鹿児島県・与論町立与論中学校,県立与論高等学校(連携型中高一貫教育)の概要


1  学校環境
  (1) 設置年度  平成12年度
  (2) 学校名及び所在地
    与論町立与論中学校
   鹿児島県大島郡与論町朝戸1134
鹿児島県立与論高等学校
   鹿児島県大島郡与論町茶花1234
  (3) 地域の環境
    与論島は,鹿児島市から南に563km,エメラルドの海原に浮かぶ直径5kmの美しい島である。年間平均気温23゜Cの温暖な亜熱帯性気候で,ハイビスカス,ブーゲンビリアなどの色鮮やかな花が一年を通じて咲き,姉妹盟約を結ぶギリシアのミコノス島に似て青と白のコントラストが美しく映える風景が印象的である。
   この島は与論町1町からなり,主要産業は観光,園芸農業,畜産業などである。当地には3小学校,1中学校,そして1高校があり,島の中学生の90%以上が与論高校に進学するが,卒業後はほとんどの生徒が島を後にする。
   歴史的にみて,与論町は,幼・小・中・高で,「与論町教育研究会」を組織して与論の教育活動について連携して研究してきた経緯がある。島の子供たちは学校種を問わず関係者一丸となって育てようという機運にあふれる地域である。
  (4) 実施形態
    鹿児島県立与論高等学校の全日制普通科と,与論町立与論中学校が連携して,中高一貫教育を実施する。
  (5) 学校規模
    1 与論町立与論中学校
      クラス数:10クラス(1年3,2年3,3年3,特1)
      生 徒 数:285名
      教 員 数:23名
      進学状況:平成11年度卒業生121名の内107名(88%)が与論高等学校へ進学
    2 鹿児島県立与論高等学校
      クラス数:9クラス(各学年3クラス)
      生 徒 数:323名
      教 員 数:28名
      生徒の状況:在校生の99%が与論中学校の卒業生
  (6) 学校の特色
    1 与論町立与論中学校
      中学校への入学者は,島内の3小学校からの入学者がほとんどである。
      新校舎が新築されると同時に,パソコン室,校舎周辺の花壇等も整備され,よい教育環境にある。
      生徒会活動,部活動も盛んに行われている。部活動加入率は90%を超えており,毎日盛んな活動をしている。
      保護者の学校に対する期待も大きく,何事にも協力的である。また,PTA活動も活発に行われている。
      幼・小・中・高の連携が密接に行われている。また,職員と地域とのかかわりも多く,よく地域に溶け込んでいる。
    2 鹿児島県立与論高等学校
      本校への入学者は,ほとんどが島内唯一の与論中学校卒業生であり,島外からの入学者は皆無に等しい。従って,校内は和気あいあいとした明るい雰囲気である。
      入学希望者がほぼ全員入学しているが,例年定員に満たない状況である。生徒の学力差が大きく,進路希望も多様であるため,きめ細かい指導が求められる。
      部活動加入率が約90%にも及び,運動部を中心に非常に熱心な活動状況である。
      教職員や生徒は地域共同体の一員として,町や集落の諸行事に積極的に参加しており,地域社会を支える活動をしている。
      小中高の連携が密接で,島の最高学府として高等学校に寄せる地域の期待は大きい。

2  教育内容
  (1) 教育目標・方針
    目指す生徒像を「郷土を愛し,豊かな心と生きる力をもった生徒の育成」とし,次のような目標を設定して取り組んでいる。
    1 中高の6年間を見通した系統的・継続的な教育活動により,生徒の個性と学力の伸長を図る。
    2 学校と地域の連携を深め,地域に開かれた学校づくりを推進するとともに,生徒の郷土に対する理解を深め,郷土愛を育み,郷土の発展に貢献しようとする態度を育成する。
    3 小規模校の利点を生かすとともに,中高連携教育により小規模校であることによる教育活動上の制約を克服し,学校の一層の活性化を図る。
  (2) 教育の特色
    1 中学校と高等学校の連携概要
      特色ある教科・科目「ゆんぬ」の開設
           ボランティア活動や体験学習等を通して「生き方」について考える進路学習や特色ある郷土の文化,産業,歴史などについて学ぶ郷土学習のための時間として,教科・科目「ゆんぬ」(地元方言で「与論」を意味する。)を設定する。中学校,高等学校ともに各週1単位時間を設定し,6年間を見通した計画的・継続的な学習を行う。
      教職員の連携・交流
           中高の教員が定期的に相互乗り入れを行い,専門領域の指導を行ったり,多くの教員が生徒達に6年間かかわって個性の伸長を図ったり,ティーム・ティーチングによる習熟度別授業によるきめの細かい指導を行ったりする。また,教員同士の交流で,中高の教育内容が精選され,中高のスムーズな接続がなされることなどを目指す。
      合同学校行事の開催
           生き方講演会,芸術鑑賞会などの学校行事を中高合同で開催したり,町民体育大会等の地域の行事に共同で参加したりする。
      部活動による交流
           離島故の身近な練習相手の不足,生徒減少による部員不足や専門の顧問教師不足,遠征や練習試合に伴う多額の出費などの問題点を克服するため,競技力や技術等の向上のための合同練習や練習試合,講習会などを実施する。
    2 「ゆんぬ」の教育内容
      進路指導に関する分野:進路希望調査(6年間継続した夢カードの利用),キャリアガイダンス,進路講演会,職場体験学習
      郷土学習に関する分野:地元講師によるふるさと講話,与論の歴史研究,島口(島の方言)弁論大会
      体験学習に関する分野:郷土料理・与論焼・畜産・農業・漁業・看護などの体験,民具作り,三味線教室,独居老人宅訪問など
      環境学習に関する分野:環境汚染問題研究,ケナフなどの植樹活動,与論の動植物研究
      その他:合同ボランティア活動(海岸・道路の清掃など)
    3 教員の連携・交流内容
      中学校から高校へ
        数学科  週4時間(1名)  英語科  週2時間(1名)
        体育科  週2時間(1名)
      高校から中学校へ
        数学科  週4時間(2名)  英語科  週4時間(2名)
        体育科  週2時間(1名)  国語科  週3時間(2名)
      その他の教科
           不定期の取組として,国語科においては,漢字検定試験を中高合同で輪番で実施したり,理科にあっては,中学校理科の選択授業を高校教諭3名が,高1総合理科の授業を中学校教諭2名が実施する。また,音楽科が地元の各種行事で中高合同演奏指導を,家庭科では中高の調理実習における指導補助員として交流する。
      中高合同学習会
        中高合同による教科内選択学習を実施する。
      中高交流講座
        教科の枠を超えて,多様な講座を開設し,異年齢集団で学習する。

3  入学者の選抜・決定
  (1) 入学者選抜・決定方法
       連携型中学校から連携型高等学校への入学者選抜に当たっては,学力検査及び調査書は選抜のための判断資料として用いず,課題レポートの審査や面接等を行い,その結果を総合して判断する。これは平成13年度入学生から適用することとしている。
  (2) これまでの出願状況(平成12年度入学者選抜について)
    推薦入学者選抜では合格者5人中,連携型中学校からは5人であった。
    一般選抜については,募集人員115人に対して志願者数は103人,このうち連携型中学校からの志願者数は103人であり,受検した102人全員が合格した。

4  設置経緯
     本県においては,平成10年度に鹿児島県中高一貫教育研究会議を設置し,与論地域 と岩川地域を中高一貫教育推進校に指定して研究を進めてきた。
   平成11年度の中高一貫教育研究会議において,中高一貫教育推進校の内,連携型中高一貫教育校として移行が適当と認められる場合には早期に導入することが望ましいとの方向性が示された。
   それを受け,県教育委員会は,町教育委員会と連携しながら,推進校における研究成果や課題を様々な角度から検討し,将来にわたって教育的成果が期待できると認められる与論町立与論中学校と県立与論高等学校に平成12年度から連携型中高一貫教育を導入することを決定した。
   なお,県教育委員会では,学校教育法施行規則等の改正を受け,「鹿児島県立高等学校学則」を改正し,連携型高等学校及び連携型中学校において教育課程を編成するときには,事前に双方が協議すること等を規定した。また,与論町教育委員会にあっても,同様の規則改正を行った。また,中高一貫教育における中学校及び高等学校教員の相互交流に関する取扱要項を作成し,関係機関に通知した。また,平成12年度に連携型高等学校の入学者選抜方法を改善した。

5  設置に要した経費
  特になし。

6  その他
     平成12年度から国の研究開発学校に指定され,連携型中高一貫教育の一層の深化と 広がりを期待して新たな研究に入っている。
   また,新たな推進校として同じ大島郡内の喜界地域(1町,3中学校,1高校)を指定し,離島地域における先行研究の上に,新たな取組形態での研究を進めている。