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加藤正秀氏(学校法人加藤学園理事長、加藤学園幼稚園長、加藤学園暁秀初等学校・中学校・高等学校長)意見発表

【加藤氏】

 私は沼津市、通学圏が100万ぐらいの人口を抱えているところの加藤学園というささやかな私立学校で経営と教育に従事しています。学校は現在6つありますが、その中で国際バカロレアのカリキュラムを実践しているのは、加藤学園暁秀中学校・高等学校の中のバイリンガル部門です。
 資料に八角形、六角形の図がありますが、これがバカロレアのカリキュラムの一例です。私たちは2000年にバカロレアの中のMiddle Year Program-これは主として中学生、高等学校1年生も含めますが-中学段階の子供たちに対応したMiddle Year Programに加盟しました。そして、その2年後に、左のDiploma Programに加盟しました。英文のまま表示したのは、バカロレアの本部から、「勝手に日本語訳をすると、それがひとり歩きする場合があっては困る」ということを言われたものですから、英文のまま載せました。
 右側は、文部省でカリキュラム指導の中枢におられた中島先生 ―特に中等教育のカリキュラム改革等については非常に熱心で、この先生はこの8月もバカロレアの本部を訪問されました。私はバカロレアについての権威ある方だと敬服しています― が訳されたのもので、それを使わせていただきました。
 ここでは、この2つのカリキュラムを提示しましたが、Diploma Program、Middle Year Programに、もう一つ、最近では小学校の段階のPrimary Year Programが加わり、3つのプログラムができております。この間、どのぐらい加盟校があるのかと思ったら、びっくりしました。ついこの間までは1,000だ、2,000だと言っていたのが、3,000校も、バカロレアの加盟校が全世界であるわけです。そのうち7割はDiploma Program。高等学校の3年と2年に適用されるプログラムです。
 日本では、学校教育法1条校で、最初にこのバカロレアに加盟したのが私たちの学校です。
 国際バカロレアの本部からは、世界各国を見ても、特にアジアを見ると、ほとんどの学校がインターナショナルスクールで、かならずしもその国の学校教育の中核とはなっていない、私たちの学校がただ1校、チャプター1スクールで、同時にバカロレアのカリキュラムを実践しているとして、ナショナルとインターナショナルの両方を兼ね備えているということで、それなりに評価していただいております。
 現在、日本の入試を論ずるときに、東大を頂点とするピラミッド型になっており、その難関大学へ幾人入れているかということで普通高校の場合は評価されるようでありますが、私どもはイギリスタイムズが行っているグローバルスタンダードに注目しています。既に高等学校の卒業生を7回送りましたが、バカロレアの過程をとった子供たちの進学先はこのように、東京大学は22番なのですが、それ以上にランクづけされている大学にもかなり入っています。ですから問題を抱えてはおりますが、私たちのDiploma Programはそれなりに成功しているのではないかと考えております。
 私たちがDiploma あるいはMYP(Middle Year Program)を採用することができましたのは、資料の上の方にある1972年創立のオープン・プランスクールが原点になっています。個性化教育、カベのない教育。要するに、子供が三々五々自分のペースで学びそこでは勉強の主体、学ぶのは子供で、それを手助けするのが教師です。個性の尊重、自発性・創造性、インターナショナルマインドの育成が目標でした。ちょうどそのころバンコクにユネスコの教育の一つの拠点がありまして、そのスタッフが頻繁に私たちのオープン・プランスクールに来訪されました。その方々から-1970年代から-私たちは国際バカロレアの情報を得ていたのです。そして、将来それに入れたらいいと念願していました。
 バカロレアは-その起源は戦前にさかのぼるのですが-戦後、1968年ジュネーブで創立されました。国境を越えて異動する外交官、また国際的な経済人の子供の転校、特に大学への進学に対する共通の教育のカリキュラムを持つ必要があるということで生まれたのが国際バカロレアでありますが、当時、70年代の終わりごろからたくさんの方々がこれに参加して、現場の教育関係者は無論のこと、教育行政の方、教育学者が最初はヨーロッパ、そのうちにアジアその他の人たち等も巻き込んで、カリキュラムをどんどん作って、それを改善しておりました。
 特に大学入試の関係者 ―フランスのバカロレア事務局、オックスフォード・ケンブリッジ大学入試委員会、アメリカのカレッジボード等の入試の専門的な機関―が、カリキュラムの改善に参画してきて、カリキュラムが、改善されていったのです。現在でも3年程経てばかなり進歩しているというふうなことになっております。
 私たちが、比較的抵抗なしに入れたのが言語に制限がない(日本語でもO.K.)Middle Year Programです。この図を見ていただきますと、バカロレアの特色は、周りは日本で言えば教科。日本の中等教育は、主要教科が大事だということで、「主要教科傾斜システム」と呼べるのではないかと思うのですが、単なる教科指導だけではだめです。教科間の連携、何かそこに一つの人間の知的な発展、環境との相互作用、あるいは地域との関係というようなもので立体的に考えなければだめだ、単なる教科ごとに教育している今の中等教育は問題だということを感じておりましたものですから、バカロレアのカリキュラムに飛びついたのです。真ん中に、個人用のプロジェクト、Project to Personal 、Personal Projectというのがあるわけです。これらは、我々の教育の理念とも一致しており、はるかにこちらが優れているということで、我々はこれに加盟させていただいたのです。
 しかし、バカロレアに日本語がないものですから、非常に大変だったのです。このDiploma Programが採用している言語が英語、フランス語、スペイン語です。ですから、子供たちの英語の力をネイティブに近い所まで高めておかないと、Diploma Programに参加できません。私たちは今英語教育でも革新的なことを行っておりまして、今日現在では、予想以上に成功しているのではないかと思っています。1992年に、小学校から英語を教科として教えるのではなくて、英語圏の教員を採用して、その人たちに英語で一般教科を教えるバイリンガル教育をしております。そのバイリンガルの子供たちがMiddle Year Programを経てDiploma Programに進んでいったのです。
 IBプログラムのこの表を見ていただくと、六角形になっておりますが、外縁部分は教科です。しかし、教科だけではだめなのです。真ん中に3つの領域があり、その一つがロングエッセイ(extended essay)です。論文を書かせるのです。もし必要がありましたら、ロンドン大学、ハーバード、上智大学に入った生徒たちの6,000語エッセイがありますので、ご覧いただければ、有難いと思います。
 これはDiploma を卒業するとき、高等学校の3年生で英語で書きます。日本の文化とか芸術を論ずるときは日本語で書いてもいいのですが、このときは400字詰めで20枚です。そのぐらいの論文を書く。extended essayと呼んでおります。
 何といっても、このIBカリキュラムの中核がTOK、トック、theory of knowledgeというのですが、ここが一つの理念的なものなのです。
 そして、CAS、キャスと呼んでおりますが、creativity、action、それからserviceと。こういうふうなことが必修です。
 私たちの中高はまた、日本国内の大学を目指す生徒も抱えております。教員はそのことで常に頭がいっぱい。この国内受験の部門は、教科間の連携はもっぱら大学入試に向けてはあるのです。教務課の会議をのぞいてみますと、ほとんどが生徒の成績が受験産業が行ったランキングでどこにあるかという点に集中しています。 私たちの教師も、この間聞いてびっくりしましたが、指導要領をしっかり読んでいないのです。指導要領を真剣に読みますと、指導要領の総則のところで、教育課程編成の一般方針とか、指導計画作成の際に配慮すべき事項、それからいろいろ共通的な事項もあり、バカロレアのカリキュラムと一致している部分が多いことに気付きます。
 総論の部分で、バカロレアのような立体的なこともやることを指導要領は要請しているわけですが、現実は、「大学入試体制」 “college entrance examination -oriented school system” がその実践を妨げています。これは、国民的な課題で、何とか私たちは時間をかけても将来は改善していかなければならないと思います。そういうわけで、今の日本では本当の意味のsecondary educationを実践するのが難しくなっているのではないのかなということを、バカロレアのカリキュラムを導入しながら考えている昨今でございます。
 どうもいろいろ勝手なことを申しましたが、私からは以上です。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年01月 --