青森県教育委員会からの御意見

所属・現職等

青森県教育委員会 教育長 橋本 都 氏

御意見

1.今日の高校教育が抱える問題点

 急速な少子化の進行に伴い、公教育として適正な教育条件、教育環境の整備に取り組んでいるところであるが、一方で、教育内容においては、本県や日本の将来を担う人材として育成することも急務とされている。
 ニート、フリーターの存在や新規高卒就職者の早期離職率の高さなど、学校における生活と社会に出てからの生活との間の溝が大きな社会問題となっている。また、若者の勤労観、職業観の未成熟や、社会人・職業人としての基礎的・基本的な資質・能力の不十分さが指摘される中、子どもたちが「生きる力」を身に付け、社会人・職業人として自立していくためのキャリア教育の推進が強く求められている。
 本県の現状として、子どもたちの進路をめぐる環境の変化に高校の進路指導が十分対応できていなかったり、職場体験学習や進路学習などでは、校種間で重複した取組が行われていたりすることから、12年間を見通した系統的・継続的なキャリア教育の確立が求められている。
 このような中、高校教育においては、普通科、専門学科、総合学科それぞれにおけるキャリア教育、職業教育の推進が求められている。中央教育審議会答申(平成23年1月31日)では、各学科ごとの問題点を踏まえた上で、キャリア教育・職業教育の推進方策が述べられている。
 キャリア教育の推進の観点から現行の高等学校教育を考察すると、総合学科については、本県では平成8年度から設置し、特色ある系列や科目を設定してきたが、多様な教科・科目開設に係る教職員の負担が大きく、全国的に見ても総合学科が導入された当時に期待されていた役割が果たされていないのではないかという指摘がある。
 また、専門学科については、様々な職業分野で高い知識・技能の高度化が求められているにも関わらず、学科と職業との関連性が弱まっているのではないかとの指摘がある。
 普通科については、将来の生き方・働き方について考え、選択・決定することを先送りする傾向があり、進路意識や目的意識が希薄なまま進学している生徒も多いとの指摘がある。また、普通科からの就職状況を見ると、本県においても他の学科に比べると厳しい状況に置かれている現状がある。更に、基礎学力が不十分な生徒や、自立への支援が特に必要な生徒が増加しているという実態もある。

2.その解決策

 総合学科については、多様な分野の学習機会を保障するための条件整備として、施設・設備等の改善・充実はもとより、一人一人の教員の力量を高めるとともに、専門性を持った教員の適切な配置等が求められる。
 専門学科については、専門分野の基礎的・基本的な知識・技能の一層の定着を図るため、各教科・科目において、座学と実験・実習の有機的な連携を図るとともに、産業界との緊密な連携のもと、実践的な教育活動を進めることが必要である。
 普通科については、進学・就職のいかんを問わず、各教科・科目や様々な教育活動を通じて、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育成することが求められる。また、自立への支援が特に必要な生徒に対しては、基礎学力の定着を十分に図るとともに、職場体験活動など地域における様々な体験活動や実践的な教育を通じて職業に必要な能力を育成することが必要である。
 いずれにしても、現在の高校生は、コミュニケーション力や社会の仕組みに対する理解を十分に身につけていないという指摘があることから、今後は、生徒一人一人の興味関心や進路に対する意識を踏まえつつ、教科・科目における知識・技能の習得と、地域・社会における様々な体験活動を通した実践的な学びの両面から高校教育を進めていく必要があると考えている。

所属・現職等

青森県教育委員会 教育委員(まちおこしゲリラ「あおぞら組」組長) 島 康子 氏

御意見

1.今日の高校教育が抱える問題点

「地方における教育の矛盾について」
 県立高校のある校長先生から、下記のようなお話しをいただいた。
 「教育は、家庭と地域の教育力の大切さを説きながら、一方で家庭と地域を崩壊に導いている。」つまり、高校の進路指導において先生方は、生徒の自己実現のために一生懸命指導を行う。それが選択肢の多い県外への就職・進学という形となり、結果的に若年の人口が流出してしまい家庭も地域も崩壊する、という矛盾を抱えているということである。
 高校教育の中で「地域を支え築いていく人間を育てる」側面があるべきだと思う。高校時代までに、何らかの形で学校の外の大人とつながりを持った子どもたちには、いつかふるさとの価値に気づき、地域に貢献しよう、新しい時代を切り開こうという気概の種がまかれると思う。

2.その解決策

 地域に高校生が出ていき、地域のさまざまな立場・年齢層の人たちとふれあい、つながりを持ちながら事を起こしていく、という経験を、学業・部活動と同等の重みをもって組み込んでいくべきではないかと感じる。例えば、青森県教育委員会では21・22年度の重点事業として「高校生地域貢献推進事業」を行い、推進校を定めて、高校生たちが主体的に活動を企画して、自ら地域に働きかけていくという事業を支援してきた。このようなプログラムを、一過性の事業ではなく必須のプログラムとして実施するべきではないか。生徒の社会が学業の中だけに閉ざされがちな、とりわけ進学校においても必要だと私は感じる。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年04月 --