秋田県教育委員会からの御意見

所属・現職等

秋田県教育委員会 教育委員長(株式会社テイケイマネージメント取締役) 北林 真知子 氏

御意見

1.高等学校の問題点

(1)中学校の教師が専門高校の内容をよく知らず、保護者には「根拠のない普通高校志向」があり、何となく普通高校に進学する生徒がいる。
(2)概して普通高校就職希望の生徒の自尊意識と勉学意欲が低く、離職率が高い。
(3)専門高校では最新の技術を教育するための予算と技量が不足している。
(4)専門高校の教育に対し、産業界と行政が関心と予算を持たない。
(5)進学校の「手放しの自主性の尊重」が、入学したこと自体の満心と、とことん力を振り絞る経験の不足を生んでいる。
(6)教師どうしの学びあいと授業、教材提示の工夫が足りない。

2.解決策

(1)、(2)について
 高校受験時から就職希望であれば、興味関心のある分野に絞って学ぶ方が意欲もわき実践的であるが、保護者の意向による普通高校進学も多い。その結果(2)の問題が起きる。進学者に対するいわれのない劣等感を持たず誇り高い職業人を育てるためにも、専門高校への進学を指導すべき。そのためには、○中学の教師に専門高校を開き、教師にも必須の知識とすることを求める ○専門高校の教育をより魅力的に工夫し、生徒、保護者のみならず市民に周知する ○少子化により困難な場合もあるが、職業教育は専門高校に特化し、専門高校、普通高校の位置付けを明確にすべきである。

(3)、(4)について
 専門高校では現に行われている技術を理解習得することが必要であり、そのためには、○インターンシップの強化 ○教育予算と共に知事部局の地場産業振興系の人材育成予算を付ける ○現場技術者の契約講師化とカリキュラムの作成 ○業界が必要とする人材像を就職支援の企業回りの際に取材し、企業にも発言を促す。

(5)について
 ○各生徒の伸びしろを見込んだ課題の提示や取り組みの機会、時間の提供を、学校ならではの方法、例えば高度なグループ研究やコンテスト、合宿などで行う ○生徒の能力を引き出す工夫を考える意識の涵養 ○安易に推薦入学を勧めず自覚的に努力させる。

(6)について
 ○義務教育では当たり前のことなので、小中学校の授業、教材提示に学び、共同の研究機会を持つ ○教科を限定しない校内同僚の授業参観、情報交換の徹底 ○生徒の理解を促そうとするサービス精神の涵養のためのインターンシップなどが必要である。

 

所属・現職等

秋田県教育委員会 教育委員 田中 直美 氏  

御意見

(今日の高校教育が抱える問題点)

1.少子化によって児童・生徒数が大幅に減少しているにもかかわらず、高校の定員は大きく減っていない。そのため、進学校の中でも学力・学習意欲に大きな差がでてしまい、授業や課題についていけずドロップアウトしてしまう子どもも少なからずいる。一旦ドロップアウトしてしまうと、その後の進路の選択の余地はほとんどなく、社会に出て自立することも難しくなってしまう。専門高校では、普通高校よりも生徒が意欲的で、一人一人にきめ細かい指導がなされている印象を受けるが、中学時代の成績によって不本意に入学する生徒もいるため、学校になじめなかったり意欲を持てないケースもある。

2.家族の形態が多様化し、家庭環境、幼少時からの育ち方はひとりひとり大きく違い、心の発達にも大きな差があるが、そこに対応しきれていない。また、予想以上に高い割合で存在することがわかってきた発達障害を持った子どもへの理解、対策も不十分であると思われる。

3.昔ながらのやり方で授業を行ったり、体罰をもって部活動の指導を行う教師、教員としての自覚を持たない教師が依然としている。教員同士のコミュニケーション力も低下しているように思われる。

(その解決策)

1.一旦入学した後も、さまざまな進路変更を可能にするシステムを構築することが必要であると思う。早い段階からのキャリア教育により子ども自身が自分の資質・方向性を見つけ、小・中・高の連携による適切な進路指導で進路を決定し、その後も必要に応じて様々な道を選択できるようにすること。一人一人が社会に貢献できる人間として自立する必要があることを子ども達に伝えなければならない。親の意識改革も必要。

2.一人の生徒を担任だけでなく各教科の教師が見ることができる高校の利点を活かし、生徒の情報を共有すること、養護教諭やスクール・カウンセラーなどの専門家と協力しチームで指導に当たることで、多面的な指導が可能になると思う。

3.教師の意識改革を図るとともに、研修方法の改善を行う必要があると思う。教科指導、生徒指導等に関する専門的研修を適宜行い、時代に即した指導ができるようにする。

 

所属・現職等

秋田県教育委員会 教育委員(弁護士) 長岐 和行 氏   

御意見

「市民として自立し、生きていく」ための総合的かつ専門的な「進路アドバイザー」の必要性

1.教育の大きな目的の一つは、生徒が社会人となった際に、市民として「自立し、生きていく」ための礎を築くことにあると考えられます。高校教育における諸問題は存在しますが、この一点に絞って意見を述べます。

2.「自立し、生きていく」ためには、当然のことながら、
(1) 精神面での自立
(2) 経済的な自立
が必要となります。

3.精神的な自立は、高校教育のあらゆる場面で、教科を学んだり、スポーツに打ち込む過程で、少しずつ醸成されていくものと思われます。

4.ところが、「経済的自立」については、実社会に出た時(進学後であれ、卒業後就職した場合であれ)には、大多数の生徒は、現に職業について生活の糧を得ることが必要となります。高校教育の過程においては、「経済的自立」について、実社会とは異なる環境にあるので、理念もしくは理屈で考えざるを得ません。実社会の仕組みがどのようになっているのか、どんな職に就いて、働いて、収入を得て、自分は生きていくのか等、思案する生徒も多数いると思われますし、教師の側でも、このような生徒の悩みに対応する必要があります。

5.このような要請に応えるため、今の高校教育では、種々の工夫や試みがなされているのが現状です。
 ただ、あまりに実社会について知らな過ぎる若者が多く、たとえば、高校卒業もしくは大学卒業後の就職においてのミスマッチも多々見受けられると聞きます。

6.高校卒業後、就職する生徒はもちろんのこと、進学する生徒もやがては実社会に出ていくことになり、高校時代の進路の選択がその後の人生を決定的なもの、もしくはかなりの程度で方向付けてしまうこととなりかねません(修正も効く場合もありますが)。

7.そこで、現状の進路指導及び就職指導を超えて、生徒たちがやがて「市民として自立し、生きていけるように」各高校に専門的な「進路等総合アドバイザー」なるものを設けて、生徒の指導相談にあたる態勢ができるような制度の構築を願うものであります。

 

所属・現職等

秋田県教育委員会 教育委員(秋田誉酒造株式会社代表取締役、秋田県立本荘高等学校同窓会長) 猪股 春夫 氏

御意見

 高等学校は生徒に対する教育とともに、学校のある地域社会とのかかわりも重要だと考えます。

1. 高校は、生徒に社会の一員として生活し、職業などを通じて社会を支えるための知識・能力を習得する場であり、生徒・保護者・教師(学校)の3者の共同事業といってよいでしょう。ただ、現実には、その内容についての一人一人の違いが大きすぎる為、私の個人的な思いはあるものの、全体をまとめきれない状態です。
2. 私達が、地域の一員として、地域の高校にどんな応援ができるのか、何を協力できるのかを知ることが、「キャリア教育」や「地域の教育力の活用」の面からも重要であると思います。そのためにも、学校も地域社会の一員であるという自覚を持っていただきたい。同時に地域社会との接点である保護者会や同窓会(特に同窓会については学校により差があるようですが)との関係を大切にしていただきたいと思います。
 また、生徒にとっての高校の3年間を、生徒達が長い将来(一生)続く人間関係を築き上げる場となる高校にしてほしい。そういった人と人との濃い関係(それが同窓の力といってよいと思います)が、特に地方では地域と世界をつなぐ強い絆となって、将来、地域社会をささえることになることを確信するものです。

 

所属・現職等

秋田県教育委員会 教育委員(医師)佐藤 一成 氏

御意見

1.学力の向上をはかる
 資源の無い日本は技術を糧に国際社会で生きるしかない。その基礎となる学力は、PISAと国際科学オリンピックでは日本の成績は最近回復してきているが、諸外国と比較して十分とは言えない。日本のライバル中国をはじめとするアジアの国々の台頭は如実である。特に最近話題になった「タイガーママ(tiger mother)」と呼ばれる米国在住の中国人母の厳しいスパルタ教育は、驚異かつ衝撃的である。これは極端な教育例だろうが、長くゆとり教育で弛緩した今の日本は改めて気を引き締める必要があろう。日本は高校生のトップクラスの学力を増進するとともに、ベースラインの学力も向上させる必要がある。
 その一手段として、土曜日授業の復活を提案する。学生の本分はやはり学問である。予算、職員、生活様式、その他様々な問題があろうがすべて克服しなければならない。厳しいが見返りが期待される投資と言えよう。国も国民も甘さを棄てて危機感を持って対応しないと、技術大国日本の未来はない。

2.日本人としての誇りを持つ
 世界はグローバル化している。日本人も世界を舞台に活動する必要性、機会が増加するとみなされる。そのような環境になればなるほど、世界の中で日本人はその個性を示す必要がある。そのためには、各個人が日本人としての自己同一性を確立することが求められよう。なぜなら外国人が日本に関心を持つとするならば、それは他国と違う日本と日本人を知りたいからであろう。日本の伝統、文化、歴史の教育を通じて日本人が日本に精通しなければならない。
 様々な取り組みが考えられるが、ここでは日本史の必修化を求める。世界における日本の独自性と存在感の大きさは、日本の歴史を学ぶことによって掌握される。翻ってそれが自らの日本人としての誇り、尊厳へと繋がり、世界に勇躍する力をもたらすであろう。その点では現在の日本の歴史教科書が相応しい内容か吟味を要する。自国を尊重することは他国を尊重することでもある。これは教育基本法の理念そのものと考える。

3.道徳教育で現実の問題を考えさせる
 職に就かない、就職しても早期の離職をする、あるいは就職ミスマッチが問題になっている。以前は3Kすなわち、きつい、汚い、危険な職業を蔑すむ風潮が取りざたされた。また、結婚しない、子どもを作らない、あるいは子どもを虐待し、はては死なすといった由々しい事態もある。一方で、高齢化社会を少数の若者が支えなければならない現実が待っている。通信・携帯電話のメディアリテラシーも等閑視できない。社会には実に多くの問題がある。社会との接続点である高校の時期に、こうした現実の社会問題を考えさせる時間を持って欲しい。そして知恵を出し合い解決を探る態度、不如意な事態にも柔軟に不撓不屈に対応できる精神を育んで欲しい。

 

所属・現職等

秋田県教育委員会 教育長 根岸 均 氏

御意見

1(1)近年の厳しい社会経済情勢の中、非正規雇用の拡大や伝統的雇用慣行の見直しなどにより、高校生にとって、将来の生活や社会人・職業人としての生き方を思い描くことが、これまで以上に難しい状況になっており、若年労働力に対する求人難や、雇用のミスマッチによる早期離職が増加するなど、社会全体として大きな損失となっている。本県においては、社会的・職業的に自立するために必要となる能力や態度の育成を図るキャリア教育の実践は、まだ十分とは言えない面がある。その中でも特に、普通高校におけるキャリア教育の充実が課題と考えられる。

(2)普通高校においてもインターンシップ等の体験活動を重視し、勤労観、職業観の育成や資格取得を目指すなど特色ある魅力的な教育課程の編成や、近隣の専門高校との連携による職業教育の導入や各種資格取得の支援など、スキルアップのための方策について学校間での連携が必要である。また、四つの基礎的・汎用的能力の育成の他に、税金や社会保険等自立のために直接的に必要となる知識を身に付けさせるための計画的な指導も必要である。

2(1)高校進学率が98%を超え、多様な生徒が入学している状況にある。こうした中で、授業に対する生徒の意欲を維持し、思考力、表現力などこれからの社会において求められる能力を育成するためには、中学校との接続が一層重要になるものと思われる。

(2)近隣中学校と連携して入学後における指導の在り方や、授業の進め方を研究するなど、きめ細かな配慮が必要である。授業も生徒の実態に応じて様々な指導方法を工夫するなど、一層の改善が求められている。各校がそれぞれ生徒の状況を把握し、中高接続プログラム等を作成し、弱点克服や学び直し等の学習指導に活用することが必要である。また、教員の指導力向上のために、校内研修体制の整備及び校外研修への派遣を推進する。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年04月 --