北海道教育委員会 教育委員長 神谷 奈保子 氏
(課題)
北海道の高校教育においては、一人ひとりの生徒が等しく学ぶ機会を得て、学力を向上させ、健康増進や体力向上をはかり、豊かな心と健やかな人間性を育むことを可能にすることが強く期待される現況である。
このようなたくましく生きる力を伸長するために、第一に高等学校自体が中核を担うのだという高い意識を共通認識として持つことが必須である。家庭・地域の多大な協力を得ながら、そのような高校教育を実現するために、国及び北海道の教育行政が果たす役割は、益々重要となる時代が到来している。このような教育観を確立して、生徒数が減少傾向にあることとは対照的に、スケールの大きな考え方で、教育制度を再構築することが肝要である。
また、優れた資質能力を有する教員は、国づくりの根幹となる教育力を形成する大切な存在である。教員にあっては、生徒の能力を最大限伸ばすことができる教科指導の力量と、生徒の個性や能力を多面的にとらえられる感受性が肝要である。北海道から指導力ある優秀な教員を数多く輩出したいと強く希望するものである。
さらに、このことから、現実的に中学校卒業者数が減少することにより、高等学校の小規模化が進む現実に対して、教育環境の維持及び閉校に伴う遠距離通学者等への経済的支援が重要な課題であると認識する。
同時に、生徒一人ひとりが安心して充実した高校生活を送ることができるように、国による経済的サポートや奨学金制度の拡充など、現実的な助成の制度化を強く望む。
(方策)
北海道教育委員会 教育委員(医師) 三戸 和昭 氏
高等学校における特別な支援を必要とする生徒への支援の充実
(現状)
近年、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、学習障害など、発達障害を含む多様な障がいのある特別支援学級の児童生徒が毎年20%増加し、10年で3倍となり、特別支援学級への入学希望者が増加している。北海道教育委員会では、障がいのある生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な指導や必要な支援を行うため、個々の障がいの種類や程度に応じて、必要な施設・設備を整備するとともに、支援体制の整備に努めてきた。また、特別支援学校の教員を高等学校へ派遣し、高等学校教員を対象とした研修会を実施して、指導方法の工夫・改善の実施に取り組んできた。
(課題)
今後、障がいのある生徒の高等学校への入学が一層増加することが予想されることから、高等学校の教員の指導力の向上を図る必要がある。また、障がいのある生徒を対象とした支援員や介助員について、市町村立学校では、各市町村への交付税措置により配置されるが、道立高等学校においても、支援員や介助員を配置するための財政措置の充実や専門性のある教員の加配などが必要である。
(方策)
障がいのある生徒と障がいのない生徒がともに学ぶことのできる環境づくりが必要と思う。高等学校において、障害のある生徒への教育的ニーズに応じた指導を円滑に行うため、特別支援教育支援員の配置の一層の充実、施設・設備の充実、特別な教育課程によること、通級指導教室の設置とその制度の整備などについて検討すべきと思う。また、大学において特別支援教育に関する単位の修得を義務づけるなど、教員養成の在り方も検討する必要がある。さらに、特別支援学校教員の免許状を有する者を積極的に高等学校教員に採用し、特別支援学校と高等学校との人事交流を推進するなど、高等学校において特別支援教育について専門性の高い教員の確保ができるよう教職員定数の増加を検討する必要がある。
北海道教育委員会 教育委員(弁護士) 鷹野 正義 氏
高等学校への進学率は約98%に達しているため、高等学校は能力、意欲、志望等について多種多様な生徒を抱えている。これら生徒を、目的意識を持たせ次のステップに向けて積極的に踏み出させるようにすることは容易なことではない。これに備えて既に多様な選択を可能にする総合学科等の新しいタイプの学校づくりを進めている。しかし肝腎の生徒は、主体的に各学校の特性から選択するよりも、成績に応じて学校を選択せざるを得ないことが壁になっている。生徒の関心、志望に応じて選択できる方策を考えないと効果は限定的になる。その上大部分の普通科高校は一般教養の涵養を図る教育を中心としている。生徒の能力、向上心、将来の志望に対する熱意の差は著しく大きいのが現実であるが、これに応える教育をどう進めていくか課題である。
国民全体に平等意識が過度に浸透しているため、例えばいわゆるエリート教育又は習熟度別教育を嫌う風潮が強いため、すべての生徒に平等な可能性が開かれている教育が期待されている。その中にあって能力、意欲、モチベーションの違いに応じた教育をしていかなければ時代に合わなくなる。
複雑な社会の中で自立して生きていくことは困難な状況に陥っている。したがって高校生活の中で社会人として自立していく最低限の力を養っていかなければ孤立する危険性がある。このため社会に適合する能力を意識して高める消費者教育、キャリア教育等の実践的教育を積極的に取り入れる必要がある。
また少子化の時代の中では、公立、私立を問わず地域を担っていく人材の育成が重要となってくる。公立への支援のみではなく、私学においても、独立不羈の学校は必要ないが、財政面だけでなく、要請に従い指導、助言、援助を広げていく必要がある。
北海道教育委員会 教育委員 中村 隆信 氏
「普通科小規模校における多様なキャリア形成」
1.現状
かつて高校への進学率が50%くらいであった頃は、普通科の生徒は大学に進学し、専門学科の生徒はそれぞれの領域の事業所に就職するという形でキャリア形成が行われてきた。しかし、進学率が98%となり多様な生徒が入学している現在、都市部においては、職業学科や総合学科、単位制高校など、多様な生徒に対応したキャリア形成を可能にする制度になっているが、郡部の市町村においては、多くが普通科小規模校として維持され、地域の実情や生徒の進路設計に応じた教育課程の実現が難しいまま、教育の多様化という時代の流れから取り残されている。この現状を打ち破らなければ、郡部の普通科小規模校の生徒は地元の自然や産業等と結びついたキャリア形成を通して自己実現を図ることができず、学校も徐々に活力を失って統廃合等により消滅する運命を辿るしかない。広域な北海道では郡部の小規模校が多く、公立の全日制課程245校中98校が2学級以下である。普通科小規模校の個性的な教育課程の実現は緊急かつ重要な課題である。
2.課題
多様な生徒が入学する郡部の普通科小規模校では、進学だけでなく地域の実情に応じた就職につながるキャリア教育も必要である。現在、いくつかの普通科小規模校では、地域の産業や実情に応じた職業科目を設定し、国の加配(職業科目10単位以上)を受けてキャリア教育を実現している。普通科でありながら、自己の進路に関連する職業実習を行い、地域の産業界と連携して産業教育フェアに参加したり、自己の特性とつながる職業体験を経験するなど、この効果は絶大である。しかし、こうした教育を行うには専門教科の教員が複数必要であるが、これを支援する職業系類型コース加配といった国の予算規模が少なく、多くの学校が加配の当たる順番を待つか諦めざるを得ない状況にある。道内郡部に存在する小規模校において、生徒がそれぞれの自己実現を追究できる制度にするには、職業系類型コースによる教員加配を増やし、その制度の積極的な活用を推進することが望ましい。北海道教育委員会では、苦しい道財政の中で1学年1学級規模の高校には、道単独の措置として2人の教員と1名の事務職員の加配を実施しているが、その支援も限界にきている。国の施策としては、都市部・郡部を問わない一律な教育条件の改善で膨大な予算を消費するより、必要なところに手厚く支援する施策の方が、限られた予算の中で実質的で効果的な施策を推進することができる。普通科小規模校の職業系類型コースに対する国の加配措置の充実を期待したい。
3.郡部の高等学校の役割
第一に、教育の機会均等の観点から、郡部の小規模校においても普通教育だけでなく、その地域の実情に応じた専門の科目(ビジネス、農業、観光等)を類型として学習できる環境が必要である。こうした取り組みは、地元の高校で学び、地元で働く高校生が、地域の自然や産業、歴史や文化とつながり、自己の進路に直結したキャリア形成を可能にしており、現在道内22校がこの加配により極めて効果的なキャリア教育を推進している。
第二に、郡部の高校では、教員の文化的力量が地域の教育力の源にもなっており、地域の文化拠点として地域全体の活力源となっている。小学校・中学校と連携した12年間を見通した教育シラバスや基礎学力形成のための検定や問題集などの学習資料、義務教育校との相互乗り入れによる授業研究、地域の歴史・文化・自然学習教材の作成、スポーツ振興など、地域の教育文化の形成に果たす高等学校の役割は極めて大きく、地域の高等学校が存続することの意義は大きい。
4.解決策
普通科小規模校が職業類型コースを設置する場合の教員加配規模を実態に合わせて拡大する。
北海道教育委員会 教育長 髙橋 教一 氏
○国際的に活躍できる人材の育成
(本道における課題)
(解決策)
○地域(北海道)の産業を担う人材の育成
(本道における課題)
(解決策)
○高等学校におけるキャリア教育の充実
(本道における課題)
(解決策)
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室
-- 登録:平成23年04月 --