奈良女子大学文学部附属中等教育学校概要


1  学校環境
(1) 設置年度  平成12年度
(2) 学校名及び所在地
  奈良女子大学文学部附属中等教育学校
〒630-8305  奈良市東紀寺町1-60-1  電話0742-26-2571
(3) 地域の環境
  奈良公園の南端に位置し、奈良教育大学、国立奈良病院、住宅地に隣接している。
(4) 実施形態
  中等教育学校、後期課程は全日制・普通科
(5) 学校規模
  1 規 模 1学年3クラス  計18クラス
  2 学級編制 1クラス40名(男子20名・女子20名)
    一定地域に居住する者に限定(通学時間1時間以内)
  3 生徒数 723 名(男357名・女366名)
 
  1年 2年 3年 4年 5年 6年
59 60 60 58 60 60
61 61 59 62 62 61
  4 教員数 43名(校長1名文学部教授兼務、副校長2名、教諭38名、養護2名)
    男28名、女15名
    非常勤講師27名(週当たり時間数176時間)
  (6) 学校の特色
  1 これまでの研究歴
      平成1〜3年度:研究開発学校
        中学校及び高等学校における教育の連携を深める教育課程の研究開発
      平成4・5年度:高等学校教育改革推進協力校
      平成3〜5年度:コンピュータ利用(数学科)の教育研究校
      平成5・6年度:中学校教育課程(社会科)研究校
      平成7・8年度:環境のための地球学習環境プログラムモデル校<GLOBE>
      平成9・10年度:環境データ観測活用事業モデル校<EILNET>
      平成9・10年度:姉妹校交流推進研究指定校<GLOBAL CLASSROOM>
      平成10〜12年度:光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発事業
      平成11〜13年度:研究開発学校
        中学校及び高等学校における教育の連携を深める教育課程の研究開発
    2 総合学習センター
        本年度より、研究開発の一環として、6年一貫の総合学習カリキュラムの研究・開発を行い,地域教育に資することを目的とした「総合的な学習の時間」の実践的研究の中核としての「総合学習センター」を設置する。センターの主な活動内容は以下のようなものを予定しており、公立学校教員の研修を受け入れ,総合的学習の具体的教材の共同研究・開発や研究紀要の発行を行う予定である。
        @ 総合的学習のカリキュラム開発とその研究
        A 総合的学習のカリキュラム開発の支援
        B 総合的学習カリキュラムの収集とその閲覧
        C 総合的学習の実践と共同研究

2  教育内容
  (1) 教育方針
    1 自由で自立した人格と社会的責任の自覚を養う学校
    2 多様な能力に対応し、それらを伸ばせる学校
    3 社会、世界に開かれた学校
  (2) 教育の特色
1 本校は、独自の教育課程に基づき、六年一貫教育を行っている。
      @ 第1学年から第6学年を2-2-2年制の3段階に分ける。
        低学年(1〜2年)
          6年一貫教育を貫徹するのに必要な基礎学力の定着を図る。
          それを実現するための学習方法・態度の習得を図る。
          集団生活の民主的・道徳的ルールを身につける。
          総合学習<奈良学><情報学>の実践
        中学年(3〜4年)
          自主的学習方法の習得:実験・調査・研究・発表等の方法を授業に取り入れ、学習への興味・関心を広げ、多面的、多元的なものの見方を養う。
          総合学習<環境学><世界学><情報学>の実践
        高学年(5〜6年)
          生徒の能力・適性・進路に応じた多様な選択制の導入。
          進路に応じた科目の選択、到達度に対応した選択を可能にする。
          総合学習<情報学>の実践
      A すべての学年・教科において従来の学習方法を一歩進めて、生徒の自主活動を通して、多様な表現能力の養成を目指している。例えば、
        a リポート・作文・小論文−すべての教科
        b フィールドワーク−社会科・理科・技術家庭科
        c 実験・実習−理科・技術家庭科・総合的学習
        等は、各学年で広く実践されている。
      B 2つ以上の教科を合同した総合科目を置く。
        【総合学習<奈良学><環境学><世界学><情報学>の開講】
        総合学習の中心は、生徒によるフィールドワークである。それは、次のようなプロセスから成り立っている。
        a 自分たちで班を構成する
        b 課題を見つける−テーマの設定
        c 情報を集める−調査計画・実地調査
        d 情報を関連づける
        e 考察する−共同作業・教師の援助・専門家の意見
        f 発表する−まとめる
          学年末には、総合学習のそれぞれで趣向を凝らした班毎の発表会が行われ、その中から生徒の投票で優秀作が選ばれ、選ばれた班は全校生の前で発表する。口頭発表の他に、さまざまな作品(模型、一刀彫り、赤膚焼き)や50ページをこえる報告書やホームページが製作される。また、フィールドワークにおける多様な体験を通して、学習方法の習得、主体的学習態度の形成が図られ、現実社会における様々な人々との出会い・交流が将来へのキャリアガイダンスにもなっている。
      C 「地球時代」に対応した教育の実践
        【GLOBAL CLASS ROOM とシンガポール修学旅行】
          グローバルクラスルームとは、日本・スコットランド・ドイツ・チェコ・スエーデン・南アフリカの7つの高等学校から約10名の代表者が毎年6月ホスト校に集まり、各校で1年間共通テーマで学習してきた課題についての討論、様々なパフォーマンス、スポーツ交流、見学会、現地学習等から成る高校生によるフオーラムである。第1回はスコットランド、第2回はスエーデン、第3回は南アフリカで開催され、第4回(平成12年度)は本校で開催される。本校の大会においては、上記参加校の他に、韓国がオブザーバー参加する。
  フォーラムのテーマとして、民主主義・雇用・地域開発・環境・平等・教育・伝統とテクノロジーなど、現在の世界が共通に抱えている問題を取り上げる。4年生の英語の授業・HR活動・<世界学>の中で、テーマにそって学習を深め、インターネットを利用して参加国との間で情報交換、討論を行う。
  この試みは、従来の1対1型の学校交流を発展させて、Global Classroom参加校を結節点としたネットワーク型の学校交流であり、新しい形態の国際理解教育の構築である。また、本校では、修学旅行の行き先は生徒達が決めるが、海外旅行の場合は、シンガポールと決められている。シンガポール修学旅行は現地校のACJC(Anglo Chinise Junior College)との学校交流を中心とし、平和学習、環境学習が組み入れられている。
      D コンピュータ利用教育
          1997年に「校内LAN」が設置され、生徒たちが自由にインターネットやパソコン通信が使える環境にあり、日常の学習をはじめとして、グローバルクラスルームや総合学習の情報の収集・交換・発信には威力を発揮している。日常の授業だけでなく学務事務・事務的連絡・論文の共同執筆等広範に「校内LAN」が利用されている。
    2   本校は、奈良女子大学学生の教育実習を行う任務の他に、奈良女子大学文学部・大学院との連携により教育の理論と実践についての実験研究を行うと共に、附属幼稚園・附属小学校と共に共通のテーマを設定し、共同研究を行い、研究紀要を発行している。

3  入学者の選抜・決定
  (1) 入学者選抜適性検査
    適性検査は、表現T、U、Vから成り、いわゆる「受験学力」を問う問題ではなく、いずれも解が一意に決まるものではなく、問題の発見、解決に至る多様な考え方、プロセス等を問う問題である。
    1 検査科目
      表現T− 生活の中での事柄・事象等への興味・関心・思考・感性等を文章で表現する。
      表現U− 生活の中での事柄・事象等について、問題の発見や解決の過程等を多様な方法で表現する。
      表現V− 想像力・感受性・創造性等を美術・音楽・身体的活動等を通じて表現する。表現Vは実技検査である。美術的表現、音楽的表現、身体的表現から希望する領域を一つ選択受検。
    2 合格決定
      適性検査の結果と小学校長から提出される調査書により、総合的に判定する。
  (2) これまでの出願状況
    【受験者数】
   
  平成8年 平成9年 平成10年 平成11年 平成12年
男子 300(22) 276(24) 279(22) 282(26) 318(28)
女子 399(31) 381(26) 388(28) 461(33) 537(34)
    【合格者数】
   
男子 50(8) 46(13) 54(6) 50(10) 46(13)
女子 49(14) 48(13) 49(12) 45(15) 45(17)
(  )内数値は附属小学校

4  設置経緯
    1947(昭和22)年 奈良女子高等師範学校附属中学校発足
    1948(昭和23)年 奈良女子高等師範学校附属高等校発足
    1952(昭和27)年 奈良女子高等師範学校廃止
      奈良女子大学文学部附属中・高等学校
    1973(昭和48)年 完全6年一貫教育実施
    2000(平成12)年 奈良女子大学文学部附属中・高等学校廃止
      奈良女子大学文学部附属中等教育学校新設
       
    新制中学校・高等学校発足当時から教官は中高併任であった。また、昭和48年度中学校入学者全員が高等学校へ入学し、同時に、高等学校での募集を停止した。この時点から、六年一貫カリキュラムの開発・実践・評価に取り組んだ。その26年間の実践と経験が、平成12年度からの中等教育学校への移行を容易ならしめた。

5  設置に要した経費
  校名板・校門とその周辺整備・封筒・公印・挨拶状・校旗等の制作費約300万円