機会を作り、発展途上国や新興国の青年たちが何を考え、どんな努力をしているかを知るチャンスを増やすなど、自分の周囲の狭い社会に閉じこもって安穏としないよう生徒を導く必要がある。
 第3は、先端技術の現状や展望を教えることによって、環境・エネルギー問題などの解決可能性を示唆し、将来に対する無用な不安感を取り除くべきである。
 埼玉県では、こうした取り組みを始めており、今後とも充実を図って参りたい。

所属・現職等

埼玉県教育委員会 教育委員(三州製菓株式会社代表取締役社長) 斉之平 伸一 氏

御意見

1.問題点

 OECDの2009年PISAによると、上海、シンガポール、香港がすべての分野で日本よりも高いポイントをとっている。日本は、現在、特許出願件数において、世界で2番目の位置にあるが、PISAの結果から、将来は、地位が低下する懸念がある。そのことは、自動車、電機など日本の国際競争力が、低下することを意味している。
 日本が、狭い国土、乏しい資源の中で、今まで成長・繁栄できたのは、教育を重視し、知識労働者を育成したからである。
 また、厳しい競争に晒されているグローバル企業は、高い知的能力、英語力を身に付けた優秀な人材を求めており、日本人の能力が停滞すると、外国人の雇用を増やすことになる。これらは、産業の空洞化、雇用の空洞化、所得水準の低下をもたらす。

2.その解決策

 上海、シンガポール、香港など、高いポイントを取った諸国の教育制度を調査し、日本の教育を国際的な視点から、エビデンスに基づき改革するプロジェクトチームを、国、県で編成すべきである。
 現在、行政の予算は厳しく、新たな事業に予算を割けないかもしれない。しかし、インターネット、資料等で調査するのと、実際に訪問するのでは、大きな実情把握に差がでる。他国の良い点を、ベンチマークし、日本の実情に合わせ、修正して導入すべきと考えている。
 私は、昨年11月、12月に上海を訪問したが、受験競争は熾烈であり、夜9時、10時まで、勉強することは、当たり前となっていた。また、英語については、高校の段階で、読む、書く、話すことが自由に出来るほど進んでおり、第2外国語として、フランス語、ドイツ語、日本語等を学習していた。
 また、弊社に研修に来日した中国人は、他国と比べて、平均的に知的能力が高く、英語、日本語を自由に喋れた。
 将来、グローバル企業が増え、多民族の社員が、共同して仕事をする状況になると、共通の言語として、英語が社内共通語になる企業が増加する。そのためにも、英語で仕事のできる人材を増やす教育の改革が望まれている。
 海外で通用する英語力、高い学力、人格を備えた人材を育成する「グローバル人材育成クラス・指定校」を設置し、世界で活躍するトップ・リーダーを目指す人材を多数輩出させなければ、日本はグローバル時代に遅れをとる。
 他国の教育制度を常に研究・調査し、国家間の競争を視野に入れた、高校教育行政の改革を推進すべきと考えている。

所属・現職等

埼玉県教育委員会 教育委員(主婦) 清水 松代 氏

御意見

 社会で求められる資質の一つにコミュニケーション能力がある。社会は人と人との関わりで成り立っている。企業内でもチームワークで仕事に当たることが多い。
 昨年度の大学生の就職では、「家族と同居」の学生を「一人暮らし」の学生より多くの企業が採用したというデータもある。理由は、前者の方がコミュニケーション能力は高いというものだった。
 コミュニケーション能力は、社会参加を間近に控えた高校時代に磨くべき能力の一つと考える。高校までの段階では、このコミュニケーションの基礎を身につける必要がある。
 現代は、核家族世帯の増加、下校後の自由時間の減少による「外界との触れ合い」や「群れて遊ぶこと」が困難になるなど、幼少期からの子どもの生活環境が変化してきている。そのため、「集団の中の一員」から「自分のみを見つめた一人」へと、自分自身のとらえ方も変化してきている。
 学校という良質な集団生活を味わえる時期にこそ、他人との関わりを通じ、自分の内にコミュニケーションの核を形成していくことが望ましいと考える。コミュニケーション時の他人との意志の疎通を図るには言葉が欠かせない。自己の意志形成・表出のトレーニングとして、高校でディベートを教育に取り入れている例がある。これを推進するためには、教育者のスキルと事例の取り込みが必要である。世界に通用する人間を目指すために、子ども達には学校教育を基礎にして、変化を恐れずに様々な経験を積み、自分の「抽斗」を多く持って欲しい。その道具の一つがコミュニケーション能力と考える。
 埼玉県は「生きる力と絆」を教育の柱と据えている。絆は豊かな社会を作るための温かいつながりだ。コミュニケーション能力の向上が絆をより強くしてくれるものと信じる。

所属・現職等

埼玉県教育委員会 教育委員(株式会社原田教育研究所代表取締役社長) 原田 隆史 氏

御意見

あえて、現在の公立高校教育への提言

現状の問題点

1 沖縄から北海道まで、質の高い公立高校教育を地域差なく提供できている。アメリカや中国などは都市部とそれ以外の格差が激しい。日本はそれほどではない。そのような恵まれた現状の中で、98パーセントの進学率を誇るが、真剣に学ばない生徒が多数いる。
2 国際的な競争力を持つトップエリートが育ちにくい。
  企業がリーダー採用に日本の若者を採用雇用せず、海外に頼ろうとしている。
3 私立学校との学力競争に勝てない。
  教員の能力が私立学校に勝っているのか、塾に勝っているのかどうか。
4 若者の元気、活力が低下している。無業、ニート、家庭内引きこもりの増加。
5 集団内におけるコミュニケーション力の低下。みんなで交われない。
6 切れる。突然切れて、犯罪に走る若者。秋葉原事件。
7 薬物汚染。正悪の判断力、自己規律の低下。
8 殺人未遂、詐欺など、少年による社会の耳目を集める重大犯罪の発生。正悪の判断力、自己規律の低下。
9 性の乱れ。性感染症の問題。道徳、規範、規律の衰退。
10 日本の国家収入が不足している。赤字財政と経済破綻の危機。

解決策

1 義務教育ではないので、学力・ナレッジ向上を目指す従来の教育課程と職業人を目指す課程にハッキリと分けて教育する。ドイツのギムナジウムのように。そして、職業人育成課程には企業を参加させる。半官半民、完全民営化でもいい。ある私立の専門学校に答えがあるが、学校の学びの場に現場を持ち込む。すなわち、現場さながらの実践教育を企業が責任を持って行い、即戦力として厳しく鍛える。それを企業が完全採用する。そのために学校設置基準を緩める。
2 進学の最高峰を高校が東大に置いている。マスコミも東大何人と数字であおるが、世界から見ると東大では心もとない。ハーバードや海外のトップスクールの進学を目指すエリート育成課程を作り、経済格差による不公平を解消するため、完全公費で選抜して育てる。その際、飛び級システムも採用する。
3 教師の成果を問う。学力だけではない。生徒指導、学級経営・部活動指導、学力向上、保護者対応等の評価と効果測定をきっちりする。そのための研修と教育、教員養成大学を新たに作り実施する。そして優秀教員数を確保し、現場の負担は適正に軽減する。
4、5、6 若者の生存本能的な力が育っていない。海外に行って思うのは、日本の若者の非自立的な思考、行動、態度である。一人一人の自立、そして自分だけでなく国の未来や将来について、主体的に考える若者づくりの場として、学校の枠を超えた何らかの集団教育の場を設け、鍛えるべきである。
6、7、8 少年法の改正を求める。このままでは犯罪国家になる。
9 道徳教育の徹底。マスコミにも協力を呼びかけ、社会全体で自主的に誤った情報に制限をかける。テレビのチャンネル数を減らす。情報教育、性の心の教育、金銭感覚をしっかり育てる教育の実施。
10 赤字財政である。高校生全員に支援を行うのではなく、必要な人に必要なものを手当することを意識して、政策を進めるべきである。

所属・現職等

埼玉県教育委員会 教育委員(会社参与) 千葉 照實 氏

御意見

規範意識を高めるための取組について

1 問題点

○ 刑法犯で検挙補導される少年の多くが、中学生、高校生で占められるほか、暴力行為も多発傾向にあるなど、これら生徒の規範意識の低下が懸念される。
○ 少年の基本的な規範意識は、家庭教育の場で形成され、小・中・高等学校等の各発達段階における教育や地域との関わり、社会環境といった中で育まれるものであり、学校は、児童生徒同士のつながりや、他の学校、家庭、地域社会との結びつきを強めるなどの取組を、より積極的に進めていく必要がある。
○ 特に高校生は、自らが決定した「みち」に踏み出そうとする前途有為の人材であり、規範意識を身に付けさせ、自立心や将来への志を育む道徳教育、「思いやり・社会のルールを守る心」を育む指導などを一層充実していくことが期待される。

2 打開策

 ~発達の各段階における取組に関し、留意すべきと考える主な点~

(1)当事者意識の再確認

  •  少年の規範意識低下の背景として、家庭や地域社会の教育力の低下といった問題があげられている。また、非行等の問題行動の背景には、規範意識の低下のほか、コミュニケーション能力の不足、自分の居場所を見出せず、孤立し疎外感を抱いている状況もあると指摘されている。
  •  少年の健全育成を図る上で欠かせないのは、家庭や学校、地域など、少年の周りにいる人それぞれが、少年の問題を自分自身の問題として受け止め、解決のために行動することであり、学校は当事者意識を高め、より効果的な取組を推進していく必要がある。

(2)実態の的確な把握・分析と取組状況、取組結果の確認、フォロー

  •  道徳教育や生徒指導を効果的に進めるため、まず問題行動の発生実態や、児童生徒、保護者、教職員、地域住民の意識等を的確に把握し分析していく必要がある。
  •  この場合、暴力行為等の表面的現象に対応した道徳教育や生徒指導に終始することを避けるため、問題行動の背景にある自立心や耐性、コミュニケーション能力など児童生徒自身の事情、さらには家庭、学校、児童生徒を取り巻く社会環境等の問題との関連についても掘り下げて分析し、しつけ機能の低下している家庭への支援、部活動や社会貢献活動への参加など、自立心等を高め、家庭や地域との絆を強める取組に反映させていくことが大切である。
  •  また、取組開始後は、折々に取組経過を確認・フォローし、一定期間経過後は、結果(効果)を確認・検証することが必要不可欠である。

(3)生徒指導体制の確立等

  •  生徒に対する指導、暴力行為や学校等に対する不当要求行為への対応は、校長以下全教職員等が共通の理解と認識の下、一貫性と毅然たる姿勢を持って行われるべきであり、そうした素地と体制を構築していく必要がある。
  •  また、近年、学校の手に余るような暴力事案も発生しており、学校は、関係者の生命身体の安全確保、児童生徒の健全育成の観点から、警察や他の学校等関係方面との連携を緊密にしておくことが大切である。

(4) 「少年を見守る活動」の取組

  •  警察庁は、少年非行を生まない社会づくりの一環として、警察が牽引役となり、警察職員や防犯ボランテイア等による「少年への声かけ運動」など、地域社会が少年を見守り、少年が「地域に見守られている」と実感できるような施策を強力に推進することとしている。
  •  当を得た施策であり、学校等教育関係機関は、積極的に参画・協力していくべきと考える。

所属・現職等

埼玉県教育委員会 教育長 前島 富雄 氏

御意見

1 今日の高校教育が抱える問題点

 高校教育の抱える課題は多岐にわたるが、私は特に「学力の低下に対する懸念」について指摘したい。
 「学力」をめぐる話題はマスコミ等でもしばしば大きく取り上げられるなど、学力の向上は、保護者や生徒が学校に一番期待するものであり、学校の使命であると考えている。国際的な調査から、日本の学生は、知識はあるが、思考力、判断力、表現力が不足しているという指摘もある。これからの知識基盤社会の時代を子どもたちが主体的、創造的に生きていくためには、基礎的な学力とともに、応用力や発展的な学力を身に付けることが必要である。
 しかし、残念ながら学力の低下がここ数年来指摘され続けている。学校の主たる内容は授業であり、授業がよりよく分かる、授業が面白いということが、生徒の生きる力をはぐくみ、問題行動を抑止し、中途退学の防止にもつながることを考えると、学校の授業を改善し、学力の向上を図ることが喫緊の課題である。
 今まで、日本の学力は世界のトップ水準であり、この学力が戦後復興に果たした役割は決して小さくはないと考えているが、その学力が低下した、または、低下するのではないかという懸念が、一般国民、産業界などに広がっている。資源のない日本にとっては、人材こそが資源であり、学力の向上に向けた対応を適切に行うことが重要である。

2 その解決策

 高等学校は、基礎基本の学習に課題がある生徒が多く在籍している学校や、中堅校、難関大学進学希望者の多い学校など、学校や生徒の実態が様々であり、課程や学科も違うことから、学力に関する課題は様々である。その中で大切なことは、教員がまず「しっかり教え込む」、その上で子どもたちに「考えさせる」ことである。「自分で考えなさい」という前に、基礎基本はしっかりと教えこむ。教え込んでじっくり考えさせ、「わかる」「できた」「褒められた」という体験を積ませることで、学習意欲の向上につなげ、学力の向上に結び付けなければならない。
 具体的には、次の2点が重要である。
 第1に、日々学校で行われる教育活動を充実させることである。埼玉県では、文部科学省からSuper Science High school(SSH)に5校が指定を受け、理数教育の先導的授業モデルの構築を図るとともに、Science Partnership Project(SPP)に38校が指定を受け、大学・研究機関等と連携し、児童生徒の科学技術、理科・数学(算数)に関する興味・関心と知的探究心等の育成を図っている。また、大学発教育支援コンソーシアム推進機構(東京大学)と連携して「県立高校学力向上基盤形成事業」を実施し、生徒が主体的に学び合う協調学習を基調とした教材の作成を行っている。さらに、学力向上推進校を指定し、学力の基礎基本の定着と学習意欲の向上を図っているほか、進学重点推進校を指定し、学校同士の連携による組織的な進路指導の在り方や指導方法の研究を行っている。
 第2に、教育を担う教員の力量を上げることが欠かせない。教員の授業力の向上を目指し、各種研修を充実させることはもちろん、教員が子どもたちとしっかり向き合える時間や環境を整え、学力向上に向けた取組が図られるようにしていきたい。
 今後とも「生きる力」を育む21世紀型学力を育成するため、各種研究所、産業界などとも連携し、学力の向上を図っていきたい。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --