高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドラインの一部改訂について(通知)

29文科初第1765号
平成30年3月23日


各都道府県教育委員会
各指定都市教育委員会
各都道府県知事
高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長  殿


文部科学省初等中等教育局長
髙橋道和
(印影印刷)


高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドラインの改訂等について(通知)


文部科学省では、一部の広域通信制高等学校において不適切な学校運営等の問題が生じたことを踏まえ、平成28年9月、「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を策定し、各所轄庁に対し、同ガイドラインに基づく指導監督等の実施についてお願いしてきました。
ガイドライン策定後、文部科学省において実施した広域通信制高等学校に対する点検調査等で明らかとなった課題等を踏まえ、平成29年7月、広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議において、「審議のまとめ」として、更なる質の確保・向上方策について提言がなされました。
文部科学省としては、この審議のまとめを踏まえ、ガイドラインの改訂(別添1)をはじめとする高等学校通信教育の質の確保・向上のための施策を講じたところです。
各施策の主な内容は下記のとおりとなりますので、各都道府県教育委員会におかれては、所管の通信制高等学校及び域内の通信制高等学校を設置する市(指定都市を除く。)区町村教育委員会に対して、各指定都市教育委員会におかれては、所管の通信制高等学校に対して、各都道府県知事及び通信制高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては、所轄の通信制高等学校及び学校法人又は学校設置会社に対して、それぞれ周知していただくとともに、必要な指導監督等の実施をお願いします。
あわせて、審議のまとめにおいて「各所轄庁が、通信制高等学校に関する事務を執行する職員を十分に配置し、高等学校通信教育に関する専門的な知識・経験等を有する職員等を置くなど、指導監督体制の充実を図ることが必要である。」とされていることを踏まえ、各所轄庁におかれては、ガイドイラン等に基づく指導監督等を実施するための体制整備について、ご留意いただきますようお願いします。

1.ガイドラインの改訂の概要
(1)添削指導及びその評価
一 添削指導は高等学校通信教育における教育の基幹的な部分であり、実施校は添削指導を通じて生徒の学習の状況を把握し、生徒の思考の方向性とつまずきを的確に捉えて指導することを加えたこと
二 添削指導の実施に当たっては、年度末や試験前にまとめて添削課題を提出させたり、学期当初に全回数分の添削課題をまとめて提出することを可能としたりするような運用は行わないことを加えたこと。また、添削指導や面接指導が完了する前に、当該学期の全ての学習内容を対象とした学期末の試験を実施したりするようなことがないよう、年間指導計画に基づき、計画的に実施することを加えたこと
三 添削指導の実施に当たっては、正誤のみの指摘はもちろん、解答に対する正答のみの記載や一律の解説の記載だけでは不十分、不適切であり、各生徒の誤答の内容等を踏まえた解説を記載するなど、生徒一人一人の学習の状況に応じた解説や自学自習を進めていく上でのアドバイス等を記載することを加えたこと
四 生徒から添削指導等についての質問を受け付け、速やかに回答する仕組みを整えることを加えたこと
(2)面接指導及びその評価
一 面接指導は、添削指導と同様、高等学校通信教育における基幹的な部分であり、各学校はその重要性に鑑み、絶えず改善に努めることを加えたこと
二 実施校以外の連携施設において面接指導を実施する場合、実施校において生徒の履修状況を十分に把握するとともに、例えば、観察・実験や実習が適切に実施できるよう、施設・設備等も含め、面接指導を行う上で適切な教育環境を整えることを加えたこと
三 実施校や連携施設において実施されている、いわゆる通学コースにおける教育活動と、高等学校学習指導要領(平成21年文部科学省告示第34号。以下「指導要領」という。)等に基づき実施される面接指導とは明確に区別されるものであり、面接指導は上記の事項も踏まえ、指導要領等の法令等に基づき実施することを加えたこと
(3)多様なメディアを利用して行う学習及び当該学習による面接指導等時間数の減免
一 多様なメディアを利用して行う学習を計画的、継続的に取り入れ、報告課題の作成等により、その成果が満足できると認められる場合であって、生徒の実態等を考慮して特に必要がある場合は、面接指導等時間数のうち、複数のメディアを利用することにより、メディアごとにそれぞれ10分の6以内の時間数を免除することができることとし、免除する時間数は合わせて10分の8を超えることができないことを加えたこと二 一について、生徒の実態等を考慮して特に必要がある場合とは、例えば、「病気や事故のため、入院又は自宅療養を必要とする場合」、「いじめ、人間関係など心因的な事情により登校が困難である場合」、「仕事に従事していたり、海外での生活時間が長かったりして、時間の調整がつかない場合」や、「実施校自らが生徒の実態等を踏まえ、複数のメディア教材を作成する等により教育効果が確保される場合」等が想定されることを加えたこと
三 生徒の面接指導等時間数を免除しようとする場合には、本来行われるべき学習の量と質を低下させることがないよう十分配慮しなければならないことを加えたこと
四 生徒の面接指導等時間数を免除する場合、多様なメディアを利用して生徒が行った学習の時間数と、同程度又はそれ以上の時間数を免除するという運用は不適切であることを加えたこと
五 四について、面接指導への欠席等により面接指導等時間数が不足するおそれのある生徒に対し、多様なメディアを利用して行う学習により面接指導等時間数の減免を行おうとする際には、平素から個々の生徒の面接指導の状況を把握し、多様なメディアを利用して行う学習が計画的、継続的に取り入れられるよう留意が必要であることを加えたこと
(4)学校設定教科・科目、総合的な学習の時間の実施
一 学校設定教科・科目の開設、実施に当たっては、年間指導計画に基づき、資格のある教員が指導要領等に則り適切に実施することを加えたこと。特に、単なる体験活動の実施を単位認定するような運用や、生徒の学習状況の把握及び評価が十分に行われないまま実施されるような運用は不適切であり、高等学校教育の目標及びその教育水準の確保等に十分配慮することを加えたこと。また、学校設定教科・科目の添削指導の回数及び面接指導の単位時間数については、1単位につき、それぞれ1回以上及び1単位時間以上を確保した上で、各学校において適切に定めることを加えたこと
二 総合的な学習の時間の添削指導の回数については、指導要領の規定を踏まえ、1単位につき1回以上を確保した上で、各学校において、学習活動に応じ適切に定めることを加えたこと
三 総合的な学習の時間における面接指導の単位時間数については、指導要領の規定を踏まえ、観察・実験・実習、発表や討論などを積極的に取り入れるためには、面接指導が重要となることを踏まえ、1単位につき1単位時間以上を確保した上で、各学校において、学習活動に応じ適切に定めることを加えたこと
(5)学校評価
自己評価の実施の際、添削指導等については、連携施設における実施状況も含め、ガイドラインを踏まえたものとなっているかについても評価の対象とすることを加えたこと
(6)積極的な情報公開の推進
一 実施校及び実施校の設置者においては、積極的な情報公開に努めることを加えたこと。また、その際には、生徒や保護者等の関係者が、学校の教育環境の充実に向けた取組や学校の運営状況等に関し、適切かつ十分な情報を得られるよう努めることを加えたこと
二 一について、学校の教育環境の充実に向けた取組や学校の運営状況等に関する情報としては、生徒の状況(生徒数や活動の様子)、教職員の配置状況(専任・兼任の別を含む)、各教科・科目等の開設状況、施設・設備の整備状況、連携施設の状況、授業料等の学納金に関する情報及び財務状況等についてホームページの活用等により、生徒や保護者等の関係者がアクセスしやすい環境が整備されることが望まれることを加えたこと
(7)その他
一 学校に在籍しながら履修登録を行わない生徒や、履修登録しているにも関わらず、添削課題への取組や面接指導への参加が困難な生徒に対しては、個々の実情に応じ、適切な指導又は支援を行うよう努めることを加えたこと
二 一について、1科目も履修していない、いわゆる「非活動生徒」については、学校に在籍を続けることで、生徒の能動的な活動を待つという教育的配慮が必要な場合もあるため、画一的な対応によるのではなく、生徒の抱える課題等に留意することが必要であることを加えたこと
三 教育支援や生徒指導、進路指導等は、いわゆる通学コースに生徒が在籍しているか否かにかかわらず、学校として在籍する全ての生徒に対して、当然に行うべきものであることを加えたこと
 なお、(3)一及び四並びに(4)の内容については、現在、改訂作業中の新たな高等学校学習指導要領と整合性を図っているものであること。

2.学校教育法施行規則の改正
面接指導等実施施設を学則の記載事項とし、都道府県等が自ら所轄する通信制高等学校の教育活動が行われる施設を網羅的に把握し、指導監督に活かすことを目的として、学校教育法施行規則を改正する省令の公布を平成29年度末に予定しており、平成30年4月1日より施行される予定であること。当該省令改正に係る留意事項等については、別途、通知する予定であること。

3.広域通信制高等学校の面接指導等実施施設に係る学則認可にあたって参照すべき指針の策定
2.の改正により、面接指導等実施施設が学則の記載事項となることを踏まえ、所轄庁における面接指導等実施施設に係る学則の認可の際に、参照すべきものとして指針を策定するものであること。当該指針については、2.の公布通知とあわせて各都道府県等に対し周知を図る予定であること。

4.高等学校通信教育の質の確保・向上のための指導監督マニュアルの策定
 文部科学省が所轄庁に全面的に協力しつつ実施した点検調査等において蓄積した情報をもとに、所轄庁がガイドラインに基づき通信制高等学校に対する指導監督等を行う際に留意すべき点を取りまとめたマニュアルを策定したこと。
なお、当該マニュアルについては、各所轄庁に対し別途郵送を予定していること。

5.広域通信制高等学校の展開するサテライト施設に関する情報の集約及び公表
広域通信制高等学校については、実施校の所在する都道府県の内外に多くのサテライト施設が存在している例があり、当該施設がいずれの広域通信制高等学校と連携しているか明確でない場合、所轄庁が指導監督を実施する際や、生徒・保護者が学校選択をする際の支障となる可能性があることから、「広域通信制高等学校の展開するサテライト施設に関する調査について(依頼)」(29初初企第51号平成30年2月21日付教育制度改革室長通知)により各所轄庁の協力のもと得られた情報を、平成30年度初頭を目途に文部科学省ホームページにおいて公開する予定であること。

6.私立高等学校等経常費補助の今後の取扱いについて
 「私立高等学校等経常費補助(特定教育方法支援事業(広域の通信制教育の支援))の今後の取扱いについて」(平成30年1月19日付文部科学省高等教育局私学部私学助成課事務連絡)において示しているとおり、違法・不適切な学校運営等があった場合に、その改善を促すための仕組みとして、経常費補助を減額して交付することができる仕組みを設けることを予定していること。
また、広域通信制高等学校の指導監督は所轄庁である都道府県が行っていることを踏まえ、所轄する広域通信制高等学校において違法・不適切な学校運営等があった場合に、国が交付決定を行うに当たって、都道府県が国に対して意見を述べる仕組みをあわせて構築することを予定していること。

 

本件担当
1.から5.までについて
初等中等教育局
初等中等教育企画課教育制度改革室
TEL:03-5253-4111(内線2022)
6.について
高等教育局
私学部私学助成課
TEL:03-5253-4111(内線2547)

(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)