学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)(平成27年文科初第289号)

27文科初第289号
平成27年4月24日

各都道府県教育委員会
各都道府県知事
各構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長
附属高等学校を置く各国立大学長
附属中等教育学校を置く各国立大学長
附属特別支援学校の高等部を置く各国立大学長 殿

文部科学省初等中等教育局長
小松親次郎

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学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(通知)

このたび、「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」(平成27年文部科学省令第19号)【別添1】並びに「学校教育法施行規則の規定によらないで教育課程を編成することができる場合を定める件の一部を改正する告示」(平成27年文部科学省告示第91号)【別添2】及び「学校教育法施行規則第八十八条の二の規定に基づき、高等学校、中等教育学校の後期課程又は特別支援学校の高等部が履修させることができる授業について定める件」(平成27年文部科学省告示第92号)【別添3】が、平成27年4月1日に公布され、同日施行されました。さらに、これらの改正に関連し、「不登校児童生徒等を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校に関する指定要項」(平成17年7月6日文部科学大臣決定。以下「指定要項」という。)【別添4】が平成27年4月24日に改正されました。
制定及び改正の趣旨、概要及び留意事項については、下記のとおりですので、事務処理上遺漏のないよう願います。
各都道府県教育委員会におかれては、所管の学校及び域内の市区町村に、各都道府県知事におかれては、所轄の学校及び学校法人に、各国立大学法人の学長におかれては、附属学校に対して、このことを十分周知されるよう願います。

1 制度改正の趣旨

今回の制度改正の趣旨は、「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革の集中アクションプラン」(平成25年12月高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)や、「中央教育審議会初等中等教育分科会高等学校教育部会審議まとめ」(平成26年6月)を踏まえ、今後の高等学校における遠隔教育の在り方を検討し、「高等学校における遠隔教育の在り方について」(平成26年12月高等学校における遠隔教育の在り方に関する検討会議)において盛り込まれた内容を制度化するものである。
具体的には、全日制・定時制課程の高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部(以下「高等学校等」という。)における授業の方法として、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させる授業(以下「メディアを利用して行う授業」という。)を、学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号。以下「施行規則」という。)に位置付け、制度の弾力化を図ることとする。
あわせて、全日制・定時制課程の高等学校及び中等教育学校の後期課程において、疾病による療養のため又は障害のため、相当の期間高等学校又は中等教育学校の後期課程を欠席すると認められる生徒等を対象として、その実態に配慮した特別な教育課程を編成して教育を実施する必要があると文部科学大臣が認める場合に、不登校生徒を対象とした現行の特例制度と同様に、特別な教育課程を編成することを可能とする。
この場合、高等学校及び中等教育学校の後期課程で、通信の方法を用いた教育として、事前に収録された授業を、学校から離れた空間で、インターネット等のメディアを利用して配信を行うことにより、生徒が視聴したい時間に受講することが可能な授業の方式(以下「3 留意事項第2」において「オンデマンド型の授業」という。)が認められることとなる。

2 制度改正の概要

第1 高等学校等におけるメディアを利用して行う授業の制度化

  1. 高等学校等は、文部科学大臣が別に定めるところにより、メディアを利用して行う授業を行うことができることとすること。(施行規則第88条の2の新設等)
  2.  「文部科学大臣が別に定める」ものとは、平成27年文部科学省告示第92号に定めたとおり、次に掲げる要件を満たすもので、高等学校等において、対面により行う授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。(平成27年文部科学省告示第92号の制定)
    (1)通信衛星、光ファイバ等を用いることにより、多様なメディアを高度に利用して、文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもので、同時かつ双方向的に行われるものであること。
    (2)メディアを利用して行う授業が行われる教科・科目等の特質に応じ、対面により行う授業を相当の時間数行うものであること。
  3. メディアを利用して行う授業については、高等学校及び中等教育学校の後期課程の全課程の修了要件として修得すべき単位数である74単位のうち36単位以下とすること。また、特別支援学校の高等部にあっても同旨とすること。(施行規則第96条第2項及び第133条第2項の新設等)

第2 疾病による療養のため又は障害のため、相当の期間高等学校又は中等教育学校の後期課程を欠席すると認められる生徒等に対する特例の制定

  1. 全日制・定時制課程の高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。以下この節及び「3 留意事項第2」において同じ。)において、疾病による療養のため又は障害のため、相当の期間高等学校を欠席すると認められる生徒、高等学校を退学し、その後高等学校に入学していないと認められる者又は学校教育法第57条に規定する高等学校の入学資格を有するが、高等学校に入学していないと認められる者(以下「療養等による長期欠席生徒等」という。)を対象として、その実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施する必要があると文部科学大臣が認める場合、施行規則第83条及び第84条の規定によらずに特別の教育課程を編成して教育を実施することができることとすること。
    この措置が認められる場合は、施行規則第86条並びに平成17年文部科学省告示第98号及び平成17年文部科学省告示第99号並びに指定要項に基づき、文部科学大臣が当該高等学校を指定する場合とすること。(施行規則第86条の改正、平成17年文部科学省告示第98号の改正及び指定要項の改正)
  2. この特別の教育課程において、通信の方法を用いた教育を行う必要があると文部科学大臣が認める場合には、高等学校学習指導要領(平成21年文部科学省告示第34号)第1章第7款(通信制の課程における教育課程の特例)に定める各教科・科目の添削指導の回数及び面接指導の単位時間数の取扱い等(ラジオ放送、テレビ放送その他多様なメディアを利用して行う学習を取り入れた場合の取扱いを含む。)に準じ特別の教育課程を編成すること。通信の方法を用いた教育により認定することができる単位数は、36単位を上限とすること。(指定要項の改正)
  3. 療養等による長期欠席生徒等を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する高等学校に関し、以下の項目について指定要項において定めること。(指定要項の改正)
    (1)趣旨
    (2)高等学校の指定
    (3)実施
    (4)報告の依頼等
    (5)実施計画の変更
    (6)文部科学大臣の是正措置等

3 留意事項

第1 施行規則第88条の2、第96条第2項等関係

  1. 学校教育法(昭和22年法律第26号。以下この節において「法」という。)、施行規則及び高等学校設置基準(平成16年文部科学省令第20号)等の関係法令に基づく授業とすること。特に、以下のような事項に留意すること。
    (1)高等学校及び中等教育学校の後期課程にあっては、高等学校設置基準第7条の規定に基づき、同時に授業を受ける一学級の生徒数は原則として40人以下とすること。この場合、受信側の教室等のそれぞれの生徒数が40人以下であっても、それらを合わせて40人を超えることは原則として認められないこと。
    特別支援学校の高等部にあっては、施行規則第120条第2項の規定に基づき、同時に授業を受ける一学級の生徒は原則として15人以下を標準とすること。この場合、15人とは配信側及び受信側の教室等の合計数であることに留意すること。
    (2)法第60条第1項から第3項及び第5項等の規定に基づき、配信側の教員は受信側の高等学校等の身分を有する必要があること。具体的には、配信側の教員が受信側の高等学校等の本務の教員ではないときは、兼務発令等により受信側の高等学校等の教員の身分を配信側の教員に持たせる等の必要があること。
    (3)教育職員免許法(昭和24年法律第147号)の規定に基づき、配信側の教員は学校種や教科等に応じた相当の免許状を有する者である必要があること。
    (4)法第34条の規定を準用する同法第62条等の規定に基づき、教科用図書、教材等は文部科学大臣の検定を経た教科用図書等を使用しなければならないこと。特別支援学校の高等部にあっては、施行規則第131条第2項の規定にも留意すること。
    (5)単位認定等の評価は、当該授業を担当する教員たる配信側の教員が、必要に応じて、受信側の教員の協力を得ながら行うべきものであること。
  2. 高等学校等の教育は、心身の発達に応じて行うこと等を目的とするものであり、高等学校等の生徒の特性に鑑み、机間巡視や安全管理を行う観点から、原則として、受信側の教室に当該高等学校等の教員を配置するべきであること。特に、特別支援学校の高等部にあっては、当該生徒の障害の状態等に応じた十分な配慮が求められること。なお、受信側の教室に配置すべき教員は、当該教科の免許保有者であるか否かは問わないこと。
  3. 平成27年文部科学省告示第92号にいう、教科・科目等の特質に応じ、相当の時間数、対面により行う授業の時間数は、高等学校等の生徒の発達段階等に鑑み必要とされるものであり、高等学校学習指導要領第1章第7款に定める面接指導時間を参考として、具体的には、50分を1単位時間とした場合、次のような時間数を標準とすること。
    (1)国語、地理歴史、公民及び数学に属する科目1単位時間以上
    (2)理科に属する科目4単位時間以上
    (3)保健体育に属する科目のうち「体育」5単位時間以上
    (4)保健体育に属する科目のうち「保健」1単位時間以上
    (5)芸術及び外国語に属する科目4単位時間以上
    (6)家庭及び情報に属する科目並びに専門教科・科目各教科・科目の必要の応じて2~8単位時間以上
    高等学校等における総合的な学習の時間、学校設定教科に関する科目のうち専門教科・科目以外のもの及び特別支援学校の高等部における自立活動は、その在り方が多様であることから、上記を参考にしつつ各高等学校等において適切に時間数を定めること。
    また、知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の高等部においては、各教科、特別支援学校高等部学習指導要領で定めるこれら以外の教科及び道徳の、対面により行う授業の単位時間数については、各学校において、上記とおおむね同等とすることを標準として、生徒の実態及び学習活動に応じ適切に定めること。
    対面により行う授業は上記時間数を標準としつつ、学校がその指導計画において、各教科・科目について、計画的かつ継続的にメディアを利用して行う授業を行う場合で、生徒の学習の成果を報告課題等により継続的に把握する等により、対面により行う授業と同等以上に、生徒の学習効果を高めるとともに、学習内容の定着状況を把握するための措置等を講じる場合にあっては、各教科・科目の対面により行う授業の時間数のうち10分の6以内の時間数を免除することができること。
    なお、特別活動については、原則としてメディアを利用して行う授業にはなじみにくいと考えられるが、学校がその指導計画において、生徒の学習の成果を報告課題等により継続的に把握する等により、対面により行う授業と同等以上に、生徒の学習効果を高めるとともに学習内容の定着状況を把握するための措置等を講じるとき、特別活動の時間数のうち10分の6以内の時間数をメディアを利用して行う授業で行うことができること。
  4. 平成27年文部科学省告示第92号に規定するとおり、メディアを利用して行う授業を実施するに当たっては、対面により行う授業に相当する教育効果を有す
    るよう行うことが必要であり、各高等学校等においては、以下のような事項について配慮することが望ましいこと。
    (1)授業中、教員と生徒が、互いに映像・音声等によるやりとりを行うこと。
    (2)生徒の教員に対する質問の機会を確保すること。
    (3)画面では黒板の文字が見づらい等の状況が予想される場合には、あらかじめ生徒にプリント教材等を準備するなどの工夫をすること。
    (4)メディアを利用して行う授業の受信側の教室等に、必要に応じ、システムの管理・運営を行う補助員を配置すること。
  5. 施行規則第88条の2の規定の、授業を行う教室等には、当該高等学校等の教室のほか、当該高等学校等以外の学校の教室、スタジオ等が含まれるため、授業を行う場所には教員のみがいて、履修を行う生徒がいない場合もメディアを利用
    して行う授業に含まれること。
  6. その他各高等学校等におけるメディアを利用した授業の導入に当たっては、前述の「高等学校における遠隔教育の在り方について」も参照されたいこと。

第2 施行規則第86条等関係

  1. 施行規則第86条の規定の、生徒が疾病による療養のため又は障害のため長期欠席状態にあるか否かの判断は、疾病や障害に関する医師等の専門家による診断書等や、文部科学省が義務教育段階における就学事務の参考資料として作成し配布している「教育支援資料」に示された障害種ごとの障害の状態等を基に、文部科学省が平成26年度に実施した長期入院児童生徒に対する教育支援に関する実態調査で示された年間延べ30日以上の欠席という定義を一つの参考としつつ、高等学校又はその管理機関が行うこととすること。
  2. 今回の措置により認められる、指定要項の、通信の方法を用いた教育は、学習意欲はありながら療養又は障害により登校できない生徒が、原級留置、転学、中途退学することなく卒業することができるようにすることを目的としていることから、指導を行うに当たっては、療養等による長期欠席生徒等の実態に配慮すること。例えば、教職員が生徒の状況に応じて家庭や病院への訪問を行うこと等を通じて、その生活や学習の状況を把握し、生徒本人やその保護者が必要としている支援を行うことや、学校外の関係機関等と積極的な連携を図ること、生徒の学習状況に合わせた少人数指導や習熟度別指導など指導上の工夫をすることが望ましいこと。その際には、生徒が意欲を持って学習を継続することができるよう、自らの生き方や将来に対する夢や目的意識について考えるきっかけを与えることのできる指導を行うことが重要であること。
    なお、このような目的に鑑み、学習意欲がない者、学習成果を評価することができないような者等に対して単位認定を行うような安易な運用が行われることのないよう留意すること。
  3. 指定を受けた高等学校は、指定に係る実施計画に従った教科・科目等を履修し又は習得した生徒についての全課程の修了の認定は、「教育課程に関し学校教育法施行規則の規定によらない場合における高等学校又は中等教育学校の後期課程の全課程の修了の認定について定める件」(平成17年文部科学省告示第99号)に基づき行うこと。
  4. その他、平成17年7月6日付け17文科総第485号「学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)」【参考1】の記第3留意事項2、4及び5並びに平成21年3月31日付け20文科初第8077号「高等学校の全日制課程及び定時制課程における不登校生徒に対する通信の方法を用いた教育による単位認定について(通知)」【参考2】の記第3留意事項1及び3から5についても、このたびの改正が療養等による長期欠席生徒等に対する措置であることも勘案しつつ留意されたいこと。
  5. その他各高等学校におけるオンデマンド型の授業の導入に当たっては、前述の「高等学校における遠隔教育の在り方について」も参照されたいこと。
  6. 今回の改正に伴い、施行規則第56条及び第86条において、学校生活への適応が困難であるため、相当の期間学校を欠席していると認められる児童生徒に係る規定に関し、「欠席していると認められる生徒」の文言を「欠席し引き続き欠席すると認められる生徒」と改正しているが、この改正はあくまで文言の整理であり、規定の趣旨、内容及び具体的な運用等において改正前と変わるところはないこと。

【本件連絡先】
(高等学校関係)
文部科学省初等中等教育局
初等中等教育企画課教育制度改革室
高校教育改革係
甲(かぶと)、小坂
電話03-5253-4111(内線2022)

(特別支援教育関係)
文部科学省初等中等教育局
特別支援教育課企画調査係
瀬戸、袴田
電話03-5253-4111(内線3193)

お問合せ先

初等中等教育教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成27年08月 --