東京都立第三商業高等学校長 天野光芳氏 インタビュー概要

1.実施日

平成22年12月1日(水曜日)

2.インタビュー対象者

東京都立第三商業高等学校長 天野光芳 氏

3.概要

(学校の現状及び課題)

 本校の定時制課程は1学年から4学年まで各1学級ずつあり、現在の在籍生徒数は95名である。働きながら通う生徒は少なく、有職者のほとんどはアルバイトである。
 また生徒の約半分程度は中学校時代に不登校の経験があり、心の痛みを経験している者が多い。そのため本校はアットホームな雰囲気作りを大切にしている。あまり厳しい指導をしすぎてしまうと、学校に出てこられなくなる生徒もでてきてしまうため、特に生活面での指導の難しさを抱えている。厳しさを経験していないために、就職活動時の弊害になっている部分も否めない。
 こういった課題の解決策の一つとして、社会の厳しさを体験させる機会に、インターンシップは非常に重要。インターンシップを通して職業観、就業観、仕事に対する意欲、職業選択能力、ビジネスマナー等を身につけて、就職活動に生かしてもらいたいと考えている。社会に適用するための教育は、学校だけで教えるのではなく、社会と連携して指導するという考え方も必要なのではないか。全てを学校で指導すべきという考え方は、定時制の現状を考えると難しい。

(進路について)

 就職希望者と大学等への進学希望者は約7対3である。進学希望者は、現時点でほぼ進路が決まっているが、就職については不況の影響からか、非常に厳しい状況にある。景気の良い時代は就職したいという意欲があれば採用してもらえたこともあったが、景気の良くない現在は、マナーや学力面などで競争に勝ち残ることが難しい状況にある。

(コミュニケーション能力について)

 本校では不登校経験者が多いという実態があるため、対人コミュニケーションや自分をPRすることが苦手な生徒もいる。こういったことは就職面接の際や、何度か受験を経験することによって、はじめて気がつく生徒もいて、この観点からもインターンシップや校外学習、プレゼンテーションの授業は重要であると考える。

(資格取得について)

 本校は商業高校であるので、資格については積極的な取得を促している。不景気の影響もあるとは思うが、資格取得に対して意欲的な生徒が多い。
 しかし、就職難の時代にあって、資格を持っていても面接試験や教養試験をクリアできずに、就職に結びつかないケースがある。資格をいかに職業選びに結びつけるかが課題である。

(商業教育に求められているもの)

今、商業教育に求められているものは、座学レベルの知識・技術だけでなく、マナーや意欲など態度も含め、実務社会に適用することのできる人材を育成することである。また、商業に関する資格や知識をいかに実務に活用できるかが大切である。特に中小企業からは、即戦力となる人材が求められており、その観点からも実践につながる資格取得や働く態度の育成は重要であると考えている。この点が、普通科と商業科に求められるものの違いではないか。
 本校では、経済産業省が定義している「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の三つの能力に基づく「社会人基礎力」をいかに身につけさせるかを重視しており、商業科における実践的な教育はこれらの能力を身につけるのに非常に適している。またインターンシップも重要な機会となりうる。

(地域との関わりについて)

 地域の方は良くも悪くも、生徒のことを外見で判断するという傾向がある。定時制は服装や頭髪が自由のため、昔は見た目で怖がられているという感じもあった。そこで、本校では商業高校という特徴を活かし、地域の方をお招きしてパソコン教室を開催したり、奉仕活動を行ったりしているが、このことにより、地域の方は、生徒や学校に対して、見る目が良い方向に変わったように感じるし、本校のことを理解していただける良い機会となっている。また、生徒たちのコミュニケーション能力向上にもつながっている。現在の高校は、昔に比べて、開かれたものになってきていると思う。

(定時制について)

 働きながら通う生徒は非常に少なくなってきており、有職者のほとんどはアルバイトである。昼は何もせずに夜だけ学校に通うという生徒が多く、こういった生徒は4年間夜型の生活を送っていることから、アルバイトを継続したり、定職に就いても朝型に身体を戻すのに苦労するというケースも見られる。
 また、昔から見られることだが、定時制は生徒の学力差が大きい。本校では、教員の配慮により、習熟度別指導を行うなどの工夫をしているが、定時制における学力差の問題は依然大きな課題である。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年02月 --