花松正彦氏発表資料

平成22年11月30日

地域とともに歩む本校の学校経営

 北海道おといねっぷ美術工芸高等学校長 
花松 正彦

 
 本校は北海道北部人口約900人の音威子府村にある全日制工芸科の村立高校である。音威子府村は総面積の80%以上を占める森林と天塩川の流れに抱かれた自然豊かな美しい村である。また、冬は北海道でも有数の豪雪地帯であり、その気候条件からクロスカントリースキーが盛んな地域である。このような環境のもと、生徒には「ものづくり」を通して、確かな知識・技能を身につけさせるとともに学校と寮の両輪での指導により、豊かな人間性および創造力を育む「人づくり」を目指している。学校経営方針「夢を語れる学校づくり」はこれを理念として、生徒が有意義に学校生活を送り、卒業後も学校を誇りにして、逞しく未来を拓いて行く人間に成長することをねらいとして掲げたものである。

1 本校の歴史

昭和25年 名寄農業高校分校として創立
昭和28年 「北海道音威子府高等学校」と称す(定時制普通科)
昭和55年 チセネシリ寮全館落成
昭和59年 村立全日制課程工芸科へ学科転換
平成14年 「北海道おといねっぷ美術工芸高等学校」に校名変更
平成15年 コース制導入
       (工芸・工芸進学・美術・美術進学)教育課程変更
平成19年 高大連携事業協定書に調印(北海道東海大学)
       国立教育政策研究所教育課程研究指定校事業開始(美術)
       (平成19、20年度)
       スウェーデン留学生受け入れ
平成20年 コース制一部変更(工芸・美術)教育課程変更
       国際理解教育スウェーデン派遣開始
平成21年 国立教育政策研究所教育課程研究指定校事業(工芸)
       (平成21、22年度)

2 生徒の状況

 在籍は119名でほぼ定員を満たしている。入学者は札幌や旭川など道内各地および道外約2割となっている。生徒は明確な目的意識を持っており、自ら積極的に学習に取り組むため授業は非常に活気に満ちている。毎年道内で行われる各作品展では最高賞の受賞や9年連続全国推薦等着実に成果を上げている。また、毎年札幌と旭川で実施している「木の手づくり展」は在校生や卒業生の作品を多くの人に見てもらう機会となり生徒の励みおよび学習意欲と技能向上に効果を上げている。保護者は大変協力的であり、地域からも大きな支援をいただいている。このように生徒は恵まれた環境で自ら学習に 積極的に取り組み、お互いに認め合い切磋琢磨して充実した寮生活および学校生活を送っている。

3 国立教育政策研究所教育課程研究指定校事業

 平成19年度から「美術Ⅰ」、「工芸Ⅰ」の2科目で2年間ずつ4年間にわたり高等学校の美術工芸教育を調査研究している。研究主題は「美術Ⅰ」では「学ぶ意欲を高め、豊かな心を育成する指導の工夫改善」。「工芸Ⅰ」では「新学習指導要領の趣旨を具現化するための指導方法の工夫改善に関する研究」である。この事業によって、1.教員の資質能力の向上、2.美術工芸教育の質的向上、3.教育活動の活性化等が図られている。

4 高大連携教育

 本校と東海大学芸術工学部との連携により、1.質の高い作品制作と進路意識の高揚、2.教員の資質能力の向上、3.魅力ある学校づくりの推進等が図られている。本校の教育課程と連動した高大連携授業は生徒からも好評であり、美術工芸教育の一層の充実を目指している。

5 国際理解教育

 家具の先進国スウェーデンのレクサンド高校と相互の交流を行っている。この国際交流活動により、1.デザイン力の向上、2.豊かな心の育成、3.教育活動の活性化につながっている。

6 教育課程の編成と実施

 平成19年度、新しい時代に対応できる美術工芸教育の在り方を調査研究し、より創造力を育成できる魅力的な新教育課程の編成を行った。基本となったのは、1.創造力を育成する学校設定科目の設置、2.工芸・美術コースによる個性の伸張、3.高大連携による教育内容の充実等である。

7 自然や村民との触れあいによる豊かな心の育成

 音威子府村の雄大な自然を生かすとともに村民と一体となった教育活動を展開し、豊かな心の育成を図っている。具体的には、1.「村民運動会」「植樹祭」「文化祭」への参加、2.北海道大学と連携した「森林探訪」の実施、3.村の美術館「エコミュージアム」でのボランティア活動、5.学校間連携による「クリーンおといねっぷ」「古紙回収」「木工体験」の実施等である。

8 学校情報の積極的な発信

 保護者、地域、中学生への学校理解を図るために、積極的に学校情報を発信しており、定期的に「校長室だより」「学校だより」を保護者に配布し、地域には回覧している。また、生徒と保護者の協力を得ながら、ブログにより日常の教育活動の様子を発信している。学校案内やポスタ等も常に充実を図り、中学生の進路選択の際の資料として広く配布している。

9  本校の課題

 本校の課題は、美術工芸教育の質的な向上を図りながら、より魅力的な学校づくりを推進することである。その基本となるものが保護者、地域、学校間の緊密な連携である。今後さらに強化し、本校が地域とともに歩み、一層魅力的で活力ある学校となって行くことを目指して学校経営を推進している。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年02月 --