山形県教育委員会からの御意見

所属・現職等

山形県教育委員会 教育長 相馬 周一郎 氏

御意見

(1)今日の高校教育が抱える問題点
 高校進学率の上昇に伴い、多様な生徒が入学するともに、生徒間の学力に大きな差が生じ、自然学級での一斉指導では十分に対応できない高校が見られる。また、LD、ADHDなどの発達障害の問題を抱えるなど、特別な支援を必要とする高校生も増加しつつある。現状では、高校において、対話や体験を重視した授業を行うなど、指導法の改善を通して、求められる思考力、表現力、コミュニケーション能力の育成することはかなり難しい状況である。
 近年、高校には、国際理解教育、環境教育、キャリア教育、食育をはじめ、様々な「○○教育」と呼ばれるものが新たに導入されてきた。さらに、開かれた学校づくりや情報公開・説明責任が求められ、そのための資料作成や広報活動の業務量が格段に増えている。また、部活動とりわけ運動部活動の負担も大きく、大会や練習試合のため休日も生徒の指導に当たらねばならず、代日休暇の取得も難しい状況にある。
 このようなことから、教職員の多忙化が進み、生徒とじっくり向き合える時間の確保や、学習指導、生徒指導、進路指導など、教員のいわゆる「本務」に専念することが困難な状況にある高校が増えつつある。
 さらに、こうした校務の多忙化に加え、学校によっては、生徒および保護者への対応に苦慮している教職員も多く、教職員の精神疾患も確実に増えている。

(2)その解決策
 上記の諸課題を解決するためには、長期的には、高校にも少人数学級編成を導入するため、教職員定数の改善を進めるべきと考える。少なくとも、義務教育を少人数学級で受けた生徒が、高校に入学するときまでには、ぜひ実現させていただきたい。
 短期的には、現在の種々の加配措置を維持しつつ、さらに、特別教育支援員や特別支援コーディネーターの加配措置、スクールカウンセラーの全校配置(常勤)など、「専門職員」の充実を図ってほしい。キャリア教育の一層の充実のため、勤労観や職業観の育成ならびに個別の進路相談ができる資格と経験を備えた「キャリアカウンセラー」を配置していただきたい。
 また、教科のみならず、特別支援教育、カウンセリング、キャリア教育などの専門性と指導力を高めるため、校内外における教員研修の一層の充実を図ることも重要であると思う。
 部活動については、長期的には、「社会体育」への移行も検討すべきと考えるが、当面は、外部人材をより活用しやすい制度を設けていただきたい。公的機関が主催する講習や研修を受けたコーチ等が、顧問不在でも単独で部活動を指導できる資格を認めるなどの認定制度を設けていただきたい。
 また、教職員の多忙化と疲弊がこのまま進行すれば、将来的には、教育界に優秀な人材が集まらなくなるおそれが大であり、教職員の多忙化の解消に本腰を入れて取り組んでいただきたい。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年04月 --